審判離婚は、離婚調停が合意に達しない場合、家庭裁判所において確定判決と同等の効力で離婚が決定される離婚の一形態です。
このページでは、審判離婚に関する以下の情報をまとめてご紹介します。
・審判離婚とは何か
・審判離婚があまり利用されない理由
・審判離婚の具体的な手続きと他の離婚方法との違い
1、審判離婚とは
(1)審判離婚とは
審判離婚(しんぱんりこん)とは、調停離婚が不成立で当事者双方の趣旨に反しないことを考慮して離婚が妥当だと判断できた際に家庭裁判所の判断で離婚の審判を下せる制度です。
第二百八十四条 家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判(以下「調停に代わる審判」という。)をすることができる。
(2)利用率が低い理由
ただし、以下の理由で利用されることは多くありません。
- そもそも当事者双方が離婚に同意していれば調停が不成立になるケースが少ない
- (後述のとおり)審判は一方が異議を唱えると覆されてしまうため(簡単に覆されてしまう)、審判離婚を利用する代わりに裁判へ移行するケースが多い
(3)審判離婚が利用されるケースは?
当事者双方の趣旨に反しないことを考慮する場合とは、離婚には双方合意しているものの、細かい条件だけ意見が対立している場合などを指しています。
その他、離婚には同意しているものの、離婚を悪意で引き伸ばし裁判所に出廷しないなどの事情がある場合にも審判離婚が妥当と考えられるでしょう。
また、一方が外国人で帰国の日程が決まっている場合などにも審判離婚が採用されます。
2、審判離婚で離婚が認められるケース
では、どのようなケースで審判離婚が採用されるのか具体的なケース例を見ていきましょう。
(1)審判離婚が採用される具体的ケース
- 離婚に双方合意はしているものの病気などの理由で裁判所に出頭できないケース
- 離婚に双方合意はできているものの親権や養育費、慰謝料などの条件面でわずかな意見の対立がある場合
- 離婚に双方合意していたはずが、急に片方の心変わりで離婚を認めず出頭を拒否している場合
- 早めに決着を望み双方が審判離婚を望んでいるケース
- 離婚に合意できない理由が感情的な理由だけで異議申し立ての可能性が限りなく低いと判断できた場合
- 親権争いで調停が不成立の場合
- 一方が外国人で帰国の事情がある場合
(2)注目すべきケース
注目するべきは、親権の争いで対立している場合でも審判離婚制度が利用できる点です。
親権者の指定は家事審判法で審判事項にあたるため、審判離婚ができることに。
もしも、離婚調停で相手方が嫌がらせ目的など感情だけで親権を譲らなかった場合には、審判離婚できる可能性があるでしょう。
自分のケースでは審判離婚ができるのかは、調停委員などに相談してみてください。
3、審判離婚の効力について
審判離婚で離婚の審判が下された場合にその効力は裁判での判決と同等の効力を持ちます。
しかし、異議申し立てを行い無効にすることも可能なのです。
(1)2週間以内に異議申し立てをすると無効に
審判が下されどうしても納得できない場合には審判後2週間以内に裁判所に対して異議申し立てを行うことができます。
その際には理由などの記載は不要なので、不服の場合には異議申し立てを行い審判結果を無効にすればいいでしょう。
このように審判離婚では簡単に判決を覆すことができます。
そのため審判離婚のケースが現状では少ないのです。
(異議の申立て等)
第二百八十六条 当事者は、調停に代わる審判に対し、家庭裁判所に異議を申し立てることができる。
4 異議の申立人は、前項の規定により異議の申立てを却下する審判に対し、即時抗告をすることができる。
5 適法な異議の申立てがあったときは、調停に代わる審判は、その効力を失う。この場合においては、家庭裁判所は、当事者に対し、その旨を通知しなければならない。
引用:家事事件手続法286条
(2)審判確定後、10日以内に離婚届を提出する
審判後2週間が経過すると異議申し立てがないものとされ審判が確定します。
それから10日以内に市区町村の役場に「審判書の謄本」「審判確定証明書」「離婚届け」を提出することで離婚が成立することに。
離婚届けは審判離婚の申立人が役所に提出します。
なお、期限の10日を経過した後は相手方でも提出できるようになります。
4、審判離婚の流れ
審判離婚の場合は、先ほど家事事件手続法の条文を確認したように、家庭裁判所が、調停が不調の場合でも審判で離婚するのが相当と認める場合に職権で審判に移行します。
そのため、離婚の審判は調停に代わる審判といわれます。
5、協議離婚・調停離婚・裁判離婚との比較
あまり採用されていない審判離婚ですが、年々数が増えてきています。
離婚には全部で4つの種類がありますが、それぞれの違いについて比較していきましょう。
審判離婚にはメリットもありますが、デメリットも存在します。
自分の主張を認めてもらうためには離婚分野の経験が豊富な弁護士に相談してみるといいでしょう。法的根拠の元あなたの主張を全力でサポートしてくれます。
種類 | 割合 | 弁護士費用相場 | メリット | デメリット |
87.8% | 協議費用:特になし 弁護士費用:約30万円以下 | 合意が得られれば理由を問わず離婚できる | 話し合いが進まない可能性がある | |
9.7% | 調停費用:約2、000円 弁護士費用:約40万円〜70万円 | 第三者が間に入るため冷静に話し合いができる | 裁判所に出向く必要がある | |
審判離婚 | 0.1% | 審判費用:約2、000円 弁護士費用:約40万円〜70万円 | 裁判で離婚が長引く前に離婚ができる 公平な審判を下してもらえる | 自分の主張が通らない可能性がある |
2.4% | 裁判費用:約19、000円 弁護士費用:約70万円〜110万円) | 証拠を元に正当に離婚ができる 慰謝料・養育費・親権などを正当に明確にできる | 費用が高額 離婚までの期間が長い
|
※裁判離婚の割合には和解離婚も含まれています。
※弁護士に依頼するかどうかは自由です。依頼する場合にかかる費用相場を掲載しています。
まとめ|悩まれたらまずは弁護士に無料相談してみよう
審判離婚は、調停離婚が不成立の場合に利用できる制度です。
もしも離婚がなかなか進まない場合には審判離婚ができるかもしれません。
まずは弁護士に無料相談してみることをおすすめします。
離婚に詳しい弁護士に相談することで代理で出頭などをしてくれるため、精神的な苦痛が緩和できるはずです。弁護士はあなたの主張を考慮して離婚を前向きに進めてくれるでしょう。
離婚届の書き方や届出方法などの面倒な手続きも弁護士がサポートできるので、ぜひ相談してみてはいかがでしょうか。