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ホワイトカラーエグゼンプションとは?成果に応じた働き方へ!

ホワイトカラーエグゼンプション

ホワイトカラーエグゼンプションとは、どのような制度なのでしょうか。

ビジネスマンであれば、「ホワイトカラーエグゼンプション」や、「高度プロフェッショナル制度」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。欧米の制度を参考に、日本でもこれらの制度が導入されましたが、メリットだけでなくデメリットもあります。

今回は、

  • ホワイトカラーエグゼンプションとは何か
  • ホワイトカラーエグゼンプションの適用対象となる業務・人
  • ホワイトカラーエグゼンプションのメリット・デメリット

などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

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1、ホワイトカラーエグゼンプションとは

ホワイトカラーエグゼンプションとは

(1)ホワイトカラーとは

ホワイトカラーエグゼンプションについて考える前に、ホワイトカラーとはそもそも何なのかを確認していきましょう。

ホワイトカラーとは、直訳すると「白い襟」となります。
そして、スーツを着る職業に携わる人々は、その多くが白いシャツを着用していることから、ホワイトカラーという呼称はこれらの人々を指すものとして用いられるようになりました。一般的には、ホワイトカラーというと、オフィスワーカーのことを意味します。

これとは対照的に、製造業や建築業など、いわゆる作業着を着て現場仕事をする労働者をブルーカラー(「青い襟」)と呼びます。

(2)ホワイトカラーエグゼンプションとは

会社に雇用されているこれまでの労働者は、成果ではなく労働時間で給与を決められる形態が一般的でした。「何時から何時までは会社に出勤する」「時給〇〇円」などは、労働時間で給与を決める、典型的な労働形態でしょう。

一方で、ホワイトカラーエグゼンプションは、労働者の給与を労働時間ではなく、労働の成果物で決めていくという考え方の下で、労働法上の規制を緩和する制度です。

何時から何時まで会社にいれば給与がもらえるという仕組みではなく、成果物を完成させないと、対価としての給与を受け取ることができません。

ホワイトカラーエグゼンプションの対象となる労働者は、労働時間にしばられることなく、自らの裁量で仕事をする時間を決められます。

しかし、労働時間や割増賃金等に関し、労働基準法上の保護を受けないこととなっています。

(3)諸外国の状況

ホワイトカラーエグゼンプションの制度は、アメリカ発祥の制度です。

アメリカでは、日本よりもホワイトカラーエグゼンプションの適用対象業務が多くなっています。

例えば、以下のような職種です。

  • 事務職(広報・人事・法務など)
  • 専門職(医療・アートなど)

また、フランスでは畜産・林業・漁業従事者や、国・地方公共団体職員、イギリスでは家事使用人や宗教従事者なども、適用対象となっています。

以上のように、ホワイトカラーエグゼンプションの適用対象業務や運用の方法は国によって異なるのです。

(4)高度プロフェッショナル制度との違い

日本では、ホワイトカラーエグゼンプションを参考にした「高度プロフェッショナル制度」が採用されています。

両制度は別の制度ですが、同義として使われることが多いので、以下では「ホワイトカラーエグゼンプション」という言葉に統一して解説します。

2、「働き方改革」の一環としてのホワイトカラーエグゼンプション

「働き方改革」の一環としてのホワイトカラーエグゼンプション

(1)制度創設の背景

では、なぜホワイトカラーエグゼンプションの制度を日本で導入する動きが出たのでしょうか。

労働時間で給与が決まる形態では、長時間労働をすればするほど、労働者の手元に入るお金が多くなるので、長時間労働を助長する危険性があります。

人によっては、残業代欲しさに、わざと長時間労働をし、不要な残業をする人すらいます。

効率よく仕事をできたり、早く成果物を仕上げられたりする人にとっては、労働時間によって会社に拘束されたくないのが、正直なところでしょう。

以上のような背景から、日本でホワイトカラーエグゼンプションの制度を導入する流れができました。

(2)厚労省の法案について説明

厚生労働省は、「労働基準法等の一部を改正する法律案」の中で、多様で柔軟な働き方の実現を示しました。

具体的には、以下のとおりです。

  • フレックスタイム制の見直し
  • 企画業務型裁量労働制の見直し
  • 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設

「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設」の概要は、以下のとおりです。

(ⅰ)「職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、健康確保措置等を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする。」

(ⅱ)「また、制度の対象者について、在社時間等が一定時間を超える場合には、事業主は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならないこととする。」という事項が挙げられています。

参照:「労働基準法等の一部を改正する法律案」について

3、ホワイトカラーエグゼンプションの適用対象となる業務

ホワイトカラーエグゼンプションの適用対象となる業務

(1)適用対象となる業務

ホワイトカラーエグゼンプションの適用対象となるのは、すべての労働者ではありません。

適用対象となるのは、「高度の専門知識が必要」かつ「性質上、従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるもの」として厚生労働省令で定められている業務に従事する労働者です(労働基準法41条の2第1項第1号)。

ホワイトカラーと言われているオフィスワーカーであっても、適用対象となる業務でなければ、ホワイトカラーエグゼンプションは適用されません。

(2)適用対象となる具体的な業務

ホワイトカラーエグゼンプションの適用対象となる業務は、具体的には、以下のとおりです(労働基準法施行規則34条の2第3項)。

  • 金融商品の開発
  • 金融商品ディーラー
  • 企業・市場の解析(アナリスト)
  • コンサルタント
  • 新商品、新技術等の研究開発 など

4、ホワイトカラーエグゼンプションの適用対象となる人

ホワイトカラーエグゼンプションの適用対象となる人

ホワイトカラーエグゼンプションの適用対象となる人は、以下のすべての要件を満たしていることが必要です。

(1)使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること

ホワイトカラーエグゼンプションの適用対象となる労働者は、使用者との間の書面による合意に基づき、職務が明確に定められていることが必要です(労働基準法41条の2第1項第2号イ)。

どのような業務を行い、どのような成果を達成する必要があるのかが明確でないと、給与の支払条件が曖昧となってしまいます。

したがって、「業務の内容」や「責任の程度」、「求められる成果、水準」について、使用者と労動者との間で書面による合意がなされていることが、第一の要件です(労働基準法施行規則34条の2第4項)。

(2)年収1075万円以上

ホワイトカラーエグゼンプションの適用対象者は、年収1075万円以上の労働者に限定されています(労働基準法41条の2第1項第2号ロ、同施行規則34条の2第6項)。

年収1075万円は、平均年収よりも高いので、高年収の労働者にしかホワイトカラーエグゼンプションは適用されないこととなります。

(3)原則として、対象業務に常態として従事していること

ホワイトカラーエグゼンプションの対象となるには、対象業務に「常態として」従事していることが必要です。(厚生労働省告示「労働基準法第41条の2第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」)

適用対象業務以外の業務にも、常態として従事している場合、ホワイトカラーエグゼンプションの適用対象者とはなりません。

5、対象者への健康確保措置

対象者への健康確保措置

(1)対象者は労働基準法の保護を受けない

ホワイトカラーエグゼンプションの対象となる労働者は、労働時間や割増賃金などに関する労働基準法の保護を受けません(労働基準法41条の2第1項)。

休日や深夜労働を余儀なくされ、長時間労働により、健康を害する危険性があります。

以上のような危険性を回避するために、使用者は以下のような健康確保措置をとる必要があります。

(2)健康確保措置の種類

①健康管理時間の把握

ホワイトカラーエグゼンプションの制度では、労働時間は労働者の裁量に委ねられています。

しかしながら、健康を害するほどの長時間労働が常態とならないように、使用者は原則として労働者の健康管理時間を客観的に把握することが必要です。

具体的には、事業場内にいた時間と事業場外で労働した時間(健康管理時間)を把握する必要があるとされています(労働基準法41条の2第1項第3号)。

②休日の確保

労働時間が労働者の裁量に委ねられ、休日や深夜の割増賃金の保護も受けないとなれば、長時間労働を強いられる危険があります。

そのため、使用者は1年につき104日以上、かつ4週間を通じ4日以上の休日を確保することが必要とされています(労働基準法41条の2第1項第4号)。

③選択的措置

使用者は次のいずれかの措置を決めて実施する必要があります(労働基準法41条の2第1項第5号)。

1)

24時間につき11時間以上の継続した一定時間以上の休息時間を設け、かつ1ヶ月につき深夜業は4回以内とする措置(同法同号イ、同法施行規則34条の2第9項、同第10項)

2)

1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合、その超えた健康管理時間が、1ヶ月で100時間以内又は3ヶ月で240時間以内とする措置(同法同号ロ、同法施行規則34条の2第11項)

3)

年1回以上の継続2週間の休日を与える措置(労働者本人が請求した場合は継続1週間×年2回以上の休日を与える)(同法同号ハ)

4)

健康管理時間が1週40時間を超えた場合に、その超えた部分の合計時間が月80時間を超えた労働者もしくは申出をした労働者には、臨時の健康診断の実施をする措置(同法同号ニ、同法施行規則34条の2第12項)

④健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置

使用者は、健康管理時間の状況に応じて、上記③の措置と、更に下記の措置のうち、いずれかを実施する必要があります(労働基準法41条の2第1項第6号)。

  • 上記③の1)~4)の措置であって、③により講ずることとした措置以外のもの。
  • 医師による面接指導
  • 特別な休暇または代償休日の付与
  • 心身の健康問題について相談窓口の設置
  • 適切な部署へ配置転換
  • 産業医等による助言・指導または保健指導

6、ホワイトカラーエグゼンプションのメリット・デメリット

ホワイトカラーエグゼンプションのメリット・デメリット

以上のようなホワイトカラーエグゼンプションですが、この制度にはメリットとデメリットがあります。

ご自身がホワイトカラーエグゼンプションの適用対象となる場合、その制度に合意すべきかどうかしっかり考えていきましょう。

(1)メリット

①量より質

一般的な労働者より、生産性が高い人にとってみれば、労働時間にしばられず働けるのは大きなメリットでしょう。

長時間労働をしたり、会社のオフィスに拘束されたりする時間が減るので、量より質を重視した生産的な働き方をしていくことが期待できます。

②労働時間に縛られない働き方

ホワイトカラーエグゼンプションの対象となると、何時から何時までオフィスにいなければならない等の制約がありません。

オフィスで深夜まで仕事をした翌日は、自らの裁量で出社時間を遅くする等の調整が可能です。

家族との時間や、自身のライフスタイルに合わせた多様な働き方が可能になるという点では、私生活と仕事の両立がしやすくなるといえるでしょう。

(2)デメリット

①成果が出るまで働き続けることに

一方、ホワイトカラーエグゼンプションにはデメリットもあります。

日本の労働契約は、アメリカなどの諸外国とは異なり、基本的には社内で従事する職務の範囲が明確に定められていません。

勤務時間や給与体系については決まっていても、業務の範囲が明確に決まっていないのが通常です。

ホワイトカラーエグゼンプションの対象となった労働者は、自分だけで業務を進めるべきか他の労働者にも業務を依頼していいのか、その境目が曖昧になる可能性があります。

職場内で自分だけホワイトカラーエグゼンプションの対象となっていると、他の労働者との関係構築がうまくいかないこともあるかもしれません。

結果として、業務連携がスムーズにいかない場合もあるでしょう。

以上のような場合、結局ホワイトカラーエグゼンプションの適用者が、必要以上に長時間労働を半ば強制的に促されるというリスクがあります。

②時間外労働手当を請求できない

ホワイトカラーエグゼンプションの適用者は、先ほどのとおり、労働基準法上の保護を受けません。どれだけ残業しても残業代は出ませんし、休日や深夜労働をしても、割増賃金の対象となりません。

このことから、「使用者が労働者を働かせ放題にできるのでは?」という点が懸念されているのも事実です。

まとめ

以上のように、ホワイトカラーエグゼンプションの制度には、量より質を重視して生産的な働き方ができるというメリットがありました。

一方で、長時間労働を助長させかねないデメリットもあります。

もし、あなた自身がホワイトカラーエグゼンプションの適用対象となっている場合、会社との間で合意を交わすべきかどうかは慎重に検討しましょう。

会社との合意内容や自身の働き方について不安がある方は、一度弁護士に相談をしてみてください。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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