「息子が強制わいせつ事件に巻き込まれてしまった。弁護士のアドバイスがほしい」 「合意のつもりだったが相手から告訴された。どうすればよいのか弁護士に相談したい」
このような状況に直面した際、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。 強制わいせつ罪は非常に重い罪であり、警察に逮捕される可能性や、初犯でも実刑となる可能性が高まります。
しかし、適切な対処を早急に行えば、逮捕回避や不起訴処分の可能性が広がり、起訴されても軽い判決を勝ち取ることができます。そのため、強制わいせつ罪の専門家である弁護士のサポートは不可欠です。
この記事では、
- 強制わいせつ罪の弁護士への依頼の重要性
- 弁護士が提供する支援内容
- 優れた強制わいせつ罪弁護士の選び方
などについて、ベリーベスト法律事務所の刑事弁護専門チームの弁護士が詳しく解説します。あなたやご家族が強制わいせつ罪の疑いでお困りの方へ、この記事がお役に立てれば幸いです。
目次
1、弁護士を探す前に~強制わいせつ罪とは
強制わいせつ罪とは、暴行または脅迫を用いて相手の同意なしにわいせつな行為をすることで成立する犯罪です。
「暴行または脅迫を用いること」が成立要件ですが、被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度のものであれば「暴行または脅迫」であると認められるので、殴る・蹴るなどの明確な暴力を振るった場合でなくても強制わいせつ罪は成立し得ます。
わいせつ行為の相手方が13歳未満の場合は、暴行や脅迫がなくても、また相手の同意があっても、強制わいせつ罪が成立します。
相手が眠っているときや泥酔しているとき、薬物の影響などで意識を失っているときにわいせつな行為をしたときは「準強制わいせつ罪」という別の犯罪が成立します。
強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪の法定刑は、どちらも同じく6か月以上10年以下の懲役です。また、これらの罪にあたる行為によって相手が死亡または怪我をした場合は刑が加重され、無期または3年以上の懲役となります。
では、どのような行為が「わいせつな行為」に該当するのかについてみていきましょう。
(1)合意なく体に触れる
「わいせつな行為」にはさまざまな行為態様がありますが、代表的なものとして、相手の合意なく体に触れることが挙げられます。
女性の胸や陰部、お尻などを触る行為が代表的ですが、その他にも太ももやお腹など、触られて羞恥心を感じるような部分を触ることは「わいせつな行為」に該当します。
以上の行為は、痴漢行為にも該当します。痴漢行為は、迷惑防止条例違反または軽犯罪法違反として処罰されますが、刑罰は強制わいせつ罪よりも格段に軽くなっています。
痴漢行為と強制わいせつ行為の区別については、公共の場所又は公共の乗り物において、衣服その他につける物の上から又は直接に人の身体に触れた場合には痴漢行為に当たり、暴行脅迫を用いたわいせつ行為が行われた場合は強制わいせつ罪になります。
実務上においては、行為の悪質性をみて、痴漢行為にあたるか強制わいせつ行為にあたるか、判断される傾向にあります。
たとえば、女性の下着の中にまで手を入れて身体を触る、振り払われても執拗に触る、暴力や脅迫によって抵抗不能にさせて触るなどした場合は、痴漢行為ではなく強制わいせつ罪に問われる可能性が高いといえます。
(2)合意なく抱きつく
相手の合意なく抱きつく行為も、「わいせつな行為」に該当するとされています。したがって、いわゆる「ハグ」をしただけでも罪に問われる可能性があります。
強制わいせつ罪は、人の性的自由を保護するために規定されている犯罪です。現在の日本では、合意なく異性に抱きつかれると性的羞恥心を感じ性的自由が害されると考えられていますので、このような行為についても「わいせつな行為」に当たり得るのです。
抱きつく行為について、強制わいせつ罪が成立するか否かは、抱きつき行為の態様と、相手方の合意の有無によって決まることになります。
(3)合意のないキス
「キス」はハグよりも相手に強い性的羞恥心を与える行為ですので、合意なくキスをした場合は強制わいせつ罪が成立します。
(4)合意のない性行為
合意のない性行為も強制わいせつ罪の対象となります。
なお、性行為のうち、「性交」、「肛門性交」、「口腔性交(口を使って性器に対する行為を行うこと、および行わせること)」は、強制性交等罪(旧「強姦罪」)の対象となり、より重い処罰の対象となります。
なお、以上のとおり、相手の「合意」のない行為が「わいせつな行為」の対象となりますが、合意は必ずしも明示のものではなく、黙示の合意であってもかまいません。
2、強制わいせつ事件を弁護士に依頼すべき理由
犯罪には数多くの種類があり、その解決に向けた弁護士の関与の必要性や弁護活動の内容も様々です。
数ある犯罪の中でも、強制わいせつ事件を起こしてしまった場合は、弁護士に依頼する必要性が特に高いといえます。その理由は、以下のとおりです。
(1)痴漢や盗撮より刑罰が重い
強制わいせつ罪と同じく性犯罪に分類される「痴漢」や「盗撮」は各自治体の迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反に該当し、多くの場合は迷惑防止条例違反として処罰されます。
迷惑防止条例違反に対する刑罰は、自治体ごとの条例の規定内容や問題となる行為の態様によっても異なりますが、東京都の場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金と規定されています。
これに対して、強制わいせつ罪に対する刑罰は6か月以上10年以下の懲役であり、痴漢や盗撮に比べて格段に重いといえます。
しかも、強制わいせつ罪には罰金刑がありませんので、有罪となった場合、事案によっては初犯でも実刑となってしまう可能性があります。
このような重い判決を回避するためには、弁護士の力を借りる必要性が高いといえます。
(2)逮捕・勾留される可能性が高い
強制わいせつ罪は刑罰の重い犯罪であるだけに、発覚すると逮捕・勾留といった身体拘束を受ける可能性も高い傾向にあります。
逮捕・勾留をすべきか否かを決定するにあたっては、逃亡や罪証隠滅のおそれが認められるかどうかが重要な視点となります。一般的に、逮捕・勾留を請求する立場の警察官や検察官は、刑罰の重い罪であるほど被疑者が逃亡や証拠隠滅を図る可能性が高いと考えるため、刑罰の重い罪であるほど逮捕・勾留がされる可能性は高くなるのです。
また、強制わいせつは被害者に対する危険性の高い行為ですので、警察官や検察官は被害を拡大させないためにも、身体拘束をしようと考えるのです。
身体拘束を回避するため、あるいはすでになされてしまった身体拘束から早期に解放されるために、弁護士によるサポートを受ける必要性が高いといえます。
(3)実名報道される可能性が高い
強制わいせつ罪は社会に対する危険性が高い犯罪であるともいえますので、逮捕された場合は実名で報道される可能性も高いといえます。
実名報道されるかどうかはマスコミ各社の判断によりますが、強制わいせつ罪で逮捕されたことで実名報道されると、仕事上の人間関係や友人関係も壊れてしまい、今後の社会生活に支障をきたすおれがあります。
(4)えん罪のケースも少なくない
強制わいせつ罪には、えん罪のケースも少なくないという特徴もあります。
たとえば、相手が行為当時は合意していても、後日に行為をしたことを後悔して報復のために告訴をすることもあります。また、彼氏やご主人の手前、「無理やりわいせつ行為をされた」という形を取るために本意ではなくても告訴をすることも考えられます。
さらに、電車内での強制わいせつのようなケースでは、被害者による人違いによってえん罪が発生するケースも少なくありません。
そのような場合、たとえ自分が無実であっても、捜査機関になかなか言い分を聞き入れてもらえずに有罪となってしまうおそれがあります。
えん罪を防止するためには、弁護士によるサポートが不可欠といえます。
3、強制わいせつ事件における弁護士の活動
では、強制わいせつ事件で弁護士に依頼した場合、弁護士は具体的にどのような活動を行うのでしょうか。
(1)逮捕を防ぐ
まず、まだ逮捕されていない段階で依頼した場合、弁護士は逮捕を回避するための活動を行います。
具体的な活動内容としては、「被害者との示談交渉」が中心となります。示談が成立して被害者に許してもらうことができれば、逮捕される可能性は低くなります。
逮捕を回避できれば、仕事や家事、学業を今までどおりに続けることができますし、実名報道される可能性も格段に低くなります。
(2)逮捕された場合の早期釈放
仮にすでに逮捕されている場合でも、逮捕直後に弁護士に依頼すれば、早期釈放の可能性が高くなります。
被害者と示談することによって早期釈放も期待できますし、弁護士から取り調べの対応についてアドバイスを受けることもできます。
検察官は、逮捕から72時間以内に、被疑者について勾留請求をするか否かを決定します。検察官による勾留請求がなされ、裁判官の勾留決定によってこれが認められた場合、被疑者は原則として10日間(勾留延長により最長20日間)の身体拘束を受けることになります。
勾留は、被疑者が定まった住所を有していない場合や、逃亡や罪証隠滅のおそれが強い場合に限って認められるものです。
しかし、実際には検察官の捜査の都合などによって、勾留請求が行われているケースが多いといわれています。
弁護士に依頼していれば、逮捕の段階で検察官や裁判官に意見書を提出し、勾留請求や勾留決定をしないことを求めていくことができます。また、仮に裁判官によって勾留決定がなされてしまった場合でも、その決定に対する準抗告などの法的手段を活用することによって、早期の身柄解放を目指すこともできます。
(3)被害者との示談交渉
強制わいせつ事件を起こしてしまった場合に、処分を軽くするために最も重要なことの一つは、被害者と示談をすることです。
示談が成立すれば、被害者が受けた損害が回復され、被害者が加害者を許すことになります。示談成立の際に書面を作成することで、被害者が加害者を許したことをより客観的に検察官や裁判官に示すこともできます。また、示談をすることで被疑者の反省の態度を示すことにもなります。
とはいえ、被害者と以前から顔見知りであったなどの場合を除いては、加害者とされている者にとって被害者の連絡先を知ることは容易ではありません。
よって、被疑者が自力で被害者と示談をするのは、困難といえます。
これに対し、弁護士に依頼した場合には、示談交渉を行う可能性が生じてきます。
なぜなら、被害者は、加害者本人ではなく加害者の弁護士に対してであれば、警察などを通じて連絡先を教えてくれる場合があるからです。
このようにして被害者と示談交渉を行い、示談が成立すれば、警察官や検察官も「今回は処罰する必要性なし(または必要性が小さい)」と判断し、不起訴処分につながりやすくなります。
(4)不起訴を目指す
起訴される前に弁護士に依頼した場合、その時点で弁護士が目指すゴールは「不起訴処分」です。
不起訴処分とは、起訴しないまま捜査を終了させる検察官の処分のことです。刑事裁判を受けることがなくなるので、有罪判決を受けることもなく、前科もつかないことになります。
弁護士は、不起訴処分を獲得するために、被害者と示談交渉を行う他にも、信頼できる身元引受人を確保したり、検察官に意見書を提出したりするなど、さまざまな弁護活動を行います。
(5)軽い処分を目指す
仮に起訴された場合は、刑事裁判で「執行猶予」付きの判決を目指すことになります。
執行猶予とは、有罪判決で刑を言い渡されるものの、ただちに刑を執行されることはなく、指定された一定の期間に再度犯罪を行わなければ、刑を受けることがなくなるというものです。
つまり、執行猶予がつくかどうかによって、被告人が刑務所に服役するかどうか変わるため、執行猶予を獲得できるかどうかは極めて重要な問題になります。
(6)無罪を目指す
無罪を目指す場合には、弁護士の力を借りる必要性がさらに高いといえます。
無罪判決を獲得するために重要なことは、取り調べにおいて自白の供述調書を取られないようにすることです。
しかし、被疑者が身柄を拘束された状態で、一人で戦っていると、厳しい取り調べに耐えかねて虚偽の自白をしてしまい、その内容の調書を取られてしまうケースが少なくありません。一度自白調書が作成されると、その自白を刑事裁判で覆すことは困難といえます。
弁護士に依頼すれば、適宜被疑者と接見をして、取り調べの対応についてアドバイスをすることができます。また、不適切な取り調べが行われている場合は、警察署や検察庁へ抗議して対応を正す活動を行うこともできます。
4、強制わいせつに強い弁護士を選ぶポイント
強制わいせつ事件を依頼する弁護士は、弁護士であれば誰でもよいというわけではありません。不起訴処分や無罪を獲得することは容易とはいえませんので、強制わいせつ事件を扱った経験が豊富な弁護士を選ぶことが重要です。
強制わいせつ事件に強い弁護士を選ぶポイントは、以下のとおりです。
(1)強制わいせつ事件の解決実績が豊富にあるか
第一に、強制わいせつ事件の経験が豊富にある弁護士を選ぶ必要があります。
民事事件と刑事事件では弁護士の活動のポイントが異なりますし、刑事事件の中でも強制わいせつ事件には特有のポイントがあります。したがって、強制わいせつ事件に力を入れている弁護士に依頼するのが理想的です。
インターネットで検索するなどの方法で、弁護士を探しましょう。ホームページに、強制わいせつ事件の解決実績や強制わいせつに関するコラムなどを豊富に掲載している法律事務所には、強制わいせつ事件に強い弁護士がいると考えられます。
(2)迅速に対応してくれるか
第二のポイントは、弁護士が迅速に対応してくれるかどうかです。
特に、逮捕された場合は、取り調べの初期段階の本人の供述が重要な意味を持ちます。この段階で不利な供述調書を取られると、処分が重くなってしまう可能性があります。
そのため、依頼したら迅速に接見に出向いて、本人にアドバイスをしてくれる弁護士を選ぶ必要があります。
また、不起訴処分を獲得するには、検察官が起訴の判断をするまでに被害者との示談交渉や身元引受人の確保、検察官への意見書提出などの活動を完了させなければなりません。
弁護士の対応が遅れると、期限内に間に合わずに起訴されてしまう可能性があります。
逮捕される前であっても、弁護士の迅速な活動は重要です。いつ被害者に告訴され、逮捕されてしまうか分かりませんので、その前に被害者との示談を成立させ、逮捕されるのを回避すべきです。
(3)弁護士費用が妥当か
第三のポイントとして、弁護士費用についても確認しておきましょう。
弁護士費用は各弁護士、または各法律事務所において独自に定めているため一律ではありませんが、おおむね相場どおりの弁護士費用を設定している弁護士が最も安心できます。
5、強制わいせつで弁護士に依頼するなら私選弁護人がおすすめ!
強制わいせつ罪で逮捕された場合、国選弁護人に依頼すれば、多くの場合は無料で弁護を受けることができます。
しかし、納得のいく結果を得るためには、私選弁護人に依頼するのがおすすめです。その理由は以下のとおりです。
(1)私選弁護人に依頼するメリット
私選弁護人とは、刑事事件で被疑者(またはその家族など関係者)が自分で選び、費用を支払って依頼する弁護士のことです。「弁護人」とは、刑事事件で被疑者・被告人につく弁護士の法律上の呼び名です。
私選弁護人を依頼するメリットは、自分で弁護士を選べることです。強制わいせつ事件に強い弁護士を選べば、より的確な弁護を受けることができます。
また、依頼人が費用を直接支払うので、弁護士も責任感を持って充実した弁護活動を行うという傾向もあります。
(2)国選弁護人に依頼するときの注意点
国選弁護人とは、主に経済力が乏しい被疑者・被告人のために国が選任する弁護人のことです。基本的に無料で弁護を受けられることが、国選弁護人に依頼するメリットです。
ただし、一定以上の経済力がある場合には、国選弁護費用を法テラスへ支払うことを命じられる場合もあります。
また、強制わいせつ事件で国選弁護人に依頼できるのは、勾留が決定した後になります。逮捕前や逮捕中には国選弁護人に依頼することはできません。
その点、私選弁護人は逮捕前から依頼することが可能ですので、早期対応が重要な強制わいせつ事件では、私選弁護人に早めに依頼するのが有効ということになります。
さらに、国選弁護人に依頼する際には自分で弁護士を選べません。強制わいせつ事件に詳しくない弁護士が担当となることもありますし、そもそも刑事事件自体をあまり取り扱わない弁護士が選任されるケースも少なくないことには注意が必要です。
(3)当番弁護士とは
「当番弁護士」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
当番弁護士とは、各地の弁護士会が運営している「当番弁護士制度」に基づいて、身体拘束された被疑者からの要請に応じて1回だけ無料で接見を行い、アドバイスや家族との連絡などを行う弁護士のことです。
当番弁護士は逮捕中でも呼べますが、逮捕前に相談することはできません。また、自分で弁護士を選べない点は国選弁護人の場合と同様です。
6、自分に合った私選弁護人を探す方法
強制わいせつ事件に強い弁護士の選び方は前記「4」でご説明しましたが、さらに「自分に合う」弁護士を選ぶことができれば理想的です。
私選弁護人は逮捕されていない段階でも選ぶことができますので、可能な限り、複数の弁護士に相談をしてみて、その中から最もご自身と相性の良い弁護士を選ぶとよいでしょう。
最近は、刑事事件の法律相談にも初回無料で応じる法律事務所が増えています。インターネットなどで強制わいせつ事件に強い事務所をいくつかピックアップしたうえで、無料相談を利用するのがおすすめです。
あなたの話を親身に聞いてくれて、今後に予想される手続きや処分の内容を分かりやすく説明してくれるような、信頼できる弁護士を選ぶようにしましょう。
まとめ
強制わいせつは、飲酒した勢いで行ってしまったり、相手が嫌がっていることに気づかずに行ってしまったりする犯罪です。その意味で、どんな人でも犯してしまう可能性がある犯罪だといえます。
刑罰が重いため、被害者に告訴されてしまうと「いつか警察がやってきて逮捕されるのでは」、「刑務所に入らないといけなくなるのか」といった不安にさいなまれてしまうことでしょう。
しかし、早期に適切な対処を行えば、解決できる可能性も十分にあります。お困りの際は、ひとりで悩まずに弁護士に相談してみましょう。