マイホームを購入する際には、住宅ローンを利用する方が多いことでしょう。
一般的に住宅ローンを組む際は借入額が大きくなるため、保証人が必要になるとお考えの方も少なくないと思います。中には、「誰に保証人を頼めばいいのか」「保証人を頼める人がいない」などと悩んでいる方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、基本的には住宅ローンを組むときに保証人は不要です。とはいえ、保証人が必要となる場合もあることは事実です。
保証人を立てた場合、仮に住宅ローンの支払いが厳しくなったとしても、保証人に迷惑が及ぶことは避けたいと誰しも思うでしょう。
そこで、今回は、
- 住宅ローンに保証人が必要となるのはどんな場合か
- 住宅ローンの保証人に及ぶ可能性があるリスクとは
- 住宅ローンの支払いが厳しくなったときに保証人に迷惑をかけないためにはどうすればいいか
といった問題について解説していきます。
これから住宅ローンの利用をお考えの方のご参考になれば幸いです。
お金を作る全般に関しては、以下の関連記事をご参照ください。
目次
1、住宅ローンを組むのに保証人は必要か?
高額の借入をするときには、通常は保証人が必要となります。事業用ローンを組んだり、奨学金を借りたりするときには保証人を求められるのが一般的です。
そのため、非常に高額な住宅ローンを組むときに保証人が必要と考える方が多いのも無理はありません。
そこで、住宅ローンを組むのに保証人は本当に必要ないのか、不要だとすればその理由は何かということを考えてみましょう。
(1)原則として保証人は不要
一般的に、住宅ローンを組むときに保証人は不要です。
一部の地方銀行や信用金庫などでは例外的に保証人を求められることもありますが、原則として不要です。
その理由は、主に2つあります。
まず1つめは、購入するマイホームそのものが住宅ローンの担保となることにあります。
住宅ローンを組むときには通常、購入するマイホームに債権者である金融機関が抵当権を設定します。
債務者がローンを支払えない場合、金融機関は抵当権を実行してマイホームを売却することができます。
金融機関は、その売却益を住宅ローンの残債務に充当することができるのです。
2つめの理由として、住宅ローンの保証人はそう簡単に見つからないという点が挙げられます。
住宅ローンによる借入額は、数千万円に及ぶのが普通です。
数百万円の借金ならともかく、数千万円もの借金の保証人になってくれる人は、そう簡単に見つかるものではありません。
金融機関は、利益を上げるために住宅ローンという商品を提供しています。
しかし、保証人が見つからないために住宅ローンを利用できない人が多いのでは、金融機関も商売になりません。
そこで、金融機関としては、住宅ローンの債務者に保証人を立ててもらう代わりに、保証会社と契約してもらうことを条件に融資を行っているのです。
(2)保証会社へ支払う保証料が必要
住宅ローンの保証会社とは、債務者がローンを支払えなくなったときに残債務を債務者に代わって債権者である金融機関に一括返済(「代位弁済」といいます。)した上で、その後は自らが債権者となって債務者から代位弁済金を回収する業者のことをいいます。
債務者は、住宅ローンを組む際に保証会社との間で「保証委託契約」と「抵当権設定契約」を結びます。保証委託契約を結ぶと、保証会社に「保証料」を支払う必要があります。
保証料の支払い方には「内枠方式」と「外枠方式」の2種類があります。
①内枠方式
内枠方式は、住宅ローンの金利に保証料を上乗せする形で毎月支払っていく支払い方法です。
この方式には、多額の保証料を一括で支払う必要がないというメリットがありますが、最終的に支払い額が大きくなってしまうというデメリットがあります。
保証料率の相場としては、0.2%程度の場合が多いようです。つまり、住宅ローンの金利に0.2%をプラスした金額を毎月支払っていくことになります。
最終的な支払い額は、借入額や返済期間によって異なります。
仮に3,000万円の住宅ローンを組み、内枠方式で0.2%の保証料を毎月支払った場合、保証料の総額は返済期間25年で約63万円、35年で約99万円になります。
②外枠方式
外枠方式は、住宅ローンを組む際に一括で保証料を支払ってしまう方法です。
外枠方式による保証料率の相場は、借入額の2%程度の場合が多いようです。
3,000万円の住宅ローンを組み、2%の保証料を外枠方式で支払う場合の保証料額は60万円となります。
一般的には、外枠方式で支払う方が保証料を軽減できる場合が多いですが、借入額や返済期間によっては内枠方式の方が低くなる場合もあります。
利用する前に、シミュレーションしてみることが大切です。
2、住宅ローンで保証人が必要となる場合
基本的に住宅ローンに保証人は不要であることと、その理由をご説明しました。
それでも、場合によっては保証人が必要となる場合もあります。
ここでは、どんな場合に保証人が必要になるのかということと、その理由をご説明します。
(1)保証人を求められる理由
金融機関は住宅ローンの契約時に「マイホームそのもの」と「保証会社」という担保をとっています。
これが、基本的に保証人が不要である理由です。
裏を返せば、上記の2つでも担保として不足している場合には、保証人を求められることになります。
例えば、債務者の収入が不安定な場合、審査で落とされることもありますが、保証人を立てることを条件に審査を通過することもあります。
また、マイホームが共有名義の場合は、ローンの返済が滞っても共有者の承諾を得なければその物件を売却して残債務を回収することができません。
この場合、共有者を保証人にしなければマイホームを担保にとった意味がありません。
それでは、保証人を求められる主なケースを具体的にご紹介しつつ、保証人が必要な理由をさらにご説明していきます。
(2)保証人が必要となる6つのケース
住宅ローンで保証人が必要となる主なケースとして、以下の6つが挙げられます。
①収入を合算して住宅ローンを組むケース
1人の収入では希望する金額の借入れができないため、複数人の収入を合算して1本の住宅ローンを組む場合があります。
夫婦や親子などの収入を合算するケースが多いです。
契約は1つなので、主債務者になるのは1人です。
しかし、債権者としては合算者の支払い能力も見込んで融資をしているので、合算者にも返済義務を負ってもらう必要があります。
そのため、合算者を連帯保証人にすることを求められます。
例えば、夫婦の収入を合算して住宅ローンを組み、夫を主債務者とした場合は、妻を連帯保証人とすることが必要です。
なお、「連帯保証人」は通常の保証人とは異なり、主債務者と同じ責任を負う保証人のことです。
通常の保証人は債権者から請求されたときに「先に主債務者に請求してください」と言うことができますが、連帯保証人は主債務者よりも先に請求を受けても支払いを拒否できないという違いがあります。
②ペアローンのケース
収入合算による住宅ローンによく似たケースで、「ペアローン」というものがあります。
ペアローンとは、複数人が1本のローンを契約するのとは異なり、各人がそれぞれ別のローンを組むことをいいます。
収入を合算するのではなく、借入額を合算してひとつのマイホームを購入することになります。
ペアローンの場合、債権者としては両方のローンを遅滞なく返済してもらう必要があるため、それぞれのローンの主債務者がお互いにもう一方のローンについても返済義務を負ってもらう必要があります。
この場合、保証人というよりはお互いが連帯債務者になることを求められることが通常です。
例えば、夫がAローンを組み、妻がBローンを組んでひとつのマイホームを購入する場合、夫がBローンの連帯債務者に、妻がAローンの連帯債務者になることが必要です。
連帯債務者とは、「保証人」としてではなく、主債務者が負担する債務を同時に「債務者」として負担する人のことです。
「主債務者」という呼び方も正確ではなく、上の例ではAローンにおいてもBローンにおいても、夫と妻が2人とも「連帯債務者」となります。
実務においては、連帯保証人の場合は単なる保証人に近い扱いを受けますが、連帯債務者は主債務者としての扱いを受けるので、非常に重い責任を負うことになります。
③共有名義で物件を購入するケース
マイホームを購入するとき、所有権を夫婦の共有名義にすることもよくあります。
この場合、住宅ローンを夫の単独名義で契約すると、返済が滞ったときに債権者がマイホームを売却するためには共有者である妻の承諾をとらなければなりません。
これではマイホームの担保価値が十分でないため、妻を住宅ローンの連帯債務者にすることを求められます。
④土地と建物の名義が異なるケース
親が所有する土地の上に子ども名義の住宅を建てるというように、土地と建物の名義が異なるケースも少なくありません。
この場合、債権者としては、子どもの住宅ローンの返済が滞ったときに土地と建物をセットで売却することができなければ、担保価値が十分ではありません。
そのため、親を子どもの住宅ローンの連帯債務者にすることを求められます。
⑤収入が少ない・勤続年数が短いケース
借入額に比して年収が少ない場合は、将来の返済に不安があるとみなされます。
そのため、「マイホームそのもの」と「保証会社との契約」に加えて連帯保証人を立てることを求められます。
勤続年数が短い場合も、収入の安定性に不安があるとみなされるため、連帯保証人を求められるケースが多くなっています。
この場合、収入の金額や安定性を担保する必要があるので、それなりの収入がある人が連帯保証人として求められます。
したがって、専業主婦の妻や年金暮らしの親ではなく、親族や知人の中から連帯保証人を探さなければならない場合もあります。
⑥自営業者のケース
自営業者は、たとえ十分な収入があっても、年ごとに収入に波がある場合が多いため、やはり収入の安定性に不安を持たれがちです。
したがって、上記⑤のケースと同様、それなりの収入がある人を連帯保証人として立てることを求められる場合が多いです。
3、住宅ローンの保証人に及ぶおそれのあるリスク
住宅ローンに保証人を立てた場合、できる限り保証人に迷惑をかけたくないところです。
そこで、保証人にどのようなリスクが及ぶ可能性があるのかみておきましょう。
(1)主債務者の死亡
ほとんどの金融機関の住宅ローンでは、契約時に団信(団体信用生命保険)へ加入することになります。
団信とは、住宅ローンの契約者が死亡するなど一定の要件を満たしたときに、その時点における住宅ローンの残債務と同額の保険金が支払われるものです。
したがって、主債務者が死亡した場合はその保険金で住宅ローンが返済されるのが一般的です。
ただし、主債務者に持病がある場合は団信に加入できないか、加入できても保険料が割高になってしまいます。
団信への加入不要で契約できる住宅ローンもありますが(フラット35)、主債務者が死亡すると遺族に残債務が相続されます。遺族が残債務を返済することができない場合は、相続放棄をすることができますが、その場合はマイホームも手放すことになってしまい、その後、連帯保証人が残債務の請求を受けることになります。
(2)主債務者が自己破産
住宅ローンの主債務者が自己破産をすると、連帯債務者や連帯保証人が残債務の返済請求を受けます。
自己破産手続によってマイホームは処分されてしまうので、連帯債務者はマイホームを失った上に残ったローンの返済をしていかなければならないことになります。
(3)主債務者と離婚
夫を主債務者、妻を連帯保証人として住宅ローンを組んだ後に離婚した場合、妻はその後も連帯保証人としての責任を負い続けなければなりません。
夫がローンの返済を続けている限りは問題ありませんが、夫の返済が滞ると妻が返済請求を受けることになります。
慰謝料や養育費の代わりに妻子がマイホームに住み続けて、夫がローンの返済を継続するケースもよくあります。この場合に夫の返済が滞り、妻も返済できなければ妻子がマイホームから追い出されることになってしまいます。
4、住宅ローンの保証人から外す方法
以上のように、住宅ローンの保証人には多大な迷惑がかかってしまうおそれがあります。
そのため、できれば保証人を外したいと考える方も多いことでしょう。
そこで、住宅ローンの保証人から外す方法を考えてみましょう。
(1)一括繰り上げ返済をする
最も確実に保証人から外す方法は、残債務を一括繰り上げ返済することです。
親族や知人などで頼れる人がいれば、その人から借りて住宅ローンを完済してしまえば保証人に迷惑をかける心配はなくなります。
通常は、返済資金を提供してくれた人に返済していく必要がありますが、金利や抵当権の負担から免れることができるというメリットもあります。
問題は、残債務を一括で返済できるほどの資金を提供してくれる人が見つかるかどうかです。
元金が残り少なくなっていれば見つかる可能性もあるでしょうが、あまり減っていなければ現実的な方法とはいえないかもしれません。
(2)別の保証人を立てる
別の保証人を立てることができれば、元の保証人を外すことができますが、保証人の変更は自由にできるわけではなく、債権者の同意を得なければなりません。
離婚するに際して連帯保証人を妻から親や兄弟などの親族に変更する場合、多少は債権者の理解を得られやすくなりますが、それでも審査は必要です。
新たな保証人候補者にそれなりの収入がなければ、保証人の変更は認められません。
したがって、やはり頼れる人を見つけることができるかどうかが問題となります。
(3)借り換えをする
保証人不要の他社ローンに借り換えをすれば、元の保証人を外すことができます。
ただし、元の契約で保証人を求められたわけですから、借り換え先の金融機関でも保証人を求められる場合も多いでしょう。
しかし、残元金がそれなりに減っていたり、収入が増えていたりする場合は、保証人なしで審査を通過できる可能性も十分にあります。
状況次第ではありますが、他社に借り換えを申し込んでみるのも良いでしょう。
5、住宅ローンを払えないときに保証人に迷惑をかけない方法
保証人を外す方法をご説明しましたが、現実にはそう簡単に保証人を外せるものではありません。保証人を外せない間に住宅ローンの返済が厳しくなってしまうと、いよいよ保証人にかかる迷惑が現実になってしまいかねません。
住宅ローンを支払えなくなっても、保証人に迷惑をかけなくてすむ方法はあるのでしょうか。
(1)任意整理
住宅ローン以外にもカードローンなどの借金があり、その返済の負担のために住宅ローンの返済が厳しくなっている方も少なくないでしょう。
そんなときは、住宅ローン以外の借金を任意整理することによって負担を減らせば、住宅ローンの返済がしやすくなります。
任意整理の場合は、どの債権者からの借金を整理するのかを自由に選ぶことができます。
したがって、一般の借金を任意整理しても住宅ローンには影響がなく、そのまま返済していくことができます。
住宅ローンの返済を従来どおりに続ける限り、保証人に迷惑が及ぶことはありません。
(2)個人再生
任意整理をしても返済しきれないほどに借金が膨らんでいる場合は、住宅ローン特則付き個人再生をすることでマイホームを手放さずに負債を整理することができます。
個人再生は、住宅ローンの返済を従来どおりに続けますので、基本的に保証人に迷惑が及ぶことはありません。
(3)自己破産
主債務者が自己破産をすると、連帯保証人が請求を受けることになりますが、最後の手段としては自己破産も有効です。
自己破産によって負債を免除された人が、手続き終了後に自発的に返済することは自由に認められます。
したがって、返済不能なまでに負債が膨らんでしまった場合は、自己破産で負債をゼロにした上で、連帯証人に対して返済資金を支払っていくこともできます。
なお、自己破産をする前にマイホームを任意売却すれば住宅ローンを完済できたり、返済可能な程度に残債務を減らせて自己破産を回避できることもあります。
その場合、連帯保証人に迷惑がかかることはありません。
住宅ローンの返済が厳しくなったら、弁護士に相談して、マイホームの任意売却も視野に入れて正しい債務整理方法をアドバイスしてもらうことが大切です。
まとめ
多くの場合、住宅ローンに保証人は不要です。
したがって、万が一、住宅ローンを支払えなくなってもマイホームを失うことはありますが、家族や親族に返済の負担が及ぶことはありません。
例外的に保証人を求められることもありますが、得てして住宅ローンの返済に不安があるケースほど保証人が必要になるものです。
保証人を立てた場合、迷惑をかけないためには早めに対処することが重要です。
住宅ローンの返済が厳しくなり、保証人との関係で不安がある場合は、お早めに弁護士にご相談なさることをおすすめします。