過失割合10対0では、示談をどのように進めればよいのでしょうか。
交通事故に遭うと、被害の程度に応じて示談金をもらうことができます。
それは当然のことですが、交通事故には過失割合がつきものです。
自分は何も悪くないと思っていても、実際には過失が認められることも少なくありません。
一方、本当は過失割合が10対0の事故でも、加害者や保険会社がこちらの過失を主張してくることもよくあります。
受け取れる示談金の額は過失割合によって大きく左右されてしまいます。
そのため、過失割合の判断を誤ると本来もらえるはずの示談金をもらえなくなってしまいます。
また、こちら側にも過失があるということは、相手方に生じた損害も一部賠償しなければならなくなるということでもあります。
過失割合が10対0で自分に非がない交通事故の示談で損しないためには、次の3つのポイントを知っておくことが重要です。
- 過失割合が10対0になるのはどのようなケースか
- 過失割合が10対0であることを証明する方法
- こちらの過失を主張する保険会社と交渉する方法
交通事故に遭って過失割合が10対0であることを主張したい方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
ちなみに、よく「10:0(じゅうぜろ)の事故」と表現しますが、実務上は過失割合を5%刻みで考えることが多いため、「100:0(ひゃくぜろ)」と表現するのがより正確です。
しかし、本稿では馴染みやすい「10:0(じゅうぜろ)」という表現に併せて記述しています。
交通事故での過失割合でもめてしまうパターンと対処法については以下の関連記事で詳細に解説しています。ぜひご参考ください。
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目次
1、過失割合10対0を知る前に|そもそも交通事故の過失割合とは
まずは、そもそも過失割合とはどういうものなのか、なぜ過失割合を決めなければいけないのかをご説明します。
(1)過失割合とは
過失割合とは、交通事故の当事者である加害者と被害者のどちらにどの程度の過失があったのかを示す割合のことです。
発生した損害の全額を10として責任の負担割合を決定するわけですから、交通事故の当事者が2人である場合には、過失割合は足して10になります(当事者が3人以上いる多重事故の場合には、1:2:7といった形で過失割合が決められます)。
(2)過失割合を決める意味
過失によって交通事故を起こしたら、相手の損害を賠償する義務を負います。
ただし、被害者にも過失がある場合に、加害者に全額の損害賠償義務を負わせるのは不公平です。
そのため、被害者の過失の程度に応じて損害賠償額は減額されます。
過失割合によって損害賠償額を減額することを過失相殺といいます。
例えば、過失割合7対3の場合は、被害者が受け取れる損害賠償金が30%減額されます。
損害の総額が1,000万円だとすれば受け取れる示談金は700万円に減らされてしまうのです。
また、この場合、被害者も加害者に生じた損害のうち30%を支払う義務があります。
仮に加害者に生じた損害の総額が100万円だとすれば、被害者も加害者に対し、30万円を支払わなければなりません。
過失割合10対0であれば、過失相殺が行われず満額の損害賠償金を示談で受け取ることができます。
2、全く過失がないのにどうして過失ありにされてしまうの?
自分には全く過失がないはずなのに、「過失あり」と言われると納得できないのも無理はありません。
では、どうして「過失あり」にされてしまうのでしょうか。
(1)加害者側の保険会社は被害者の過失を主張することにメリットがある
加害者が任意保険に加入していれば、保険会社が加害者に変わって示談金を負担します。
そのため、保険会社は少しでも示談金の支払い額を減らそうと考えます。
したがって、少しでも被害者に落ち度があれば「過失あり」と主張してくることが多いのです。
また、加害者側の保険会社にとって加害者は顧客でもあります。
そのため、ある程度は加害者の言い分を尊重して示談交渉せざるを得ないという面もあります。
したがって、実際には被害者に過失がなさそうでも「過失あり」と主張してくることもあるのです。
そうであるからこそ、被害者は被害者で過失割合10対0であることをしっかりと主張して示談交渉することが重要です。
(2)過失割合はどのようにして決められるのか
個別の交通事故ごとに両当事者が過失割合を一から協議して決めていくことは極めて難しく、不公平な結果も生じがちです。そのため、まずは類似の事案を参照して過失割合を判断していくことになります。
裁判所では、これまでに数多くの様々な交通事故の過失割合の判断がなされています。
そこで、数多くの裁判例を分析し、事故のパターンごとに類型化した過失割合の判断基準が作成されています。
実際に過失割合を判断するときには、まず同じ類型の事故を探し、その事故の過失割合を基本の過失割合とします。
それから個別の事情を考慮して修正を加えて、問題となっている事故の過失割合が決められます。
過失割合の判断基準が詳しく掲載されているのは「別冊判例タイムズ38号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」という本です。
裁判官だけでなく、保険会社も弁護士も交通事故の過失割合を判断する際にはこの本を参照しています。
3、交通事故の過失割合が10対0になるケースの例
交通事故では自分になにも過失がないと思っていても、実際には過失が認められるケースがあるのは事実です。
過失割合の判断基準を知らずに感情にまかせて過失割合10対0を主張しても、その主張が通るとは限りません。
そこで「別冊判例タイムズ38号」のなかから、基本過失割合10対0とされている主なケースをご紹介します。
(1)四輪車同士の交通事故の例
①駐停車中に後続車から追突された
ただし、追突された側が正当な理由なく急ブレーキをかけた場合や、ブレーキランプが故障などによって点灯していなかった場合、幹線道路の走行車線上に停車していた場合などは修正要素として被害者側にも過失が認められます。
②対向車がセンターラインをオーバーして衝突してきた
ただし、被害者側が早い段階で対向車の動きを見て容易に衝突を避ける措置をとることができたのになにも措置をとらなかったような場合には被害者側の過失が認められることもあります。
③青信号(または青色矢印)で交差点内を走行中に赤信号で進入してきた車と衝突した
ただし、被害者側が青信号で交差点内に進入したものの、途中で黄色信号や赤信号に変わった場合は修正要素として過失が認められることもあります。
(2)四輪車対二輪車の交通事故の例
- 駐停車中に後続車から追突された
- 対向車がセンターラインをオーバーして衝突してきた
- 青信号(または青色矢印)で交差点内を走行中に赤信号で進入してきた車と衝突した
四輪車対二輪車の事故の場合も、この3つの類型は基本過失割合10対0とされています。
加害者側が二輪車の場合も被害者側が二輪車の場合も同じです。
(3)四輪車対歩行者の交通事故の例
歩行者が横断歩道を横断している限り、基本過失割合10対0となります。
ただし、歩行者が信号無視をしていたり、横断歩道外を横断していたような場合は歩行者にも過失が認められます。
夜間や幹線道路での事故の場合も、歩行者側に修正要素として過失が認められることがあります。
逆に、住宅街や商店街での事故や、歩行者が子どもや高齢者の場合、集団で横断していたような場合は四輪車側の過失を加重する修正要素となりえます。
4、交通事故で過失割合10対0を証明する方法
自分には全く過失がないにもかかわらず加害者や保険会社から「過失あり」を主張された場合は、過失割合10対0であることを証明しなければなりません。
ドライブレコーダーに事故の発生状況が記録されていれば証明は比較的容易ですが、そうでない場合は以下のような方法で証明する必要があります。
(1)過失割合10対0を証明する具体的な方法
交通事故の発生状況を証明する前提として、まずは事故現場の客観的な状況を明らかにします。
人身事故として警察に届け出て捜査が実施されている場合には、警察が作成した実況見分調書を取り寄せることで現場の詳細な状況が分かります。
事故によって車のどの部分がどのように壊れたのかを明らかにすることで、事故の発生状況を明らかにする手がかりとなることもあります。
多くの場合は保険会社の担当者が車の損傷状況を撮影した写真がありますが、警察が作成した写真撮影報告書なども取り寄せたいところです。
信号無視をしたかどうかが問題となるケースでは、信号サイクルを調べる必要があることもあります。
その場合は、都道府県の警察本部等に開示請求することで信号サイクルを明示した資料を取り寄せることができます。
事故の当事者や目撃者による事故状況の説明も証拠となることがあります。
目撃者を探すのもいいですが、警察から供述調書を取り寄せることで様々な証言を入手できる場合もあります。
加害者が「被害者にも過失あり」と主張している場合でも、事故直後には加害者自身が警察に対して全面的過失を認める供述をしているケースも少なくありません。
事故現場付近のコンビニ等に防犯カメラの映像が残されていることもあるでしょう。
なお、被害者がケガをしていても「物件事故」のままにしてある場合には、警察による詳しい捜査は行われないので、実況見分調書や供述調書等の捜査資料が作成されることはありません。
その場合は、専門の調査会社に依頼すれば、交通事故現場の状況や当事者の証言、車両の損傷状況等から客観的に推測できる事故の状況に関して、調査記録を作成してもらうことができます。
(2)弁護士に相談する
過失割合が10対0であることを証明できる証拠は、上記のとおり様々なものが考えられます。
しかし、一般の方にとっては、どのような証拠を集めて、どのように説明すれば過失割合が10対0であることを証明できるのか分からないことも多々あるでしょう。
そのような場合は、弁護士に相談するのが有効です。
ただ、交通事故から時間が経過するにつれて新たな証拠の収集が難しくなるため、弁護士に相談するのは早いほうが望ましいです。
とはいえ、警察に捜査記録が残っていれば、事故から長期間が経過した後でも、過失割合が10対0であることを証明することは可能かもしれません。
諦めずに弁護士に相談してみることが大切です。
5、過失割合が10対0の交通事故で示談交渉をするときの注意点
過失割合が10対0であることを証明できる証拠を入手したとしても、加害者や保険会社が納得してくれるとは限りません。
こちらの主張を認めてもらうためには、示談交渉が必要になります。
過失割合が10対0であることを主張する場合は、被害者にも多少の過失がある場合とは異なる注意点があるので、ご説明します。
(1)加入している保険会社は示談交渉をしてくれない
被害者に少しでも過失があれば、弁護士に依頼しなくても自分が加入している任意保険会社の担当者が示談交渉を代行してくれます。
しかし、被害者に過失がない場合は被害者側の保険会社が示談を代行することができず、自分で示談交渉をする必要があります。
その理由は、次の弁護士法の規定にあります。
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
つまり、弁護士でない人が利益目的で他人の事件の示談交渉をしてはならないとされているのです(この規定に違反すると刑罰の対象となります)。
被害者に少しでも過失があれば、被害者側の保険会社は保険金の支払い義務があるため、自分の問題として示談交渉をすることができますが、それに対して被害者に過失がない場合は、保険会社には保険金の支払い義務がないため、問題の交通事故は「他人の事件」ということになり、示談交渉に関わることができないのです。
したがって、加害者や加害者側の保険会社が「被害者にも過失あり」と主張してきても、被害者がそれを認めず「自分の過失は0である」と主張する場合には、被害者自身が示談交渉をしなければならないことになります。
(2)弁護士費用特約があれば費用なしで依頼できる
加害者側の保険会社も交通事故の示談交渉のプロなので、通常は被害者自身が対等な交渉をするのは困難です。
保険会社に言いくるめられると、被害者になにも過失がないのに「過失あり」として示談することにもなりえます。
そうなると過失相殺によって示談金が減額されるため、場合によっては数百万円も損してしまいます。
そこで、弁護士に依頼して専門的なサポートを受けたいところですが、弁護士費用が気になるところでしょう。
ケースによっては、弁護士に依頼することで費用倒れになってしまうこともあります。
しかし、自分が加入している自動車保険に弁護士費用特約がついていれば、保険会社の費用負担で弁護士に相談や依頼をすることができます。
弁護士費用特約を使っても自動車保険の等級には影響がありません。
弁護士費用特約を付けている場合は、遠慮せずに弁護士に相談・依頼をして専門的なサポートを受けましょう。
6、過失割合が10対0の交通事故の示談を弁護士に依頼するメリット
弁護士に示談交渉を依頼すれば、自分に代わって過失割合が10対0であることの証拠を収集し、的確に主張してもらえます。
一方、自分では過失がないと思っていても実際には過失があることもあります。
そのような場合には、適切な過失割合をアドバイスしてもらうことができます。
また、示談交渉そのものを代理人として代わりに行ってくれるので、交渉する手間や時間、精神的負担も大幅に軽減されます。
さらに、慰謝料等について任意保険会社の算定基準よりも高額な裁判での算定基準に従って請求してもらえるので、示談金の大幅な増額も期待できます。
まとめ
事故当初、過失割合は10対0だと思っていたのに、加害者や保険会社から過失を指摘されて「そうなのかな…」と思ってしまい納得できないまま示談をしてしまうと、取り返しのつかない損をしてしまうかもしれません。
とはいえ、「納得できない!」と思っても、過失割合が10対0であることについて根拠をもって主張し、適切に示談交渉をしなければ問題を解決することはできません。
なにも過失はないはずなのに過失割合10対0の主張を認めてもらえずお困りのときは、一人で悩まず、お気軽に弁護士に相談されることをおすすめします。