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遺産分割協議のやり直しをするための4つのポイント

遺産分割協議は、やりなおしができるのでしょうか。

遺産の分割は、「こうやって分けるのがベスト」と断言できる方法がないことが少なくありません。
そのときは「ベストの分配をした」と思っていても、後になって「違う方法にしておけばよかった」と後悔することや、「やり直しにして税金を減らしたい」と思うこともあるかもしれません。

そこで、この記事では、

  • 遺産分割をやり直せる具体的なケース
  • 遺産分割をやり直すときの注意点
  • 遺産分割後に新しい遺産が見つかったときの対処方法

について解説していきます。
遺産分割協議について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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1、遺産分割協議はやりなおしをすることはできるの?

遺産分割協議はやり直すことはできるの?

遺産分割協議をやり直すことができるのは、次の2つの場合です。

  • 相続人全員がやり直しに同意しているとき
  • 遺産分割協議に問題があるといえる場合

(1)相続人全員が同意しているときには遺産分割協議のやり直しは可能 

遺産分割協議は、相続人全員の同意に基づいて行われるものですから、相続人全員がやり直しに同意していれば、(何度でも)やり直すことは可能です。

ただし、後に解説するように、遺産分割のやり直しをしたことで贈与税などが発生してしまうことがあります。

(2)遺産分割協議が無効・取消になる場合には当然にやり直し

すでに行われた遺産分割協議が「法律上問題がある」と評価できるときには、すでに行われた遺産分割を「なかったもの」とすることができます。

法律上問題があると評価される場合には、

  • 遺産分割に無効原因がある場合
  • 遺産分割に取消原因がある場合

があります。
無効・取消原因があることで遺産分割協議がやり直しとなったときには、「当初の遺産分割協議はなかったもの」として取り扱われるので、相続に関して発生した税金の申告もやり直しとなることがあります。

①遺産分割が無効となる場合

遺産分割が無効となる場合の典型例は、「相続人全員で遺産分割協議をしなかった場合」です。
故意に一部の相続人を排除した場合はもちろん、調査不足などが原因で一部の相続人が漏れたまま行われた遺産分割協議も無効となります。
被相続人に子が多いケースでは、兄弟間の関係が希薄となる、代襲相続が発生しているといった理由で、相続人漏れが発生しがちです。

相続人の誰かが「錯誤」をして遺産分割協議に同意してしまった場合にも、遺産分割協議は無効となります。
「錯誤のある意思表示は無効」と民法95条が定めているからです。

「錯誤」とは、簡単にいえば「勘違い」のことですが、法的に錯誤といえる場合は、一般の人には正しく判断できない場合が少なくありません。
錯誤無効となる例としては、「東京都の土地だと思って不動産を相続することにしたが、実際には埼玉県の土地だった」という場合が挙げられます(要素の錯誤)。
他方で、「売ったら高くなると思って土地を相続したが、実際には安かった」という場合には、たしかに勘違いではありますが、法的な保護を受ける錯誤とはいえません(動機の錯誤)。

以上のように、錯誤の判断は難しい場合が多いので、「もしかして」と感じたときには、弁護士に相談することをオススメします。

②遺産分割を取り消せる場合

遺産分割を取り消せるのは、

  • 他の相続人に騙されて遺産分割協議に同意した場合
  • 他の相続人に脅されて遺産分割協議に同意した場合

です。

「他人の欺罔行為」に基づいて行った意思表示や、「他人に強迫されてした(強いられた)」意思表示は取り消すことが認められているからです(民法96条)。

③「無効」と「取消し」の違い

「無効」と「取消し」は、遺産分割をやり直せるという点では同じように見えますが、法律的には異なるものです。

無効原因がある場合の遺産分割協議は、「当然に最初からなかったものとする」という扱いになるので、「やり直しは必須」となります(厳密にいえば、遺産分割協議に加わった人に不満がなくてもやり直しです)。

他方で、取消原因がある場合には、取り消すことのできる人(相続人)が「取消しの主張」をしない限り、「遺産分割協議は有効とされたまま」になります。
当然、取消しに反対する相続人も出てくるでしょう。
その場合には、最終的には「取り消す事情があったかどうか」を裁判所で判断してもらうことになるケースも少なくありません。

欺罔行為や強迫行為(と疑われる行為)が行われる遺産分割協議は、そもそも利害関係の対立が激しい場合や、相続人間が不仲である場合が少なくありません。

「遺産分割協議を取り消したい」と考えるときには、早めに弁護士に相談する必要があります。

(3)裁判所を用いて遺産分割協議をしたときにはやり直せない

家庭裁判所で決められた遺産分割の内容については、「確定後」はやり直しができません。
したがって、遺産分割調停となったときには、「納得できない限り」調停に応じるべきではありません。

遺産分割審判の場合には、審判内容に不服があるときには、「即時抗告」を申し立てることができます。
即時抗告は、審判がなされた日(審判所の送達)から2週間以内に遺産分割審判を行った家庭裁判所を管轄する高等裁判所に申立てする必要があります。

高等裁判所は、全国に8カ所あり、以下のように管轄する地域が決まっています。

  • 札幌高等裁判所(北海道(札幌・函館・旭川・釧路)の家庭裁判所))
  • 仙台高等裁判所(青森・秋田・岩手・宮城・福島の家庭裁判所)
  • 東京高等裁判所(東京・神奈川・千葉・埼玉・栃木・群馬・茨城・山梨・長野・新潟・静岡の家庭裁判所)
  • 名古屋高等裁判所(愛知・三重・岐阜・福井・石川・富山の家庭裁判所)
  • 大阪高等裁判所(大阪・京都・滋賀・奈良・兵庫・和歌山の家庭裁判所)
  • 高松高等裁判所(香川・愛媛・徳島・高知の家庭裁判所)
  • 広島高等裁判所(広島・岡山・山口・鳥取・島根の家庭裁判所)
  • 福岡高等裁判所(福岡・大分・佐賀・長崎・熊本・宮崎・鹿児島・沖縄の家庭裁判所)

ただし、高等裁判所に即時抗告をしたからといって、「必ず審判内容が変わる」というわけではありません。

一般的に、即時抗告で審判内容を覆すのは簡単なことではありませんので、相続問題に詳しい弁護士のサポートを受けた方がよいでしょう。

2、遺産分割協議をやり直すときの注意点

遺産分割協議をやり直すときの注意点

遺産分割協議をやり直すときには、特に決まった方法があるわけではありません。
遺産分割協議それ自体が「任意の話し合い」なので、やり方(方式)は相続人が自由に決めることができるからです。

ただし、実際に、遺産分割をやり直す際には、次の点に注意する必要があります。

  • 遺産分割のやり直しによって「贈与税」が発生する場合がある
  • 不動産の遺産分割をやり直すときには「登記」もやり直す必要があることも

(1)贈与税などがかかることがある

「任意」での遺産分割のやり直しは、「最初の遺産分割で財産を得た人から遺産分割のやり直しで財産を得た人」への財産移転というように、法律(特に税法上)では理解されます。
無効・取消原因がない場合には、「すでに行われた遺産分割協議は有効」なので、1度分けた財産を「もう一度分け直す」ことに相続人全員が同意しているに過ぎないと考えるからです。

たとえば、被相続人の不動産を相続人Aが相続すると決めた遺産分割協議の内容を、(任意の)遺産分割協議のやり直しによって「相続人Bが相続する」と新たに決めた場合には、Bは、被相続人から不動産を相続したのではなく、「Aから譲渡を受けた」と理解されることになります。
そのためAからBへの財産移転が「贈与(無償譲渡)」に該当する場合には、贈与税が発生する可能性があります。
また、贈与による不動産取得となった場合には、Bには「不動産取得税」が発生しますし、譲渡の際に利益がでていればAに「譲渡所得税」が発生することもあります。

高額な資産があるケースで遺産分割協議をやり直すというときには、事前に税理士の助言を得ておいた方がよい場合が多いでしょう。

(2)登記をやり直す必要があることも

最初の遺産分割協議の結果に基づいて、すでに不動産の相続登記が行われているときには、登記の手続きをやり直す必要があります。
その場合には、登記手続きにかかる費用(登録免許税など)をさらに負担しなければなりません。

3、遺産分割協議後に新しい財産がみつかった場合はどうしたらよい?

遺産分割協議後に新しい財産がみつかった場合はどうしたらよい?

遺産分割協議は、すべての遺産(相続財産)の帰属先を決めるのが原則ですが、実際には、「後から遺産が見つかった」というケースも少なくありません。

葬儀や他の手続きに対応して慌ただしい状況では、亡くなった人のすべての財産を正確に調査できないということも十分に考えられるからです。

(1)原則的な対処方法

新しい遺産が見つかった場合には、「新しく見つかった遺産のみ」を対象に、再度遺産分割協議を行うのが原則です。

誰も気づかなかった遺産が見つかったからといって「遺産分割協議書をイチからやり直す」ことにはなりません。

(2)新しい財産が見つかったときに事前に備えておくことも重要

新たに遺産が見つかった際には、本来的には「その都度」見つかった遺産について「相続人全員で遺産分割協議をする」ことが原則です。

しかし、「ちょっとした財産」のために、相続人全員が協議をするのは面倒と感じる人もいるかもしれません。
実際にも、5万円程度の「へそくり」が見つかったからといって、遠方に住む相続人まで呼び集めて話し合いをするというのは現実的ではないでしょう。

そこで、最初の遺産分割協議の際には、「今後新たに遺産が見つかった場合」について予め取り決めをしておくことが一般的です。

たとえば、遺産分割協議書に、

  • 新たに遺産が見つかった場合は相続人○○が全てを相続する
  • 新たに見つかった遺産は法定相続分にしたがって相続人各自が相続する
  • 遺産が新たに見つかった場合は全ての相続人が均等に相続する

といった条項を盛り込んでおくことが考えられます。

4、遺産分割協議の内容に不満・疑問があるときには弁護士にご相談ください

遺産分割協議の内容に不満・疑問があるときには弁護士にご相談ください

遺産分割に疑問を感じるケースでは、慎重に対応すべき場合が少なくありません。
遺産分割は、相続人の今後の人間関係に大きな影響を与えてしまうことが多いからです。
実際にも、遺産分割がもめたことがきっかけで、親族間の付き合いが途切れてしまったというケースは、よく見聞きするところです。

「相続さえなければ、こんなことにはならなかったのに」と後悔することがないようにするためにも、遺産分割について、不安なこと、分からないことがあるときには、早めに相続問題に詳しい弁護士に相談することがオススメです。

まとめ

遺産分割協議をやり直すことは可能ですが、余計な税金が発生してしまうなどのデメリットが生じることもあります。
したがって、「別の分配方法の方が得をする」と思ったからといって慌てて対応すると、余計な負担のために、損をしてしまったということもあるかもしれません。

また、遺産分割協議の効果を争うケースでは、大きな相続争いに発展してしまうことも予想されます。
遺産分割協議をやり直したいと思ったときには、行動に移す前に、専門家のアドバイスを受けておいた方が良さそうです。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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