
協議離婚とは、夫婦での話し合いだけで離婚を成立させていく離婚方法です。
離婚をするほとんどの夫婦が協議離婚で離婚をしています。
裁判所に頼ることなく当事者だけで離婚するので、離婚自体、そして離婚条件に相手と合意ができている場合に適した離婚方法です。
本記事では、協議離婚とはどういうものなんだろう?と考えている方に向けて、
- 協議離婚とは
- 協議離婚のメリット・デメリット
- 協議離婚で目指すこと
- 協議離婚が進まない場合の対処法
など、離婚相談の経験豊富なベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。
協議離婚についての大切なポイントを押さえれば、離婚手続きなどもスムーズに行えるため、この記事で協議離婚の知識を身につけましょう。
関連記事目次
1、協議離婚とは
では早速、協議離婚の基本についてみていきましょう。
(1)当事者の話し合いだけで成立させる離婚
協議離婚とは、夫婦の当事者同士が話し合いを行い、合意した後に離婚届を役場に提出する離婚方法です。
結婚が当事者同士の合意でできることから、離婚も当事者の合意のみで行うこの協議離婚が基本と言えます。
(2)「話し合い」で合意できない場合は?
当然、話し合いで合意できない場合もあります。
- 相手が離婚を拒否している
- 相手が、離婚はするけど財産は渡さないと言っている
- 相手が、離婚はいいけど子どもだけは渡さないと言っている
など、スムースにいかないケースもあるわけです。
そんなときは、夫婦(当事者)では離婚は無理。
「第三者」に関与してもらう方法へ進みましょう。
(3)第三者が関与する離婚もある
さて、離婚に関与する「第三者」とは誰でしょうか?
①調停離婚
「結婚」とは、国が決めた制度の1つです。
日本ではもちろん、世界でも主流なのは「愛している証として結婚する」という流れでしょうがが、そもそも「結婚」というのは国の「制度」なわけです。
ですから、もし二人では結婚生活がどうしようもなくなった場合、国にはそれを助ける制度が準備されています。
つまり、離婚で話し合いがもめた場合、「調停」という制度が準備されています。
テレビなどでも「離婚調停」という言葉を聞いたことはあるでしょう。
調停による離婚、つまり調停離婚とは、「調停委員」が間に入り、離婚の協議を進めてくれる離婚方法です。
第三者である調停委員が間に入ることで、話し合いに応じてくれなかった配偶者でも冷静に話し合い進められることを狙いとしています。
調停離婚(離婚調停)の詳しくは、こちらのページをご覧ください。
関連記事②裁判離婚
第三者の「調停委員」には、「強制力」がありません。
あくまでも、互いの意見の調整をつけるだけの立場です。
ですから、調停委員がいても、調停(話し合い)がまとまらないということもあり得ます。
そんな場合の離婚方法が「裁判離婚」です。
裁判離婚は、より強く離婚を望む側の訴訟提起により始まります(裁判離婚は調停を経なければ訴訟提起できません(調停前置主義))。
調停離婚との違いは、第三者が「裁判官」になること、そしてその裁判官には「強制力」があるということです。
裁判官が判断した判決には、それに従わなければならないという強制力があるのです。
ここで、離婚でもめることは、大きくは
- 離婚をするかどうかの離婚自体の成否
- 親権の帰属などについての離婚条件の内容
の2つです。
そして離婚自体の成否についてもめている場合、裁判官が判決するのは
- 離婚成立
- 離婚不成立
のどちらかということになります。
とは言え、「夫婦喧嘩は犬も食わない」とも言われるように、夫婦のことは夫婦しかわかりません。
いくら裁判官とはいえ全くの他人である裁判官が「離婚しなさい」「離婚してはならない」などと強制するのはおかしな話と思いませんか?
そうです。おかしいのです。
ですから、他人である裁判官が結論を出せるのは、法律で決められた離婚要件を満たしていると判断できる場合だけ、です。
そして法律で決められた離婚要件(法定離婚事由)とは、次の5つです。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があること
性格の不一致などこれら5つに該当しない場合は裁判離婚での離婚は難しい、ということがおわかりいただけることと思います。
関連記事2、協議離婚のメリット・デメリット
離婚方法には、
- 協議離婚
- 調停離婚
- 裁判離婚
の3つがあることがわかりました(審判離婚もありますが、実務上ほぼ使われませんので割愛しています)。
本項では、協議離婚で離婚にこぎつけることのメリット、そしてデメリットについてみていきましょう。
(1)メリット
協議離婚の主なメリットは下記5点です。
- 理由を問わない(当事者間で合意が取れれば離婚できる)
- 合意ができれば離婚までの期間が比較的に短い
- 費用がかからない
- 手続きが簡単(基本的に離婚届を書いて出すのみ)
- 慰謝料や養育費、財産分与について裁判相場よりも有利な条件で離婚ができる可能性がある
前4つのメリットは、皆さんもご理解いただいているものと思います。
最後のポイント「慰謝料や養育費、財産分与について裁判相場よりも有利な条件で離婚ができる可能性がある」について解説をしましょう。
調停離婚や裁判離婚になってしまうと、「公平」を観点として第三者が介入することになります。
ですから、お金については特に、一定の基準が設けられているのです。
養育費であれば、支払う側の収入がいくらの場合はこれくらい、受け取る側の収入がいくらの場合はこれくらい、子どもが2人であればこれくらい、とある程度の金額が決まっています。
慰謝料も、どのような理由によって慰謝料を請求しているのかにより、金額もある程度先例に従うことになります。
財産分与に関しては、夫と妻とで折半と決められているわけです。
ですが、協議離婚であれば、お互いに納得さえしていれば、これらに縛られる必要はありません。
自由に取り決めることが可能です。
(2)デメリット
協議離婚にはデメリットも存在します。主なデメリットは下記4点です。
- 馬が合わないため話がスムースに進まない
- 離婚したいくらい嫌いな相手と話し合いをしなければならない
- 夫婦間の力関係が出てしまい、不利な条件で離婚に合意させられる可能性がある
- 条件を決めることを忘れがち
前の3点どれをとってもですが、二人では限界であるということが協議離婚のデメリットです。
そもそも「協議」というのは、話し合いながら合わせていくことを意味しますから、合わないと思っている相手とするのは基本的には至難の技。
一方がかなり我慢しているか、お互いに常識的に歩み寄る努力ができているか、の場合にのみ成立しうると言えるでしょう。お互いが言いたい放題、自我を通すという関係であれば、協議はかなり難しいのです。
そして4点目「条件を決めることを忘れがち」。
これは若い夫婦にありがちですが、協議離婚では「離婚するかしないか(離婚の成否)」だけを焦点に話し合いをしてしまい、「条件」について全く触れないことが起こり得ます。
条件とは、親権の帰属や財産分与などのことですが、確かに、親権は文句なく母親になり、財産も特にないので話し合いなどしない、ということはよくあることです。
しかし、浮気を原因とした場合の「慰謝料」、そしてお子さんがいる場合はお子さんのためにもっとも大切な「養育費」について決めないのは、離婚を多く取り扱う弁護士の世界では口惜しい気持ちでいっぱいになります。
3、協議離婚で目指すこと|「離婚を成立させること」とあともう1つとは?
今述べたように、協議離婚では「離婚を成立させること」だけを目指してはいけません。
あともう1つがとても重要です。
それは、有利な条件を獲得することです。
離婚における「条件」とは、大きくは3つです。
- 子どもについて
- 財産について
- 不法行為の清算について
前の2つは、夫婦である限り、夫婦2人のものです。
しかし離婚によって、分けなければならなくなります。
そのため、この2つの「帰属先」について決めなければならないわけです。
以下、1つずつ見ていきましょう。
(1)子どもについて
未成年の子どもがいる場合には、必ず親権に属さなければなりません。
夫と妻、どちらが親権を持つのか、ということを決めていきます(日本では共同親権が認められていません)。
親権は、「今後どちらが育てていく?」というものと考えられがちですが、一概にそう言えるものでもありません。
ともに暮らしながらも親権の一部がない、という場合もあります。
また、親権をもてば、子育てにかかる費用(いわゆる養育費)を一人で背負わなければならないとも考えられがちですが、法律上そのようなことはありません。
費用についてはあくまでも収入に応じて公平に、が基本なのです。
親権についての詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
関連記事(2)財産について
夫婦でいる間に築いた財産は、離婚時は折半して帰属させるのが原則です。
どちらかが圧倒的に稼いでいた、という場合はそれが考慮される場合はありますが、基本的には2分の1の割合です。
これは、お互いの相互扶助により財産を築き上げたと考えられているからです。
今ある財産だけでなく、将来もらえる年金もそうです。離婚したから結婚していた期間の分の年金はもらえない、では不公平ですよね。
「年金分割」といって、結婚していた期間の間の年金は、分割することができます。
もし、配偶者が長年家族としての扶助義務を放棄し(別居をしているなど)、この基本的な考え方が全く当てはまらないという場合は、財産分与について弁護士に相談すべきです。
あなたの家族の形なりの財産分与を実現できるアドバイスがもらえるでしょう。
(3)不法行為の清算について
離婚のきっかけはさまざまですが、好きで結婚した同士であれば、なんらかの問題があった場合も多いもの。
- 浮気
- DV
- ハラスメント
など、苦痛を与えるような行為があったことを原因とした離婚では、法律上「慰謝料」が発生します(民法709条、710条「不法行為」)。
もっとも、不法行為自体から何年も経過している場合、慰謝料を請求する権利が「時効」にかかってしまい権利が消滅している可能性もあるため、離婚時に請求できないケースもあります。
この点も弁護士にしっかり相談して請求することがオススメです。
4、協議離婚が進まない!相手が協議してくれない時の進め方
相手が協議を回避している、離婚に確固たる態度で応じないという場合には、どうしたらいいのでしょうか?
協議離婚のメリットを享受したい場合は特に、調停へ進む前にまずやってみるべきことをご紹介します。
(1)回避、離婚に応じない理由は何か
相手が話し合いを回避する理由や離婚に応じない理由は何でしょうか?
女性は男性側の理由をわかっているケースは多いかもしれません。
わからない場合は、共通の友人や両親などに事情を探ってみてもいいでしょう。
相手の心理や事情がわかれば、話し合いのもっていき方や提案内容も変わってきます。
例えば、(横柄だったながらも)家族を失うのが怖いと思っている夫に対し、離婚を申し入れたい場合、まずは別居の提案からしてみるなどです。
別居もハードルが高い場合では、
- 実家で介護等の必要がある
- 仕事上職場の近くに住みたい
- 狭いのでもう1つ家をもとう
など離婚とは別の理由をつけ、まず別居の意味を家族が自分から離れるということにしないという手も考えられます。
とにかく今相手と離れたいと考えているならば、その経過(相手に理解してほしい)はできる限り重視しないことがベターです。
夫が一人で暮らすことができることに自信をもち、そこから自分なりの楽しみも見つけることにより、心のどこかで気づいていたあなたの不満を受容していこうという気持ちにもなるもの。
このように、相手の不安や心配に配慮しながら、自分の目的をつかむための戦略を立てると良いでしょう。
(2)弁護士に相談
とはいえ、家族だった近しい人に対して「戦略」を練るのは、普通はうまくできません。
近しいからこそすでに相手に本音を爆発してしまっている場合も多く、そんな中急に「介護で・・・」等と言い出してもおかしなことになってしまいます。
そんなときは弁護士に相談してみると良いでしょう。
ときには戦略は飛ばし強行突破をした方がいいケースもありますから、どのように交渉を進めていくべきか、トータルでアドバイスをもらえるはずです。
また、相手との協議自体を弁護士に依頼することもできます。あなたの代理人として話をうまく進めてくれるでしょう。
さらに、もしも協議が不成立で調停離婚になったとして、も弁護士がいれば安心です。
調停の申し立てや調停におけるポイントについて、的確なアドバイスをもらうことができます。
5、協議離婚で相手が条件に応じない時(応じなさそうな時)の進め方
「条件に応じない」といっても、本当は離婚に応じていないケースがほとんどです。
相手も自分と同程度離婚したがっているのであれば、相手からのアクションもあるでしょうから、とりあえずはそれを待つのも1つでしょう。
しかし本当は離婚に応じたくないというケースであれば、これも「4」と同様に進めていく必要があります。
別れたいがために相手の条件を鵜呑みにするのでは、協議離婚のデメリットが全面に出てしまいます。
この場合も、弁護士に相談することをお勧めします。
子どもについての条件は戦略的に、金銭面での条件は法律的に進めることで、相手が納得する案を提案してもらえるでしょう。
6、自分が協議離婚に応じたくない場合の対処法
逆に、相手から離婚を持ちかけられたけれど応じたくない場合、どうすればいいのでしょうか?
それは、ひたすら拒み続けること、です。
もちろん、自分に法定離婚事由がある場合は、裁判に持ち込まれてしまえば離婚は成立させられてしまうでしょう。
そうなることを避けるためにも、なぜ相手が離婚をしたいと思ったのか、その原因を突き止め、あなた自身が変わることが必要です。
自分勝手な解釈はいけません。
あなたは、婚姻生活を継続するという目的を達するためには、相手の求めに応じる必要があるのです。
もっとも、
- 嫌いになった、愛せなくなった
- 他に好きな人ができた
というように、なんら自分に具体的な原因もなく相手の心が離れてしまった場合は、あなたがすべき努力が見つからないかもしれません。
この場合は、あなたがどうしていきたいのかを考えること。
相手の心の動きを中心に考えてばかりいると、見えない敵への疲労感ばかりが募ってしまいます。
相手の気持ちはもう聞きました。今度はあなたがどうしたいかを考える時なのです。
あなたが新しい世界へ行く勇気があれば、あなたから離れてもいい。
逆に、心が離れた相手でも、そのまま長年生きていれば、夫婦として成長していけることもあるかもしれません。
相手の気持ちへの配慮と、自分の気持ちと、上手にバランスをとりながら考えていってください。
7、なかなか協議がまとまらない!先に別居しても大丈夫?
なかなか協議離婚がまとまらない場合には、先に別居しても問題はありません。
ただ、相手に法定離婚事由がある場合(「1」(2)②参照)は、別居期間は長引かせず早期に決着をつけた方が有利です。
別居が長期にわたってしまえば、法定離婚事由がない側も場合によっては慰謝料の請求が不利になる可能性が出てしまいます。
別居期間中、婚姻関係が続いていれば、相手の収入の方が高ければ婚姻費用(生活費)を請求することが可能です。
ここで、浮気を原因とした別居のケースでは、浮気された側は「わざと離婚しない(浮気相手と再婚させない)」と考え、淡々と婚姻費用をもらい続けるケースもあります。
しかし、別居から3〜5年以上経てば、客観的な婚姻生活の破綻と判断されやすくなり、浮気した側が離婚を望めば裁判離婚は成立してしまう可能性がありますので、離婚したくないのに別居をする場合は、弁護士に相談しながら行うことをお勧めします。
また、婚姻費用の額については、相手の収入とあなたの収入によって変わってきますから、「わざと離婚しない」ことが全てのケースでメリットがあるとは限りません。
しかも、離婚をしないことは、相手のみならずあなた自身をも縛っていることを忘れないでください。
不合理な不利益を被らないための戦略にもよりますが、相手が嫌い、許せない等の理由で別居を開始する場合は、遅かれ早かれ離婚を成立させることを念頭におくべきかと思います。
8、協議が調ったら離婚協議書を作成
離婚のための協議が整ったなら、離婚協議書を作成することをお勧めします。
確かに離婚自体は協議書がなくてもできます。
ですが、大事な離婚「条件」につき、言った言わないが発生するのは避けたいところ。
条件を記した離婚協議書で合意した条件内容を確実に残しておきましょう。
また、可能な限り、公正証書にしておくといいでしょう。
離婚協議書を公正証書にすることで、条件の義務者が条件に違反した場合、強制執行できるようになります。
離婚協議書を公正証書にする方法については下記記事をご覧ください。
関連記事まとめ
協議離婚とは夫婦の話し合いで離婚を成立させる離婚方法です。
どんな理由であれ、合意が取れれば離婚ができるメリットがあります。
しかし、その反面、離婚に関わる条件を夫婦で全て決めていかなければいけません。
養育費や財産分与などの煩雑な問題も、夫婦間で解決する必要があるのです。
思うように進まない場合は、協議離婚でも弁護士に相談した方が金銭面の相場がわかり、スムーズに話し合いが進む可能性が高いでしょう。
また、相手が話し合いに応じない場合や離婚を拒否している場合でも弁護士に相談することで戦略を考えてもらえます。
離婚するべきか迷っているケースでも、無料相談であなたの心に寄り添ったアドバイスをしてもらえるでしょう。
もしも離婚をする際は、本記事を参考に、協議離婚でも不利益なく話し合いを進めていただけたらと願います。
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