「会社都合退職」と「自己都合退職」。
この2つの言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。しかし、この2つにどのような違いがあるか、どんな内容のことを指しているのかについて説明することができる方は少ないのではないでは。
今回は、
- 会社都合退職と自己都合退職の違い
- 会社から自己都合退職にしてほしいと言われた場合の対処法
- 会社都合退職のメリット・デメリットと注意点
などについてご紹介していきます。
また、こちらの関連記事では仕事を辞めたい方に向けた内容をご紹介しています。様々な理由がある中で仕事を辞めたい…とお悩みの方はあわせてご参考いただければと思います。
目次
1、会社都合退職とは?自己都合退職との違いについて
(1)会社都合退職と自己都合退職
そもそも、「会社都合退職」とか「自己都合退職」という言葉の意味を正確にご存じでしょうか?「実は正確には知らない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
法律上使われる言葉ではありませんが、一般的に「会社都合退職」や「自己都合退職」という言葉は以下のような意味で使われます。
①会社都合退職とは
会社都合退職とは、退職者が雇用保険上の「特定受給資格者」に該当する場合の退職のことをいいます。「特定受給資格者」とは、以下のような人のことを言います。
- 会社側の事情(例えば、リストラや倒産など)でやむなく退職した人
- 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)された人
なお、「特定受給資格者」は、そうでない方と比較してよりよい条件で失業保険給付を受けられます。
②自己都合退職とは
一方、退職者が雇用保険上の「特定受給資格者」にあたらない場合の退職を自己都合退職といいます。具体的には、転職や引越しなど自らの都合による退職です。
(2)会社都合退職の範囲
以下の場合には、会社都合退職(特定受給資格者)に該当します。
- 倒産・大量リストラが原因で離職した場合
- 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)により離職した場合
- 勤務場所・勤務時間・賃金・職種などが労働契約締結時に明示されたものと著しく違っていたことが原因で離職した場合
- 賃金が大幅に減らされた又は未払いが続いたことが原因で離職した場合
- 職場の上司・同僚等からいじめや嫌がらせを受けたことが原因で離職した場合
- 会社からの退職勧奨(退職するように促されたこと)により離職した場合(この場合、早期退職優遇制度等に応募して離職した場合は含まれません)
- 期間の定めのある労働契約が更新され3年以上引き続き雇用されたときや期間の定めのある労働契約を締結した際に当該契約が更新されることが明示されたときに、当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した場合
(3)自己都合退職の範囲
転職等自らの都合で退職する場合や会社で問題を起こし懲戒解雇となってしまった場合など、上記の会社都合退職(特定受給資格者)にあたらない場合には低い条件でしか失業保険を受給することができないず、この場合を便宜上「自己都合退職」ということがあります。ただし、後で詳しくご説明するとおり、一見すると自己都合退職にあたる場合でも、特定の理由に該当するときには、雇用保険法上の「特定理由離職者」にあたり「特定受給資格者」と同様の条件で失業保険を受給することができることもあるので、注意が必要です。
(4)会社都合退職と自己都合退職の違い
ここまでの説明からおわかりのとおり、会社都合退職と自己都合退職の違いは、失業保険の受給条件にあります。失業保険とは、雇用保険に一定期間加入していた人に対して、1日あたり6000円から8000円程度を上限に、直近半年間の月給の50~80%の給付金がハローワークから支給される制度です。自己都合退職か会社都合退職かによって、会社を辞めた後に受給できる失業保険の金額やその期間が違ってきます。自己都合によって退職した場合には、「勝手に辞めたんだから、厚く保障する必要はないよね」と考えられてしまいます。詳細は以下の表をご覧ください。
会社都合退職 | 自己都合退職 | |
最短支給開始日 | 7日後 | 3か月7日後 |
給付日数 | 90~330日 | 90~150日 |
最大支給額 | 約260万円 | 約118万円 |
国民健康保険 | 最大2年間軽減 | 通常納付 |
金額や給付日数の違いもさることながら、最短支給開始日が大きく異なります。自己都合で退職した場合には、次の就職先が決まっていなければ、3か月間は無収入で生活していかなければなりません。ここに自己都合退職と会社都合退職の一番の違いがあると言えるでしょう。
また、会社によっては退職金の支給額に差があり、自己都合退職の場合には会社都合退職の場合よりも減額されることがあります。詳しくはお勤めになっている会社の就業規則や退職金規程を確認してみて下さい。
2、会社都合退職のメリット・デメリット
(1)メリット
①失業保険をすぐに受け取れる
会社都合退職のメリットとしてまず挙げられるのが、上に書いたとおり、失業保険を最短で退職から7日後に受け取れることです。自己都合退職では3か月間は失業保険を受け取れませんから、大きなメリットであるといえます。
②失業保険の給付日数が長い
自己都合退職では最大でも150日間しか失業保険を受け取れないのに対し、会社都合退職であれば、最大で330日間失業保険を受け取れます。
③被保険者期間が1年未満でも失業保険を受け取れる
自己都合退職の場合、最低でも1年以上被保険者として保険料を納めている必要があり、納めていない場合には失業保険を受け取ることができません。これに対し、会社都合退職の場合、被保険者期間が半年以上で失業保険給付の対象になります。
(2)デメリット
前職の退職が会社都合退職の場合、転職が不利になるという話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。率直にいって、そういうことは実際に起こり得ます。
転職の際に、「なぜ前の会社をやめたのか」という質問は避けては通れません。成績不良や、何か問題を起こして普通解雇とされた場合には、面接官に問題のある人物なのではないかと思われかねません。
もちろん、中には全く気にしない面接官もいるでしょう。しかし、一般的に自己都合退職よりも慎重に見極めようとする面接官が多いことは事実です。会社都合退職の場合には、転職面接の際に、退職理由をきちんと説明できるよう入念に準備しましょう。
3、会社から会社都合退職ではなく、自己都合退職にしてほしいと言われた場合の対処法
会社から、会社都合ではなく自己都合退職にしてほしいと言われる場合があります。会社がなぜこのようなことを労働者に対して言うかというと、退職者が会社都合退職にあたった場合、厚生労働省からの助成金をもらえなくなってしまうということが挙げられます。
会社は、「経歴に傷がつく」とか「今後の就職活動に影響が出る」などと言って、自己都合とするように説得してくる場合もあります。しかし、自己都合退職でない場合に自己都合退職とされる理由はまったくないので、ご自身が自己都合退職を望まないのであれば、きっぱり断りましょう。
4、知っておきたい!自己都合退職とされた場合でも会社都合退職扱いにできるケースがある?
先ほど簡単に触れましたが、自己都合退職の場合でも、雇用保険法上の「特定理由離職者」にあたれば「特定受給資格者」と同様の条件で失業保険を受給できます。具体的には、退職理由が以下のいずれかにあたれば、「特定理由離職者」にあたる可能性があるので、ハローワークで失業保険の申請をする際に聞いてみましょう。
(1)体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
(2)妊娠、出産、育児等により離職し、受給期間延長措置を受けた者
(3)父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者
(4)配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者
(5)次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者
- 結婚に伴う住所の変更
- 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
- 事業所の通勤困難な地への移転
- 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
- 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
- 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
- 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
まとめ
今回は会社都合退職と自己都合退職について書いていきましたが、いかがでしたか?参考にしていただき、望まない形で退職となってしまった場合には、皆さまが少しでも厚い保障を受けることができれば幸いです。