離婚を考えている方にとって、最適な離婚の時期がいつなのかを知りたいところでしょう。子どもの有無や夫の仕事の状況など、個々の要素によって適切なタイミングは異なります。
今回は、離婚に踏み切るタイミングやそのきっかけについて、多数の離婚事件を解決してきたベリーベスト法律事務所の弁護士監修の上で解説していきます。
離婚のタイミングでお悩みの方のご参考になれば幸いです。
目次
1、離婚に最適なタイミングとは?
(1)配偶者に不貞な行為があった場合
配偶者に不貞行為があった場合の離婚のタイミングとは、明らかな証拠をつかんだ後になります。
確かな証拠がない状況で離婚話を切り出しても有利に離婚を進められません。
また、不貞行為が一回きりという場合、裁判では離婚が認められないケースもありえます。
不貞行為が許せずに離婚する決意が固いのであれば、数回の不貞行為の証拠をつかんだ後の後の方が確実に離婚をすることができることでしょう。
ただし、少しでも配偶者とやり直したい意思があるなら、一回の不貞行為で決定せずに配偶者にやり直す機会を与えることも必要です。
繰り返す浮気ならば証拠を押さえていつでも離婚することは可能です。
チャンスを与えても浮気をされた場合の方が慰謝料を高額請求ができるかもしれません。
また、ここでいう不貞行為とは性交渉が含まれていなければいけません。
異性と2人で食事をしただけでは基本的に不貞行為には当たらないとされていますので注意してください。
性交渉を証明できる確たる証拠が必要です。
これらの証拠を自分で揃えるのは難しいかもしれません。
その場合には探偵などに調査を依頼して不貞行為の現場をしっかり画像などで押さえてもらうといいでしょう。
(2)配偶者から悪意で遺棄されたとき
法律で定められた悪意の遺棄とは、夫婦が互いに支え合って生活する義務を怠った場合のことを指しています。つまりは、専業主婦が生活費を夫から渡されていなかった場合などのことです。
その他、夫が家庭に帰らず長期間音信不通の場合や、理由もないのに別居状態などのことをいいます。
このような悪意の遺棄に合った場合の離婚のタイミングとは、悪意の遺棄の状態を確かに立証できる証拠が集まった後です。
一般的には、数年間生活費を入れなかったり、数年間家出状態だったり、健康な状態で数年間働かないなどの状態のことを指すと考えてください。
離婚事由が悪意の遺棄の場合には立証が難しいため、信頼できる弁護士などに相談することをおすすめします。
(3)配偶者の生死が3年以上明らかではない場合
配偶者の生死が3年以上明らかではない場合の離婚タイミングは、連絡があった最後の日付を正確に証明できる日から3年以上が経過してからです。
(4)配偶者が強度な精神病で、回復の見込みがないとき
配偶者が強度な精神病の場合には、離婚のタイミングは少し待つ必要があります。
回復の見込みがないことが証明できなければ離婚することは難しいからです。
また、あなたが、配偶者のために献身的に尽くしてきた証拠も必要になるでしょう。
加えて離婚後に精神病患者を看病する人を確保できたタイミングが適切です。
判例上、裁判所は重い精神病患者をあてのないまま社会に投げ出すような結果になる離婚は認めていません。
そのため、離婚後に看病できる人の確保やり今後の療養の方法を確定できているかどうかは離婚のキーポイントになります。
精神病を理由に離婚するためには根気と気力が必要だということです。
配偶者が精神病を患ったからとすぐさま離婚することはできません。
慎重に離婚を進めるようにしましょう。
(5)婚姻を継続し難い重大な事由があった場合
その他婚姻を継続し難い重大な事由とは、例えば夫のDVなどのことです。
離婚のタイミングは暴力の証拠が揃ったらすぐさまです。
例えば、DVによって負った怪我の画像や医師の診断書などがあれば離婚ができることでしょう。
DVには離婚のタイミングをはかるよりもすぐに警察や相談機関に相談して適切な対処をする必要があります。
もしも婚姻を継続し難い重大な事由が相手のモラハラであれば、DVと同様に医師の診断書や、モラハラを受けたときの音声などの証拠が揃った段階です。
我慢し続ければ、あなたが傷つく結果につながります。
証拠があればすぐにでも離婚を決意するようにしましょう。
(6)熟年離婚
民法770条が定める条項とは無関係ですが、熟年離婚を考えるカップルが増えています。
熟年離婚の場合には、夫の定年退職のタイミングが最適な離婚のタイミングです。
夫の退職金が財産分与の対象に含まれ、一定の金員を得られること、また、今まで自宅にいなかった夫が急に在宅になるため、これまでなんとなく離婚を考えていた妻は退職を迎えた夫に我慢ができなくなる可能性もあることが理由です。
もしも老後は自由になりたいと感じていた女性はあらかじめ定年退職を機に離婚する準備を進めておけると安心できるでしょう。
2、状況・配偶者別|離婚の切り出し方
では、それぞれの状況別にどのように離婚を切り出したらいいのかを見ていきましょう。
(1)夫の浮気が原因の切り出し方
夫の不貞行為が原因で離婚を切り出したい場合には、確かな証拠を押さえた上で冷静な話し合いが必要です。
相手の浮気が原因の場合には妻は冷静さを失いがちです。
しかし、逆上しての離婚の切り出しはおすすめできません。
夫にも離婚が脅しにしか聞こえない可能性があります。
あなたの本気度合いを伝えるためにも夫の浮気が原因の場合には、冷静さを保ち、証拠を押さえた上での話し合いを行いましょう。
ただし、一回の不貞行為では離婚が認められない可能性もあります。
いずれにしてもあなたの本気度合いと確固たる離婚の決意を相手に伝えてください。
(2)夫のDVやモラハラでの離婚の切り出し方
夫の暴力やモラハラが原因で離婚を決意した場合には、まずは別居をすることをおすすめします。
一刻も早く夫の元を離れてお互いに冷静になってから切り出した方がうまくいくでしょう。
暴力を行う夫はあなたに執着があるケースが多いものです。
いなくなった途端に殊勝な態度になるかもしれません。
暴力を振るわれている最中に離婚を切り出しては、暴力がエスカレートしてしまう可能性があります。
そのため、まずは別居を行い、その後メールや手紙などで離婚話を切り出すようにしましょう。
それまでにはDVやモラハラの確かな証拠を揃えておいてください。
慰謝料なども請求したいケースが多いはずです。
別居の後は弁護士などに相談して有利に離婚を進めていきましょう。
夫の泣き言には耳を貸さないことが大切です。
(3)話し合いができない状況での切り出し方
夫が回復の見込みがない精神病だったケースや、生死が不明なケース、悪意の遺棄をされているなどパートナーとの話し合いが不可能な場合には、離婚の切り出しはパートナーに対してはできません。
このケースでは信頼できる弁護士に相談を行い、家庭裁判所に離婚調停や離婚裁判の申し立てを行うほうがスムーズかもしれません。
(4)他に好きな人ができた場合の切り出し方
あなたに他に好きな人ができた場合には、立場が弱いのはあなたです。
そのため、離婚の切り出し方は慎重に行う必要があります。
正直に話したなら、場合によっては、あなたが慰謝料を請求される立場になります。
不貞行為がなかったとしても慎重に行動を起こしましょう。
それでもどうしても離婚をしたい場合には、他に好きな人ができたことはできるだけ隠して他の離婚事由で相手を説得した方が得策でしょう。
母子家庭になり、さらに、あなたが慰謝料を支払う側になった場合には、離婚後の生活が苦しくなってしまいます。
「あなたのことが好きではなくなったので離婚してください」などと曖昧な切り出し方の方が良いかもしれません。
あなたの不貞行為を夫がつかんでいた場合には真摯に謝罪し、協議離婚で離婚できるように努力しましょう。
どうしても離婚に同意してくれない場合には、家出をすることも有効です。
相手に諦めてもらえるように別居など強行手段で離婚するしかありません。
最悪のケースでは、離婚裁判になってしまい高額の慰謝料を支払うことになることもありえます。
3、子どもがいる場合の離婚に最適なタイミング事例
(1)子どもが幼児のケース
子どもがまだ小さく赤ちゃんで、離婚の意味もまだ正確に理解できていない年齢の場合には、早いうちに離婚を進めるのも一つの手段です。
苗字が変わったところで、周囲のお友達におかしいと感じられることもありませんし、幼稚園や保育園は学校よりも安易に変わることができます。
いじめの心配もありませんし、まだわからないうちの離婚の方が子どもの心の傷は比較的浅く済むかもしれません。
喧嘩が多い夫婦は子どもが精神不安定になってしまうため、できるだけ離婚を急いだ方がいいかもしれません。
(2)子どもが受験生の場合
受験前の離婚は子どもの精神バランスを崩しやすいので、適切とは言えません。
とはいえ、小学校・中学校・高校・大学の入学前の離婚は、転校の必要もないため、適切なタイミングです。 そのため、離婚することを踏まえた受験先を検討しましょう。
受験に無事に合格できたら入学前に離婚を迅速に進めればいいのです。
入学前のタイミングで引っ越しもできますし、子どもの苗字が変わったとしても、違和感はありません。
子どもが未成年の場合には、入学のタイミングまで離婚は待つようにしてください。
(3)子どもの数が多い場合
子どもの入学を踏まえた離婚のタイミングをご紹介しましたが、そもそも子どもの数が多い場合には、タイミングがうまく合うとは限りません。
このケースの場合には、思春期に近い子どもの入学のタイミングに合わせることがベストかもしれません。
つまりは中学校の入学前です。
ただし、子どもの個性はぞれぞれです。
あなたの目から見て、1番精神的にバランスを崩しやすい子どもの入学前を検討するのも1つの方法です。
男女でも違います。
実は男の子の方が精神的には弱い可能性があります。
ですが、女の子の方が周囲を気にする可能性もあるでしょう。
子どもの個性に合わせた離婚にぴったりなタイミングをあなたが上手に探してください。
(4)子どもが成人していたら?
子どもが成人していた場合には、同居をしていないならば子どものことは気にする必要はありません。
夫婦の事情で離婚のタイミングをはかってください。
同居をしている子どもがいる場合には、子どもにも離婚の相談をしてみましょう。
もしも結婚をもうすぐ控えた子どもがいた場合には、子どもが無事に入籍を済ませた後に離婚した方が無難かもしれません。
4、子どもがいない場合の離婚に最適なタイミング
子どもがいない場合の離婚のタイミングは、子どもがいる場合と比較すると難しくはありません。
あなたが離婚後も生活していく能力があるなら、離婚事由と配偶者や状況によって決めていきましょう。
子どもがいませんから親権や養育費などで悩む必要はありません。
慰謝料を請求するなら、離婚事由に該当する証拠を集めた後ならいつでも離婚のタイミングといえるでしょう。
もしも、慰謝料が期待できない状態の場合には、少しだけタイミングを待つのも賢い選択です。
ただし、いずれは離婚をしたいなら早ければ早いほど、あなたの社会的な立場は守られるかもしれません。
若いうちの方が就職先も見つけられますし、惰性で婚姻を続ける必要もないからです。
5、希望するタイミングで離婚することは難しい
離婚は1人でできるものではありません。当然パートナーの合意が必要なものです。
協議離婚や調停離婚では話し合いをじっくりしていく必要があります。
もしも裁判離婚だったとしても、裁判期間があるため、あなたの思い通りのタイミングで離婚することは難しいでしょう。
離婚事由にもよりますが、できれば裁判などには発展せずに協議離婚(夫婦間の話し合い)で離婚を成立させたいと感じるはずです。
相手あってのことですから、完全に希望するタイミングでの離婚はできないと考えてください。
パートナーが納得できるように離婚の話を切り出してから半年間の猶予を与えて、お互いに幸せになれる道を考えた方がいいでしょう。
その間に夫の離婚事由に相当する態度が改る可能性もあります。
態度が改れば、本当に離婚するしか道がないのかを改めて検討してみてもいいと思います。
6、離婚を決意する前に離婚のデメリットを再確認
(1)子どもに父親がいなくなる
離婚によって母親が親権を得た場合は子どもは父親を失うことになります。
授業参観や運動会、入学式、卒業式など大事なシーンに父親の不在は子どもにとっても大きな傷になるかもしれません。
そのことを重々承知した上で離婚を決意する必要があるでしょう。
子どもがまだ小学生程度の場合には、周囲の友達にからかわれる可能性も否定できません。
傷つくのはあなただけではないと理解するようにしてください。
(2)信頼できる人を失う
当然ですが、大事なパートナーを失うわけですから寂しくなる可能性があるでしょう。
いつもそばで寄り添い相談に乗ってくれていたパートナーを失うことになるわけです。
何でも1人で解決していかなければいけません。
(3)社会的な信用を失う可能性がある
離婚を行うことでお互い社会的な信用を失う恐れがあります。
離婚したことを周囲に報告すること自体は良くないことではないのですが、女性の場合には、周囲の友人から根も葉もない噂を流される可能性もありますし、聞かれたくないことまで聞かれることもあるでしょう。
(4)経済的に苦しいかもしれない
女性の場合には子どもがいて親権を得た場合は母子家庭になるわけですから、経済的な水準がこれまでよりも低くなる可能性が高いでしょう。
これまでも働く女性だったとしても、収入はあなた1人にかかってきます。
そのため、夫の稼ぎは今後あてにできないということです。
養育費や慰謝料をもらったとしても、夫がいつまでも健康で働き続けられるとは保証されていません。
子どもの教育資金は相当額かかると認識しておきましょう。
(5)再婚は難しいかもしれない
バツイチの場合には、今後再婚がスムーズにできるとは限りません。
男性によっては再婚を嫌がるケースもありますし、男性の家族に反対されることもあるでしょう。
あなたは老後も1人で暮らすかもしれない覚悟が必要です。
7、離婚の話し合いは時間をかけるべき!切り出す前の準備
離婚の話し合いは時間をかけてじっくり行う必要があります。
上手に切り出して真剣に話し合いを行うためには、事前準備をしっかり行っておきましょう。
スムーズに離婚を進めるためには必要なことです。
まずは、離婚資金を貯蓄しておきましょう。
離婚にはおおよそ100万円があれば良いと言われています。
この資金は新たに生活するための引越しなどの資金です。
また、離婚後に安定した収入を得るための職業にも就いている必要があります。
離婚後安定した生活基盤がある状態で離婚を切り出した方がパートナーを説得できる確率は高くなります。
切り出す前にぜひ実践しておきましょう。
まとめ
離婚の最適なタイミングとは、夫婦によって違います。
離婚の理由や状況などに応じて、適したタイミングを掴んでみましょう。
子どもがいる場合には、子どもの心理を優先にした離婚のタイミングを考えるべきです。
家族にとって、最善な離婚タイミングでスムーズに離婚ができるといいですよね。
また、協議離婚を行う場合には、養育費や財産分与、慰謝料などについてはしっかり公正証書に残しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。