B型肝炎ウイルスキャリアについてご存知ですか?
「B型肝炎」という言葉を聞いたことがある方でも、
- B型肝炎の症状にはどのようなものがあるのか
- 「B型肝炎ウイルスキャリア」とはどのような症状なのか
- 症状が特にない場合にはどのようにして対処すればいいのか
- 将来的には発症するリスクはあるのか
などについては、ご存知でない方々も多いのではないでしょうか。
今回は、
- B型肝炎ウイルスキャリアとはどのような症状であり、どのように対処するべきなのか
を中心に書いていきたいと思います。
B型肝炎ウイルスキャリアなのかどうかを気にされている方、既にB型肝炎ウイルスキャリアであると診断されている方など、今後の対応の参考にしていただければ幸いです。
目次
1、B型肝炎ウイルスキャリアとは?
免疫力が未熟な状態でB型肝炎ウイルスに感染した場合に、B型肝炎ウイルスを体内から排除することができず、ウイルスが生涯体内に住みついてしまう状態のことを持続感染といいます。出産の際に、母親から子供に感染する場合などがその典型例です。そして、B型肝炎ウイルスに持続感染しているものの発症していない方のことを、B型肝炎ウイルス(HBV)キャリア、無症候性キャリアもしくはB型肝炎ウイルス持続感染者などと言うことがあります。
成人がB型肝炎ウイルスに感染する場合には、既に免疫力が発達しているため、そのほとんどは本人が気付かないうちに治癒することになります(一過性感染)。
ただし、体の免疫力が著しく低下している場合(AIDSウイルスに感染している場合等)や特定の外来種のB型肝炎ウイルスに感染した場合には、成人になってから感染した場合でも持続感染する可能性があります。
2、B型肝炎ウイルスの感染経路とは?
B型肝炎の感染経路は、垂直感染と水平感染の2つに分けることができます。
(1)垂直感染とは?
現在、日本のB型肝炎ウイルス感染者は110万から140万人と言われていますが、その多くは国による母子感染防止策がとられる以前の母子感染によるものだとされています。
母親がB型肝炎ウイルスに感染している場合、乳幼児のほぼ100%に感染し、そのうち90%近くがB型肝炎ウイルスキャリアになるとされています。
(2)水平感染とは?
水平感染の原因としては、まず、予防接種による注射器の使いまわし、医療従事者による事故、輸血に伴う感染が考えられます。
現在では、医療環境の整備などによって、これらを原因とした感染が起きることはほぼ考えられません。
その他には、違法薬物の使用に伴う注射器の使いまわし、性交渉、ピアスの穴あけや入れ墨などで器具を適切に使用しなかった場合などにB型肝炎ウイルスに感染することが考えられます。
上記(1)及び(2)のB型肝炎ウイルスの感染経路や感染の形態については「B型肝炎ウイルスの感染を防ぐために知っておくべき感染経路」にて詳しく書いていますので、よろしければご覧ください。
3、B型肝炎ウイルスに感染しているかを検査する方法は?
B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを調べるためには、血液検査をする必要があります。
この血液検査は、ほとんどの病院や診療所で受けることができます。お住まいの市町村にて無料で受けることもできますし、職場の健康診断でも受けることができるでしょう。
検査では、B型肝炎ウイルスの粒子の表面を覆うたんぱく質であるHBs抗原の有無を調べることになります。HBs抗原が陽性であることは、B型肝炎ウイルスが血液中に存在していることを意味します。
なお、B型肝炎ウイルスに感染してから2~3カ月程度の期間が経過すれば、HBs抗原を検査することで感染の有無が確認できるものとされています。
4、B型肝炎ウイルスキャリアの症状とは?
B型肝炎ウイルスキャリアとは、ウイルスが生涯体内に住みついてしまうものの発症していない状態のことをいいますので、基本的に症状はありません。
5、B型肝炎ウイルスキャリアになっても完治する?
B型肝炎ウイルスキャリアとは、先に述べたように、ウイルスを体内から排除することができないためにB型肝炎ウイルスが生涯体内に住みついてしまう状態のことをいいますので、ウイルスの活動が沈静化することはあっても、ウイルス自体が排除されることはありません。
したがって、下記7及び8のとおり、B型肝炎ウイルスキャリアの方は、定期的に経過観察をして、B型肝炎ウイルスと共存していくことが非常に重要となります。
6、B型肝炎ウイルスキャリアの状態が悪化するとどうなる?
持続感染をした場合には、約10~15%の人が慢性肝炎を発症し、治療が必要になるものとされています。一方で、残りの約85~90%の人は、一時的に何らかの症状が現れることもありますが、すぐに沈静化し、落ち着いた状態(B型肝炎ウイルスキャリア)となります。
ただし、慢性肝炎を発症している場合でも、自覚症状がはっきりと出ることは少ないので注意が必要です。知らない間に慢性肝炎となり、慢性肝炎のうちに適切な治療をしないことによって肝硬変や肝がんに進展する可能性も十分にありますので、定期的に経過観察をすることが非常に重要なのです。
7、B型肝炎ウイルスキャリアの場合の対処法(治療法)は?
まずは詳細な血液検査をして、B型肝炎ウイルスの感染の状況を確認する必要があるでしょう。
B型肝炎は基本的に自覚症状がありませんから、詳細な検査をした場合には約10~15%程度の方の肝臓に異常が見つかるとされています。ですから、まずは、定期的に(2~3か月に1回くらい)血液検査を受け、肝臓の状態を確認する必要があります。
そして、以下8.のように健康的で規則正しい生活を送っていただく必要もあるでしょう。
8、B型肝炎ウイルスキャリアの方が生活上注意すべきことは?
まず、ご自身の健康維持という観点では、B型肝炎ウイルスキャリアの方は、お酒をできるだけ控えることが考えられます。アルコールは肝臓に負担となりますし、仮に肝炎を発症していた場合には、飲酒の習慣がある方は病期がより早く進行するとされているからです。
また、過労を避け、適度に運動をして規則正しい生活を心がけることも重要とされています。
標準体重も維持し、まずは、健康的に生活するのが良いでしょう。
他人への感染を予防するという観点からは、カミソリや歯ブラシなどの血液が付着するようなものを他人と共用しないことが重要になります。ただし、通常のスキンシップや入浴、食事を共にすることによって感染することはありませんのでご安心ください。
パートナーがいる方は、パートナーについても血液検査をし、場合によってはワクチンを接種することが考えられます。
9、集団予防接種で感染した場合にはB型肝炎訴訟をすることで給付金をもらえる対象になる?
幼少期の集団予防接種等の際に、注射器を連続使用されたことが原因でB型肝炎ウイルスに持続感染された方は、国に対して損害賠償を求める訴訟を提起し、そのうえで国と和解をして給付金を受け取ることができます。
この制度では、特に症状のないB型肝炎ウイルスキャリアの方にも50万円の給付金が支給されます。また、キャリアの方については、給付金50万円の支給に加えて、定期検査の費用及び母子感染・水平感染を防止するためにワクチンを投与する費用を国が負担することとなります。
さらに、万が一給付金を受けとった後に発症した場合には、当該症状に基づく給付金の金額と既に受け取った金額の差額を受け取ることもできます。
B型肝炎訴訟につきましては、詳しくは「B型肝炎訴訟で給付金を獲得するために知っておくべき7つのこと」で書いていますので、よろしければご覧ください。
まとめ
今回は、B型肝炎ウイルスキャリアに関するご説明を中心に書いていきましたが、参考になりましたでしょうか?
B型肝炎ウイルスキャリアの方は、現在特に症状がないかもしれませんが、健康を維持するためには定期的に経過観察をしていくことが非常に重要になります。B型肝炎給付金が認められれば今後の定期検査費用等を国に負担してもらえることになりますので、キャリアの方にとっても、B型肝炎給付金制度は非常に有用な制度です。前向きに、B型肝炎訴訟を検討されることをお勧めします。