
「熟年離婚したいけどみんなどのような原因・理由で熟年離婚しているんだろう・・・」
この記事をお読みの方にはそのようにお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
長年連れ添った夫婦が熟年離婚する原因・理由には、色々あります。
特に多い理由の一つが、夫が定年になり、毎日家に居座るようになったために、今までの自由な行動パターンが制限されるようになったことをきっかけとして、それまでの鬱積した不満が噴出し熟年離婚を決意する方もいらっしゃるようです。
このような原因・理由も含めて、今回の記事では、弁護士としての経験を踏まえて、実際に熟年離婚する原因・理由として実際に存在するものをまとめました。ご参考になれば幸いです。
目次
1、熟年離婚の原因・理由を知る前に~熟年離婚は増えている?熟年離婚の件数
ニュースを聞いたり、あるいは新聞を読んだりして、熟年離婚の件数が増えていることをご存知の方は少なくないと思いますが、実際熟年離婚はどのくらい増えているのでしょうか。
(1)熟年離婚の件数
厚生労働省の統計によると、50歳以上の夫婦が離婚した件数は、1970年は5416件でした。
それが、1990年から2000年にかけて一気に増え始めました。1990年には約2万件だったのが、2000年には約5万7000件になり、20年間でおよそ2.5倍になりました。そして、直近の統計がある2013年には、5万7573件で、近年は6万件前後で推移しています。
驚くべきは、ここ40年ほどで、50歳以上の夫婦が離婚する件数が約10倍も増えたことです。
このように熟年離婚が急激に増えた理由の一つとしては、「3−(12)年金分割制度の整備によって離婚後年金がもらえるようになったこと」で記載しているように、平成19年から年金分割制度が変わり、婚姻期間中に夫がおさめてきた年金の最大2分の1を妻がもらえるようになったこともありそうです。
(2)熟年離婚を切り出すのは夫婦のどちらから?
結婚期間が20年を超えるいわゆる熟年離婚においては、最近では夫から離婚を切り出すケースが増えているものの、割合では妻から離婚を切り出すケースが多いようです。
長年不満を抱えていた妻が、子どもの自立などをきっかけに離婚を決意するというパターンが多いようです。
中には結婚生活をかなり長期間していたにも関わらず離婚する例があります。例えば「突撃隣の晩ごはん」で有名なタレントのヨネスケさんも、ほぼ40年間の結婚生活があったにも関わらず、奥さんから離婚を切り出されたようです。
「40年も我慢してきたなら離婚しなくても・・・」という意見が聞こえてきそうですが、熟年離婚を切り出す妻には、
- 死ぬまで一緒は嫌だ
- 老後は夫にストレスを感じることない生活を送りたい
という想いがあるようです。
2、熟年離婚の原因・理由
では、実際に熟年離婚の原因・理由にはどのようなものがあるかをみていきましょう。
なお、熟年に限らない一般の離婚原因については、「離婚原因ランキングと裁判で認められやすい離婚原因」をご参照ください。
(1)そもそも相手が家にいることがストレス
稼ぎ頭であった夫が定年退職すると、それまでは仕事で全然いなかったにも関わらず、日中からずっと家にいることもあります。
そうすると、それまであまり家にいなかったために気にならなかった些細な生活習慣の違いが妻にとってストレスとなります。
そもそも「日中はできるだけ一人でいたい!夫がいること自体がストレス」という方もいらっしゃいます。そのことが我慢できず熟年離婚を決意するケースもあります。
(2)価値観の違い
熟年離婚の原因・理由として多いものの一つに、価値観の違いが挙げられます。
価値観の違いは、他の熟年離婚の理由とは違って、他人からは分かりにくいことが多いですが、ある意味根本的な考え方が相手と合わないことほどつらいことはありません。
熟年離婚を考える方々が結婚したころは今ほど離婚率が高くありませんでした。そのため、離婚することは世間の目を考えると憚られていました。そのような状況もあってか、実は結婚当初から価値観の違いに気付いていたが、我慢し続けていたということが少なくありません。
しかし、価値観の違いを一生我慢し続けることはできないと考えて離婚に至ることが多々あります。
(3)性格の不一致
熟年離婚には性格が合わないことを理由とするものがあります。
これには、結婚当初から性格が合わないことに気づきながら我慢してきたケースもあれば、結婚期間中に何かのきっかけで相手を尊重できなくなり、それまで許せていた相手の欠点を許せなくなったということもあります。
(4)モラルハラスメント・DVなど、相手方による精神的・肉体的虐待
最近では「モラルハラスメント」という言葉が広く知られるようになり、夫婦間での精神的暴力が目立っています。実際、長年夫から「誰がメシを食わしてやっていると思っているんだ!」「結婚した時はやせていたのにブクブク太ったな」「バカ、アホ」などと言われ続けてストレスを抱えている妻は少なくないようです。
また、精神的暴力に止まらず、夫からの暴力などの肉体的な暴力(いわゆる「DV」)に長年絶えてきた妻でも、夫が定年退職するタイミングなどで、夫と一緒にいる時間が増えることを懸念して熟年離婚を決意する方がいらっしゃいます。
また、肉体的暴力であっても、アルコール依存症などで飲んでは暴れるというケースでも熟年離婚に繋がることがあるようです。
(5)相手方の異性問題(浮気・不倫)
熟年離婚の場合に限らず、離婚に至る原因の一つに相手の不倫があります。
不倫が原因で熟年離婚するケースとしては、長年不倫し続けていたことを知っていたが、子どものために我慢していたケースや、熟年になって初めて相手が不倫をしたことで、長年連れ添ったにも関らず裏切られたことに信頼関係がなくなるケースなどがあります。
前者のように、相手が不倫していることを知っているが子どもや社会的体裁のために我慢し続けてきたような場合には、長年積もりに積もったその精神的ストレスは相当なものになるでしょう。
やはり、「このまま一生我慢し続けたくない」と考える方が熟年離婚を選択するようです。
(6)他に好きな人ができた
夫の不倫とは反対に、特に妻側で好きな人ができたことをきっかけに離婚に至ることもあります。
インターネットの普及などもあり、出会いのきっかけも増えています。やはり、もう愛情の冷めてしまった夫よりも好きな相手といたいと思うものでしょう。
そのような事情もあって、他に好きな人ができたことをきっかけに熟年離婚するケースがあります。
(7)舅・姑と合わない、介護がつらい
妻が舅や姑とソリが合わないというケースは少なくありません。
結婚当初から合わないというケースもあれば、結婚の途中で何かのきっかけで合わなくなったというケースもありますが、いずれにしても共通するのは長い結婚生活で積もり積もった不満が爆発して離婚に至るということです。
(8)相手の親の介護
夫婦の年齢が50歳を超えてくると親の介護の問題が出てきます。
この介護の問題は、熟年離婚の原因になることもあります。そのことを象徴するかのように、「介護離婚」という言葉も生まれました。
自分の実の親を介護するのも大変なことですから、介護をするのが義理の親になればその苦労はより一層大きくなるものです。
とりわけ、結婚生活が20年以上にわたる夫婦の場合ですと、世代の傾向として、夫の親の介護は妻がするという考をされる方が少なくありません。妻が大変な思いをして夫の親を介護しても、そのことに対して夫が無関心で、感謝の気持ちすら示さないようであれば、そのような夫の態度に妻が怒りを持ったり、はたまた不信感を持ってしまうのも理解できます。
介護を理由に熟年離婚した方の中には、妻が夫の親を介護していることに対しての労いの言葉が無かったり、介護を少しも手伝わない夫の態度に失望しつつ、介護の大変さから逃れたいとの思いで離婚を決意した方も少なくないと思われます。
(9)会話がない
会話がなくても一緒にいるだけで幸せだという夫婦もいます。
その一方で、結婚当初は会話があったにも関わらず徐々に減ってくることがあります。夫は会話は今のままで十分だと思っているが、妻は不満を感じていることが少くないのです。
そのようなケースで孤独を感じた妻が離婚を決意することがあります。
(10)浪費・借金
パチスロ、競輪などのギャンブルも遊びの範囲であれば特に問題ないのでしょうが、遊びの範囲を超えて借金をしてまでやるほどのめり込んでしまうと、生活費を圧迫するなど夫婦生活に支障をきたします。
そのような事態に耐えかねた妻が離婚を切り出すケースがあります。
また、夫が飲みにいってばかりで散財していたり、収入に見合わない高級品ばかり買いたがるなどの事情があると妻が離婚を求めることがあるようです。
(11)家事を全くしてくれないなど家庭を顧みない
「お隣さんは旦那さんが家事を手伝ってくれるみたいだが、うちは全く手伝ってくれなくて困る。。。」
そのような不満が積もりに積もり、熟年離婚を決意する妻が少なくありません。
一方、「定年後夫が家事を手伝ってくれるようになったが余計に手間がかかる」ことを不満に感じて熟年離婚を考える方もいるようです。
(12)相手の介護をしたくない
今は大丈夫でも、ゆくゆく相手の介護が必要になる可能性があります。
いずれ介護しなければならない事態を避けるため、早めに離婚するケースがあるようです。
(13)年金分割制度の整備によって離婚後年金がもらえるようになったこと
年金分割の制度ができたことにより、夫の年金の一部を受給することができるようになりました。老後の生活が一定程度保障されることになったのです。
このように、年金分割制度が整備されたことが熟年離婚を後押ししています。
年金分割制度について詳しくは以下の記事をご参照下さい。
関連記事(14)子どもが自立し始めたこと
熟年離婚を後押しする事情として、子どもが自立し始めて手がかからなくなることが挙げられます。
また、子どもが小さいと子どもの養育上親が離婚していることはよくないでしょう。そのようなことを懸念して離婚を我慢する方が、子どもが自立した段階で離婚を選択するケースが多いです。
3、芸能人にみる熟年離婚事情
熟年離婚は、芸能界でも少なくありません。
(1)森進一・森昌子夫妻
歌手の森進一・森昌子夫妻は1986年に結婚し、2005年に離婚しました。
離婚原因については、森昌子さんが芸能界に復帰したことだったり、森進一さんの病気が原因だったり、はたまた子供たちに対する教育方針の違いだったりと、様々なことが言われています。
(2)千葉真一・野際陽子夫妻
俳優の千葉真一・女優の野際陽子夫妻は、1972年に結婚し、1994年に離婚するまで、計22年もの間夫婦生活を送っていました。
離婚原因ついては、夫婦それぞれの芸能活動の拠点についての意見が合なかったことが原因だったと言われています。
(3)坂本龍一・矢野顕子夫妻
歌手・音楽家の坂本龍一・矢野顕子夫妻は、1982年に結婚し、2006年に離婚するまで、計24年の夫婦生活を送っていました。ただ、結婚生活のうち半分以上の14年間が別居状態だったと言われています。
離婚原因については、坂本龍一さん側の女性問題が原因だと言われていたり、はたまた矢野顕子さん側の宗教的な問題が原因だと言われていたりしています。
4、熟年離婚後の生活はどのようになる?
熟年離婚をすると、長年連れ添った夫婦がそれぞれ別の道を歩み始めていくことになるわけですが、熟年離婚後の生活はどのように変わるのでしょうか。
ここでは、男女別にご紹介したいと思います。
(1)男性の場合
男性の場合ですと、金銭的な面で困るということは少ないようです。まだ現役で働いている人の中には、仕事とともに趣味に時間を費やすなど、日々充実し生活を送っている人もいるようです。
ただ、仕事一本だったりして、料理や家事をこれまで全て妻に任せっきりだった人の場合ですと、食事は外食ばかりになってしまったりする方もいます。また、妻に「飲み過ぎ」と言われることもないので、アルコールに依存してしまったりして、結果として、従前よりも健康状態が悪化してしまう方もいらっしゃるようです。
(2)女性の場合
女性の場合、金銭的に困るのではないか・・・
と思われる方が多いようですが、「3−(12)年金分割制度の整備によって離婚後年金がもらえるようになったこと」で記載したように最大で夫の年金を半分もらえますし、離婚時に財産分与で夫の財産をもらうことから、意外とお金に困ることはないようです。
なお、財産分与については以下の記事を参考にしてみて下さい。
関連記事一方で、熟年離婚して金銭的な不安がある場合には離婚の決断は慎重にした方がよいでしょう。
仕事を探そうにも、経験がなかったり、年齢が高かったりするため、正社員として働くことは難しいからです。その場合、パートで働くことになりますが、パートの収入だけだと正直十分な生活費を手にするのは難しいです。
5、熟年離婚をして良かったと思うこと、後悔していること
次は実際に熟年離婚された方の意見から、
- 良かったと思うこと
- 後悔していること
をまとめていきます。
(1)良かったと思うこと
熟年離婚して良かったと思うことは、「3、熟年離婚の原因・理由にはどのようなものがある?」で記載した離婚原因に関する問題が解決することが挙げられます。
例えば、「夫が家にいること自体がストレス」であれば離婚することで夫を気にしなくてもいい悠々自適の生活を送れるようになります。
ちなみに、結婚生活を送っている間自分の気持ちを出さないようにしてつらい結婚生活を送っていた方の場合は、離婚することでそれまでの不満や不安から解放されたと口を揃えて言います。
(2)後悔していること
①孤独感
離婚して一旦は喜びを感じるものの、一人での生活が始まりしばらくすると、一人でいることに孤独感を感じ、寂しさのあまり離婚しなければよかったと思う人もいるようです。
また、長年連れ添ったパートナーと別れたことで相手の大切さに気づいたということもあるようです。
②お金がない
前述のように、もし女性が専業主婦だった場合には、特に離婚後の職探しに苦労することが少なくないようです。
離婚時に十分なお金がないため、いざ仕事を始めようと思っても、年齢が高くなればなるほどなかなか就職できず、結果として収入を得るのが難しい方もいらっしゃるようです。
そのような事態を避けるためにも、十分なお金を確保できるのかを離婚時にきちんと確認しましょう。
③子供や親族に金銭面で迷惑をかけてしまって後悔
離婚するときには、自分一人でも生活できると思って離婚したものの、実際には生活していくのが難しく、子供や親族に金銭的な援助を求める方もいらっしゃいます。
自分一人の収入では生活できず結果として、子供や親族に迷惑をかけて後悔するということもあります。
6、熟年離婚をしても後悔しないための方法
では、熟年離婚をしても後悔しないようにするためにはどのようにしたらいいのでしょうか。
ここでは、熟年離婚をして後悔しないための方法についてご紹介します。
(1)友人や知人との交流をする
先程熟年離婚して後悔した理由の一つに挙げたのが、孤独感でした。
孤独感を感じないためにも、友人や知人と交流する機会を増やして、いざ熟年離婚をしてもご自身の居場所があるようにしておきましょう。
そうすることで、仮に熟年離婚して、長年連れ添ったパートナーと別れて生活をしても、感じる孤独感は軽減されるでしょう。
(2)離婚後の資金をしっかり蓄えておく
また、熟年離婚をして、離婚後の生活をするのにお金が足りないということが少なくありません。
そのため、熟年離婚をしようとお考えの方は、今後ご自身が誰にも頼らずに一人で生活できるように、しっかりお金を貯めておくようにしましょう。
前述しように、年齢が高くなればなるだけ、新たに仕事を探そうしても、年齢の壁が立ちはだかります。
7、ここまでお読み頂き、もし迷われているようであれば・・・熟年離婚するかどうかをもう一度考え直してみる
ここまで説明してお分かり頂けると思いますが、熟年離婚をしようとする場合、離婚後の生活には金銭的な問題はもちろんですが、精神的な面でも大きな負担になることがあります。
もしこの時点で離婚することを決断できていないのであれば、離婚することに慎重になった方がいいかもしれません。
確かに、夫婦生活を長年送ってきた夫婦の場合には、その間に溜まった不満は、そうたやすくは無くならないでしょう。
しかし、場合によっては感情ではなく、損得を考えて、その離婚が本当にご自身にとって最善の策なのかを考えることも大切になるのです。
8、熟年離婚する際の流れ
熟年離婚の場合であっても、離婚するまでの流れについては変わりません。
最初に、離婚するかどうかを話し合い、そこで離婚できる場合もあります(この場合の離婚のことを「協議離婚」と言います。)。
もし、話し合いで離婚できなければ、調停を申し立て上で、離婚することになります(この場合の離婚のことを「調停離婚」と言います。)。調停でも離婚できなければ、最終的には裁判で離婚することになります(この場合の離婚のことを「裁判離婚」と言います。)。
それぞれの離婚方法について詳しくお知りになりたい方がいらっしゃれば以下の記事をご参照下さい。
関連記事熟年離婚の原因・理由まとめ
今回は熟年離婚の原因・理由として主なものを挙げていきましたがいかがでしたでしょうか。現在熟年離婚をお考えの方のご参考になれば幸いです。
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