「早出(はやで)して仕事をしているが残業代は出ていない」とお悩みではないですか。
早出時間も場合によっては労働時間といえ、残業代が発生する可能性があります。
たとえ少しの時間であっても、会社からの指示があれば労働時間になりえます(何分前から出社すれば早出になるのか、という具体的な法律の基準はありません)。
毎日早出していれば、ある程度の残業代が請求できる可能性があります。
タダ働きとならないために、ご自身がしている早出出勤が労働時間といえるか知っておく必要があります。
そこで今回は
- 早出時間が労働時間といえるケース、いえないケース
- 早出したら早帰りできるのか
- 早出の指示を断れるのか
などについて解説します。
この記事が、朝早くからお仕事をされている方のための手助けとなれば幸いです。
残業代が出ないとお悩みの方は以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、早出の法律上の意味〜所定時間外労働
まずは、早出が法律上どのような意味を持つかについておおまかに解説します。
(1)定められた労働時間を超えていれば残業代が出る
早出をした結果、その日の労働時間が定められた労働時間を超えれば、会社は残業代を支払わなければなりません。定められた労働時間には
- 「法定労働時間」
- 「所定労働時間」
の2種類があります。
法定労働時間とは法律で定められた労働時間のことで、1日8時間です。
これに対して所定労働時間とは契約によって定められている労働時間のことをいいます。
就業規則で労働時間が「午前9時から午後5時(休憩1時間)」となっていれば、所定労働時間は7時間です。
この場合に午前8時から午後5時まで働いていれば、早出したことで所定労働時間を超えるため「所定時間外労働(法内残業)」になります。
また、午前7時から午後5時まで働いていれば、所定労働時間をオーバーした2時間のうち1時間については8時間の法定労働時間も超えているため「法定時間外労働」にあたります。
会社は少なくとも
- 「所定時間外労働」には通常の賃金
- 「法定時間外労働」には25%割増された賃金
を支払わなければなりません。
これらの時間外労働に対し支払われるべき賃金を残業代といいます。
仮に業務命令により早出をし、時間外労働をしているにもかかわらず、残業代が支払われないあるいは請求が拒否される場合には労働基準法に違反している可能性があります。
またこの場合には,労働者の権利として未払いの残業代を請求できる可能性もあります。
(2)終業時刻を早められるかは会社のルールによる
早出をした場合に終業時刻を早めることは可能なのでしょうか?
これは会社のルールによって異なります。
終業時刻が就業規則で定められているときには、基本的に守らなければなりません。
早出したからといって自動的に早帰りが認められるわけではないのです。
これに対して、たとえばフレックスタイム制を採用している会社の場合には早帰りしても構いません。
フレックスタイム制では総労働時間のルールがあるだけで、始業・終業時刻については労働者の裁量に任せられているためです。
「早出をしたときに早帰りをしたい」と考える場合には、就業規則などのルールをよく確認してください。
(3)業務命令でなければ拒否は可能
早出は、業務命令でなければ拒否することができます。
「業務命令がある訳ではないが上司にあわせて部下全員が15分早く来ている」という場合には、早出しなくても問題ありません。
もし「明日は緊急の対応が必要だから早出するように」と指示されていれば、原則として従う必要があります。
この場合に、定められた労働時間を超えて働けば残業代の請求が可能です。
2、早出に残業代は出るってほんと?
ここからは
- 早出時間が労働時間といえるケース
- いえないケース
についてご紹介します。早出時間が労働時間といえれば残業代が発生する可能性があります。
(1)早出が強制されているケース
早出が強制されている場合には、その時間は労働時間といえ、残業代が発生する可能性があります。
以下の例では強制にあたるとされるでしょう。
- 始業前に出席必須とされている朝礼がある
- 上司に「早出して資料を作ってくれ」と指示された
- 始業前に取引先との打合せを入れられた
(2)早出が推奨されているケース
早出が推奨されているものの、強制されているとまではいえない場合はケースバイケースです。
たとえば、任意出席の勉強会のために早出をしていても、出席が強制されていない以上、この時間は労働時間とはいえません。
もっとも、参加していないと人事評価や出世で不利益を受けるようなケースでは事実上強制されているといえ、労働時間といえる可能性があります。
(3)早出に暗黙の推奨が感じられるケース
「上司が早出しているから空気を読んで出勤している」という場合には、強制があるとまではいえず、この時間は労働時間とはいえません。
もっとも、「社長である自分が早く来ているのだから社員が合わせるのは当然」といった発言があれば事情は変わります。
この場合には、早出時間は労働時間といえる可能性があります。
(4)自らの判断で早出をしているケース
- 「通勤ラッシュを避けるため」
- 「遅刻しないように」
といった理由で自らの判断で早出をしている場合はどうでしょうか。
① 早出時間に完全に業務をしているケース
通常の労働時間と変わらない業務をしており、それを会社も黙認しているのであれば、自らの判断で早出をしていたとしても、労働時間といえる可能性があります。
もっとも、会社から仕事をしないように指示されているケースでは、労働時間とはいい難いでしょう。
むしろ業務命令に違反していることになってしまいます。
必要があって業務をするのであれば、事前に申請しておくのがよいでしょう。
② 早出時間に業務外の行動もしているケース
当然ですが、自らの判断で早出をしたものの業務と関係ない行動をしていれば早出時間は労働時間といえない可能性が高いでしょう。
- 朝食をとっている
- 化粧をしている
などのケースがこれにあたります。
もっとも、「朝食を食べながら、電話対応はしている」という場合には、この時間は労働時間といえる可能性があります。
たとえば、会社からの指示で当番を組み、始業前の電話番をしながら朝食を食べているケースでは、早出時間は労働時間といえるでしょう。
(5)早出が強制・推奨だが早出に特典があるケース
「早出すると社員食堂での朝食が無料になる」といった特典があるケースがあります。
こうした場合でも、早出を指示されて業務にあたっている時間は労働時間といえ、残業代を請求できる可能性があります。
別の特典を与えたからといって残業代の代わりにすることはできません。
ここまでの説明を読んで「自分の早出時間は労働時間にあたるかもしれない」と考えた方は、以下の記事も併せてご参照ください。
3、早出を強制・推奨される場合、早帰りは可能なの?
早出の指示があった場合に早帰りができるかは会社のルールによります。
まずは就業規則を確認するのがもっとも確実です。
規則を読んでもわからなければ上長に直接たずねるのが早いでしょう。
もっとも、上長がルールを正確に理解していないこともあり、理解していても正しく教えてくれるとは限らないことに注意してください。
また、ルールで早帰りができないとされていても、上長に問題提起することに意義はあります。
フレックスタイム制の導入など、会社全体のルール構築のきっかけになるかもしれません。
ただし、自分だけの問題として話しても「自分勝手だ」とみなされてしまうため、会社全体の問題として扱う姿勢が重要です。
4、早出の強制・推奨は断っても(従わなくても)いいの?
(1)業務命令であれば基本的に断れない
早出するよう業務命令がある場合には、雇用契約上、会社に所定時間外の労働を命じる権利がある限り、基本的には拒否できません。
代わりに残業代を請求できます。
業務命令なのかはっきりしない場合には、上長に確認するのがよいでしょう。
また、原則拒否できないといっても
- 体調不良
- 育児の必要
など正当な理由があれば別です。理由を申告するようにしてください。
(2)業務命令でない場合は早出が有益かを考える
業務命令ではない場合には、従わなくて構いません。
ただし、早出を推奨する理由を確認するのがオススメです。
「成長スピードが速まる」ことが理由であれば、自分なりに早出せずに同じ結果を出せる方法を考えるとよいかもしれません。
「常識的にそうするべき」といった回答であれば、特段気にする必要はないでしょう。
5、「残業代なし」「早帰りNG」「断る余地なし」の早出にはどう対処する?
(1)早めに専門家へ相談を
早出を強制され、時間外労働をしているにも関わらず残業代を支払わないのは労働基準法違反の可能性があります。
それが常態化している会社では、他の点でもいわゆるブラック企業とみなされるポイントがあることが多いです。
残業代のない早出の強要だけでなく、
- 長時間労働
- パワハラ
など厳しい環境にある場合は早めに専門家に相談して具体的な解決策を検討すべきといえます。
(2)労働問題の相談先
労働問題の相談先としては、一例として以下のものが挙げられます。
- 労働基準監督署
- 労働条件相談ほっとライン
- 労働相談ホットライン
- 都道府県労働局
- 内部通報
- 労働組合
- 弁護士
それぞれについて詳しく知りたい方は以下の記事を参照してください。
特に弁護士は豊富な法律知識を元に会社に対して未払いの残業代を請求し、あなたのために力を尽くします。
ベリーベスト法律事務所では労働問題の経験豊富な弁護士がチームで対応します。
残業代請求に関する相談は何度でも無料ですので一度お気軽に無料相談を利用してみるとよいかもしれません。
まとめ
ここまで、早出について、残業代発生可能性の有無、早帰りや拒否ができるかなどについて解説してきました。
早出をしていて会社の姿勢に疑問を感じている方は、ひとりでお悩みにならずに、早めに専門家にご相談ください。