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微罪逮捕とは?懐中電灯所持で逮捕?日常生活に潜む微罪逮捕の可能性

微罪逮捕

先日、懐中電灯を隠し持っていた男性が逮捕された事件がウェブ上のニュースサイトなどで報じられ、ソーシャルメディア上では“この程度のことで逮捕された”ことに否定的な意見も多数見受けられました。

懐中電灯ぐらいで逮捕されるなら知らないうちに法に触れ逮捕されることもありうるのではないか、という懸念があるようです。

そもそもなぜ、懐中電灯を持っていたくらいのことで逮捕されたのでしょうか。そして、このニュースをきっかけに「微罪逮捕」というものがあることを、皆さんにお伝えできればと思います。ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

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1、微罪逮捕?懐中電灯を携帯しているだけで罪になるのか

微罪逮捕?懐中電灯を携帯しているだけで罪になるのか

まず本件は「軽犯罪法違反」に該当します。軽犯罪法には「正当な理由がなく合かぎ、のみ、ガラス切り、そのほか他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯していた者を拘留又は科料に処する」と定められています。

「拘留」とは、1日〜29日のあいだ収容する刑罰であり、科料とは1000円〜9999円を支払わなければならない刑罰を指します。

本件では、懐中電灯が「他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具」であるとされたのでしょう。また「正当な理由がなく」とあるとおり、正当な理由がある場合──例えば、キャンプのためにバッグに入れていたなど──は問題ありません。

また、「隠して携帯していた者」に限られるため、隠さずにむき出しの状態で携帯している場合も問題ありません。

それではなぜ、男性は逮捕されたのでしょうか。あくまで推測の域を出ませんが、今回のケースは“ある別の目的”のためにおこなわれた「微罪の別件逮捕」の可能性も孕んでいます。

2、警察が捜査に活用する「微罪の別件逮捕」

警察が捜査に活用する「微罪の別件逮捕」

本来、軽犯罪法違反のような軽微な罪の場合は「人の住居、若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り」と、逮捕の要件が厳しく定められています。犯人が逃亡するおそれがあるかどうかは、犯人の挙動などから合理的に判断されます。

したがって、軽犯罪法に違反したとしても、身分証を提示するなどして住所と氏名を明らかにし、逃げるような素振りを見せなければ、その場で逮捕されることはありません。

しかし実際は、別の犯罪の取調べのために、刑事手続を警察段階で終了させる「微罪」として警察都合の判断で「別件逮捕」が行使されることがあります

軽犯罪法では「この法律の適用にあたっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない」と明文化し定めているにもかかわらず、微罪による別件逮捕おこなわれたケースは少なくありません。実際の事例をいくつか紹介します。

(1)覚せい剤の取調べ目的の微罪逮捕

覚せい剤の使用が疑われ職務質問をしたものの使用が発覚せず、軽犯罪法の「浮浪」の罪として逮捕。浮浪とは「生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの」に対する罪です。

このような罪名があることを知らなかった人も多いのではないでしょうか。

この事例での微罪逮捕は尿検査のための令状が出されるまでの時間稼ぎだったのですが、そもそも逮捕された人は就職活動中で浮浪の要件を満たしておらず、尿検査の結果も裁判で証拠として認められず、無罪になりました。

(2)表現抑圧目的かどうかが問題となった微罪逮捕

反戦のビラを自衛隊宿舎の新聞受けに投函したところ、住居侵入罪で逮捕された事例。「表現抑圧目的ではないか」と問題になりましたが、入居者の抗議を受けながら後日再び投函に及んでいることなどから、住民の私生活の平穏が侵害されているとして有罪になりました。

(3)オウム真理教や日本赤軍の事例

そのほか、オウム真理教や日本赤軍の事例では、「路上で唾吐き」「赤信号での横断歩行」「自動車の移動登録の不届」などという微罪で逮捕された事例があります。なかには「転び公妨」という手法もあり、これは警察官がわざと被疑者にぶつかって転び「公務執行妨害」で逮捕するというものです。

少々強引な気もしますが、別件で大事件の被疑者として捜査をしているのなら“背に腹は代えられない”といったところなのでしょうか。

3、もしあなたが不当に逮捕されてしまったら……

予期せず軽犯罪法に違反してしまっても、逃げたり暴れたりしないこと。万が一、不当に逮捕されるようなことがあれば、弁護士を接見に呼んで相談をしましょう

弁護士は、検察官に勾留(逮捕後引き続き身柄を拘束すること)をしないように求めたり、裁判官に勾留を決定しないように求めたり、決定された勾留に対して準抗告(不服申立て)を申し立てるなどして、早期の釈放をめざして弁護活動をおこないます。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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