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裁量労働制でも残業代は請求可能!残業代の計算方法や請求方法を解説

裁量労働制 残業代

「裁量労働制だから残業代は出ない」と会社から言われてしまった…。
そんなことを突然言われても、戸惑ってしまうでしょう。

しかし、裁量労働制でも残業を請求することは可能です。
そこで今回は

  • 裁量労働制とは何?
  • 本当に残業代は出ない?
  • 裁量労働制の残業代
  • 裁量労働制でも残業代を請求するために抑えておきたい4つのポイント

について解説します。ご参考になれば幸いです。

残業代がもらえないかも…?とお悩みの方は以下の関連記事もご覧ください。

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1、裁量労働制とは?残業代を請求するために押さえておこう!

裁量労働制とは、使用者の労働時間把握義務を免除し、一定の時間労働したものとみなす制度です。
すなわち、実際に労働した時間に関係なく、予め決められた時間を労働時間とみなす制度です。

このような制度は、裁量みなし労働時間制といい、2つの型があります。

(1)専門業務型

ひとつは、業務の性質上、その遂行方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため遂行方法及び時間配分について具体的な指示をすることが困難な業務について、労使協定で定めた時間労働をしたものとみなす制度です(労基法38条の3、専門業務型)。

専門業務型の裁量労働制が法的に、認められるためには、下記の項目を定めた労使協定を締結し、かつ、労働基準監督署へ届けなければなりません。

①対象業務

②業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し労働者に具体的な指示をしない旨の定め

③労働時間の算定については、協定で定めるところによるとする旨の定め

④1日のみなし労働時間

⑤有効期間

⑥健康・福祉確保措置

⑦苦情処理措置

具体例としては、研究開発、システムエンジニア、記者・編集者、デザイナー、プロデューサー・ディレクター、コピーライター、システムコンサルタント、インテリアコーディネーター、ゲーム用ソフトウエアー開発、証券アナリスト、金融工学等を用いて行う金融商品開発、公認会計士、弁護士、建築士、不動産鑑定士、弁理士、税理士、中小企業診断士、大学の教授研究職等が挙げられており、法令で指定された業務についてのみ認められています。

(2)企画業務型

もうひとつは、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務に、対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者が就く場合で、労働者の同意が得られた場合について、労使委員会が定めた一定時間労働したものとみなす制度です(労基法38条の4、企画業務型)。

この制度の適用を受けるためには、労使委員会での5分の4以上の多数の議決で次の事項を定めたうえ、労働基準監督署へ届けなればなりません(労基法38条の4第1項)。また、下記の⑥にあるように当該労働者の個別的な同意を得なければなりません。

①対象業務

②対象労働者

③一日のみなし労働時間

④健康・福祉確保措置

⑤苦情処理措置

⑥対象労働者の同意を得なければならないこと及び不同意の労働者に対し不利益取り扱いをしてはならないこと。

⑦決議の有効期間、記録の保存期間

企画業務型の具体例としては、例えば、本社・本店において当該事業場の属する企業における事業の運営に大きな影響を及ぼす決定を行うような企画業務、当該事業場にかかる事業の運営に影響を及ぼす独自の事業計画や営業計画を企画する業務等が想定されています。

(3)あなたの勤務体系は裁量労働制?

あなたの勤務体系が裁量労働制であるかどうかは、あなたの職種が上記具体例に該当するようなものであることが前提です。

そのうえで、⑴⑵の型の労使協定や労使委員会の決議があるかどうかを人事や総務に確認してみることが重要であるといえます。

また、上記のように、裁量労働制は、厳密な法的要件が定められておりますので、上記要件をみたさない場合、通常の労働者と同様に、原則として、提供した時間に基づいて残業代が計算されます。

詳しくは「残業代が未払いになったら! 残業代請求の全手順」を参照ください。

2、裁量労働制でも会社に残業代を請求できる?

このように裁量労働制がとられている場合、実際に労働した時間に関係なく、予め決められた時間を労働時間とみなす制度であるため、時間外労働手当、残業代という概念はないように思えます。

しかしながら、裁量労働制の場合も、例えば、深夜残業の場合は別で、残業代の請求ができます。

すなわち、従業員が、午後10時から午前5時の間に、労働を提供した場合、会社は、当該従業員に対し、深夜残業手当を支払わなければなりません。

裁量労働制がとられている従業員に対しても、会社は、深夜残業手当を支給しなければならないのです。

裁量労働制がとられている従業員の方でも、午後10時以降に労働を提供した場合には、その記録を残しておく(タイムカードやメールの記録を保存しておく。)必要があるといえます。

3、裁量労働制の場合の残業代の計算方法は?

例えば、1日あたり9時間の裁量労働制がとられている場合、当該従業員が午前10時から20時まで働いたとしても、2時間分ではなく、8時間を超える1時間分の時間外割増賃金の支払が必要となります。

ただし、会社によっては、裁量労働制の適用に加えて、固定残業代の定めがある場合も多く、就業規則上で当該固定残業代にこの1時間が含まれるとする定めがあれば残業代は発生しないことになります。

また、裁量労働制によるみなし労働時間は原則として労働日にしか適用されません。
従いまして、会社は、休日労働の方は実労働時間を把握・計算し、法定外休日の労働時間分は時間外割増賃金を、法定休日の労働時間分は時間外ではカウントせず休日割増賃金を支払う義務があります。

また、「2」で述べたように、深夜労働についても別になりますので、会社は、時間外割増賃金と深夜割増手当の支払が必要になります。この場合も固定残業代の適用がある場合があることは、前述のとおりです。

4、裁量労働制の方が会社に残業代請求する方法

では、実際に残業代請求をする場合、どのような流れになるのでしょうか。

まず、法律事務所にご相談ください。この時に、残業の証拠となる資料(タイムカード、職場のアドレスから送信されたメール履歴等)、労働契約の内容を確認できる資料(雇用契約書、就業規則、給与明細等)をご持参いただけると、ある程度の確度を持った判断ができます。

また、裁量労働制がとられている方の場合、上記のような労使協定や労使委員会の議決が重要になりますので、できれば入手し、持参いただけるとさらに確度も持った判断ができます。

次に、会社に対し、内容証明郵便にて残業代等の請求を行います。労働者側に証拠が不足しているときは、会社に対し証拠の開示を求めます。多くの会社は証拠の開示に協力的ですが、中には開示に協力しない会社もあります。そのような場合には、推定計算等を用いて残業代の金額を計算します。

さらに、会社が裁判外で残業代を支払えば、これを受け取って事件終了となります。会社が裁判外での支払いに応じず、争う姿勢である場合には、労働審判や訴訟を提起して、裁判所による手続の中で解決を図ることとなります。

詳しくは「残業代が未払いになったら! 残業代請求の全手順」を参照ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

会社において専門職とされ、みなし労働時間制を採用されている従業員の方でも、具体的に従事している業務内容によっては会社に対して残業代請求ができる場合があります。

当該従業員のみなし労働時間制該当性の判断については微妙なケースが多く、専門家による具体的な事情を聴取したうえでの判断が必要です。

お一人で悩まず、まずは弁護士等の専門家にご相談ください。

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