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礼拝所不敬罪とは?該当する行為や刑罰、罪に問われたときの対処法

礼拝所不敬罪

礼拝所不敬罪とは、墓地や寺社などで公然と不敬な行為をしたときに成立する犯罪です。

あまり聞き慣れない犯罪かもしれませんが、礼拝所不敬罪には罰金刑のみならず懲役刑・禁錮刑も法定されているため、決して「軽い犯罪」とはいえません。
また、有罪判決を回避できたとしても、礼拝所不敬罪の疑いで刑事手続きに乗せられた時点で実生活にさまざまな支障が生じることもあるので、迅速な対応が不可欠です。

そこで今回は、

  • 礼拝所不敬罪の構成要件と法定刑
  • 礼拝所不敬罪で検挙された具体例
  • 礼拝所不敬罪の疑いをかけられたときの流れ・対処法

などについて、弁護士が分かりやすく解説します。
「墓地で遊んでいたら警察に通報されて注意された」「お寺で夜遊びしていたら住職に咎められた」など、礼拝所不敬罪での刑事訴追の危険性に晒されて不安を抱えている方の手助けになれば幸いです。

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1、礼拝所不敬罪とは

礼拝所不敬罪とは、刑法典の「礼拝所及び墳墓に関する罪」に掲げられている犯罪の一つです。

まずは、礼拝所不敬罪の概要について解説します。

(1)該当する行為(構成要件)

礼拝所不敬罪は刑法188条1項に規定されており、その構成要件は大きく分けて以下の3点です。

  • 神祠・仏堂・墓所その他の礼拝所に対し
  • 公然と
  • 不敬な行為をした者

①神祠・仏堂・墓所その他の礼拝所

礼拝所不敬罪の客体は「神祠・仏堂・墓所その他の礼拝所」です。

神祠(しんし)とは、神を祭った場所のことで、その造りや大小は問いません。

仏堂とは、仏を祭った場所のことで、その造りや大小は問いません。

墓所とは、死体あるいはその一部、遺骨、遺品を埋葬・安置して死者を記念祭祀する場所のことです。
その他の礼拝所とは、神祠、仏堂、墓所以外で一般公衆が宗教的崇敬をささげる場所のことです。
たとえば、キリスト教の教会やイスラム教のモスクはこれに当たります。
また、一般的な宗教感情によって崇敬の対象とされている場所であれば既存の宗教と関係のない施設でも「その他礼拝所」に含まれます。
たとえば、原爆慰霊碑やひめゆりの塔、道端に置かれたお地蔵さん、しめ縄を巻かれた神木も礼拝所不敬罪の保護対象です。

ただし、社務所や庫裏といった礼拝施設に付属する場所・建物は礼拝所不敬罪の保護対象には含まれません。
これらの施設に無断で侵入し、適切ではない行為に及んだ場合には、礼拝所不敬罪ではなく建造物侵入罪などで処断されることになるでしょう。

②公然と

礼拝所不敬罪が成立するのは、神祠・仏堂・墓所に対する不敬な行為が「公然と」行われたときです。

礼拝所不敬罪における「公然」とは、不特定または多数の人が覚知できる状態のことを言います。
たとえば、お盆でお墓参りに多数の人が訪れているなか、お供え物を墓石に投げつけて回った場合には、不敬な行為が多数の人の目に晒されていると言えるので、「公然と」の要件を満たすと言えるでしょう。

なお、礼拝所不敬罪の「公然と」の要件を満たすには、不特定又は多数の人が覚知できる可能性があれば足り、その場に不特定または多数の人が現に存在している必要はありません。具体例については後述します。

③不敬な行為

礼拝所不敬罪は、神祠・仏堂・墓所に対して公然と「不敬な行為」が行われたときに成立します。

不敬な行為とは、一般人の宗教的風俗上の感情を害する行為、尊敬又は神聖を害すべき行為のことです。言語によると動作によるとを問いません。

たとえば、仏像に落書きをする、墓石を押し倒す、土足厳禁の仏殿内に靴を履いたまま上がりこむというように、礼拝所や礼拝の対象物などを損壊・除去・転倒・汚損する行為などはこれに該当しますし、仏像などに侮辱的な言葉を浴びせるような行為もこれに該当します。

(2)罰則

礼拝所不敬罪の法定刑は、6カ月以下の懲役若しくは禁錮又は10万円以下の罰金と定められています。

初犯で犯行の態様が軽微であれば、処罰されるとしても罰金刑となる可能性が高いですが、被害状況が深刻で相手方と示談交渉が一切まとまらない状況だと初犯でも懲役刑のリスクに晒されます。
この意味では、礼拝所不敬罪の刑罰は決して軽いものとは言えないでしょう。

(3)処罰される理由

神祠・仏堂・墓所その他の礼拝所に対する不敬な行為が「礼拝所不敬罪」という犯罪として特別に処罰対象にされるのは、「国民の宗教的自由、死者に対する敬虔・尊崇の感情」というものを保護する必要があると考えられているからです。

たとえば、墓地に侵入して他人の墓石を押し倒したとき、もし礼拝所不敬罪という犯罪類型が存在しなければ、建造物等侵入罪及び器物損壊罪の嫌疑で犯人は刑事訴追されるでしょう。
しかし、「墓地に侵入して墓を壊す行為」にはそれ以上の違法性があると感じるのが一般的な心情でしょう。

そこで、この「宗教的な感情、死者を追悼する気持ち」という一般的な人間なら当然抱くであろう心情を法的に保護するために、礼拝所不敬罪という犯罪が定められているのです。

2、実際に礼拝所不敬罪で処罰された事例

実際に礼拝所不敬罪で処罰された事例

礼拝所不敬罪は聞き慣れない犯罪なのでマイナーな事件のようにも思われがちですが、実は、礼拝所不敬罪の検挙数は少なくありません。

実際に、礼拝所不敬罪で処罰された事例を紹介します。

(1)墓所で放尿するポーズをとったケース

多数の参拝者の出入りがある共同墓地内において、恨みのある他人の墓所の入り口で悪口を言いながら放尿するポーズをとった行為(実際には放尿していない)について礼拝所不敬罪の成否が問題となりました。

本件の争点は、「他人の墓所で放尿のポーズをとっただけの行為」が礼拝所不敬罪の「不敬な行為」という構成要件を満たすのかという点です。

確かに、実際に墓石に対して放尿した場合には明らかに礼拝の対象物を汚損しているので「不敬な行為」に該当すると考えられますが、「放尿のポーズをとっただけ」なら対象物が汚損されたわけではないので「不敬な行為」への該当性は否定されるかのようにも思えます。

しかし、そもそも礼拝所不敬罪の保護法益は「国民の宗教的崇拝、死者に対する尊敬の感情」です。
実際に放尿が行われなくても、墓石に向かった放尿のポーズをとるだけで、それを目にした人の墓所に対する崇敬の念が著しく害されることは言うまでもないでしょう。

したがって、墓所で放尿するポーズをとっただけでも礼拝所不敬罪が成立すると判断され、有罪判決が下されました

参照:東京高裁昭和27年8月5日判決

(2)墓碑等を押し倒した事例

午前二時、当時通行人のいない共同墓地で墓碑を押し倒した行為について、礼拝所不敬罪の成否が問題となった事案です。
共同墓地は、県道に繋がる村道に近接しており、他人の住家も遠くない位置に散在する立地条件にあります。

本件の争点は、犯行当時誰もいない状況で行った不敬な行為が、礼拝所不敬罪の「公然と」の要件を満たすのかという点です。

確かに、「公然と」を満たす典型的な状況は、不特定または多数の人に目撃されるなかで不敬な行為に及んだ場合が想定されます。

しかし、「墓碑が故意に倒されている」という結果自体を目撃するだけで、一般的な人が抱く墓所に対する崇敬の念が著しく害されるのは当然でしょう。
そうである以上、「人が見ている状況で墓碑を倒す行為」と「人が見ていない状況で墓碑を倒す行為」との間に違法性の違いがあるとするのも相当ではありません。

そこで、最高裁判所は、礼拝所不敬罪における「公然と」を、「不特定または多数人が覚知できる状態」と理解する判断を下しています。
これにより、犯行当時に誰も見ていなくても、不敬な行為の結果を第三者が認知できる状態であれば礼拝所不敬罪が成立することになります。

参照:最高裁決定昭和43年6月5日

(3)墓石上に裸の女性を乗せて撮影したケース

都内の霊園において、墓石の上で裸の女性にあぐらをかかせてヌード撮影をした行為について礼拝所不敬罪の成否が問題となった事例です。

著名な写真家による犯行で、被告人は芸術的創作行為の一環として本件の行為に及んだと主張しています。

しかし、礼拝所不敬罪の保護法益は「国民の宗教的崇拝、死者に対する尊敬の感情」であるところ、墓石の上に裸体の女性にポージングさせる行為は明らかに宗教的心情を害していると言えるでしょう。

本件では、礼拝所不敬罪の他に公然わいせつ罪(刑法第174条)でも略式起訴され、30万円の罰金刑で確定しています。

参照:「篠山紀信氏を略式起訴…礼拝所不敬罪」日刊スポーツ

3、肝試しや酒盛りでも礼拝所不敬罪が成立する?

肝試しや酒盛りでも礼拝所不敬罪が成立する?

「墓地などでの不敬な行為」が礼拝所不敬罪の処罰対象ですが、子どもの頃は墓地で肝試しをしたり、地域によってはお墓の前で宴会をしたりすることもあるでしょう。

そこで、肝試しや酒盛りと礼拝所不敬罪の関係について解説します。

(1)霊園等で肝試しをした場合

「霊園やお墓で肝試しをする行為」自体は日本では珍しいことではありません。
この意味では、「常識的な範囲の肝試し」なら、国民の宗教的感情をただちに害するものとは考えにくいので、礼拝所不敬罪は成立せず不可罰になると考えられます。

ただし、肝試しがエスカレートして墓石を倒してしまったり、悪ふざけで墓碑に向かって放尿したりすると、「常識的な肝試し」の範囲を超えるので、礼拝所不敬罪や器物損壊罪、建造物等侵入罪などの罪に問われる可能性があるでしょう。

(2)神社の境内等で酒盛りをした場合

沖縄などでは地域の風習として墓前で酒盛りをすることがありますし、催事として神社の境内で宴会が開催されることもあるでしょう。
このように、先祖供養や追悼行為として広く根付いている場合には、神社の境内などで酒盛りをしても礼拝所不敬罪は成立せず不可罰です。

ただし、風習や地域の慣習から逸脱するような態様の酒盛りが行われた場合や、盛り上がりが過ぎて仏像を壊してしまったりした場合には、礼拝所不敬罪の処罰対象になる可能性があります。
「国民感情・地域の風習から逸脱したかどうか」が礼拝所不敬罪の成否を分けると言えるでしょう。

4、礼拝所不敬罪と同様の理由で処罰される他の犯罪

礼拝所不敬罪と同様の理由で処罰される他の犯罪

刑法典の「礼拝所及び墳墓に関する罪」には、礼拝所不敬罪以外にも以下の犯罪が規定されています。
これは、礼拝施設等に対する不敬な行為以外にも「国民の宗教的崇拝、死者に対する尊敬の感情」を害する行為が存在するからです。

  • 説教等妨害罪
  • 墳墓発掘罪
  • 死体損壊等罪
  • 墳墓発掘死体損壊等罪

(1)説教等妨害罪

説教等妨害罪とは、説教、礼拝、葬式を妨害したときに成立する犯罪類型のことです(刑法第188条2項)。
説教等妨害罪の法定刑は1年以下の懲役若しくは禁錮又は10万円以下の罰金と定められています。

説教とは、宗旨・教義の解説のことです。

礼拝とは、神仏等に宗教的尊崇心を捧げる行為を指します。

葬式とは、死者を葬る儀式のことです。

妨害とは、手段・方法を問わず、説教などに支障を生じさせる行為を指します。現に説教などが阻止された結果までは必要とされません。

なお、説教等妨害罪で保護されるのは宗教的儀礼と結びついた説教などに限られます。
たとえば、僧侶の講演会を妨害する行為は説教等妨害罪には該当せず、偽計業務妨害罪・威力業務妨害罪などの成否が問題となります。

(2)墳墓発掘罪

墳墓発掘罪とは、墳墓を発掘する行為を対象とする犯罪のことです(刑法第189条)。
法定刑は2年以下の懲役と定められています。

墳墓とは、人の死体あるいはその一部・遺骨・遺品などを埋葬して記念祭祀する場所のことです。
時代の経過とともに礼拝の対象から歴史的遺産に変化した「古墳」は、墳墓発掘時の「墳墓」には該当しません(大判昭和9年6月13日)。

発掘とは、墳墓の覆土を除去したり、墓石などを破壊・解体して墳墓を損壊したりする行為を指します。
発掘の結果、棺桶・遺骨・死体などが外部に露出することまでは要しません(最決昭和39年3月11日)。

(3)死体損壊等罪

死体損壊等罪とは、死体、遺骨、遺髪、棺に納めている物を損壊・遺棄・領得したときに成立する犯罪のことです(刑法第190条)。
死体損壊等罪の法定刑は3年以下の懲役と定められています。

損壊とは、死体等を物理的に損傷することです。医師が行う死体の解剖や臓器提供手術なども死体損壊等罪の構成要件を満たしますが、これは死体解剖保存法や臓器移植法などの法令に基づいて行われているため違法性が阻却されることとなり、犯罪は成立しません。

遺棄とは、習俗上の埋葬等とみられる方法によらないで死体等を放棄することです。

領得とは、死体等の占有を取得することを指し、買受ける行為も含まれます。

(4)墳墓発掘死体損壊等罪

墳墓発掘死体損壊等罪とは、墳墓発掘罪を犯したうえで、死体・遺骨・遺髪・棺に納めている物を損壊・遺棄・領得したときに成立する犯罪のことです(刑法第191条)。
法定刑は3カ月以上5年以下の懲役と定められています。

墳墓発掘死体損壊等罪は、墳墓発掘罪と死体損壊等罪の結合犯で、墳墓発掘罪の犯人が死体損壊等罪を犯した場合にのみ成立する犯罪です。
したがって、たとえば、墳墓発掘罪の犯人から死体等を買い受けても墳墓発掘死体損壊等罪は成立せず、死体損壊罪が成立するに留まります。

5、礼拝所不敬罪による刑事事件の流れと対処法

礼拝所不敬罪による刑事事件の流れと対処法

礼拝所不敬罪は比較的マイナーな犯罪であり、法定刑は「6カ月以下の懲役若しくは禁錮又は10万円以下の罰金」と一見軽微にも見えますが、嫌疑をかけられて刑事手続きが進行すると、被疑者・被告人にはさまざまなリスクが発生します。

そこで、礼拝所不敬罪の疑いをかけられたときの刑事手続きの流れと、できるだけ処分内容を軽くするための対処法について解説します。

(1)任意の事情聴取

礼拝所不敬罪の疑いを持たれた場合には、警察などの捜査機関から任意の事情聴取を求められるのが一般的です。

任意の取り調べの後、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されると逮捕手続きに移行する可能性がありますが、その後勾留までされてしまうと長期間身体拘束されることとなり社会生活にさまざまな支障が生じかねません。

したがって、礼拝所不敬罪の嫌疑をかけられたときには、任意聴取の段階で被害者との間で示談交渉をまとめる、任意の取り調べには誠実に対応して逃亡の恐れ、罪証隠滅の恐れがないことをアピールするなどの方法によって、身体拘束されないように尽力することが重要です。

(2)逮捕・勾留

礼拝所不敬罪の疑いで逮捕されると、警察で48時間、検察で24時間身柄拘束付きの取り調べを受けます。
また、さらに身柄拘束を続けて取り調べる必要があると判断されると、原則10日間、最大で20日間勾留されます。

逮捕・勾留期間中は留置場や拘置所に収容されるので、会社・学校に通うことはできません。
また、外部と自由に連絡を取ることも難しくなります。

したがって、逮捕・勾留段階に移行した場合には、できるだけ短期間に身柄解放を実現するための防御活動が重要だと言えるでしょう。
たとえば、捜査機関の取り調べには真摯な姿勢で反省の態度を示す、被害者との間で示談交渉を成立させるなどの対処法が挙げられます。

(3)起訴・不起訴の決定

勾留期間が満了するまでに、検察官が起訴・不起訴を判断します。

起訴されると、公開の刑事裁判にかけられるのが原則です。
ただし、礼拝所不敬罪の場合には罰金刑があり得るので、略式裁判に付されることもあります。
この場合、公開の裁判ではなく書面のやり取りのみで手続が終了します。
不起訴処分が下された場合は、その時点で事件は終了し、前科はつきません。

したがって、礼拝所不敬罪で逮捕・勾留された場合には、不起訴処分獲得に向けて防御活動に尽力する必要があると考えられます。
特に、被害者との間で示談が成立しており、初犯で反省の態度を示していれば再犯の可能性が低いと判断されるので、不起訴処分の獲得が期待できます。

(4)刑事裁判

起訴されると、刑事裁判が開かれ、最終的に判決が言い渡されることになります。
日本の刑事裁判は有罪率がかなり高いので、起訴処分が下された時点で無罪獲得はかなり難しい状況に追い込まれるでしょう。

したがって、礼拝所不敬罪の公訴事実で起訴された場合には、できるだけ有利な判決内容(罰金刑・執行猶予付き判決)にするための防御活動が重要だと考えられます。
被害者との示談交渉は当然のことながら、情状酌量が認められる事実を主張立証するなどの訴訟活動が不可欠です。

6、礼拝所不敬罪に問われたときは弁護士に相談を

礼拝所不敬罪に問われたときは弁護士に相談を

礼拝所不敬罪の疑いをかけられたときは、すみやかに刑事事件の取扱い実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
なぜなら、刑事事件に強い弁護士に相談すれば以下のようなメリットが得られるからです。

  • 被害者との間で示談交渉を開始してくれる
  • 微罪処分、不起訴処分獲得、執行猶予付き判決獲得などなるべく軽い処分の獲得に向けて適切な防御活動を展開してくれる
  • 身柄拘束中で不安が募る被疑者を接見の機会に励ましてくれる

礼拝所不敬罪に関するQ&A

Q1.礼拝所不敬罪とは?

礼拝所不敬罪とは、墓地や寺社などで公然と不敬な行為をしたときに成立する犯罪です。

あまり聞き慣れない犯罪かもしれませんが、礼拝所不敬罪には罰金刑のみならず懲役刑・禁錮刑も法定されているため、決して「軽い犯罪」とはいえません。
また、有罪判決を回避できたとしても、礼拝所不敬罪の疑いで刑事手続きに乗せられた時点で実生活にさまざまな支障が生じることもあるので、迅速な対応が不可欠です。

Q2.罰則

礼拝所不敬罪の法定刑は、6カ月以下の懲役若しくは禁錮又は10万円以下の罰金と定められています。

初犯で犯行の態様が軽微であれば、処罰されるとしても罰金刑となる可能性が高いですが、被害状況が深刻で相手方と示談交渉が一切まとまらない状況だと初犯でも懲役刑のリスクに晒されます。
この意味では、礼拝所不敬罪の刑罰は決して軽いものとは言えないでしょう。

Q3.肝試しや酒盛りでも礼拝所不敬罪が成立する?

「墓地などでの不敬な行為」が礼拝所不敬罪の処罰対象ですが、子どもの頃は墓地で肝試しをしたり、地域によってはお墓の前で宴会をしたりすることもあるでしょう。

・霊園等で肝試しをした場合

「霊園やお墓で肝試しをする行為」自体は日本では珍しいことではありません。
この意味では、「常識的な範囲の肝試し」なら、国民の宗教的感情をただちに害するものとは考えにくいので、礼拝所不敬罪は成立せず不可罰になると考えられます。

ただし、肝試しがエスカレートして墓石を倒してしまったり、悪ふざけで墓碑に向かって放尿したりすると、「常識的な肝試し」の範囲を超えるので、礼拝所不敬罪や器物損壊罪、建造物等侵入罪などの罪に問われる可能性があるでしょう。

・神社の境内等で酒盛りをした場合

沖縄などでは地域の風習として墓前で酒盛りをすることがありますし、催事として神社の境内で宴会が開催されることもあるでしょう。
このように、先祖供養や追悼行為として広く根付いている場合には、神社の境内などで酒盛りをしても礼拝所不敬罪は成立せず不可罰です。

ただし、風習や地域の慣習から逸脱するような態様の酒盛りが行われた場合や、盛り上がりが過ぎて仏像を壊してしまったりした場合には、礼拝所不敬罪の処罰対象になる可能性があります。
「国民感情・地域の風習から逸脱したかどうか」が礼拝所不敬罪の成否を分けると言えるでしょう。

まとめ

「墓地で肝試しをしているときに度が過ぎて警察に通報されてしまった」というようないたずら気分での迷惑行為でも、礼拝所不敬罪の嫌疑をかけられると厳しい刑事手続きを強いられる可能性があります。
状況に応じて適切な防御活動を展開しなければ、懲役刑などの厳しい刑罰を言い渡されるリスクも否定できません。

どのような犯罪でも、容疑をかけられた時点で専門家のアドバイスを聞いて損はないでしょう。
刑事事件に強い弁護士に相談すれば適切なサポートを期待できるので、できるだけ早いタイミングでお問い合わせください。

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