奨学金の保証人が負う責任とは?返還請求された場合の対処法も解説

奨学金の保証人が負う責任とは?返還請求された場合の対処法も解説

日本学生支援機構の調査によると、平成28年度末時点における奨学金の未回収額は約866億円、代位弁済額は約172億円となっています。

保証人に対する奨学金の返還請求は、決して他人事ではありません。 

実際、軽い気持ちで奨学金の保証人になったものの、本人が返済できなくなった場合にどうなるのか不安……という方は少なくないでしょう。

保証人に奨学金の返済請求をされた場合、状況によっては請求を拒否したり、請求額を減らしたりできる可能性があります。

今回は、 

  • 奨学金の保証人が知っておくべき「保証人の抗弁権」
  • 奨学金の保証人が返済前に取り得る手段
  • 奨学金の保証人が返済後に取り得る手段

などについて、解説します。ご参考になれば幸いです。

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1、奨学金の保証人が知っておくべき「保証人の抗弁権」とは

保証人とは、主債務者(お金を借りた本人)が借入金を返済できなくなった場合に、主債務者に代わってこれを返済する義務を負う人のことをいいます。

奨学金を借りた本人が返済できなくなった場合、保証人は本人に代わって返済しなければなりません。

ただし、保証人には「保証人」と「連帯保証人」の2種類があり、前者である「保証人」については、以下のような権利が認められています。

(1)催告の抗弁権|まずは本人への請求を求める

保証人に対して奨学金の返済請求をされた場合、保証人は、「まずは奨学金を借りた本人に請求してください」と求め、返済を断ることができます。

これを「催告の抗弁権」といい、以下の場合を除き、この権利を行使することが可能です(民法452条)。 

  • 債務者が行方不明
  • 債務者が破産手続き開始の決定を受けた

(2)検索の抗弁権|本人に財産がある場合は本人への回収を求める

奨学金を借りた本人に財産がある場合、保証人は、債権者に対して本人からの回収を求めることができます。

これを「検索の抗弁権」といい、保証人が以下の2点について証明した場合にこの権利を行使することが可能です(民法453条)

  • 奨学金を借りた本人に財産があること
  • その財産に対する強制執行が容易であること

本人に財産があることを証明する方法としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 登記事項証明書の確認(本人が不動産を所有している場合)
  • 動産の所在場所を確認
  • 本人の預金口座の有無などについて弁護士照会をする

ただし、金融機関の中には弁護士照会に応じないところも多く、債務者本人の協力なしに財産があることを調査・証明することは、困難である可能性が考えられます。

奨学金を借りている本人は甥や姪など親戚であるケースがほとんどですので、まずは、本人に財産があるのかどうか、聞き取り調査をしてみるのもひとつの方法でしょう。

(3)分別の利益|他の保証人からの回収も求める

保証人が複数人いる場合、債権者から請求されたとしても、1人の保証人がその全額を返済する必要はありません。

人の保証人が返済しなければならないのは、請求額を保証人の数で頭割りした金額になります(民法456条)。

これを「分別の利益」と呼び、例えば、保証人が2人いて、債権者から返済を請求された金額が300万円である場合、1人の保証人が負担すべき金額は150万円となります。

2、奨学金の「連帯保証人」の場合は注意!

保証人には、「保証人」と「連帯保証人」の2種類があります。

保証人も連帯保証人も、主債務者が返済できなくなった場合にこれを返済する義務を負う、という点では共通していますが、連帯保証人は以下のような点において、単なる保証人よりも重い責任を負います。

(1)催告の抗弁権がない

連帯保証人には、催告の抗弁権がありません。

そのため、債権者からいきなり返済の請求された場合も「本人に請求してください」と主張することはできず、本人に代わって返済する必要があります。

(2)検索の抗弁権がない

連帯保証人には、検索の抗弁権もありません。

そのため債権者は、本人に数千万円の預貯金があり簡単に貸付金を回収できる場合でも、連帯保証人に対していきなり返済の請求をすることができます。

(3)分別の利益がない

連帯保証人には、分別の利益も認められていません。

そのため、他に保証人がいる場合も、単なる保証人であれば保証人の数で頭割りした額のみを返済すればいいところ、連帯保証人は未返済額全額について返済する必要があります。

3、奨学金の保証人に過大請求問題が起きている

近年、奨学金の保証人に対する「過大請求」が問題になっています。

複数の保証人がいて返済義務を負うのは保証人の頭数で割った割合であるにもかかわらず、その全額を請求される事例が多発していたのです。

(1)奨学金の過大請求問題とは

保証人には「分別の利益」があり、奨学金を借りた本人が返済できなくなった場合、保証人が返済義務を負うのは残債務を保証人の数で頭割りした金額です。

例えば、保証人と連帯保証人が1人ずついて、奨学金の残債務が300万円である場合、保証人には分別の利益があるため、半額の150万円のみを返済すれば足ります。

ところが日本学生支援機構は、分別の利益について特段の説明をすることなく、保証人に対して未返済金の全額を請求していました。

その数は、2018年から過去8年間にわたり延べ825人、請求総額約13億円にもなります。

貸し手側にしてみれば、自分が損をする情報をあえて伝える必要はない、という理論なのでしょうが、日本学生支援機構が公的機関であることから、その道義的責任が問題視されるようになりました。

(2)札幌地裁判決|奨学金過払い分の返還を命じる

2021年5月13日、奨学金の保証人に対する過大請求問題に関連する裁判で、札幌地裁が注目すべき判決を下しました。

この裁判は、保証人には半額しか支払い義務がないにもかかわらず、日本学生支援機構から残債務「全額」の請求をされたとして、原告2人が過払い金の返還などを求めたものです。

札幌地裁の高木勝己裁判長は、「保証人の自己の負担を超えた支払いは無効」であるとし、日本学生支援機構に対して過払い金を返還するよう命じました。

(3)奨学金の返済請求をされた場合は分別の利益の主張を

保証人であるあなたに奨学金の返済を請求された場合、まずは分別の利益を主張しましょう。

上記裁判の弁護団によれば、日本学生支援機構が保証人に対して未返済金の全額を請求した825件中、分別の利益の主張を受け、これに応じたものは31件しかありませんでした。

分別の利益を主張した件数自体が少なかったようですが、その理由としては、以下の2点が考えられます。

  • 保証人が、自己に分別の利益があることを知らなかった
  • 日本学生支援機構が保証人に対して、分別の利益に関する説明をしていなかった

いずれにせよ、分別の利益についての知識さえあれば、保証人が自己の負担すべき金額を超えて奨学金の返済をさせられる、といった事態は回避できるはずです。

(4)本人や他の保証人と支払いについて話し合うことも大切

奨学金の保証人は、連帯保証人1人、保証人1人の合計2名で構成されるケースがほとんどです(機関保証を利用する場合を除く)。

日本学生支援機構では、連帯保証人は父母から、保証人は父母以外かつ4親等以内の親族から選ぶことを原則としています。

奨学金を借りた本人や連帯保証人は、保証人の親族であることがほとんどですので、まずは、裁判外で支払いについて話し合ってみることが大切です。

奨学金の返済が遅れると、延滞金が課せられ、返済しなければならない金額がどんどん増えてしまいます。

本人はもちろん、保証人が負担すべき返済額を増やさないためにも、早期に話し合いをして返済の目途をつけましょう。

4、奨学金の保証人が返済した後に取り得る手段とは

奨学金を借りた本人に代わって保証人が返済した場合、保証人は本人や他の保証人に対してその返還を請求することができます。

これを「求償権」といい、本人と他の保証人、それぞれに対して以下のような請求をすることが認められています。

(1)本人に対して求償請求をする

保証人が奨学金の返済をした場合、本人に対して以下のような求償請求をすることができます。

①保証人が返済義務を負う部分について求償請求できる範囲

保証人が、法律上返済義務を負う部分について本人に代わり返済した場合、本人に対して以下のような費用を求償請求することができます(民法459条)。

  • 返済のために支出した金額
  • 返済日以後の法定利息
  • 返済のために支出した費用
  • その他の損害賠償

②保証人が返済義務を負わない部分について求償請求できる範囲

保証人が奨学金の未返済金全額を返済するなど、法律上返済義務を負わない部分について返済した場合も、本人に対して求償請求することは可能です。

ただし、この場合の求償請求は、本人(主債務者)がその当時に利益を受けた限度においてのみ認められます(民法462条)。

例えば、保証人が自己の負担すべき返済額150万円を超え、300万円の返済をしたとします。

これらのうち、保証人が返済義務を負う150万円については、返済日以後の法定利息や返済のために支出した費用、その他の損害賠償について求償することができます。

一方、保証人が返済義務を負わない残りの150万円は、返済時点において主債務者が利益を受けた限度、つまり150万円についてのみ求償することができ、返済日以後の法定利息や損害賠償などの請求はできません。

(2)他の保証人に対して求償請求をする

保証人が、法律上返済義務を負わない部分についても奨学金の返済をした場合、自己の負担部分を超える金額について、他の保証人に求償請求することが可能です。

ただし、この場合の求償請求は、他の保証人がその当時利益を受けた限度においてのみ認められます(民法465条)。そのため、保証人が負担すべき金額を超えて返済した金額については求償請求ができても、返済日以後の法定利息や損害賠償などの請求をすることはできません。

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5、奨学金の返済で困った場合は弁護士へ相談を

奨学金の返済に関する問題をスムーズに解決したいならば、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、奨学金を借りた本人の資力や他の保証人の有無、債権者からの請求内容など様々な事情を勘案したうえで、主張すべきこと・やるべきことについて的確なアドバイスを受けられます。

また、本人や他の保証人と裁判外で話し合いをする場合、あるいは裁判になった場合も、弁護士がついていれば安心です。

経済的な問題から保証人として奨学金の返済をすることが難しいとしても、弁護士は最適な解決策を提案してくれるはずです。

まとめ

今回は、奨学金の保証人をめぐる問題について解説しました。

保証人には催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の利益、というように様々な権利が認められており、これを知っているかどうかで、債権者から返済を請求された場合に取れる手段が変わってきます。

本人の資力や他の保証人の有無、人数によっては、返済を断ったり、返済額を減らしたりできる可能性もあります。 

奨学金は、延滞期間が長くなればなるほど延滞利息がかさみ、保証人が負担すべき返済額が増えてしまいます。

奨学金の保証人になったことで問題を抱えている方は、なるべく早く弁護士に相談しましょう。

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