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捜索差押許可状とは?警察が家宅捜索に来たら拒否できない?

捜索差押許可状(そうさくさしおさえきょかじょう)とは、警察などの捜査機関の捜索・差押えについて裁判所が許可を出したことを示す書面のことです。
したがって、捜索差押許可状が呈示されると、捜査機関による家宅捜索や差押えは拒絶できません。

ただし、捜索・差押えができるのは捜索差押許可状に記載された範囲にとどまるため、捜査機関による理不尽な差押えや別件を視野に入れた違法な捜索へは厳しく対応する必要があります。

そこで今回は、

  • 捜索差押許可状の内容
  • 捜索差押許可状が呈示されたときの確認ポイント
  • 捜索差押許可状によって押収されるものの範囲
  • 捜索差押許可状呈示後の行き過ぎた捜査活動への対処法

などについて、弁護士がわかりやすく解説します。

家宅捜索が行われるご心配のある方や、すでに実施された捜索・差押えの内容や手続きに疑問を抱かれている方の手助けになれば幸いです。

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1、捜索差押許可状とは

捜索差押許可状とは

そもそも捜査活動の目的は「逮捕・起訴に必要な証拠の収集」です。
犯罪事実の証明に役立つ物的証拠(書証・証拠物・現場の状況など)や人的証拠(被疑者の供述・第三者の供述・鑑定など)を収集するために、さまざまな捜査活動が実施されています。

そして、このような多様な捜査活動のうち、捜索・差押えが行われるときに先立って提示されるのが捜索差押許可状です。

まずは、捜索差押許可状の意義を確認するとともに、そもそも捜索・差押えがどのような捜査活動なのかについて見ていきましょう。

(1)そもそも捜索・差押えとは

捜索とは、証拠物や人などの発見を目的として、一定の場所・物・人の身体に対して実施される強制処分のことです。
また、差押えとは、捜索によって発見された証拠物などを強制的に取り上げる強制処分を意味します(刑事訴訟法第218条1項)。

たとえば、窃盗の被疑事実で家宅捜索が行われる場合、「被疑者の自宅に残されている盗品や犯行時の衣服・バッグなどの証拠物の収集を目的として自宅内に捜査が及ぶこと」を捜索と呼び、「自宅における捜索によって得られた盗品や証拠物などを捜査機関が取り上げること」が差押えにあたります。

このように、捜索・差押えはそれぞれ別々の強制処分ですが、実務上、捜索して発見した物を差し押さえるという連続性をもった捜査活動として行われています。

(2)捜索・差押えの要件

捜査機関による捜索・差押えは無条件に実施することはできません。なぜなら、捜索・差押えは対象者の権利や利益を強く侵害する性質を有する強制処分だからです。

そこで、このような強制処分である捜索・差押えが許されるのは、原則として、捜索差押の目的物等が特定され、「正当な理由がある」と裁判官が判断し、捜索差押許可状が発付されたときだけとされます。

そして、捜索・差押えをする「正当な理由」があると判断されるのは、以下の要件を満たす場合です。

  • 犯罪の嫌疑が存在すること
  • 捜索・差押えの目的物が捜索場所に存在する蓋然(がいぜん)性があること
  • 捜索・差押えの目的物と犯罪との関連性があること
  • 捜索・差押えの必要性・相当性があること

捜索・差押えは「証拠の確保」という目的で実施されるものですが、捜索・差押えが実施される段階ではすでに捜査機関が犯罪事実と被疑者についてある程度の情報を掴んでいる状態だと考えられます。

(3)要件を満たす場合に発付されるのが捜索差押許可状

捜索・差押えは、捜査機関側にとって「証拠の確保」という意義を有するものです。
これに対して、捜索・差押えを実施される被疑者側にとっては、「プライバシーの侵害」という法益侵害を伴うものでしかありません。
つまり、捜索・差押えは「証拠確保の必要性」と「プライバシーの保護」という2つの要請が衝突する場面なので、慎重かつ丁寧に運用する必要があります。

そこで、捜査機関が捜索・差押えを実施する際には、事前に裁判官による審理を経たうえで、捜索・差押えの要件を満たすと判断された場合にのみ発付される「捜索差押許可状」が必要だとされています(刑事訴訟法第218条1項)。

このように、公平な立場である裁判官による審理・判断を経ることによって、捜索・差押えという、対象者へのプライバシー権や生活の平穏、財産権などの侵害を伴う強制処分が合憲と扱われます(令状主義、日本国憲法第35条)。

なお、捜索と差押えは理屈上別々の強制処分ですが、実務上は捜索と差押えがセットで行われることが多いため、「捜索差押許可状」という1つの令状で処理されるのが通例です。

2、突然、警察が家宅捜索に来た!拒否はできない?

突然、警察が家宅捜索に来た!拒否はできない?

捜査機関は入念な準備を経て捜索・差押えに踏み出しますが、捜索・差押えの対象者は実際に家宅捜索が実施される段になってはじめて強制捜査の手が及んでいることを知るのが一般的です。

(1)事前の連絡はない

いわゆる「ガサ入れ」は対象者にとっていきなり実行されるものです。
捜索・差押えの前に、捜査機関から連絡が来ることはありません。なぜなら、事前に被疑者や関係施設に対して捜索・差押えの情報を提供すると、証拠を処分されたり隠蔽されたりする危険性が極めて高まるからです。

当然ながら、捜索差押許可状を発付した裁判官からの連絡なども一切ありません。

(2)捜索差押許可状を示されたら拒否できない

捜索・差押えは強制処分なので、対象者は当該処分を拒絶できません。なぜなら、捜索差押許可状が発付されている以上、捜索・差押えによる対象者への権利侵害は裁判所によって許可されたものだからです。

たとえば、家宅捜索にやってきた捜査官に対して、「5分だけ待って欲しい」「夫が帰ってくるまでは自宅に入らないで欲しい」などとお願いしても一切受け入れられないでしょう。

捜索差押許可状に基づく捜索・差押えは捜査機関による適法な公務であるため、捜索差押を防ぐために捜査官に対して暴力をふるったり、他人の犯罪行為に関わる証拠を隠したりすると、公務執行妨害罪や証拠隠滅罪などで現行犯逮捕される危険性もあります。

捜索差押許可状が発付されている以上、捜索・差押えを拒絶するのではなく、後述のように、令状に記載された範囲で適法に捜査活動が実施されているかをチェックする形で適切な防御活動とするべきでしょう。

(3)例外的に拒否できるケース

押収拒絶権が認められるケースに限って、捜索・差押えを拒絶できます。

押収拒絶権とは、医師・歯科医師・助産師・看護師・弁護士・弁理士・公証人・宗教の職に従事する人またはかつて従事していた人にだけ認められる拒否権のことです(刑事訴訟法第105条)。
これらの人が捜索・差押えを受ける対象になった場合、「業務上委託を受けて保管・所持する他人の秘密に関するもの」については差押えを拒むことができます。

逆にいえば、押収拒絶権を行使できるような限定的な状況でない限り、捜索・差押えは拒絶できない厳しい強制処分だということです。

3、捜索・差押えでどのような物が差し押さえられる?

捜索・差押えでどのような物が差し押さえられる?

捜索差押許可状に基づく捜索・差押えはほとんどのケースで拒絶できませんが、これらの強制処分の対象者にとって気になるのは、差押えによって取り上げられる物の範囲と、取り上げられた後の行方でしょう。

(1)捜索差押許可状の記載された物だけ

捜索・差押えによって取り上げられるのは、捜索差押許可状に記載された物だけです。

したがって、被疑事実や令状に記載された物とは関係のない私物が差押えられることはありません。

(2)差押えと没収の違い

没収とは、犯行に使用されたもの・犯罪によって得られたものなど、犯人が所有する犯罪関係物を取り上げる措置のことです(刑法第19条)。
原則としてこれらのものを犯人以外の第三者が所有していると没収できませんが、犯罪の後、当該第三者が事情を知って入手したときには没収されます。

たとえば、窃盗事案における盗品、強盗事案における被害者のバッグ・財布、殺人事案における凶器などが没収対象です。

没収で取り上げられた財物などは犯人に還付されません。なぜなら、犯罪によって得られたものなどは本来の所有者の元に戻すべきだからです。

これに対して、差押えは起訴・有罪の証拠集めのために実施されるものなので、捜査機関が留置する必要性が消滅した場合には、差し押さえられたものは犯人の手元に戻ってきます。

(3)没収されなかったものは返却される

捜索差押許可状に基づく捜索・差押えによって取り上げられたものは、没収手続きの対象にならない限り、「留置の必要がない」と判断されたタイミングで還付されます(刑事訴訟法第123条1項)。

たとえば、不起訴処分・略式手続きによる罰金刑などで事件が終結すれば、遅くともその時点ですべての押収物が還付されるでしょう。

また、捜査が継続している段階でも、所有者・所持者などから還付請求をすることは可能です。たとえば、スマートフォンや財布、クレジットカードのように、留置されたままでは日常生活に支障が出るものについては、できるだけ早期に返却して欲しいと考えるのは当然です。

ただし、押収物を還付するか否かを決定するのは捜査機関側なので、「裁判所に提出する予定があるから」などの理由を呈示されると、判決言い渡しまで還付時期が遅れることも少なくありません。

早期に返却を求めるものがあるなら、還付請求をしたうえで(刑事訴訟法第123条2項)、弁護人に意見を添えてもらいましょう。

4、警察が家宅捜索に来たときに注意すべきポイント

警察が家宅捜索に来たときに注意すべきポイント

警察による家宅捜索が実施される際には、以下4つのポイントに注意をして被疑者側・被告人側として最善の防御活動を展開しましょう。

  • 家宅捜索開始前に捜索差押許可状の呈示を求める
  • 捜索差押許可状に記載された捜索場所の範囲を確認する
  • 捜索差押許可状に記載された差押え目的物の範囲を確認する
  • 別件捜索・差押えが行われないか注意する

(1)捜索差押許可状の呈示を求める

家宅捜索を受けるときには、捜索・差押えが実施される前に、捜索差押許可状の呈示を求めましょう。

もし捜査関係者が捜索差押許可状を呈示しなければ捜索・差押え自体を拒絶できます。
なぜなら、令状の呈示は法律上の要請なので、捜索差押許可状の呈示を欠く捜索・差押えは違法な強制処分だからです(刑事訴訟法222条1項、同110条)。

ただし、捜索・差押えの対象物が短期間のうちに破棄隠匿されるおそれがあるときには、捜索・差押えを実行した後に捜索差押許可状を呈示しても違法とは判断されないこともあります(最高裁平成14年10月4日決定)。

なお、逮捕に伴って実施される捜索・差押えの場合は、捜索差押許可状の発付なしで実施することが認められているため、令状が呈示されることはありません。
これは、逮捕現場には被疑者の犯行を示す物的証拠などが存在する蓋然性があるため、裁判官による事前の審査を経る必要性が低いと考えられているからです(刑事訴訟法第220条1項2号)。

(2)捜索場所の範囲を確認する

家宅捜索を受けるときには、捜索差押許可状及び別紙に記載されている「捜索すべき場所、身体、物」の項目を確認して、捜索場所の範囲を確認しましょう。
なぜなら、捜索差押許可状の効力が及ぶのは、裁判官による審査を経た令状に記載された範囲に限られるので、捜索場所以外への捜索は違法だからです。

実際の捜索差押許可状では、捜索場所を市区町村・番地・部屋番号で特定されています。また、当該部屋に所在する人も捜索の対象とする場合には、その旨も記載されているのが一般的です。

(3)差押え目的物の範囲を確認する

捜索差押許可状及び別紙に記載されている「差し押さえるべき物」の欄を確認して、差押え目的物の範囲も確認してください。

たとえば、覚せい剤取締法違反の被疑事件に関連する捜索・差押えであれば、「覚せい剤、同容器類、小分け用具、注射器具、吸引具類、名刺、住所録、私製電話帳、被疑者使用にかかる携帯電話」などのように、差押え目的物が細かく記載されているのが一般的です。

ただし、実際の捜索差押許可状では、具体的な押収予定物の末尾に「その他本件に関係するメモ、資料など」という文言が付されています。
具体的な差押物の例示があり、例示に準じるものを指していることが明らかな場合には、事件との関連性や差し押さえの必要性が認められる限り、押収され得ることに注意が必要です。

(4)別件捜索・差押えに要注意

別件捜索・差押えとは、「本件の証拠を発見・収集する目的で、別件の捜索・差押えをすること」です。

たとえば、捜査機関の本音は覚せい剤事犯の検挙(=本件)ですが、覚せい剤取締法違反について捜索差押許可状を請求できるほどの確たる証拠を掴んでいないときに、別件の窃盗罪で捜索差押許可状を請求して家宅捜索に及ぶ捜査手法が挙げられます。
窃盗罪の家宅捜索を装って被疑者の自宅に侵入し、覚せい剤などを発見して現行犯逮捕を狙うという手法です。

そもそも本件を主目的とした別件捜索・差押えは違法です。
なぜなら、本来強制処分である捜索・差押えは裁判官による審査を経て令状発付を受けなければいけないところ、別件での令状請求によって捜索・差押えが認められてしまうと、本件についての令状審査が潜脱されることになるからです。

したがって、捜索・差押えが行われる際には、捜査員の動きを注視する必要があります。
そして、捜索差押許可状に記載された範囲を超える捜索・差押えの疑いがあるときには、捜査員に対して厳しく抗議するべきでしょう。

5、捜索・差押えの予兆があれば弁護士に相談を

捜索・差押えの予兆があれば弁護士に相談を

捜索・差押えは逮捕手続き前に実施されることも少なくありません。

もし、捜索・差押えの予兆を掴んだなら、すみやかに弁護士へ相談するべきでしょう。

(1)捜索・差押えの予兆とは

捜査機関が捜索・差押えに踏み切るのは、犯罪事実の可能性(捜査の端緒)を察知したときです(刑事訴訟法第189条2項)。

捜査の端緒になるものは、以下が代表例として挙げられます。

  • 被害届の提出
  • 被害者や第三者による通報
  • 警察や検察への告訴・告発
  • 参考人として任意の事情聴取を受けた
  • 職務質問
  • 現行犯逮捕
  • 検視

(2)捜索・差押えには弁護士が立ち会うことが可能

捜査機関による捜索・差押えには弁護人の立会権が認められていません。
つまり、いきなり実施される捜索・差押えに対して、「弁護士が来るまで待って欲しい」と願い出ても聞き入れてもらえないということです。

ただし、弁護人の同席が禁止されているわけでもありません。
捜索・差押えの予兆を察知した段階で弁護士に話を通しておけば、いざ捜索・差押えが実施されたときに、すみやかに現場に来て立ち会ってもらえるということです。

そして、捜索・差押えの前に弁護士と相談しておくことで、以下のメリットが得られます。

  • 捜索・差押えが実施される前から取り調べなどに向けた対応方法を相談できる
  • 任意での事情聴取などへの誠実な対応方法が分かるので捜索・差押え自体を回避できる可能性がある
  • 弁護士が立ち会うことで捜査機関側にプレッシャーをかける
  • 捜索差押許可状の内容を確認し、記載範囲を超える捜索・差押えに抗議
  • 押収物それぞれについて理由を確認

(3)違法な捜索・差押えには弁護士が抗議してくれる

違法な捜索・差押えに対抗する手段は以下のとおりです。

  • 捜索・差押えの現場で証拠収集方法に異議を唱える
  • 捜索・差押えの許可の取り消しを求めて準抗告を申し立てる
  • 押収処分の取り消しと物品の還付を求めて準抗告を申し立てる
  • 刑事裁判において違法収集証拠排除を主張・立証する

このような対抗方法に踏み出すためには、実際に行われた捜索・差押えを確認しながら違法性をチェックする必要があります。
しかし、実施されている捜査活動が捜索差押許可状の範囲を超えているか確認するのは簡単ではないでしょう。

したがって、違法な捜索・差押えに対して適切な防御活動をとるためには、弁護士に相談し、可能な限り立ち会ってもらう必要があると考えられます。
捜査の手が及んでいると感じたときには、すみやかに刑事事件の実績豊富な弁護士までご相談ください。

捜索差押許可状に関するQ&A

Q1.捜索差押許可状とは

捜索差押許可状(そうさくさしおさえきょかじょう)とは、警察などの捜査機関の捜索・差押えについて裁判所が許可を出したことを示す書面のことです。
したがって、捜索差押許可状が呈示されると、捜査機関による家宅捜索や差押えは拒絶できません。

ただし、捜索・差押えができるのは捜索差押許可状に記載された範囲にとどまるため、捜査機関による理不尽な差押えや別件を視野に入れた違法な捜索へは厳しく対応する必要があります。

Q2.捜索差押許可状を示されたら拒否できない?

捜索・差押えは強制処分なので、対象者は当該処分を拒絶できません。なぜなら、捜索差押許可状が発付されている以上、捜索・差押えによる対象者への権利侵害は裁判所によって許可されたものだからです。

たとえば、家宅捜索にやってきた捜査官に対して、「5分だけ待って欲しい」「夫が帰ってくるまでは自宅に入らないで欲しい」などとお願いしても一切受け入れられないでしょう。

捜索差押許可状に基づく捜索・差押えは捜査機関による適法な公務であるため、捜索差押を防ぐために捜査官に対して暴力をふるったり、他人の犯罪行為に関わる証拠を隠したりすると、公務執行妨害罪や証拠隠滅罪などで現行犯逮捕される危険性もあります。

捜索差押許可状が発付されている以上、捜索・差押えを拒絶するのではなく、後述のように、令状に記載された範囲で適法に捜査活動が実施されているかをチェックする形で適切な防御活動とするべきでしょう。

Q3.捜索・差押えでどのような物が差し押さえられる?

捜索差押許可状に基づく捜索・差押えはほとんどのケースで拒絶できませんが、これらの強制処分の対象者にとって気になるのは、差押えによって取り上げられる物の範囲と、取り上げられた後の行方でしょう。

①捜索差押許可状の記載された物だけ

捜索・差押えによって取り上げられるのは、捜索差押許可状に記載された物だけです。

したがって、被疑事実や令状に記載された物とは関係のない私物が差押えられることはありません。

②差押えと没収の違い

没収とは、犯行に使用されたもの・犯罪によって得られたものなど、犯人が所有する犯罪関係物を取り上げる措置のことです(刑法第19条)。
原則としてこれらのものを犯人以外の第三者が所有していると没収できませんが、犯罪の後、当該第三者が事情を知って入手したときには没収されます。

たとえば、窃盗事案における盗品、強盗事案における被害者のバッグ・財布、殺人事案における凶器などが没収対象です。

没収で取り上げられた財物などは犯人に還付されません。なぜなら、犯罪によって得られたものなどは本来の所有者の元に戻すべきだからです。

これに対して、差押えは起訴・有罪の証拠集めのために実施されるものなので、捜査機関が留置する必要性が消滅した場合には、差し押さえられたものは犯人の手元に戻ってきます。

③没収されなかったものは返却される

捜索差押許可状に基づく捜索・差押えによって取り上げられたものは、没収手続きの対象にならない限り、「留置の必要がない」と判断されたタイミングで還付されます(刑事訴訟法第123条1項)。

たとえば、不起訴処分・略式手続きによる罰金刑などで事件が終結すれば、遅くともその時点ですべての押収物が還付されるでしょう。

また、捜査が継続している段階でも、所有者・所持者などから還付請求をすることは可能です。たとえば、スマートフォンや財布、クレジットカードのように、留置されたままでは日常生活に支障が出るものについては、できるだけ早期に返却して欲しいと考えるのは当然です。

ただし、押収物を還付するか否かを決定するのは捜査機関側なので、「裁判所に提出する予定があるから」などの理由を呈示されると、判決言い渡しまで還付時期が遅れることも少なくありません。

早期に返却を求めるものがあるなら、還付請求をしたうえで(刑事訴訟法第123条2項)、弁護人に意見を添えてもらいましょう。

まとめ

捜索差押許可状は、強制処分である捜索・差押えを実施するにあたって必要な令状です。捜索差押許可状が発付されるとほとんどのケースで捜索・差押えを拒絶できません。

したがって、少しでも有利な状況を作り出すためには、事前に弁護士と相談した上で、任意の取り調べに丁寧に応じて捜索・差押えの必要性を生じさせないか、違法な捜索・差押えが実施されないように防御活動を展開する必要があると考えられます。
捜査の進捗状況によってとるべき対抗策は異なるので、刑事弁護に力を入れている弁護士に相談して、現時点で有効な対策を検討してもらいましょう。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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