家族が窃盗罪で逮捕されたものの、初犯なので実刑が回避できるのか知りたいと考えていませんか?
また、万引きをしてしまった方で、初犯でも逮捕されるのではないかと不安になっている方もいるでしょう。
犯罪を行ってしまった場合でも、初犯ならば不起訴や減刑されるケースもあります。
しかし、窃盗罪では場合によっては初犯でも実刑になることもあり得ます。
今回は、
- 窃盗罪の基礎知識
- 窃盗罪の初犯で予想される処分
- 窃盗罪の初犯でも実刑を覚悟しなければならないケース
- 窃盗罪の初犯で処分を軽くするための対処法
などについて、弁護士がわかりやすく解説します。
この記事が、初めて窃盗をしてしまって悩んでいる方や、窃盗罪の初犯で家族が逮捕されてしまった方の手助けとなれば幸いです。
目次
1、そもそも窃盗罪とは?初犯でも知っておくべき基礎知識
そもそも窃盗罪とは、他人の財物を窃取することで成立する犯罪です。
法律では窃盗罪について、次のように定められています。
第二百三十五条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役刑又は50万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法
他人の財物とは品物や金品などを指し、コンビニやスーパーなどで商品を盗む万引きは窃盗罪に該当します。
スリやひったくりなど他人が持っている物を奪う行為も窃盗罪ですし、置き引きも所有者が近くにいる場合は窃盗罪として扱われます。
窃盗罪の刑罰は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。窃盗罪は未遂であったとしても同様に罰せられることが法律で決められているため(刑法第243条)、未遂だから逮捕されないというわけではありません。
また、窃盗の際もしくは窃取後に被害者へ暴行や脅迫を行えば強盗罪、(刑法第236条)、さらに相手が負傷すれば強盗致傷罪(刑法第240条、第238条)といった犯罪が成立し、窃盗罪よりも重い刑罰が科せられる可能性もあります。
2、窃盗罪の初犯で予想される処分
窃盗罪の刑罰は10年以下の懲役または50万円以下の罰金と法律で定められていますが、初犯ではどのように処分されるのでしょうか?
窃盗罪の初犯で予想される処分は、次の3通りがあります。
(1)不起訴処分
不起訴処分とは、検察官が裁判所に対して起訴をしないという処分です。
不起訴処分になれば捜査機関による捜査は終了し、刑事裁判は開かれないので前科がつくこともありません。
逮捕・勾留されている場合は、不起訴処分になった時点で解放されます。
また、比較的軽微な犯罪の場合、検察官へ送致せずに警察による厳重注意だけで事件を終結することもあります。このことを微罪処分といいます。
微罪処分の場合も、裁判にならないので前科がつくことはありません。
なお、不起訴処分、微罪処分ともに、前歴として記録はされることになります。
前歴は、警察が過去に捜査を行ったことを示すのみですので、前科がつかなければ特に問題はありません。
(2)略式命令
検察に正式起訴されれば公開裁判によって判決が下されます。
一方で、軽微な犯罪の場合、略式起訴という手続きで進められることがあります。
略式起訴では正式裁判を行わず、捜査の結果を基に裁判所が罰金や科料の金額を指定します。このを略式命令といいます。
略式命令の場合は正式起訴される場合よりも迅速に釈放され、事件も早期終結が期待できます。
また、罰金刑のみで済むことになりますが、前科はつきます。
(3)正式裁判で実刑になる可能性もある
軽微な窃盗であれば、上記で紹介したような不起訴処分や略式命令が期待できます。
しかし、窃盗の悪質性が高いと判断されるような場合では正式裁判となる可能性が高いです。
一般的に窃盗罪の初犯では、正式裁判になったとしても罰金刑または執行猶予付き懲役刑の判決が言い渡されることが多いものです。
しかし、事案の内容によっては実刑が言い渡される可能性もあります。
実刑とは、懲役刑を実際に受けることを指します。
初犯だから実刑は避けられるだろうと甘く見ていると、起訴されて実刑になってしまう可能性もあるので注意が必要です。
3、窃盗罪の初犯でも実刑を覚悟しなければならないケース
何度も繰り返し窃盗で罪に問われているケースだけではなく、初犯でも実刑を言い渡されるようなケースもあります。
窃盗の初犯で実刑が言い渡される可能性があるのは、窃盗の悪質性が高いと判断されるようなケースです。
初犯でも実刑になる可能性があるのはどのようなケースなのでしょうか?
(1)被害金額が大きい
窃盗の場合、盗んだ財物の価値が高いほど悪質性が高いと判断されます。
そのため、被害金額が大きければ大きいほど罪は重くなり、実刑になる可能性が高まります。
実刑を避けられたとしても、罰金の金額が高額になることが予想されます。
(2)繰り返し犯行に及んでいる
初犯であっても、複数件の窃盗罪で同時に起訴された場合は実刑となる可能性も低いとはいえません。
また、起訴されている窃盗事件以外にも別の窃盗余罪があるというケースでは、実刑になる可能性があります。
余罪とは、捜査や起訴の対象になっている犯罪とは別の犯罪事実を指します。
窃盗を反復して犯行していた場合、捜査が進む中で余罪が発覚するようなこともあるのです。
また、取り調べで自ら自白をすることで捜査機関へ余罪が発覚してしまうようなケースもあるでしょう。
余罪が多ければ多いほど実刑になる可能性や刑罰が重くなる可能性は高まります。
一方で、起訴された窃盗罪の犯罪事実や余罪が多くても起訴されないこともあります。
それは、それぞれの余罪で被害者と示談が成立している場合や、再犯防止に向けた対策に取り組んでいて反省の態度がみられるような場合です。
こうしたケースで不起訴処分になることもあるため、弁護士の弁護活動が重要なポイントになってくるといえます。
弁護活動の内容によっては、刑事裁判へ発展した場合でも、執行猶予付きの判決など実刑を免れられる可能性が高まります。
(3)計画的な犯行や組織的な犯行
衝動的に行った万引きなどは、比較的に軽微な犯罪だと判断されることが多いです。
それに対して、計画的に窃盗を行っていた場合や、複数人で組織的に犯行を行えば、悪質な窃盗だと判断されてしまいます。
綿密に練った計画によって被害金額の大きな物を盗んだのであれば、一般的な万引きよりも悪質性が高いため、実刑が言い渡される可能性があります。
また、初犯であったとしても組織的な窃盗に加わっていれば、実刑になる可能性があると考えられます。
4、窃盗罪の初犯で逮捕されるケースもある!逮捕後の流れは?
窃盗罪の初犯だからといって逮捕されないというわけではありません。
逮捕された場合、どのような流れで処分は決まるのでしょうか?
窃盗罪における刑事事件の流れをご紹介します。
(1)取り調べ
窃盗事件の場合、窃盗の直後に捕まる「現行犯逮捕」、もしくは後日に防犯カメラの映像などから犯行が発覚する「通常逮捕」による逮捕が多いです。
逮捕されれば留置場や拘置所などに見柄が拘束された状態で警察による取り調べが行われます。
比較的に軽微な窃盗である場合には、この段階で微罪処分として釈放されることもあります。
しかし、それ以外の場合は逮捕から48時間以内に検察へ身柄を移されることになります。
微罪処分を目指すには、適切に取り調べに対応することや、被害者との示談を進めるように弁護士に早期から弁護活動をしてもらうことが重要になってきます。
(2)勾留請求
検察に身柄が送致されれば、次は24時間以内に被疑者の身柄拘束を継続するかどうか判断されます。
検察官によって勾留が必要だと判断されれば勾留請求が行われ、裁判所が認めれば身柄の拘束が続きます。
勾留期間は原則10日間ですが、10日を過ぎても拘束が必要だと判断された場合はさらに10日間の延長が可能です。
勾留期間中には、検察官による取り調べなどが行われます。
一方で、勾留請求が却下された場合には在宅事件として刑事事件の手続きが進むため、身柄の拘束はされずに捜査を受けることになります。
在宅事件の場合、検察官から呼び出しがあるので、呼び出しに応じて捜査を受けます。
勾留を避けたり早期釈放を目指したりするには、逃亡や証拠隠滅の恐れがないと主張することが大切です。
逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断されれば、早期釈放が期待できます。
(3)起訴・不起訴の決定
勾留期間の満了までに、検察官は起訴・不起訴を判断します。
不起訴処分になれば、身柄が解放されて前科がつくこともありません。
しかし、起訴されれば被告人としてさらに続けて勾留されることもあります。
被告人勾留の期間は原則2カ月ですが、その後も1ヵ月ごとに延長が可能なので、保釈が許可されない限り、刑事裁判の終了まで勾留が続きます。
そして、刑事裁判が行われて量刑が確定しますが、刑事裁判で起訴されれば有罪になることが大半です。
ただし、窃盗の場合は刑事裁判ではなく略式起訴になるような場合もあります。
略式起訴は簡易的な手続きなので早期に事件を終結させることができ、実刑を避けて罰金刑に収めることができます。
いずれにしても、実刑を避けるには不起訴や略式起訴を目指すためにも弁護士へ依頼して弁護活動を任せることが大切だといえます。
5、窃盗罪の初犯で軽い処分を獲得するための対処法
窃盗罪の初犯ならば、適切に対処すれば軽い処分の獲得が期待できます。
少しでも軽い処分を獲得するために、次の対処を行ってください。
(1)被害者と示談する
窃盗罪の場合、勾留や起訴、処罰をどうするのかなど全てにおいて被害者との示談が影響を与えるといえます。
被害者との示談が成立すれば、被害者が被疑者を許して事件が解決したと判断され、早期釈放や不起訴処分を期待できます。
ただし、逮捕されれば勾留までの最大72時間は外部と連絡を取ることはできませんし、被害者と会うこともできません。
弁護士のみ接見することができるので、早急に弁護士に依頼して被害者との示談交渉を進めてもらいましょう。
示談交渉では、盗んだ物の返還または被害弁償、慰謝料などを相手に提示します。
示談交渉はご自身でも行うことはできますが、被害者に会ってもらえるかどうかは分かりませんし、トラブルが複雑化してしまう恐れもあります。
そのため、専門家である弁護士に交渉は任せるべきだといえます。
(2)反省の態度を示す
少しでも処分が軽くなるようにするには、反省の態度を示すことも大切です。
反省の態度を示すには被害者へ謝罪するだけではなく、再犯の可能性を否定する必要があります。
カウンセリングが必要な場合はカウンセリングを受け、経済的に貧窮している場合は生活保護を受けるなど具体的な再犯防止のための対策を行います。
一人暮らしの場合であれば、家族に監督してもらうように家族の元へ引っ越すなども対策のひとつです。
また、窃盗を繰り返し行う精神疾患であるクレプトマニア(窃盗症)の場合であれば、専門医療機関で治療することができます。
(3)身元引受人を立てる
身元引受人とは、逮捕された被疑者・被告人の身元を、責任をもって受け取る人を指します。
身元引受人を立てれば逃亡や証拠隠滅の恐れがないことをアピールできるため、逮捕・勾留を避けることや早期釈放が期待できます。
身元引受人には、被疑者を監督できる人物であれば、誰でもなることが可能です。
会社の上司や友人でも問題ありませんが、最も望ましいとされるのは被疑者もしくは被告人に対する影響力が強くて適切に指導監督できるような人物です。
そのため、一般的には、家族が最も適切であると考えられます。
6、窃盗罪の初犯で検挙されたときは弁護士に相談を
窃盗罪の初犯で検挙されたときには、少しでも早い段階で弁護士へ相談することをおすすめします。
逮捕直後でも弁護士ならば面会することができ、取り調べに関するアドバイスなどの打ち合わせを行うことができます。
そして、早期釈放や不起訴を目指すために被害者との示談交渉も任せることができます。
示談交渉は起訴や処罰に関係してくるため、非常に大切なものです。
弁護士ならば被害者に配慮しながら穏便に交渉を進めてくれます。
また、弁護士は起訴された場合の弁護活動なども行い、少しでも刑罰が軽くなるように働きかけてくれます。
窃盗罪に限らず犯罪行為で検挙された場合は初動や弁護活動の内容が大事なので、早急に刑事事件に強い弁護士へ相談して今後の対処や方向性を決めていく必要があるといえます。
まとめ
窃盗罪の初犯だとしても、逮捕されて起訴されれば前科がつくようなケースもあります。
被害金額が大きい組織的な窃盗など悪質性が高い場合であれば、実刑判決が下されるようなこともあるでしょう。
少しでも軽い処分を獲得するには、早い段階から刑事事件に精通した弁護士へ相談することが大切です。
弁護士に相談すれば今後どうすればいいのか明確になりますし、依頼すれば味方となって身柄の釈放や減刑に向けて対応してもらえます。
窃盗罪の場合、弁護士への相談は早ければ早い方が不起訴処分を目指しやすくなるので、早急に弁護士へ相談することをおすすめします。