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訴訟手続における「意見陳述」の意味とは?弁護士が解説

意見陳述

交通事故や傷害といった刑事上のトラブルでは、被害者の「意見陳述」が事件解決に大きく影響することがあります。
しかし、実際に事件の被害者になってしまった方でも意義が一切分からないまま事件が終了することは決して珍しくありません。

その結果、被告人に対する厳罰を望んだものの結果としては寛大な判決が出てしまったり、十分な損害の賠償を実現させることができないといった悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。

したがって、刑事裁判や損害賠償請求訴訟などの民事裁判に巻き込まれた方はもちろんのこと、そうでない方も初歩的な法律用語として「意見陳述」の意味はきちんと押さえておきたいところです。

本記事では、何らかのトラブルの被害者となったときのために、意見陳述書の基本的な書き方も紹介します。
目を通していただくことで、弁護士に依頼するメリットや必要性を見極めることに役立つでしょう。
本記事がお役に立てば幸いです。

刑事裁判については以下の関連記事をご覧ください。

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1、意見陳述とは

意見陳述とは、主に刑事裁判において、当事者の意見や考えを書面や口頭で伝えることを言います。
話す内容は場面と当事者によって様々ですが、裁判官の判断に大なり小なり影響する重要な手続きとして扱われます。

(1)「陳述」の意味

ここで「陳述」という言葉をおさらいしておきましょう。
聞きなれない言葉ですが、一般的な文書や表現でも、伝えたいことを口頭で述べることを指して使われることがあります。

裁判手続でも、当事者が口頭や書面で法律上の主張をし、又は事実を供述することを指して使われることがあります。

(2)被害者による意見陳述の効果

刑事事件の被害者による意見陳述は、被告人の刑罰の量刑資料とすることができると解されています。
また、刑事裁判の記録に残されることで、その後に提起されることがある民事の損害賠償請求訴訟でも審理の材料とされることがあります(ただし、検察官から開示を受けた刑事記録を民事訴訟で使用することは禁止されており、民事裁判の資料とするためには嘱託等の手続が必要になります)。

注意したいのは、被害者が強い苦痛や怨恨の情を訴えたからと言って、必ずしも厳罰や慰謝料増額に繋がるとは限らない点です。
刑罰はあくまでも適式な証拠調べを経た証拠に基づいて、過去の事例と比較しながら決定されるもの……と理解しておきましょう。

2、刑事事件における意見陳述の種類

ここで一度、刑事事件における意見陳述の機会を整理しておきましょう。
大別すれば、「被告人がする場合」と「事件の被害者がする場合」の2つとなります。

まずは被告人に与えられた機会から確認してみましょう。

(1)被告人による意見陳述

被告人による意見陳述の機会は、刑事事件の手続(公判)を通して最低3回設けられます。
手続の流れにそって順に説明します。

①起訴状朗読後の意見陳述(冒頭手続)

被告人による第1の意見陳述の機会は、検察官による「起訴状朗読」の後にあります。

起訴状とは、検察官が主張する犯罪事実(公訴事実)が記載され、公判の対象となる事項をを明らかにするためのものです。
起訴状の内容を聞いた被告人および弁護人は、事実かどうかを含めて意見を述べる機会が与えられます(刑訴法291条4項)。

②弁論(証拠調後の意見陳述)

冒頭陳述が終わると、犯罪の事実や被告人側が主張する事実を証明するための「証拠調べ」が行われます。
証拠物を「展示」という方法で調べたり、証人を呼んで「尋問」をする手続です。

証拠調が終わった後は、検察官だけでなく、被告人や弁護人にも意見陳述する機会が与えられます(法第293条2項)。

(2)被害者による意見陳述

被害者が意見陳述をすることができる機会は、「心情意見陳述制度」を利用するか、それとも「被害者参加制度」を利用するかで異なります。
詳細に進む前に、対象となる事件や陳述の効果等の違いを分かりやすく整理します。
なお、条件を満たしてる限り、「心情意見陳述制度」と「被害者参加制度」の両方を利用することも可能です。

比較項目

心情意見陳述制度

被害者参加制度

対象となる事件

全事件

一定の重大な犯罪

意見陳述の方法

あらかじめ検察官に申し出る

検察官への申出+裁判所の許可

意見陳述できる人

被害者等or法定代理人

被害者等or法定代理人or委託を受けた弁護士

意見陳述できる範囲

被害に関する心情その他の被告事件に関する意見

事実及び法律の適用についての意見

意見陳述の効果

情状証拠になる

情状証拠にならない

①心情意見陳述制度(刑訴法第292条の2)

心情意見陳述制度では、「被害に関する心情その他の被告事件に関する意見」を公判で述べることができる制度です。

制度を利用するには、あらかじめ被害者本人とその法定代理人・一定の親族のいずれかから検察官に申し出なくてはなりません。
申出を受けた検察官は、意見を付して裁判所に通知します(第2項)。
その上で、意見陳述の方法を「陳述に代えた書面提出」とするか、あるいは「公判期日に出席しての陳述」か、裁判所側で取り決められます(第7項)。

本制度のポイントは、陳述又は陳述に代わる書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない点です(第9項)。

ただし、陳述した内容は情状証拠とすることができると解されていて、裁判官が下す判決に影響を与える場合があります。

②被害者参加制度(刑訴法第316条の33~39)

平成19年からは、被害者にとって心情意見陳述制度よりも多くのことができる「被害者参加制度」が導入されました。
本制度が利用できるのは、以下のように一定の重大な犯罪に係る事件に限られます(第316条の33)。

【被害者参加制度の対象となる事件】

  1. 殺人・傷害などの故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
  2. 強制わいせつ・強制性交等などの罪
  3. 逮捕および監禁の罪
  4. 略取・誘拐・人身売買の罪
  5. 2~4の犯罪行為を含む他の犯罪
  6. 過失運転致死傷などの罪
  7. 1~5の未遂罪

本制度で参加が認められた場合、重要な意見陳述の機会として弁論としての意見陳述をすることができます。

被害者参加制度で注意したいのは、意見陳述をしても情状証拠にはならない点です(第316条の38第4項)。
実際の運用では、別途認められている「被告人への質問」(第316条の37各項)等を交え、望む処罰が決定されるように活動することが一般的です。

3、意見陳述書の書き方

以降では、刑事事件の被害者として意見陳述をする場合を考えてみましょう。

実際に意見陳述をする際は、事前に作成した書面を口頭で読み上げることが多いでしょう。
したがって、期日当日に考えて話すよりも、事前に準備する書面の内容が重要になってきます。

そこで、意見陳述の内容が記載された書面について説明します。

(1)必ずしも客観的事実である必要はない

裁判官が聞きたいのは、被害者としてどう感じているかという心情面であることが多いでしょう。
犯罪事実の立証は検察官が証拠物や書証、尋問手続きから立証を試みており、情状に関する資料も一通り提出されているはずです。
そこで、被害者としては「いま考えていること・感じていること」を自分の目線でまとめることができれば十分です。

(2)時系列順に並べて伝わりやすい文面を心がける

「今考えていること・感じていること」を自分の目線でまとめれば十分とはいっても、最低限伝わりやすい内容であることは大前提になります。基本的には、時系列順に整理して記載するとわかりやすいでしょう。
例えば、「事件前日までの生活」から始まり、「事件当日の朝から夜までの出来事」と続けて、「事件後の生活と現在の気持ち」と記載すれば裁判官にも伝わりやすい内容になることが多いと思います。

書面には無理に法律用語を使用する必要はまったくありません。
平易な日本語で誰が聞いても理解ができ、自分の気持ちが伝わりやすいように工夫する必要があります。
家族や信頼できる第三者に聞いてもらい、感想を聞いてみることも有効です。

【例】意見陳述書の構成

  • 被害者の人柄や略歴
  • 事件当時の様子、感じたこと
  • 加害者に対して指摘したいこと(責任・悪質性・事件の結果等)
  • 被害者に落ち度がないこと
  • 事件当時の加害者の態度(謝罪の有無等+対する被害者の感じ方)
  • 加害者に対する気持ち(“厳正な処分を希望する”等)

(3)被害者参加制度を利用する場合の注意点

被害者参加制度と心情意見陳述制度を併用する場合は、「心情意見陳述書」と被害者論告のための「弁論要旨」の2種類を作成します。
前者は被害者の考えや気持ちを中心に記入していくことになりますが、後者は事実や法律の適用に関する専門的見解を含む書面になりますので、作成は弁護士に依頼をすることが一般的です。

4、意見陳述書の作成&提出後のポイント

以上で説明したのは、意見陳述書の体裁面に関することです。
内容そのものに関しては、作成前に必要な準備をし、しっかり分析をして記載する必要があります。

また、期日に出頭した際の準備もしておきましょう。

(1)事前の情報入手&分析を徹底する

作成前の準備段階では、事件について必要な情報を得ることが大切です。
公判までに検察官が集めた資料の開示(謄写)を受けるなど、事件に関する資料を収集しましょう。

通常は刑事記録の開示は公判期日後にしか認められませんが、被害者参加制度を利用した場合には期日前でも開示に応じてもらえます(平成26年10月21日最高検企第436号)。

事件について公判請求されてから初公判までは2か月程度が一般的ですので、被害者参加制度を利用して前もって記録を入手し、余裕を持って意見陳述等の参加手続に備えられます。

(2)内容整理と期日の出席は弁護士に任せる

公判期日に出頭して被告人と直接対面することは避けたい場合や、公開の法廷で発言することに抵抗がある方もいると思います。
そういう場合は、期日の出席は代理人として選任した弁護士に任せることもできます。
弁護士と打ち合わせをしながら事前に作成した書面を弁護士に朗読してもらうこともできます。

まとめ

刑事事件で行われる「意見陳述」は、裁判官の判断に影響を与えうるものです。

実際に公判で意見を述べる機会があるとすれば、被害者の立場で事情を訴え、被告人に厳しい罰を求める場合がほとんどでしょう。
その場合は、制度の選択に加えて、期日前に提出する書面の内容もしっかり検討しなければなりません。

裁判所で意見を述べることは、被害者が死亡した事件または重度障害を負った事件などを考えると、精神的に大きな負担がかかることでしょう。
裁判の場で、法律のルールに従って被害者や被害者家族のお気持ちを裁判官にしっかり伝えることは簡単なことではありません。
重大事故等もしものことがあったら、まずは法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

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