不倫は既婚者にとって離婚の原因となり得ます。
しかし、感情に任せて急いで離婚に踏み切ることは慎重に考える必要があります。
この記事では
- 相手の不倫による離婚の手順
- 自身の不倫による離婚の手順
- 相手との共同の不倫による離婚方法
- 弁護士の無料相談
について解説します。
目次
1、不倫による離婚の手順
不倫によって離婚する場合は、以下の手順を踏むことが重要です。
相手が不倫した場合と自分が不倫した場合とに分けて、基本的な手順をみていきましょう。
(1)相手が不倫をした場合
相手が不倫をした場合は、相手が有責配偶者ということになります。
したがって、自分が離婚を望むのであれば、相手が離婚に承諾しなくても離婚することは可能です。
ただし、だからといって離婚条件について自分の希望がすべて通るとは限りません。
できる限り有利な条件で離婚するためには、以下の手順を踏むことが必要です。
①証拠をつかむ
まずは、相手が不倫したことを証明できる証拠をつかみましょう。
相手が不倫したことを否定し、しかも証拠がなければ不倫をしていないのと同じ状況になってしまいます。
その場合、相手に対して慰謝料を請求することもできませんし、離婚自体も認められない可能性があります。
②相手の財産を調査する
離婚する際には、慰謝料とは別に財産分与を請求できます。
ただ、離婚を切り出すと相手が財産を隠してしまうおそれがあります。
そのため、離婚を切り出す前に相手の財産を調べて確認しておくことが大切です。
預貯金や不動産、車の他にも株式などの有価証券、保険、退職金などさまざまな財産がある可能性があるので、よく調査しましょう。
③親権を獲得できるか検討する
未成年のお子さまがいらっしゃる場合、離婚後は自分か相手のどちらかが親権者となります。
どちらが親権を獲得するかはお子さまの利益を最優先して決められるものであり、不倫したかどうかと直接的な関係はありません。
子どもと離れたくない場合は、親権を獲得できるかどうかを検討しておく必要があります。
④場合によっては別居
相手の不倫や財産について調査し、証拠を確保したら、いよいよ離婚を切り出します。
ただ、離婚を切り出してもすぐに離婚できるとは限りません。
離婚が成立するまでの間、同居したままでは平穏な生活を送ることは難しい場合もあります。
そのような場合は、別居をするのもよいでしょう。
別居するためにはさまざまな準備が必要となりますので、別居したい場合は離婚を切り出す前から準備をしておいた方がよいです。
⑤慰謝料等請求
離婚を切り出したら、相手に対して慰謝料等を請求しましょう。
慰謝料は、不倫に対する慰謝料と、離婚そのものに対する慰謝料の双方を請求することができます。
実際にはひと口にまとめて請求するのが一般的ですが、不倫が原因で離婚に至ったといえる場合は、離婚しない場合よりも高額の慰謝料請求が可能です。
また、慰謝料とは別に財産分与の請求も可能です。
財産分与は、離婚原因にかかわらず夫婦が共同して築いた財産を2分の1の割合で折半するのが原則です。
さらに、別居している場合は離婚が成立するまでの間、婚姻費用分担請求も可能です。
「婚姻費用」とは、夫婦が生活するためのお金のことです。離婚が成立するまでは夫婦なので、生活費の分担を請求することができます。
(2)自分が不倫をした場合
一方、自分が不倫をした場合は、自分が有責配偶者ということになります。
この場合、相手が離婚を承諾しなければ離婚をすることはできません。
そのため、相手が不倫した場合よりも慎重に手順を踏まなければなりません。
自分が不倫をしつつ離婚を求める場合、いくつかのケースに応じて注意すべきポイントが異なります。
以下、ケースごとにご説明します。
①不倫がバレている場合
不倫の決定的な証拠を相手につかまれている場合や、自分で不倫を認めてしまった場合は、相手が離婚を望まなければ自分から離婚をすることはできません。
この場合、離婚するためには話し合いによって相手の理解を求めるしかありません。
まずは、相手が離婚したくないという理由を理解した上で、時間をかけて説得していく覚悟が必要になります。
②不倫がバレてない場合
不倫が相手にバレていない場合は、不倫の事実は伏せておくのが得策です。
そうすることによって、不倫による慰謝料を支払わずに離婚できる可能性があります。
ただ、相手に有責行為がない限り自分から離婚を強行できないことは、不倫がバレている場合と同じです。
やはり、粘り強く交渉していくことが必要です。
③相手にも有責行為がある場合
自分も不倫したものの、相手にも有責行為があるという場合もあるでしょう。
DVやモラハラ、浪費、多額の借金など、さまざまな事情があると思います。
相手にも有責行為がある場合は、相手の承諾がなくても離婚をすることは可能な場合があります。
ただし、相手の行為が法律上の離婚原因に該当するといえるかについては注意が必要です。
④不倫する前から夫婦関係が破たんしていた場合
不倫が発生する場合、すでに夫婦関係が冷めている場合も多いでしょう。
婚姻関係を継続しがたいほどに夫婦関係が破たんしていた場合は、法律上の離婚原因となるため、相手の承諾がなくても離婚をすることが可能です。
ただし、それまでは問題がなかったのに、自分が不倫したことによって夫婦関係が破たんした場合は、原則として自分から離婚をすることはできないのでご注意ください。
2、相手が不倫をした場合の慰謝料相場と請求方法
次に、相手が不倫をした場合にどれくらいの慰謝料を請求できるのか、慰謝料を請求するにはどうすればよいのかについて、具体的にご説明します。
(1)請求の準備として証拠の確保が必要
まず、慰謝料を請求する前に不倫の証拠を確保する必要があります。
証拠がなければ、相手に不倫の事実を否定された場合に慰謝料を獲得するのが難しくなるからです。
① 慰謝料請求に使える証拠の種類
不倫の慰謝料を請求するためには、相手(配偶者)が不倫相手と性交渉を持ったことについての証拠が必要です。
そのような証拠として使えるものとして、一般的には次のようなものがあります。
- ラブホテルに出入りするところを撮影した写真
- メールやSNS、手紙などで性交渉があったことを推認できるやりとり
- ラブホテルや二人で泊まりがけの旅行に行った際の領収書
- 配偶者や不倫相手が不倫を認める発言を録音したもの、または書面化したもの
② 証拠の掴み方
以上の証拠を自分でつかむためには、家庭内で配偶者のスマホの画面や領収書などを撮影するのが一般的です。
配偶者や不倫相手との話し合う際には、ボイスレコーダーで会話を録音したり、不倫を認める念書や謝罪文を書いてもらうようにします。
二人がラブホテルに出入りする写真を撮影するには、尾行することが必要なので、ご自分では難しい場合が多いです。
そんなときは、探偵などの専門業者に依頼することも検討するとよいでしょう。
有効な証拠の種類や証拠のつかみ方について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
(2)請求は内容証明郵便を使う
不倫相手に慰謝料を請求する際は、書面に請求する内容を明確に書いて、内容証明郵便で送付しましょう。
内容証明郵便を使うことで相手も請求に応じやすくなりますし、時効をストップさせる効果もあります。
なお、慰謝料請求権の時効期間は、不倫の事実および不倫相手を知ったときから3年です。
配偶者に不倫の慰謝料を請求する場合は、別居している場合にのみ内容証明郵便を送付するのが一般的です。
ただし、時効期間が迫っている場合は同居している場合でも内容証明郵便を使うとよいでしょう。
内容証明郵便の書き方などの詳細については、以下の記事をご参照ください。
(3)慰謝料の相場
慰謝料を請求する場合、いくら請求できるのかが気になるところでしょう。
不倫の慰謝料に計算基準のようなものはなく、当事者が合意する限り、金額は自由です。
そのため、内容証明郵便には自分が納得できる金額を書きましょう。
ただし、慰謝料請求の裁判においては、一定の相場が形成されています。
不倫の慰謝料の相場はおおよそ数十万円~300万円程度の範囲内で、さまざまな事情を考慮して決められます。
不倫の慰謝料の相場について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
(4)慰謝料の実例
ベリーベスト法律事務所では、実際にご依頼を受けて、不倫相手から慰謝料を獲得した実績が多数ございます。
以下の記事でいくつかの事例をご紹介しています。相場を超える400万円の慰謝料を獲得した事例も掲載していますので、参考になさってください。
3、相手が不倫をして離婚前に別居する方法
相手(配偶者)の不倫によって離婚する前に別居をお考えの場合は、離婚を切り出す前に離婚の準備を進めておくべきです。
(1)まずは別居先を確保すること
別居するためには、当然ですが別居先を確保しなければなりません。
離婚することと、その前提として別居することを決めのであれば、別居先のアパートなどの契約をしておきましょう。もちろん、実家に戻れる場合は実家に戻ってもかまいません。
子どもを連れて出る場合は、子どもの養育環境として問題がないかどうかも考慮して別居先を選ぶようにしましょう。
(2)婚姻費用を請求
別居を開始したら、相手(配偶者)に婚姻費用を請求することができます。
婚姻費用を支払ってもらうためには、相手に請求した上で話し合いをする必要があるので、実際に支払ってもらえるようになるまでに時間がかかることがあります。
そのため、別居を開始したらすぐに請求できるように、次のような準備をしておきましょう。
①請求は内容証明郵便を使う
婚姻費用の請求にも、内容証明郵便を使いましょう。
通常は一通の内容証明郵便に
- 離婚を求めること
- 慰謝料〇〇万円を求めること
- 婚姻費用として離婚が成立するまで毎月○万円の支払いを求めること
をすべて書きます。
ただ、離婚するかどうかで迷っているような場合は、婚姻費用の請求のみを書いて送付します。
②婚姻費用の相場
婚姻費用についても、当事者が合意すれば自由に定めることができます。
内容証明郵便には、自分が納得できる金額を書きましょう。
婚姻費用の相場は、裁判所の「婚姻費用算定表」で調べることができます。
参考:裁判所|婚姻費用算定表
算定表には、お互いの年収や子どもの人数・年齢に応じて目安となる婚姻費用の金額が掲載されています。
一例として、相手の年収が400万円、自分の年収が0円で、子ども1人(0~14歳)を連れて出た場合の婚姻費用の目安は月8~10万円です。
なお、この金額は自分と子どもの生活費を含めたものになります。
離婚して自分が子どもの親権者となった後に相手に請求できる「養育費」は子どもの養育にかかる費用のみとなるので、婚姻費用よりも低額になります。
婚姻費用について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
4、不倫した側がスムーズに離婚する方法
ここからは、自分の不倫で離婚を求める場合に踏むべき手順をみていきましょう。
(1)相手の気持ちが次の人生へシフトすることが必要
自分が離婚原因を作った場合は、相手が離婚に同意しない限り、離婚を強行することはできません。
相手の同意を得るためには、相手の気持ちを離婚後の人生にシフトさせることが必要です。
まずは、相手が離婚したくない理由を聞き取り、理解を示しましょう。
金銭的な問題、子どものこと、単に離れたくない、世間体などさまざまな理由があることでしょう。
いずれの場合でも、相手にとっても離婚した方が今後の人生にとってプラスになることを理解してもらえるように、じっくりと話し合わなければなりません。
(2)そのためにできるのは経済的サポートと謝罪
このような話し合いには通常、時間がかかります。スムーズに離婚を成立させるためには、交換条件として経済的サポートを提供することと、心から謝罪することが重要です。
① 経済的サポート
離婚を望まない相手(配偶者)との問題は、金銭で解決できる場合があります。
具体的には、慰謝料や財産分与を相場より多めに支払うことです。
相手が子どもの親権者となる場合は、養育費の支払いも約束しましょう。
なお、財産分与は夫婦共有財産を折半にするのが原則ですが、自分の不倫で離婚を求める場合には「慰謝料的財産分与」「扶養的財産分与」として相手の取得割合を多くすることも考えられます。
慰謝料的財産分与とは、謝罪の気持ちを込めて財産を多めに渡すことをいいます。
扶養的財産分与とは、離婚することによって相手が生活に困窮してしまう場合に、一定期間は生活を保障するために財産を多めに渡すことをいいます。
財産分与について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
② 謝罪
相手の気持ちを動かすためには、こちらも心から謝罪すべきです。
ポイントは、謝罪の意思がきちんと伝わるような態度で気持ちを伝えることです。
本気で謝るときは、泣いてしまうものだと思います。泣けば許されるわけではありませんが、うわべだけの謝罪は有害無益でしょう。
離婚に応じない相手とのやりとりについては、こちらの記事も参考になさってください。
5、自分も不倫したが相手にも有責行為がある場合の離婚方法
自分も不倫したのは事実であるものの、相手にも婚姻関係の破たんについて有責行為があるケースもあることでしょう。
そのような場合は、どうすればよいのでしょうか。
(1)相手にも有責行為があるケース
相手の有責行為には様々なものがあると思いますが、よくあるケースとしては以下のようなものが挙げられるでしょう。
- DV
- モラハラ
- セックス拒否
- 多額の借金がある
- 浪費癖が著しい
- 家事をしない
- 家計が苦しいのに外で働かない
- 実家と不仲
ただ、相手に以上の行為がある場合でも、内容や程度によっては法律上の有責行為にまでは該当しない場合もあります。
法律上の有責行為といえるかどうかについては、弁護士にご相談の上、確認されることをおすすめします。
(2)有責行為があるのに離婚を拒否する相手とは裁判離婚もあり
相手に法律上の有責行為がある場合は、こちらから離婚を強行することが可能です。
話し合いで相手が離婚に応じない場合は、離婚調停や離婚訴訟も検討しましょう。
6、不倫する前から婚姻関係が破たんしていた場合の離婚の方法
不倫が発生する場合、その前から夫婦関係が冷めているケースも多いものです。
そんなときはどうすれば離婚できるのでしょうか。
(1)婚姻関係がどの程度破たんしていたのかを振り返ってみる
夫婦生活をこれ以上継続するのが困難であるほどに婚姻関係が破たんしている場合は、法律上の離婚原因に該当します。
したがって、この場合は離婚をすることが可能です。
前項でご紹介したような相手の有責行為によって婚姻関係が破たんしていたのであれば、離婚調停や離婚訴訟によって離婚することができるでしょう。
問題は、そこまで婚姻関係が破たんしているとはいえない場合です。その場合は、離婚を強行することはできません。
単なる「性格の不一致」で夫婦関係が冷めている場合、通常は法律上の離婚原因としては認められません。
(2)性格の不一致の場合は別居するのもあり
性格の不一致の場合などで夫婦関係が冷めているものの、法律上の離婚原因が自分の不倫以外にない場合は、別居するのもひとつの方法です。
別居が長年続けば「婚姻関係の破たん」が認められやすくなり、離婚できる場合もあります。
具体的な事情にもよりますが、平均して5年~10年にわたって別居が続けば離婚が認められるようになります。
7、不倫の離婚で悩んだら弁護士への無料相談がオススメ
不倫による離婚で踏むべき手順をケース別にご紹介してきましたが、実際には数多くの難しい事情が絡まり合い、対処が難しい場合も多いことでしょう。
対処に困ったときは、弁護士への無料相談がおすすめです。
弁護士はケースバイケースのベストな手順を示し、できる限りスムーズな離婚の実現を目指します。
慰謝料などの金銭的なやりとりについても、依頼人の利益を最大限に考えて対応します。
一人で悩まず、弁護士のサポートを受けて一歩を踏み出しましょう。
Q&A
Q1.相手が不倫をした場合の相場は?
慰謝料を請求する場合、いくら請求できるのかが気になるところでしょう。
不倫の慰謝料に計算基準のようなものはなく、当事者が合意する限り、金額は自由です。
そのため、内容証明郵便には自分が納得できる金額を書きましょう。
ただし、慰謝料請求の裁判においては、一定の相場が形成されています。
不倫の慰謝料の相場はおおよそ数十万円~300万円程度の範囲内で、さまざまな事情を考慮して決められます。
Q2.相手が不倫をして離婚前に別居する方法は?
別居するためには、当然ですが別居先を確保しなければなりません。 離婚することと、その前提として別居することを決めのであれば、別居先のアパートなどの契約をしておきましょう。もちろん、実家に戻れる場合は実家に戻ってもかまいません。 子どもを連れて出る場合は、子どもの養育環境として問題がないかどうかも考慮して別居先を選ぶようにしましょう。
Q3.自分の不倫でスムーズに離婚する方法は?
自分が離婚原因を作った場合は、相手が離婚に同意しない限り、離婚を強行することはできません。 相手の同意を得るためには、相手の気持ちを離婚後の人生にシフトさせることが必要です。 まずは、相手が離婚したくない理由を聞き取り、理解を示しましょう。 金銭的な問題、子どものこと、単に離れたくない、世間体などさまざまな理由があることでしょう。
まとめ
本記事では、相手(配偶者)に不倫された方も、自分が不倫をした方も、離婚を決意した後にどのような手順を踏むべきかについてご説明してきました。
ただ、離婚を切り出す前に、本当に離婚すべきなのかについても考えてみるべきです。
必ずしも離婚することがあなたの人生にとってベストな選択肢であるとは限りません。
今後の人生を実りあるものにするために、まずは離婚問題に強い弁護士に相談してみましょう。
そこから、何が自分にとってベストなのかを弁護士とともに考えていきましょう。