近年、オンラインショッピングや電話注文による商品の配達方法として人気の高まっている『置き配』。
しかし一方で、商品が届いた後に盗難に巻き込まれるケースが増加しています。このようなリスクから身を守るためには、サービスの詳細をよく理解し、万が一盗難被害に遭った際の補償内容を事前に確認することが重要です。
ポイントを絞って受け取りの準備を整えることで、置き配を利用した際の盗難リスクをほぼゼロにすることができます。
万一のトラブルにも素早く対応する方法を知っておくことで、安全で安心な置き配の利用を実現しましょう。
▼置き配盗難の補償請求先
- 盗難の犯人(検挙に成功した場合)
- 通販会社(サービス利用規定に応じて返金or再発送)
- 宅配業者(原則は金銭で補償/限度額あり)
- 自宅の地震火災保険(契約内容による/限度額は大きめ)
この記事が、置き配の利用で盗難が不安という方の手助けとなれば幸いです。
目次
1、置き配の盗難補償は原則なし~当事者の負う法的責任
置き配の荷物が盗難された場合、宅配業者や荷送人(=荷物を発送する通販会社等)は原則として補償義務を負いません。
万一ネットショッピング等で盗難トラブルに遭った場合、利用できるのは各社のサービスとしての補償です。
限度額や対応の流れに違いはあるものの、被害を申し出れば、一定の範囲で返金もしくは代わりの物品を発送する等の対応をとってもらえる可能性があります。
(1)宅配業者の責任
前提として、荷物を無事に届ける責任を負うのは宅配業者です。
そうは言っても、置き配後に盗難されたケースだと原則として損害賠償義務は生じません。
運送契約は届けた時点で完了するものと考え、後になって債務不履行の問題が起きることはないのが原則です。
利用規約に「荷物の引渡し後の紛失・盗難等について一切責任を負わない」等と定める業者に届けてもらったのなら、なおのこと補償請求はできません。
(2)犯人が負う責任
一方で、置き配で届けた物品を盗んだ人物に責任があることは明らかです。
刑法の窃盗罪(刑法第235条)で有罪となれば、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。
被害者への弁償も当然必要で、不法行為による損害賠償(民法第709条)として請求できます。
そうはいっても、盗難の犯人を捕まえられる可能性は実のところ、それほど高いものではありません。
目撃情報があっても、声や顔等の照合できるものがない限り、警察の捜査力をもってしても検挙に繋がりづらいのが実情です。
(3)各社独自の盗難補償サービス【通販会社or宅配業者】
置き配盗難について責任を取るのは犯人ですが、犯人が何者かがわからなければ泣き寝入りせざるを得ないのでしょうか。
それだとあまりに酷なので、通販会社や宅配業者では盗難補償サービスの普及が進んでいます。
もっとも、返金対応の有無や金額については、経緯と利用規約次第です。
たいていは補償限度額の定めがある点等から、必ずしも全額取り戻せるわけではない点に注意しましょう。
①通販会社の対応
置き配盗難についてはっきりと補償規定があるのは、通販業者だと大手ショッピングモール(Amazon等)です。
メーカーの公式サイトや小さな商店から注文したケースだと、補償できないものとして宅配業者に問い合わせるよう案内される確率が高くなる点に注意しましょう。
②宅配業者の対応
宅配業者の盗難補償が受けられるのは、置き配専用の配送サービス等、一定の保険付きの運送契約を結んだ場合に限られます。
郵便物(ゆうパック・ゆうメール等)を例にしてみると、あらかじめ配達局に依頼書を出し、不在時の配送方法を指定していた場合に限られます。
限度額も業者と契約内容に左右されるため、約款や利用規約を確認しなければなりません。
2、置き配の盗難リスクを再点検~通販利用時はここをチェック
これから置き配を利用しようとする人は、ここで基本的なサービス内容をおさらいしましょう。
確かに不在時対応や感染症対策を考えると便利ですが、受け取り時の自己責任の度合いが大きくなる点は要注意です。
(1)配送時間の指定は原則不可
指定場所に置いてもらう配送指定だと、普通は時間帯の希望を受け付けてもらえません。
荷受人の自宅敷地内の安全な場所に届け、直近の都合の良い時に回収してもらうことを前提としたサービスなのです。
残業その他の事情で不在にする時間が長引けば、そのぶん荷物も放置されている状態になります。
たとえ誰の目にも触れない場所に置いてもらったとしても、盗難リスクの上昇は避けられません。
(2)購入確定前に配送指定を確認する
大手のショッピングサイトを利用すると、優先的に置き配指定となる場合があります。
あるいは、前回利用時の配送方法をそのまま引き継ぐ形で「不在時は指定した場所に置く」との設定になっているかもしれません。
ネットショッピングで購入を確定する時は、必ず配送指定がどんな設定になっているか確認しましょう。
今回は対面で受け取りたい、あるいは前回とは違う場所に置いてほしいと言った要望は、確実に反映させておくべきです。
3、勝手に置き配されて盗難に遭うケースはどうなる?
以上のサービス内容を踏まえると、やはり置き配指定はやめておこうと考える人も一定数いるのではないでしょうか。
一方で、配達希望品が増え続ける昨今、指定していないにも関わらず玄関前に荷物が放置されてしまうケースが散見されます。
このように勝手に置き配された結果盗まれてしまったケースでは、もちろん宅配業者が責任を持って対応すべきと考えられます。
(1)置き配指定なしor合意していなかった場合
置き配を指定していなければ、勝手に荷物を届けた宅配業者の過失として、盗難被害額の大部分を保証してもらえます。
「対面受取を希望するが不在時は指定した場所に置く」といった配達方法に合意していなかった場合も、同じことがいえます。
(2)荷物の置き方自体に問題があった場合
置き配指定もしくは合意があったとしても、置き方自体に問題があれば宅配業者の過失が認められます。
指定した場所以外に置かれていたり、敷地の外に放置されてしまったりしたような場合です。
個別のケースでは、配達時の事情が問題となります。
配達時に先に別の荷物が置かれている等指定した場所に置ける状態にあったかどうか、置く場所について荷受人への事前の連絡をしていたかどうか等といった点も踏まえ、損害賠償額を決めることになるでしょう。
4、置き配の盗難被害に遭った時の対処法
十分注意したにも拘わらず置き配の荷物を盗まれてしまった場合は、慌てずに連絡の優先順位を決めて対応しましょう。
以下のポイントを整理しておけば、極力ストレスを抱えずに解決まで状況を進められるはずです。
▼置き配が盗まれた時の対応フロー
- 被害届提出+宅配業者で状況確認
- 通販会社に連絡して補償を申請
- 宅配業者に補償申請(②で案内された場合)
- より深刻なケースは弁護士に相談(詳しくはこの後解説)
(1)宅配業者に状況確認する
まずやっておきたいのは、最寄りの配達営業所等での状況確認です。
荷受人が「置き配後に盗難された」と認識していても、実際には仕分けミス等が理由でまだ宅配業者が持っている可能性があります。
補償を申請するための前提にもなるため、まずは電話やメール等で荷物の行方を明らかにしてもらいましょう。
(2)盗難補償を申請する
次に行うのは、盗難被害額の補償申請です。
盗難補償サービスに関しては、基本的には荷送人(=ネットショップ等)が対応方法を把握しています。
購入店等に補償対応の状況を聞き、そこで「宅配業者での対応になる」と案内されたら連絡する……との流れにするとスムーズです。
(3)自宅の保険で補償してもらえる場合もある
保険会社によるものの、置き配利用の増加を受けて地震火災保険で補償対象とする動きが出ています。
特に入居年数の浅い家なら、敷地内に届いた荷物も家財であるとして、保険金を請求できるかもしれません。
保険を利用するメリットは、補償額が大きく、給付も速やかに行ってもらえる点です。
手元にある証券や契約書類をチェックし、問い合わせてみましょう。
(4)警察に被害届を出す
補償申請と並行して、警察への届出も行いましょう。
たとえ盗難被害額が小さくても、犯人を捕まえて再発を防ぎ、安心して住み続けるために必要なプロセスです。
被害届を出した方がいいのか迷う時は、国民生活センターの消費者ホットラインや弁護士に相談してみるのも一つの手です。
5、置き配の盗難対策~ポイントは「施錠」と「迅速な回収」
置き配で注意したいのは、指定する場所と荷物を回収できるタイミングです。
鍵やロックがかかる配達場所を確保できるか、配達予定日にすぐに受け取れる状況にあるか、今一度チェックしてみましょう。
それでも室外に荷物が届く以上、盗難を100%防げるわけではありません。
配達してもらう物品に応じて受け取り方を選ぶ等、できる対策は極力講じておく必要があります。
▼置き配の利用方法
【×】玄関前にそのまま置いてもらう
【△】メーターボックスの中に置いてもらう
【△】ほとんど在宅しているので配達日時を確認しない
【〇】不在時は宅配ボックスに届けてもらう
【〇】宅配ボックスが埋まっている時は持ち帰ってもらう
【〇】配達完了メールの配信設定を済ませておく
(1)宅配ボックスや置き配バッグを利用する
置き配指定の場所は、なるべく「鍵のかかる場所」にしましょう。
暗証番号方式の宅配ボックスが設置されている集合住宅なら、これを配達先として指定できます。
宅配ボックスが設備になかったり、集合住宅で十分な数が確保されていなかったりする場合は、以下のような手段もあります。
▼置き配バッグを設置する
外側から荷物が見えないように覆いつつ、ドアノブと結ぶワイヤーや南京錠等でロックをかけるタイプのバッグです。
大きさ・ロック機能共に多種多様な製品が発売されており、宅配ボックスよりも格安&簡単に設置できるのがメリットです。
▼宅配ボックスを増設する(戸建住宅向け)
予算と設置条件が許せば、自宅専用の宅配ボックスを新たに設置するのもありです。
設置費用に関しては、国土交通省の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」や自治体独自の制度で補助してもらえる可能性があります。
(2)配達完了を即時確認できるよう設定する
容易には手の届かない場所に置き配してもらうとしても、盗難防止のため「届き次第すぐに回収する」と心得ておきましょう。
そのためにも、配達状況をすぐにメール・SMS等で知らせてくれる設定をしておくと安心です。
メール等の配信設定は各宅配業者の荷物追跡サービスで行うのが基本ですが、大手ショッピングサイトだと、買い物アプリでポップアップ通知してくれる場合があります。
(3)高額商品は置き配を避ける【コンビニ受取等を選ぶ】
大前提として、高額商品は置き配に適しません。特にカメラ・スマホ・PCパーツ等の小さい物品は、持ち出しやすさ故に盗難リスクも高くなると考えましょう。
置き配は食料や日用品等の安い物だけにして、高い買い物はコンビニ受取等の別の方法を指定するのがベストです。
(4)防犯カメラを設置する【戸建の場合】
置き配盗難対策のためだけなら少々非効率ですが、玄関先に防犯カメラを設置するのもありです。
近隣で不審人物の目撃情報があったり、郵便受けの中身が盗まれる等の心配事があったりする場合は、迷わずこの方法を選択した方が良いでしょう。
もしもの時は、カメラで撮れた映像を提出することで、警察による速やかな犯人検挙に繋がる可能性があります。
6、置き配盗難には深刻なケースも~弁護士に相談した方が良い場合とは
置き配の盗難被害の中には、単に「荷物を受け取れず全額損したこと」に留まらない深刻なケースもあります。
以下のような状況だと、より複雑な法律トラブルに対処するため、弁護士への相談をおすすめします。
(1)ネットショップor配送業者の対応に納得できない
まず考えられるのは、盗難補償に関わる会社の対応に違和感を覚えるケースです。
相手の主張する補償額や配達状況について納得できない時は、こちらの言い分を立証して泣き寝入りを避けるため、法律の専門家と対応を話し合うべきです。
また、高齢者の買い物等に関しては、実は「置き配の盗難」ではない別のトラブルである可能性も考えられます。
▼弁護士に相談した方が良いケース①
- 利用規約通りの補償に応じない。
- 指定した配達方法を守ってくれず、その事実を相手が認めない。
- 置き配指定で送ったと主張するが、発送した形跡が見当たらない。
- 高齢の家族が置き配指定で買い物し、購入から配達までの経緯を上手く聞き出せない。
(2)盗難の犯人に心当たりがある場合
置き配の荷物を盗んだ犯人に心当たりがあるのなら、盗難よりも大きい被害を解消・防止したいところです。
より明確に言えば、ストーカー規制法で禁止される行為や、従前からある近隣住民とのトラブル等が挙げられます。
以上のような問題では、警察への届出のやり方を含め、どういった方法で解決するか検討しなくてはなりません。弁護士への相談はほぼ必須といえます。
▼弁護士に相談した方が良いケース②
- 以前から郵便受けの中身がなくなる等の被害がある。
- 物を勝手に動かしたり、何かとクレームを入れたりする住民がいる。
- 共用部分の利用方法(物を置くこと等)につき、管理組合から注意喚起や警告がある。
- 以前から何者かにつきまとわれていると感じる。
Q1.置き配の盗難補償は原則なし?
置き配の荷物が盗難された場合、宅配業者や荷送人(=荷物を発送する通販会社等)は原則として補償義務を負いません。
万一ネットショッピング等で盗難トラブルに遭った場合、利用できるのは各社のサービスとしての補償です。
限度額や対応の流れに違いはあるものの、被害を申し出れば、一定の範囲で返金もしくは代わりの物品を発送する等の対応をとってもらえる可能性があります。
①宅配業者の責任
前提として、荷物を無事に届ける責任を負うのは宅配業者です。
そうは言っても、置き配後に盗難されたケースだと原則として損害賠償義務は生じません。
運送契約は届けた時点で完了するものと考え、後になって債務不履行の問題が起きることはないのが原則です。
利用規約に「荷物の引渡し後の紛失・盗難等について一切責任を負わない」等と定める業者に届けてもらったのなら、なおのこと補償請求はできません。
②犯人が負う責任
一方で、置き配で届けた物品を盗んだ人物に責任があることは明らかです。
刑法の窃盗罪(刑法第235条)で有罪となれば、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。
被害者への弁償も当然必要で、不法行為による損害賠償(民法第709条)として請求できます。
そうはいっても、盗難の犯人を捕まえられる可能性は実のところ、それほど高いものではありません。
目撃情報があっても、声や顔等の照合できるものがない限り、警察の捜査力をもってしても検挙に繋がりづらいのが実情です。
Q2.勝手に置き配されて盗難に遭うケースはどうなる?
配達希望品が増え続ける昨今、指定していないにも関わらず玄関前に荷物が放置されてしまうケースが散見されます。
このように勝手に置き配された結果盗まれてしまったケースでは、もちろん宅配業者が責任を持って対応すべきと考えられます。
・置き配指定なしor合意していなかった場合
置き配を指定していなければ、勝手に荷物を届けた宅配業者の過失として、盗難被害額の大部分を保証してもらえます。
「対面受取を希望するが不在時は指定した場所に置く」といった配達方法に合意していなかった場合も、同じことがいえます。
・荷物の置き方自体に問題があった場合
置き配指定もしくは合意があったとしても、置き方自体に問題があれば宅配業者の過失が認められます。
指定した場所以外に置かれていたり、敷地の外に放置されてしまったりしたような場合です。
個別のケースでは、配達時の事情が問題となります。
配達時に先に別の荷物が置かれている等指定した場所に置ける状態にあったかどうか、置く場所について荷受人への事前の連絡をしていたかどうか等といった点も踏まえ、損害賠償額を決めることになるでしょう。
Q3.弁護士に相談した方が良い場合とは?
置き配の盗難被害の中には、単に「荷物を受け取れず全額損したこと」に留まらない深刻なケースもあります。
以下のような状況だと、より複雑な法律トラブルに対処するため、弁護士への相談をおすすめします。
・ネットショップor配送業者の対応に納得できない
まず考えられるのは、盗難補償に関わる会社の対応に違和感を覚えるケースです。
相手の主張する補償額や配達状況について納得できない時は、こちらの言い分を立証して泣き寝入りを避けるため、法律の専門家と対応を話し合うべきです。
また、高齢者の買い物等に関しては、実は「置き配の盗難」ではない別のトラブルである可能性も考えられます。
▼弁護士に相談した方が良いケース①
- 利用規約通りの補償に応じない。
- 指定した配達方法を守ってくれず、その事実を相手が認めない。
- 置き配指定で送ったと主張するが、発送した形跡が見当たらない。
- 高齢の家族が置き配指定で買い物し、購入から配達までの経緯を上手く聞き出せない。
・盗難の犯人に心当たりがある場合
置き配の荷物を盗んだ犯人に心当たりがあるのなら、盗難よりも大きい被害を解消・防止したいところです。
より明確に言えば、ストーカー規制法で禁止される行為や、従前からある近隣住民とのトラブル等が挙げられます。
以上のような問題では、警察への届出のやり方を含め、どういった方法で解決するか検討しなくてはなりません。弁護士への相談はほぼ必須といえます。
▼弁護士に相談した方が良いケース②
- 以前から郵便受けの中身がなくなる等の被害がある。
- 物を勝手に動かしたり、何かとクレームを入れたりする住民がいる。
- 共用部分の利用方法(物を置くこと等)につき、管理組合から注意喚起や警告がある。
- 以前から何者かにつきまとわれていると感じる。
まとめ
置き配の受け取りは自己責任の度合いが大きく、通販会社や宅配業者には盗難被害の補償義務がありません。
サービスとして一定の範囲で弁償してもらえる期待はありますが、どんなに利用者思いの業者でも、全額補償してくれるとは言い切れないのが現状です。
場所を確保しつつ、届き次第すぐに受け取れる準備を整えれば、置き配の安全な利用は十分見込めます。
それでも盗難に遭ってしまった場合は、ひとまず宅配業者に確認をとり、状況に応じて消費者ホットラインや弁護士に相談しましょう。
▼置き配を安全に利用するためのポイント
- 購入確定前に配送指定の設定を確認する
- 配達先は宅配ボックス等の「鍵やロックがかかる場所」にする
- メール・SMS等の配信設定を済ませ、荷物の到着をすぐ確認できるようにする