カード破産とは、使いすぎたクレジットカードの利用代金を返済できなくなり、自己破産する状態のことです。
カード破産をするとどのような状況になるのか、そしてカード破産を回避する方法はあるのでしょうか。
この記事では、
- カード破産を回避するための方法とは
- カード破産のデメリットとは
- 自己破産以外でクレジットカードによる借金から抜け出す方法
について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が詳しく解説いたします。
自己破産に関してはこちらの記事をご覧ください。
目次
1、カード破産(自己破産)とは
破産(自己破産)とは、裁判所に申し立てることによって借金の返済が不能であることを認めてもらい、免責が許可されればすべての返済義務が免除される法的手続きのことです。
多額の借金もゼロになるので、経済的な生活を立て直すために非常に効果的な債務整理の方法といえます。
通常は借金を抱えた本人が破産(自己破産)を申し立てますが、法律上は債権者から申し立てることも可能とされています(破産法第18条1項)。
ただ、債権者から破産を申し立てられるのは稀であり、個人の借金についてはほとんどありません。
したがって、クレジットカードで多額の借金を抱えた場合には「返すか・返さないか」を自分で判断することになります。
破産(自己破産)の手続きなど詳細については、以下の記事をご参照ください。
2、カード破産に陥りやすい人の特徴とは?
以下の特徴に当てはまる方はカード破産に陥りやすいといえます。
- 多重債務で返済・借入を繰り返している
- 繰り返しキャッシングを利用している
- クレジットカードを複数枚持っている
- ネットでの買い物が多い
- 支払いをほぼリボ払い・分割払いにしている
3、クレジットカードの支払いを放置するとどうなる?|カード破産の選択肢
債権者から破産を申し立てられることがないのなら、ずっと支払いをしないでいても問題はないのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、まったく財産がない人の場合には、支払いを拒否し続けることによってやがて時効で借金が消滅するということもあります。
しかし、クレジットカードの支払いを放置することはおすすめできません。なぜなら、支払いをしないでいる限り、債権者からの厳しい督促が続くからです。
それに、一定の期間支払いをしないでいると、強制執行手続きによって財産を差し押さえられてしまうこともあります。
差し押さえられる財産としては給料や預金が主ですが、不動産をお持ちの場合はその不動産を差し押さえられて、競売にかけられることもあります。
給料しか財産がない場合には、クレジットカード代金と金利・手数料、遅延損害金を完済するまで給料の差押えが続くことになります。
自己破産をすれば、不動産などの高価な財産は失ってしまいますが、給料の差押えは避けることができます。他の債務整理が可能な場合には、不動産や預金などの財産を守ることができる可能性もあります。
そのため、クレジットカード代金を支払えなくなっても、放置せずに自己破産または他の債務整理を検討することが大切です。
4、自己破産のデメリット
破産(自己破産)をすれば多額の借金をゼロにできるとはいえ、副作用もあります。
そこで次に、自己破産をする前に知っておくべきデメリットとマイナス特徴についてご説明します。
(1)自己破産のデメリット
自己破産には、借金をゼロにしてもらう代わりに以下のデメリットがあります。
①破産後の一定期間クレジットカードの利用ができない
まず、自己破産をすると、その後の10年ほどはクレジットカードの利用が難しくなります。なぜなら、自己破産をするとブラックリストに載せられるからです。
ブラックリストとは、信用情報機関に事故情報が登録された状態のことをいいます。クレジットカード会社は必ず利用者や申込者の個人信用情報を確認するので、事故情報が登録されているとクレジットカードを利用することも新たに作成することも難しくなるのです。
もっとも、自己破産をしなくてもクレジットカード代金を支払わないでいると、それも事故情報として登録されます。
そのため、支払えないのであれば早期に自己破産をした方が、再びクレジットカードを利用できるようになるまでの期間は短くなります。
②一定財産の処分
自己破産をすると、一定の財産は処分する必要があります。マイホームなど高価な財産を手元に残すことはできません。
ただ、生活に必要な財産まで処分する必要はありませんので、自己破産をすることで生活できなくなるということはありません。
具体的には、以下の財産は手元に残すことが可能です。
- 99万円以下の現金
- その他、一点あたり評価額20万円以下の財産(東京地裁などの場合)
これだけの財産が手元に残りますので、自己破産をする前とほとんど変わらない生活ができる場合も多いです。
③その他
その他にも、注意すべき自己破産のデメリットとして以下のものがあります。
- 借入れやローンの利用が難しくなる
- 官報に氏名や住所が掲載される
- 手続きに手間がかかる
- 弁護士に依頼すると費用がかかる
- 手続き中は一部の資格や職業が制限される
- 保証人に迷惑がかかることがある
これらのデメリットの詳細は以下の記事で解説していますので、ご参照ください。
(2)カード破産のマイナス特徴
次に、自己破産のデメリットというわけではありませんが、カード破産で注意すべき点についてご説明します。
実は、カード破産は必ずしもうまくいくとは限りません。
借金をゼロにしてもらうには裁判所で免責が許可される必要がありますが、カード破産では免責が許可されない可能性もそれなりにあるのです。
免責が許可されない事情(免責不許可事由)は破産法第252条に定められていますが、カード破産の場合は次の2点が問題となることが多いです。
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
引用元:破産法第252条
四 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
引用元:破産法第252条
例えば、以下のような場合に免責不許可事由に該当する可能性があります。
- 「信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分」に該当し得るケース
- クレジットカードで商品を購入し、それを転売して現金を入手した場合
- 「浪費」に該当し得るケース
- 高価な商品を購入した場合や、外食・旅行・趣味などの遊びのためにキャッシングをした場合、エステなどの料金をクレジットカードで決済した場合
- 「賭と博その他の射幸行為」に該当し得るケース
- キャッシングをしたお金でパチンコ屋競馬などのギャンブルをしたり、株式取引やFXなどの投資をした場合
免責不許可事由があると、自己破産をしても原則として借金はそのまま残ってしまいます。そのため、他の債務整理を検討する必要があります。
5、カード破産(自己破産)の前に検討したい借金脱出方法
破産(自己破産)で免責が見込まれるとしても、自己破産は最後の手段と考えておくべきです。実際にも、できる限り自己破産は避けたいと考える方も多いでしょう。
そこで、ここでは自己破産をする前に考えられる借金からの脱出方法をご紹介します。
(1)購入品の売却
破産を検討するほどカードを使った方の中には、高額な物品を購入した方も多いと考えられます。
その場合は、購入品を売却し、その代金を返済に充てることができます。
不要な物品はどんどん売却すべきですし、生活に必要な物品でも高価なものは売却して安価なものへの買い換えを検討してみましょう。
ただし、購入金額を完済していない物品は売却してはいけません。また、使用による劣化が激しい物品の場合や、外食・旅行・エステなど物として残らない使途の場合にはこの方法は使えません。
(2)親族からの借金
頼れる親族がいる場合は、返済金を借りてクレジットカードの支払いに充てることも考えられます。
親族から借りることができれば、消費者金融や他の金融機関から借りる場合よりも金利や支払期日について融通が利くでしょうから、返済が楽になるはずです。
ただし、親族とうまくいっていない場合には協力を得ることは難しいでしょうし、親族に甘えてお金を返さないかもしれないと思う方の場合もおすすめはできません。
(3)任意整理
債務整理をするとしても、自己破産よりもデメリットの少ない方法があります。
任意整理とは、裁判所を介さずに債権者と個別に話し合うことによって返済額や返済方法を変更する債務整理の方法です。
自己破産と異なり、財産を処分する必要はありませんし、手軽に行えるというメリットがあります。
しかし、基本的に元金のカットはできないため、大幅には借金が減らないというデメリットがあることに注意が必要です。
多額の借金を抱えている場合には、任意整理では借金から脱出できない可能性があります。
生活に支障をきたさないためには、一般的に月の返済額は月収の3割までにしておいた方が良いといわれています。それを超える場合は、自己破産または次にご紹介する個人再生を検討した方が良いでしょう。
(4)個人再生
個人再生とは、裁判所に申し立てることによって借金を大幅に減額してもらえる債務整理の方法です。借金総額が原則として5分の1(最大10分の1。ただし、最低弁済額は100万円)にまで減額され、減額後の借金を3年~5年で分割返済していきます。
個人再生の場合も基本的に財産を処分する必要はありませんし、条件を満たせば「住宅資金特別条項」を使うことによってマイホームを残すことも可能です。
ただ、借金が減額されるとはいえ返済していかなければならないので、安定した継続的収入があることが条件となります。
とはいえ、もともとクレジットカードの限度額が高い、または多くのクレジットカードを保有していた方であれば、収入条件を満たす可能性は高いと考えられます。
6、クレジットカードの支払いが苦しいなら弁護士へ相談を|カード破産を選択する前に
クレジットカードの支払いに首が回らなくなっても、カード破産または前項でご紹介した方法で解決できますので、放置することは避けましょう。
ただ、実際に切羽詰まった状況に陥ると、どうすればよいのかわからなくなるかもしれません。
そんなときは、お気軽に弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士に相談・依頼すれば以下のようなメリットが得られます。
(1)弁護士が受任すれば一旦返済しなくてOK
弁護士が債務整理を受任すると、まず弁護士から債権者宛に受任通知書を送付します。
債権者は、弁護士からの受任通知書を受け取った後は債務者に対して直接返済を請求することが禁止されています(貸金業法第21条1項9号)。そのため、弁護士に債務整理を依頼すれば、すぐに債権者からの取立がストップし、一旦返済しなくてよくなります。
その後に落ち着いて弁護士と一緒に解決方法を考えることもできます。
(2)無理のない最適な立て直し方法を提案
借金から脱出するためにカード破産をするのが良いのか、それとも他の手段を検討した方が良いのかは、状況によって異なります。
あなたにとって無理のない、最適な立て直し方法を選択することが、借金から完全に脱出するための最も重要なポイントです。
債務整理に詳しい弁護士に相談すれば、豊富な専門知識と経験に基づいて、最適な解決方法を提案してもらえます。その他にも収支を把握する方法など、今後の生活において二度とカード破産に陥らないためのポイントについてもアドバイスしてもらえます。
(3)破産を選択しても裁量免責を目指せる
免責不許可事由がある場合にはカード破産はうまくいかない可能性があることを前記「3(2)」でご説明しました。
しかし、実は免責不許可事由がある場合でも、「裁量免責」が得られる場合があります。
裁量免責とは、免責不許可事由がある場合でもその程度が軽い、借金をした経緯に同情できる事情がある、反省して生活を再建する意欲が高いなど、免責を許可するのが相当であると認められる場合に裁判所の裁量で免責を許可することをいいます。
裁量免責も免責には変わりありませんので、許可されると借金がゼロになります。
ただし、どのような場合に裁量免責が認められるのかや、裁量免責を得るためにどうすればよいのかについては、一般の方にはよくわからないのが実情でしょう。
その点、債務整理に詳しい弁護士は裁判所の対応にも精通していますので、裁量免責を得るコツも把握しています。
したがって、自分で破産手続きを行うよりも、弁護士に依頼した方が裁量免責が得られる可能性が高くなります。
(4)弁護士費用への過度な不安はいらない
もっとも、弁護士に依頼する場合には費用が気になることでしょう。
しかし、弁護士費用を気にしすぎる必要はありません。インターネットで検索すれば、良心的な料金で充実したリーガルサービスを提供している法律事務所がたくさん見つかります。
相談料無料や、着手金の分割払いに応じている事務所も多いので、初期費用が準備できなくても弁護士に依頼することは可能です。
まずは料金の安い法律事務所を探してみて、気になる事務所があれば無料相談を利用し、比較した上であなたと相性の合う弁護士に依頼することをおすすめします。
まとめ
クレジットカードは便利ですが、油断して使いすぎてしまい、カード破産に追い込まれてしまう人は数多くいます。
もし、クレジットカードの支払いがままならなくなったときは、早めに弁護士に相談してみましょう。早めに相談すれば、カード破産を回避し、その他の方法で解決できる可能性も十分にあります。
弁護士の知恵と力を借りて、早期に借金から脱出しましょう。