協議離婚に関連して、精神的苦痛を与えた相手(パートナー、不倫相手)に対する怒りから、慰謝料請求をしたいと考える方が多いのではないでしょうか?
そこで、協議離婚での慰謝料請求の流れやどのような証拠を揃えておくべきかなどに加え、高額の慰謝料を請求するための方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士監修のもと書きました。
精神的苦痛を与えた相手に対する怒りがあっても、慰謝料を請求することを面倒くさいとか、恥ずかしいとか感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、慰謝料請求権は相手が精神的苦痛を与える行為をした場合に認められる正当な権利ですし、慰謝料請求は皆さんが想像しているほど複雑な手続きではありません。
そのような方もお読みいただき、迷いなく手続きを進められるようになれれば幸いです。
「離婚 慰謝料」について知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
目次
1、協議離婚で慰謝料を請求できる場合とは?
そもそも慰謝料とは、相手方の違法な行為によって受けた精神的ショックに対して支払われる金銭です。
そのため、離婚する場合にはいつでも請求できるというわけではありません。また、慰謝料を請求する相手によって要件が異なります。
具体的には、パートナー(元パートナー)に請求する場合、不倫相手に請求する場合、それぞれで条件が異なります。
以下、それぞれみていきましょう。
(1)パートナー(元パートナー)に請求する場合
まず、パートナー(元パートナー)に慰謝料請求するためには、通常以下の1〜5のいずれかの事実が必要となります。
- 相手が浮気・不倫をしたこと
- 相手がDVをしたこと
- 相手がモラハラ(モラルハラスメント=精神的暴力)をしたこと
- 相手方が悪意の遺棄(理由なく同居しない、生活費を支払わない)をしたこと
- こちらが希望するのに相手方が特に理由もなく拒むためにセックスレスとなっていること
(2)不倫相手に慰謝料する場合
これに対して、不倫相手に慰謝料請求するためには、①〜③の事実が必要となります。
①浮気・不倫をしたこと
慰謝料を請求するためには浮気・不倫の事実が必要です。
②不倫相手が、パートナー(元パートナー)が既婚者であると知っていたこと
慰謝料請求とは、法律用語では不法行為に基づく損害賠償請求です。不法行為の成立には故意・過失が必要となります。
この「故意」とは何かというと不倫相手に慰謝料請求するには、交際しているパートナー(元パートナー)が既婚者であることを認識していることをいいます。
既婚者であることを知らない場合には、「故意」がないといえるため慰謝料請求はできません。
もっとも、相手が既婚者であると知らなかったとしても、注意すれば既婚者だとわかった様な場合は、「過失」があるとして慰謝料請求が可能です。
例えば、相手が「自分は独身だ」といっても、交際相手が左手の薬指に指輪をしているにも関わらず、相手の言うことのみを簡単に信じてしまったならば、「過失」があると言えます。
③不倫をしていた時点で婚姻関係が破綻していなかったこと
最後に、不倫をしていた時点で婚姻関係が破綻していなかったことが必要となります。
つまり、不倫によってはじめて婚姻関係が破綻したことが必要となります。
なお、婚姻関係が破綻したとは、
- 別居していてほとんど連絡を取らない
- 同居しているが性行為もなくほとんど会話もない
というような状況をいいます。
なお、不倫の慰謝料請求には「時効」があります。
詳しくはこちらをご覧ください。
2、協議離婚での慰謝料の相場ってどのくらい?
次に、「自分はどのくらいの慰謝料を請求したらいいのだろう。慰謝料の相場ってどのくらい?」ということが気になるのではないでしょうか。
慰謝料の相場についてみていきましょう。
(1)協議離婚での慰謝料の金額は決まっている?
そもそも、慰謝料の金額は法律などで決まっているのでしょうか?
慰謝料の金額はあくまで夫婦間の話し合いにより決定され、明確に決まっているものではありません。
そのため、双方が合意にいたれば、1億円ということもありますし(不倫行為をした側の社会的地位が高く不倫したことを公にしたくない場合など)、明らかにDVがあった場合であっても、双方の合意があれば慰謝料の支払いなしということもあります。
(2)協議離婚での慰謝料の金額の相場
では、慰謝料の金額の相場はいくらくらいでしょうか?
これは不法行為の内容によって異なりますが、おおよそ200万円ほどといわれています。
より具体的には以下に記載します。もっともこれらは相場であり、具体的なケースによってその金額は大きく変化しますので、あくまで目安としてお考えください。
①浮気・不倫の場合
100~500万円
②DV(身体的暴力)、モラハラ(言葉・精神的暴力)の場合
50~300万円
③悪意の遺棄の場合
50~300万円
④セックスレスの場合
100~300万円
詳しくは「離婚時の慰謝料の相場とできるだけ多くの慰謝料をもらうための方法」をご参照下さい。
(3)高額な慰謝料を請求できる場合とは?
慰謝料の金額の幅が分かると、「どのような事情があると多めの金額をもらうことができるのか?」ということが気になるのではないでしょうか?
慰謝料を請求する原因によりますが、以下のような事情があると高めの慰謝料をもらうことができる傾向にあります。
- 婚姻期間 婚姻期間が長ければ長いほど高額の慰謝料をもらえる傾向があります。
- 相手の年収 慰謝料請求の原因となる行為をした者の年収が高いほど高額の慰謝料をもらえる傾向があります。
- 年齢 請求する側の年齢が高いほど高額の慰謝料請求をもらえる傾向があります。
- 不倫関係が長いほど高額の慰謝料をもらえる傾向にあります。
- DV・モラハラの期間が長く回数が多いほど高額の慰謝料をもらえる傾向にあります。
- 悪意の遺棄にあたる別居期間が長いほど高額の慰謝料をもらえる傾向にあります。
- セックスレスの期間が長いほど高額の慰謝料をもらえる傾向にあります。
詳しくは「離婚時の慰謝料の相場とできるだけ多くの慰謝料をもらうための方法」をご参照下さい。
3、協議離婚での慰謝料請求方法
慰謝料をパートナー(元パートナー)へ請求する場合には、相手と直接話し合いをして交渉するか、直接会わずに進めるかで流れが異なりますので、以下ではそれぞれ書いていきます。
ちなみに、慰謝料は離婚前でも離婚後でも請求可能ですが、時効によって消滅してしまった場合には請求ができなくなります。
慰謝料請求権は基本的に不貞行為の事実を知った時から3年で時効消滅しますので注意が必要です。
(1)証拠を付ければ相手の言い逃れを防げる
協議離婚で慰謝料請求するにあたって、その時点で必ずしも証拠が必要というわけではありません。
しかし、証拠があれば相手が不倫の事実を否定したとしても言い逃れが難しくなるため、これから慰謝料に関する話し合いを進める場合には、事前に証拠を揃えておくと有利に話し合いを進められるでしょう。
ちなみに、以下のものが証拠となります。
- 不倫の事実を証明する場合にパートナー(元パートナー)と不倫相手がラブホテルに出入りしている写真や動画
- DVの事実を証明するために暴力をふるわれてケガをしたときの診断書
- 悪意の遺棄を証明する場合に、別居に至った日時、経緯などを記載したメモ
- セックスレスであることをつづった日記
詳しくは、「離婚時の慰謝料の相場とできるだけ多くの慰謝料をもらうための方法」をご参照下さい。
(2)相手と直接話し合いで慰謝料の交渉をする場合
まず、相手と話し合いで慰謝料の交渉をする場合、最も重要なことは感情的にならないことです。
こちらが感情的になると、相手も感情的になるので、話し合いが進まなくなってしまい逆効果です。
事前に話し合いをするべき内容をメモしておき、それに沿って話をするようにしましょう。メモしておくべき内容については以下をご参考下さい。
- 精神的苦痛を与える行為をしたことを認めるか?
- そもそも慰謝料を支払う意思があるか?
- 希望した慰謝料の金額を払う意思→金額については、「2、慰謝料の相場」を参考にして決めましょう。相手からの減額交渉を想定し、決めた金額よりも100万円ほど高い金額で請求しましょう。
もし、1や2について拒否する場合は慰謝料を支払ってもらう交渉をすることが難しいかもしれませんので、法的手続き(調停や訴訟)を考えている旨を伝えましょう。
裁判所の手続きを面倒に思う相手もいるので、このことを伝えるだけで支払う意向を示す方もいるかもしれません。
なお、後々調停や訴訟になったときに証拠とするために、この時話し合いした内容は証拠として書面もしくは録音して残しておくようにしましょう。
(3)相手との直接の話し合いが難しい場合
直接の話し合いが難しい場合には以下の流れで進めていきましょう。
①郵便・メール等での請求
まずは、証拠が残る郵便やメール等で、
- 精神的苦痛を受けた事実
- 慰謝料請求をしたい意向
- もらいたい金額→金額については、「2、慰謝料の相場」を参考にしましょう。相手からの減額交渉を想定し、決めた金額よりも100万円ほど高い金額で請求しましょう。
を伝えましょう
②内容証明郵便
もし郵便・メールでも支払ってくれない場合、内容証明郵便で請求しましょう。
内容証明郵便とは、郵便局が「誰に対して、いつ、どのような内容の書面を出したか」を証明する郵便です。
内容証明郵便は法律上の意味としては通常の郵便と同じです。
形式が細かく決められているなど公的な雰囲気があることから、送られた相手に心理的なプレッシャーを与えることができます。
また、郵便局が内容を証明してくれることから、「言った」「言わない」の争いをさけることができるので、「証拠」として重要な役割を果たします。
郵便局が書面のコピーを保管してくれるので、相手が「見ていない、捨ててしまった」と言うことを避けることができます。
内容証明郵便に書くべき内容として、主なものは以下の通りです。
- 不倫・浮気行為の事実
- 慰謝料を請求する意思とその金額
- 慰謝料の支払い期限
- 慰謝料を振り込んでもらう口座
- もし慰謝料を支払ってくれない場合には、法的手続き(調停・訴訟)を起こす意思表示
金額については「2、慰謝料の相場」を参考に、減額交渉されることを考慮して、妥当だと思われる金額+100万円ほど請求しましょう。
気をつけなければならないのは、怒りに任せて法外な金額を請求してしまうことです。
これは自ら解決を遠のかせるだけになりかねないので、注意しましょう。
また、脅迫にあたる内容(不倫の事実を会社にばらすなど)は、逆に訴えられてしまう恐れがあるので、この点についても十分に注意して下さい。
5、協議離婚時にできるだけ高額の慰謝料を請求するには?
次に不倫相手に慰謝料を請求する場合ですが、まずは相手の連絡先を把握しなければなりません。
探偵などに依頼して調べてもらうということもあるかと思いますが、金銭的になかなか難しいということもあるでしょう。
その場合は、やはりパートナー(元パートナー)から聞くことになります。もしそれでも分からなければ探偵に依頼することを検討されてもよいでしょう。
浮気の証拠をつかむまで、というと高額となってしまいますが、相手の連絡先だけであればそこまで高くならないでしょう。
探偵の探し方としては、インターネットで「浮気 調査」「不倫 調査」などと検索して探してみて下さい。
連絡先が分かったら以下の流れで請求していきます。
(1)電話・郵便・メールによる連絡
まずは電話・郵便・メールで連絡することになるでしょう。
この連絡で慰謝料を支払ってくれればいいのですが、なかなか難しいのではないでしょうか。
(2)不倫相手と直接会って慰謝料について交渉
書面やメールでのやり取りというとどうしても時間がかかってしまいますが、直接会って話をするのであれば、早期の解決が見込めます。
もっとも、不倫相手と会うことには抵抗もあるでしょう。
また、不倫相手と対面したら冷静でいることが難しいかもしれません。
しかしこの時、感情的になると話がまとまらなくなるため、事前に話す内容をメモにまとめておき、そのメモにしたがって話をするとよいでしょう。
参考までに、メモしておくべき内容は以下の通りです。
- 不倫の事実を認めるか?
- 慰謝料を支払う意思があるか?
- こちらの希望する金額の慰謝料を支払ってくれるか?もし難しければ、いくらであれば支払いOKか?
- 慰謝料を支払う場合、いつまでにどのような方法で支払うか?銀行振込の場合には振込手数料を負担するか?
- 今後、元パートナーと会わないと誓うか?
(3)内容証明郵便での慰謝料請求
もし、電話・郵便・メールで望ましい反応がない場合、内容証明郵便を送りましょう。
①内容証明郵便に記載する事項
内容証明郵便には、以下の内容を記載しましょう。
- 不倫・浮気行為の事実
- 不倫・浮気行為を知ったことによってどれほど精神的苦痛を受けたか
- 慰謝料を請求する意思とその金額
- 慰謝料の支払い期限
- 慰謝料を振り込んでもらう口座
- 今後パートナー(元パートナー)と会わないことを要求する旨
- もし慰謝料を支払ってくれない場合には、法的手続き(調停・裁判)を起こす意思表示
内容証明郵便のデメリットとして、内容が心理的なプレッシャーを与えるものになりがちなので、逆に相手を頑なにしてしまい、むしろ解決を遠のかせてしまう可能性があります。
この点を考慮して、内容証明郵便を利用するか、通常の郵便で進めるかは慎重に判断するべきでしょう。
なお、テクニックとして「返事を出しやすいような文面にする」ということもあります。
例えば高圧的に「慰謝料として300万円払え」と記載するのではなく「諸々の事情を考慮すると、裁判例との関係で300万円が妥当かと思いますが、貴殿のご意見をお聞かせ下さい」などと記載すると、不倫相手としても支払いに応じる返信がしやすいでしょう。
(4)内容証明郵便での慰謝料請求に対する反応に対する対策
内容証明郵便に対する反応は様々です。
以下、それぞれの対応策について書いていきます。
① 相手が要求通りの金額を支払ってくる場合
正直、少ないケースですが、相手が要求通りの金額を支払ってくることも考えられます。
このような場合、争いがむしかえされないようにこれですべて清算が終わったという内容の示談書を作成しましょう。
②相手から何ら反応がない場合
この場合、もう一度内容証明郵便を送るという手段もありますが、無視している以上再度内容証明郵便を送ったからといって支払いをしてくれる可能性は低いでしょう。
このような場合には、調停や訴訟などの法的手続きの準備をするようにしましょう。
③相手が支払いを拒絶してくる場合
相手が支払いを拒絶する場合、その内容としては「不倫の事実はないから一切支払いません」というものから、「お金がないからご要望の200万円は払えないけども、100万円なら払えるからこの金額で示談できないか」というものがあります。
このような場合、対策としては大きくは以下の4つに分類できるでしょう。
■内容証明郵便またはその他の方法でもう一度同じ慰謝料額を請求する
相手が送ってきた書面の文面や、その他相手の反応から、支払う意思はあるものの減額を要求しているような場合、減額理由が「お金がないから」というのは本当の所は分かりません。
このような場合には、初回の内容証明郵便と同額の請求をしてもよいでしょう。場合によっては支払ってもらえる可能性があります。
■減額して再度請求する
これも相手の反応次第ですが、こちらからの300万円の請求に対して、不倫相手から「150万円なら支払えます。この金額で示談できないでしょうか?」という返信があった場合に、「200万円なら和解に応じてもよい」などと返信することです。
あなたが必ずしも請求額満額をもらうことを希望していない場合には、このように減額して再度請求してもよいでしょう。
■不倫相手の反論に対して適切な主張をする
相手が以下のような反論をしてくることが考えられます。
それぞれ、適切な主張をすることによって、相手は言い訳ができなくなり、支払いに応じることがあります。
- 不倫相手からの「あなたの夫(または妻)に誘われた」という反論
不倫相手が、「私はあなたの夫(または妻)から誘われたために関係におよんでしまった。悪いのはあなたの夫(妻)で私は悪くない」という反論をしてくることがあります。
この場合には、以下の最高裁判例を主張しましょう。
「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかに関わらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである(最判昭53・3・30)」
判例は難しい言葉を使っているので意味が分かりづらいですが、これは例えパートナー(元パートナー)が誘ったか否か、パートナー(元パートナー)と不倫相手が愛し合っているかに関らず、不倫相手が婚姻関係を知っていた(もしくは知らないことに落度があった)場合には、慰謝料を支払う義務がある、ということです。
この判例を主張することによって、不倫相手が言い訳することを防ぐことができます。
- 不倫相手から「不倫があったのは婚姻関係が破綻した後である」という反論
不倫相手が法律に詳しいと、「不倫があったのは婚姻関係が破綻した後だから精神的苦痛はなく、慰謝料を支払う義務はない」と反論してくることが考えられます。
しかし、そもそも婚姻破綻とは、「夫婦が婚姻継続の意思を失っており、婚姻共同生活を回復することが不可能であると客観的に判断できる状態」です。
これは、
- 夫婦双方が離婚に合意している
- 離婚を前提とした別居をしている
- 同居をしているものの長期間性行為がなかったり、会話がない
などの状態です。
ここ最近で性行為があるなど、以上のような状態ではないことを証明することによって、不倫相手の言い訳を防ぐことができます。
- 不倫相手からの「結婚していたとは知らなかった」という反論
不倫相手からよくある反論が「あなたの夫(もしくは妻)はずっと独身であるように装っていたので、婚姻していたとは知らなかった」という反論です。
「1-(2)-②不倫相手が交際相手が既婚者であると知っていたこと」で記載したように、不倫相手に慰謝料請求するにはパートナー(元パートナー)が既婚者であることを認識していたことが必要となります。
実際、不倫をする既婚者は独身であるように振る舞っていることが多いので、不倫相手は本当に既婚者であることを知らなかった可能性があります。
もっとも、慰謝料請求には故意がなくとも過失があればいいので、不倫相手にて、パートナー(元パートナー)が既婚者であると知らなかったことについて落度があるような場合には、不倫相手の言い訳を防ぐことができます。
具体的には、不倫相手が、パートナー(元パートナー)が既婚者であるかどうかを確かめもせずに交際したような場合に、この事実を証明することで不倫相手の反論をつぶすことができます。
(5)示談書の作成
直接の話し合いや内容証明を送付した結果、相手が慰謝料の支払いに応じる意思表示をした場合、示談書を作成しましょう。
①示談書の意味・作成の必要性
そもそも示談(和解)というものは、法律上は口約束だけでも成立します。しかし、本当に口約束だけにしてしまうと、一方が約束を守らなかった場合、言った言わないのトラブルに発展してしまう可能性があります。そのため、示談書を作って約束の内容を証拠にしておきましょう。
②示談書に記載すべき事項
示談書に記載しておくべき事情としては以下の通りです。
- 不倫・浮気の事実
- 慰謝料を支払う旨
- 慰謝料の金額
- 慰謝料の支払い方法(銀行払いか手渡しか、など)
- 慰謝料の支払い期限
- 不倫相手がもうパートナー(元パートナー)に近づかないという約束
- 不貞行為の事実や和解の内容について秘密を厳守すること
- お互いに債権債務がないことの確認
以上の内容を分かりやすく書いておきましょう。
5、慰謝料の金額と支払い期日が決まったら
慰謝料の金額と支払い期日がきまったら間違いなく支払ってもらえるように書面を作成しましょう。
また、仮に支払いがない場合に早急に強制執行(物品や預金、給料などの差し押さえ)ができるよう、公正証書を作成しておくのが望ましいでしょう。
公正証書とは、法律の専門家である公証人が公証人法・民法などの法律にしたがって作成する公文書です。
慰謝料の支払いを確保するにあたっては、パートナー(元パートナー)に対して慰謝料を請求するためには離婚協議書を公正証書にしましょう。
これに対して、不倫相手に慰謝料請求する場合には、示談書を公正証書にしましょう。
(1)パートナー(元パートナー)に対する慰謝料請求では離婚協議書を公正証書に!
パートナー(元パートナー)への慰謝料の回収を確実にするためには、離婚協議書を公正証書にしましょう。
以下、作成の手順について書いていきます。
①離婚協議書に記載する内容は?
離婚協議書を作成するにあたって、主に記載するべきものは以下の通りです。
- 不倫やDV等があった場合に慰謝料をいくら支払うか
- 財産分与としていくら支払うか
- 子どもがいる場合にいずれが親権者となるか
②離婚協議書作成の流れ
離婚協議書は下記の流れで作成されます。
- 話し合いをして離婚後の約束を決める
- 離婚協議書を作成
- 離婚協議書を公正証書にする
③公正証書の作成方法は?
公正証書は以下の流れで作成していきます。
- 必要な書類・資料の準備
- 公証人との面談のために公証役場へ
- 作成前の連絡・調整
- 公証人が、夫婦の話内容に基づいて公正証書の「原案」を作成
離婚協議書について詳しくは「有利な離婚協議書の書き方のポイントとして知っておくべき3つのこと」をご参照下さい。
(2)不倫相手に対する慰謝料請求は示談書を公正証書に!
これに対して、不倫相手に対する慰謝料請求は示談書を公正証書にしましょう。
作成の仕方は離婚協議書を公正証書にする場合と同じです。
まずは示談書を作成し、これを公証役場に持って行って公正証書にしてもらいましょう。
これで、仮に相手が慰謝料の支払いに関する約束を破っても、比較的容易に預金や給料を差し押さえることができます。
協議離婚の慰謝料に関するQ&A
Q1.パートナー(元パートナー)に請求する場合とは?
- 相手が浮気・不倫をしたこと
- 相手がDVをしたこと
- 相手がモラハラ(モラルハラスメント=精神的暴力)をしたこと
- 相手方が悪意の遺棄(理由なく同居しない、生活費を支払わない)をしたこと
- こちらが希望するのに相手方が特に理由もなく拒むためにセックスレスとなっていること
Q2.不倫相手に慰謝料する場合とは?
- 浮気・不倫をしたこと
- 不倫相手が、パートナー(元パートナー)が既婚者であると知っていたこと
- 不倫をしていた時点で婚姻関係が破綻していなかったこと
Q3.協議離婚での慰謝料の金額は決まっている?
慰謝料の金額はあくまで夫婦間の話し合いにより決定され、明確に決まっているものではありません。
そのため、双方が合意にいたれば、1億円ということもありますし(不倫行為をした側の社会的地位が高く不倫したことを公にしたくない場合など)、明らかにDVがあった場合であっても、双方の合意があれば慰謝料の支払いなしということもあります。
まとめ
今回は協議離婚時に相手方と不倫相手に慰謝料を請求する全手順について書いていきました。
ご参考になれば嬉しいです。