交通事故の相手方が任意保険未加入だった……その後の対応はどうすればよいのでしょうか。
自動車保険は万が一の場合の備えとして非常に重要です。多くの人が自賠責保険のような強制保険に加えて、任意保険にも加入していると思います。
しかし実際には任意保険に未加入の人も少なからず存在します。
万が一交通事故の加害者が任意保険に未加入だった場合には、十分な補償が受けられないケースも少なくありません。
とはいえ「被害者が泣き寝入りしなければならない」というのはあまりにも理不尽です。
そこで今回は、
- 交通事故の相手方が任意保険に未加入であった場合における対処方法
について解説していきます。この記事がお役に立てば幸いです。
交通事故における示談については以下の関連記事もご覧ください。
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1、交通事故で相手方が任意保険未加入だったら…未加入割合は想像よりも多い
自動車を保有しているほとんどの人にとって、任意保険加入は当たり前のものでしょう。
しかし実際には、車を保有していながら任意保険に未加入であるという人も少なくありません。
自動車保険の加入状況などについて、自賠責保険の調査業務などを行っている損害保険料率算出機構という団体が毎年公表している「自動車保険の概況」という冊子で確認することができます。
・自動車保険の概況(損害保険料率算出機構ウェブサイト)
この「自動車保険の概況」によれば、日本における任意保険(対人賠償責任保険)の普及率は約80%程度となっています。
つまり全国の自動車のうち5台に1台は、任意保険に未加入という計算になります。
これは無視できない割合といえるでしょう。
都道府県別の加入率を比較すると、大都市部ほど加入率も高くなっています。
最も加入率が高いのは大阪府の88.2%ですが、それでも10台に1台以上は任意保険未加入です。
他方最も加入率が低いのは、沖縄県の57%です。こちらは3台に1台以上は、任意保険未加入となります。
以下では交通事故の場面ごとに、相手方が任意保険未加入だった場合の注意点や対処方法などについて解説していきます。
2、加害車両が任意保険未加入の物損事故
車などに乗っていて交通事故に遭った場合、仮にケガをしなかったとしても、物損はほとんどの場合で生じてしまいます。
ケガがなかったことは何よりですが、加害者が任意保険未加入の物損事故は、その後の処理が面倒になることが少なくありません。
(1)自賠責保険(強制保険)は物損事故には使えない
自賠責保険では対人賠償しか補償されません。
したがって車の修理代など(車両の物的損害)については、自賠責保険では補償されないのです。
そのため、加害者が自賠責保険に加入していたとしても、自賠責保険に対して物損の補償を請求していくことはできません。
(2)「相手方に直接請求」が基本
任意保険未加入の加害車両との物損事故は、損害額(修理代金など)を加害者に直接請求していくことが基本です。
後のやりとりに備えて、加害者の連絡先などは確実に確認しておきましょう。
「携帯電話の番号を教えてもらった」という程度では、番号を変えられてしまうという可能性があるので対応としては不十分です。
特に加害者が任意保険未加入の物損事故では、「事故を警察に届け出ない」ということも想定されます。
保険会社を利用しないケースでは、警察に事故証明書を発行してもらう必要性がないからです。
交通事故が起きる場面の多くは加害者だけでなく被害者も「先を急いでいる」ことが多く、「携帯電話の番号を確認できたから大丈夫だろう」と中途半端な対応になってしまうことも珍しくありません。
しかし上でも触れたように、携帯電話の番号だけでは、後に加害者と交渉をしていくにあたって、必ずしも十分ではありません。
また、加害者が賠償に応じてくれない場合、最終的には訴訟などの法的手続きも検討する必要が出てくるでしょう。
そのため、免許証・車検証のコピーを取らせてもらうなどして、加害者の住所を把握したうえで、必ず警察に交通事故の届け出をすべきです。
(3)自分の車両保険を使って修理する
加害者が任意保険に未加入だった場合には、「必要な修理代をすぐに準備できない」ということもあるかもしれません。
そのような場合、被害者が車両保険に加入していれば、自分の車両保険から修理代を支払うことも可能です。
また、無過失事故に関する特約がついていれば、一般的には、次のような条件を満たしているとき、車両の修理代のために自分の車両保険を使っても翌年の保険料は上がりません。
- 被害者(車両保険を使う人)に「過失がない」こと
- 相手方が契約車以外の車両(車両対車両の事故)であること
- 加害車両の登録番号が確認できていること
- 加害車両の運転者または所有者の住所・氏名が確認できていること
- その他、保険会社との契約で定められている条件
加害者が任意保険に加入していない場合に備えて、自身で車両保険に加入しておくことも重要といえるかもしれません。
3、加害車両が任意保険未加入の人身事故
人身事故の加害者が任意保険に未加入だった場合には、物損事故よりもさらに慎重な対応が必要です。
人身事故では被害額が大きくなる可能性が高く、加害者との交渉期間も長くなることが多いからです。
(1)自賠責保険の補償額では足りないことがある
人身事故の場合には、加害者が自賠責保険に加入していれば、自賠責保険から一定の補償を受けることができます。
しかし自賠責保険は「必要最低限の補償をするための公的な救済制度」に過ぎないので、補償される金額には下記のような上限額があります。
- 傷害事故の場合:120万円
- 死亡事故の場合:3000万円
- 後遺障害が生じた場合:後遺障害の程度に応じて75万円~4000万円
特に傷害事故の場合には、治療費や慰謝料などの損害費目を合計しての上限額が120万円ですので、「損害のすべてをカバーできない」ということも少なくありません。
また、それぞれの損害費目についても、細かく支払基準が定められています。
そしてその基準は、必ずしも損害の補償として十分なものではありません。
たとえば、自賠責保険の基準において、ケガによって入通院した場合の慰謝料の金額は、1日あたり4200円となっています。
一般的には、加害者に請求できる適切な慰謝料の金額よりも低く、補償としても不十分であるといえるでしょう。
(2)自動車保険でも損害をカバーできる
加害者の自賠責保険では補償額が足りない場合や自賠責保険が下りるまでの治療費負担などが困難であるという場合には、被害者自身の傷害保険(自動車保険)を利用することも可能です。
自分の自動車保険を利用するためには、人身傷害保険(特約)などに加入している必要があります。
人身傷害保険を利用することで、基本的には自分の過失割合に関係なく、治療費や慰謝料などについて、契約に基づき一定額の補償を受けることが可能です。
また、人身傷害保険はいわゆる「ノーカウント」の保険なので、一般的には、利用しても翌年の保険料に影響はありません。
しかしながら人身傷害保険の加入率はそこまで高くなく、毎月の自動車保険料を抑えたいと考えて加入していない人も多いといえます。
無保険車と事故になる可能性や、自分に大きな過失のある事故を起こしてしまうリスクを考えれば、人身傷害保険には加入しておいた方がよいでしょう。
なお、対人賠償保険(通常の任意保険)に加入していれば、「無保険車傷害保険(特約)」が付帯されていると思います。
しかし無保険車傷害保険は、一般的には「後遺障害が生じた場合」、「死亡事故の場合」のみに適用される特約です。完治したケガや傷害に対しては補償がなされない可能性がある点には注意しましょう。
(3)仕事中・通勤中の事故であれば労災保険を使える
就業中や通勤途中に交通事故に遭うことも少なくありません。
これらの場合であれば、基本的には、労働災害として、労災保険を利用することができます。
なお自賠責保険と労災保険は、同時に利用することはできませんが、どちらの支払を先に受けるかは自由に選択できます。
自賠責保険と労災保険では、補償の範囲や上限が異なります。
例えば、傷害事故に関して、治療費について、自賠責保険では、上記のとおり、他の損害項目も含め120万円までという上限がありますが、労災保険では上限はなく、事故との因果関係が認められる範囲において、十分な補償を受けられます。
他方で、自賠責保険では、入通院に対する慰謝料の補償がなされますが、労災保険では慰謝料の補償はなされません。
労災保険側からみると、就業中や通勤途中に交通事故に遭うことはいわゆる「第三者行為災害」といわれます。
第三者行為災害における保険の利用方法についてはこちらの記事をご覧ください。
(4)加害者に直接請求するときのリスク
人身事故の場合も、加害者が任意保険未加入であれば、最終的には損害額を加害者自身に支払ってもらう必要が生じることがあります。
上でも触れたように、自賠責保険では補償される金額に限度があり、実際に生じた損害に対する賠償として不十分であることも少なくないし、人身傷害保険や無保険車傷害保険、労災保険が使えても、限度額や補償される項目に制限があるからです。
とはいえ任意保険に未加入の加害者は金銭的な理由で任意保険に未加入である場合が多く、損害賠償を請求しようにも「相手に資力がない」ということも十分考えられます。
そのような場合、分割払いを求めるなど、一定の工夫が必要になってくるでしょう。
4、自分が無過失の事故の場合の注意点
交通事故の示談交渉は、自分が加入する保険会社に代わりに行ってもらうことができます。
しかし加害車両のみに過失があるケース(もらい事故)の場合には、保険会社の示談代行サービスを利用することはできません。なぜなら、弁護士以外の人は、基本的には、自分が当事者ではない出来事に関して、法的な交渉をしてはならないと、弁護士法で定められているからです。
すなわち、自分にも過失がある事故であれば、相手に生じた損害に対して、自分の過失分の補償をする必要がありますが、その補償は基本的には加入している保険から賄うこととなるでしょう。
このような場合であれば、実際に支払いをする保険会社も、その事故に関して当事者であるといえるため、加害者と交渉をしても、弁護士法違反にはならないと考えられています。
他方で、自分に過失がなく、加入している保険を使って加害者へ補償をすることもないという場合、加入している保険会社はその事故に関して当事者であるとはいえなくなるため、交渉をしてしまうと、弁護士法に違反してしまう可能性があるのです。
もらい事故の典型例は、停車中車両に対する後方からの追突事故です。
相手方も任意保険未加入であれば、上記の理由から当事者同士での示談交渉となることが多く、間に保険会社が入らないことで、補償面について重要なポイントについての協議が不十分なまま示談となってしまうこともあり得ます。
まとめ
交通事故の加害者が任意保険に未加入だった場合には、自賠責保険や自分が加入している保険が頼りになります。
労災保険や健康保険なども上手に活用して、負担が増えないように対処することも重要です。
しかし、これらの保険だけでは十分な補償を受けられないこともあり、加害者への直接請求も検討しなければならないケースも出てきます。
もっとも、残念ながら、加害者へ直接請求をしたとしても、資力がなく、適切な賠償金を回収できないということの方が多いというのが現状でしょう。
そのため、加害者への直接請求の必要ができる限り少なくなるように、ご自身の保険の加入内容を見直すなどして自衛を図っておくことが何よりも肝要であるといえるでしょう。