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【弁護士が解説】合同会社で相続税は節税できる?合同会社設立のメリットを徹底解説!

【弁護士が解説】合同会社で相続税は節税できる?合同会社設立のメリットを徹底解説!

相続税対策は年を重ねるにつれて関心が高まってくる話題の一つです。特に経営者などそのままでは相続財産が多くなる見込みの方にとっては、特に大きな関心事ではないでしょうか。

そこで今回は、

  • 相続税対策の一つである合同会社とは
  • 合同会社が相続税を節税できる仕組み
  • 合同会社で相続税対策を行うメリット

などを相続トラブルに強いベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。

少しでも多く資産を残したいと考えている方のお役に立てれば幸いです。

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1、合同会社とは

2006年5月1日施行の会社法によって新しく設けられた会社形態の一つです。アメリカの多くの企業が取るLLCLimited Liability Company)という形態をモデルとして導入されました。合同会社は設立するにあたり費用が安く、登記などの手続きも株式会社と比較して簡単なため、大手外資系会社では合同会社の形態を採用する会社も多くあります。

(1)合同会社で相続税を節税できる仕組み

株や不動産などを管理する目的として資産管理会社を設立すると、所得の分散効果を得ることができます。給与や役員報酬という形で収入を家族へ分配することができるため、生前に家族に財産を先渡しすることができ、相続財産を減らし、ひいては相続税も減らす効果が期待できます。

(2)合同会社と株式会社の違いは?

 

合同会社

株式会社

設立費用

6万円~

20万円~

出資者の責任範囲

有限

有限

決算公告義務

なし

あり

①節税効果の違い

節税効果においては、基本的には大きな違いはありません。しかし、株式会社に比べて低コストで設立することができ、配当の分配比率も合同会社の場合は自由に定めることができるなど、相続対策として会社を設立するのであれば、総合的に見て合同会社の方がメリットがあると言えます。

②設立費用の違い

株式会社も合同会社も設立にあたって定款を作成する必要があります。どちらの場合も定款用収入印紙代として40,000円がかかりますが、電子定款にすればこの収入印紙代は不要です。

また、株式会社の場合はこの定款を公証役場で認証してもらわなければならず、その定款認証費用に50,000円がかかりますが、合同会社の場合には認証の必要がないためこの費用がかかりません。

さらに、会社を登記する際に必要な登録免許税は資本金の額によって変わりますが、株式会社の場合は資本金額の0.7%(最低金額150,000円)、合同会社の場合は資本金額の0.7%(最低金額60,000円)であり、合同会社の方が最低金額は低く設定されています。

したがって、株式会社が設立に最低でも200,000円かかるのに対し、合同会社は60,000万円から設立が可能になります。

③運営コストの違い

株式会社には決算公告義務がありますが、合同会社の場合はこの義務がありません。決算公告のための官報掲載費は最低でも約75,000円ほどかかりますが、合同会社はその費用がかからないということです。

また、株式会社の役員は任期(最長10年)ごとに登記が必要ですが、合同会社の社員には任期がありませんので、重任登記は必要なく、役員変更の登記も発生した場合にのみ行えばよいということになりますので、登録免許税といったランニングコストを抑えることができます。

④議決権の違い

株式会社の場合は、出資比率(保有株式数)に比例して議決権を有するのに対し、合同会社は社員1人あたり1議決権を有しています。

⑤利益分配の違い

株式会社では、株式の割合に応じて利益が分配されますが、合同会社の場合には、定款に定めれば出資割合に関係なく自由に分配することが可能です。

⑥経営と所有

株式会社の所有者は株主ですが、会社を運営するのは取締役などの経営者です。これは所有と経営の分離と呼ばれます。一方で、合同会社は所有しているのも経営するのも社員であり、経営と所有が同一人に帰属します。

2、合同会社で相続税対策を行うメリット

設立やランニングコストにおけるメリットについては前述のとおりですが、ここでは相続税など税金に関するメリットをご紹介します。

(1)相続財産は、合同会社の持分か払戻請求権

相続税を少なくするためには、相続財産やその額を減らすことです。

個人で不動産を保有している場合に、相続が開始すると、当該不動産自体が相続財産になりますので、当該不動産の評価額に基づいて相続税が課されます。

一方、合同会社を設立し、合同会社が不動産を保有している場合には、相続財産は合同会社の持分か払戻請求権となり、その評価額に基づいて相続税が課されることになります。一般に合同会社の持分や払戻請求権の評価額は不動産そのものの評価額に比べて低くなることが期待できますので、相続財産全体の額が下がり、結果として相続税も安くなる可能性があります。

なお、合同会社の社員が死亡した場合には、原則として社員は退社となり、相続人は払戻請求権を取得します。定款で社員の死亡時には相続人が持分を承継する旨を定めておけば、相続するのは持分です。払戻請求権よりも持分の方が評価額が低くなる傾向にありますので、定款で持分の承継を定めておくことが重要です。

(2)自身に財産が集中して蓄積するのを避けられる

個人で所有する不動産から賃料を得ている場合、その賃料が蓄積して、それが相続財産となれば将来発生する相続税が高くなります。しかし、合同会社で所有していれば、その所得を合同会社や社員である家族などに分散させることができ、相続財産を増やさずにすみますので、相続税を抑えることができます。

(3)所得の分散が可能

合同会社で不動産を所有している場合は、賃料は会社の収入となります。本来個人で得る所得を合同会社で管理させることにより、所得を分散させることができ税金を抑えることができます。また、家族を合同会社の役員にして役員報酬として家族に給与を支払うことでも所得を分散することができます。

(4)複数の事業の損失と利益を合算することができる

不動産のほか、株式を保有しているなど複数の事業を行っている場合、複数の事業の損失と利益を合算することができます。

例えば不動産所得の黒字が大きくなった場合に、株式など他の事業で赤字が出たときには、その赤字の分だけ黒字を減らすことができます。この損益通算は個人でも可能ですが、法人化することでその対象が広がります。

(5)相続・贈与の手続きがより簡単に

個人で所有する不動産を相続する場合には、不動産の名義を個人から相続人に変更する相続登記を行わなければならず、その際には登録免許税等の費用を支払わなければなりません。

一方で、合同会社で不動産を所有している場合には、相続するのは不動産の持分ですから、社員の変更登記は必要となりますが、不動産の登録免許税より低額に抑えることができます。

3、合同会社設立の注意点

合同会社の設立は相続税対策の一つとして有効な場合がある一方で、気を付けなければならないこともあります。ここでは合同会社の設立にあたり注意すべき点をピックアップしてご説明します。

(1)合同会社の消滅を避けるための対策をしておく

合同会社の社員が1人の場合、その1人の社員が死亡した時点で合同会社は解散してしまいます。そうなってしまうと、相続税対策として十分に機能しませんし、想定していない費用が掛かってしまう可能性がありますので、以下のような手当をしておく必要があります。

①死亡時の持分引継ぎ規定を作成する

定款で予め社員死亡時には相続人に持分を引継ぐ旨を定めておけば、社員が死亡した際に、相続人が新たな社員となりますので、合同会社の解散は避けられます。

②社員を複数人設定する

社員死亡による解散を避ける別の方法としては、推定相続人を社員にしておくなどして、社員を複数にしておくという方法があります。

想定する相続において被相続人となる社員が健在の間は、当該社員が財産管理(合同会社の業務)を行い、利益も多く取得したいという場合には、意思決定をスムーズに行うことを確保するために定款で業務執行社員を定めておくことができますし、利益の配当についてもその割合を定款で定めることができます。

(2)相続財産の評価額に気を付ける

先述したように、被相続人が合同会社の社員である場合の相続財産は、持分か払戻請求権です。

払戻請求権よりも持分の方が評価額が低くなる傾向にありますので、相続するのが持分となるように、定款で社員死亡時には相続人が持分を引き継ぐ旨を規定しておくことが重要です。

(3)スムーズな意思決定を確保する

合同会社では出資比率に関係なく、社員1人1人が意思決定の議決権を1票持つため、出資者である社員同士で意見の分裂が起こる可能性があります。生前は財産管理をスムーズに行いたいとお考えであれば、定款で業務執行社員を定めておくとよいでしょう。

まとめ

残された家族に手間をかけずに少しでも多くの資産を残すためにも、相続に備えた節税対策を予め考えておくことは重要です。不動産などの資産を保有している方は、資産管理会社として合同会社を設立することは節税対策の一つとして有効な手段です。メリットの多い合同会社ですが、原則のままだと、持分が相続できなかったり、一人社員が亡くなった場合にそのまま解散してしまうなど注意しなければならない事項もたくさんあります。相続対策として設立した合同会社が節税対策にならなかったという事態が起きないように、相続対策を最大限生かすためにも、経験豊富な弁護士や税理士に相談することが大切です。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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