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住宅取得資金贈与の特例とは?メリットと具体的な手続きの流れ

住宅取得資金贈与の特例とは?メリットと具体的な手続きの流れ

相続税を節税したいなら、生前贈与の制度を効果的に利用すべきです。
親や祖父母から子どもや孫に住居購入費用を贈与すると、住宅取得資金贈与の特例によって、大幅な贈与税控除を受けられる可能性があります。
有効に控除制度を活用するためには、どのようなケースで利用できるのか、またどのようなメリットがあるのか、正しく把握しておくことが重要です。

今回は、

  • 住宅資金贈与の特例のメリット
  • 具体的な利用手順

について、べリーベスト税理士事務所の税理士が解説します。
相続税対策でお悩みの方のご参考になれば幸いです。

住宅取得資金贈与の特例について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。

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1、住宅取得資金贈与の特例とは?

住宅取得資金贈与の特例とは、親や祖父母などの直系の尊属から、子どもや孫などの直系の卑属へと住宅購入資金を贈与したときに、贈与税がかからなくなる特例のことです。

贈与税が控除される限度額は、贈与対象の住宅の種類や贈与を行ったタイミングによって異なります。
当初の控除枠は小さかったのですが、今は少し拡大されており、消費税率が10%である現在、さらに拡大されて、最大3,000万円までの贈与分が無税になっています。

「住宅取得資金贈与」という名称ですが、住宅の購入資金のみならず、建築資金やリフォーム資金であっても、資金援助である限りはこの制度を利用することができます。

ただし、「資金」の贈与である必要があるため、「住宅そのもの(不動産)」の贈与のケースでは、この制度の適用を受けることができません。

また、子どもがすでに住宅ローンを組んでいる場合に、親がそのローンを肩代わりするケースでも、この制度による贈与税控除を受けることができません。肩代わり分についての贈与税が課税されることとなります。

2、住宅取得資金贈与の特例ができた理由

住宅取得資金贈与の制度ができたのは、平成26年(2014年)のことです。

施策の背景としてあったのは、若い世代の平均年収や平均貯蓄額の伸び悩みと、住宅価格の上昇傾向です。
30代で、これから家を購入しようという若い世代にはお金がないのに不動産価格が上がっているので、若い世代は住宅を購入することができていません。

一方で、親世代に当たる60代以降では、3,000万円以上の貯蓄がある世帯が4分の1以上にのぼっており、非常に高額な資産を有しています。

そこで、親世代から子世代へと資産をスムーズに移転させて住宅建築市場を活性化させ、景気の好転や維持に役立てたいという狙いと、子世代が自分達の住宅を購入して安心して暮らせるようにという目的により、この制度が作られました。

3、非課税となる金額は?

実際に、住宅資金贈与の特例によって贈与税が非課税になる金額は、どのくらいなのでしょうか?

これについては、贈与を行うタイミングとそのときの消費税率、さらには対象住宅が質の高い住宅かどうかによって、大きく異なります。

以前、消費税8%の場合の非課税枠は、以下の通りでした。

契約年質の高い住宅の場合一般住宅(左記以外)
平成28年1月~令和2年3月1200万円700万円

令和2年4月~令和3年3月

1000万円500万円
令和3年4月~令和3年12月800万円300万円

消費税率が10%に引き上げられた現在は、以下の通りになります。

契約年質の高い住宅の場合一般住宅(左記以外)
平成31年4月~令和2年3月3000万円2500万円
令和2年4月~令和3年3月1500万円1000万円
令和3年4月~令和3年12月1200万円700万円

そして、以下のような住宅が「質の高い住宅」として大きな贈与税控除を受けられます。

  • 省エネ住宅(省エネルギー対策等級4または、1次エネルギー消費量等級4)
  • 耐震住宅(耐震等級2級または免震住宅)
  • バリアフリー住宅

4、メリットを分かりやすく!

具体的にシミュレーション ところで、住宅取得資金贈与特例は、「相続時精算課税制度」と併用することができます。

この2つの制度を上手に使うと、より効果的に節税できるので、以下でその方法をご紹介します。

(1)前提として知っておいて欲しい!相続時精算課税制度とは?

相続時精算課税制度とは、親や祖父母から子どもや孫への贈与について、最大2,500万円分の贈与に対する贈与税が非課税となる制度です。
本来、贈与者は60歳以上である必要がありますが、住宅資金贈与と併用する場合には、親が60歳未満であっても利用することができます。

(2)相続時精算時課税制度と併用した場合

相続時精算課税制度と住宅資金贈与の特例を併用すると、住宅資金贈与特例と相続税精算課税制度の2,500万円の合計金額分の贈与まで、贈与税がかからなくなります。

たとえば、令和2年7月1日に、4,000万円の居住用不動産購入資金を贈与するとしましょう。
購入する住宅は「質の高い住宅」です。

このとき、相続時精算課税制度によって2,500万円分が非課税となります。

同時に住宅資金贈与特例により、1,500万円分が非課税となります。

合計で4,000万円まで非課税となるので、課税対象額は0円。つまり、 贈与税は発生しないということになります。

(3)住宅取得資金贈与の特例のみ利用した場合

それでは、相続時精算課税制度を利用せずに住宅資金贈与特例のみを利用すると、どうなるのでしょうか?

この場合、控除されるのは、住宅資金贈与特例の1,500万円と、贈与税基礎控除の110万円の、合計1,610万円です。
すると、残り2,390万円に対して贈与税が課税されますので(税率45%)、贈与税額は、1,075万5千円となります。

圧倒的に、相続税精算課税制度を利用した方が得になることがわかります。

5、住宅取得資金贈与の特例を利用するデメリット

住宅取得資金贈与特例を利用する場合、デメリットもあるので、注意が必要です。

1つは、必ず贈与税の申告をしなければならないことです。
申告期限に1日でも遅れると、この特例を受けることができなくなって、高額な贈与税が課税されるおそれがあります。

また、将来「小規模宅地の特例」という相続税の評価に関する特例を受けられなくなる可能性が出てきます。
小規模宅地の特例を受けると、宅地の評価額が8割減などになり、非常に効果的に節税できるので、これを利用できなくなるデメリットは大きいと言えます。
住宅資金を贈与するときには、こういった制度のデメリットも踏まえて検討する必要があります。

6、住宅取得資金贈与の特例を利用する手続き

親や祖父母が子どもや孫に対し、住宅取得資金贈与の特例を使って贈与をするときには、必ず贈与の翌年の2月1日~3月15日までの間に、所轄の税務署に確定申告をする必要があります。

申告の際に必要になる書類は、以下の通りです。

  • 贈与税の申告書 第一表
  • 贈与税の申告書 第一表の二(住宅取得等資金の非課税の計算明細書)

国税庁のページに確定申告書の各種の書式があるので、ケースに応じて使い分けましょう。

国税庁の書式一覧  

暦年贈与と併用する場合の記載例 (事例5参照)

相続時精算課税制度と併用する場合の記載例 (事例6参照)

また、贈与税申告時には、以下の添付書類が必要です。

  • 戸籍謄本
  • 購入や築工事の契約書の写し
  • 住宅の登記事項証明書
  • 個人番号カード等の本人確認書類の写し

さらに、贈与を受けた翌年の3月15日までに、実際にその家に居住を開始することが必要です。
まだ家ができておらず居住が不可能な場合には、将来の居住が確実であれば足ります。

7、相続時精算課税制度と併用してすべきケースとそうでないケース

(1)相続時精算課税制度の落とし穴

さきほど、5の項目において、相続時精算課税制度と住宅取得資金贈与特例を併用できると説明しました。
具体的なシミュレーションも行ったので、併用のメリットがあることも理解されていることでしょう。

ただし、相続時精算課税制度と住宅取得資金贈与特例を併用すべきでは無いケースもあります。
相続時精算課税制度は、完全に税金が無税になる制度ではないからです。
この制度を利用すると、将来相続が起こったとき、特例を受けた贈与分が遺産に加算されて、まとめて相続税が課税されます。
そこで、将来多額の相続財産が発生することが見込まれるケースでは、相続時精算課税制度を利用しても、ほとんど節税にならないのです。

(2)相続時精算課税制度と併用すべきかすべきでないか、判断基準

それでは、相続時精算課税制度と住宅取得資金贈与制度を併用すべきかすべきでないか、どのように判断したら良いのでしょうか?

この場合、相続財産の総額を計算してみることをお勧めします。
その金額が、「相続税の基礎控除」を下回っていれば、相続時精算課税制度を利用しても、相続税が課税されないので問題ありません。

これに対し、基礎控除を上回る場合には、相続税の節税を考えるべきですから、相続時精算課税制度は利用しない方が良いでしょう。

なお、相続税の基礎控除は、以下の金額となっています。

3,000万円+法定相続人の人数×600万円

たとえば相続人が妻と子ども1人の場合、

3,000万円+600万円×2人=4,200万円

までは相続税がかかりません。

まとめ

今回は、贈与税の非課税制度である住宅取得資金贈与特例について、解説しました。

この制度を上手に使うと、親が子どもの住宅購入資金を出してあげても贈与税がかからなくなって、大きなメリットを受けられます。

ただ、控除される金額は、贈与のタイミングや対象の住宅の質により、大きく異なるので注意しましょう。
今回の記事を参考に、賢く節税対策を進めてください。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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