外資系企業はリストラが多いと聞いたことはありませんか?
しかし、日本の労働関連法によれば、リストラ(解雇)は一般的に厳しい条件でのみ認められるもののはず。外資系企業には日本の法律の適用がないのでしょうか?
今回は、
- 外資系企業のリストラの実態
- 外資系企業でリストラにされてしまった場合の対処方法
について、ベリーベスト法律事務所の弁護士がご説明していきたいと思います。
ご参考になれば幸いです。
※「リストラ」とは、解雇では事業の再構築に関しての解雇(整理解雇)を意味することが一般的ですが、本記事では単純にクビにされたという意味で記載しております。
目次
1、外資系企業でリストラされるのは珍しくないって本当?
外資系ではリストラは珍しくないということを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
ここでは外資系企業は本当にリストラが珍しくないのかをみていきたいと思います。
(1)外資系企業にも日本の労働法が適用される
外資系企業であっても、日本で営業をする場合は日本の労働法が適用されます。
ですから、非合理的な解雇をすることはできません。
日本では、解雇の種類として一般に下記の3つが挙げられます。
≪解雇の3形態≫
- 普通解雇
- 整理解雇
- 懲戒解雇
(2)外資系企業がしている解雇の種類は?
外資系企業で「リストラされた」という声が珍しくないのはどういうことでしょうか?
実は、頻繁に解雇がなされているというわけではありません。
いうならば「退職勧奨」が行われているということです。
退職勧奨とは、会社側から従業員に対し、退職を勧めることです。
退職勧奨は一方的で強引な解雇とは違い、会社と従業員の「話合い」です。
そのため基本的には違法性はありません。
日本の企業でも退職勧奨は行われますが、外資系企業では日本企業よりも頻繁に退職勧奨が行われているようです。なぜでしょうか?
(3)外資系企業で退職勧奨が珍しくない理由
日本企業より外資系企業で退職勧奨からの退職が多い理由。
それは、
- 雇用に対する考え方
- 給料体系
この2点の違いによるものであるといえます。
①雇用に対する考え方
日本の雇用に対する基本的な考え方は、
- 新人を一人前になるように教育する
- 会社の業務を覚え戦力となることによって給料も上がる
という終身雇用に近いものであると言え、労働法は労働者を保護する内容になっています。
「能力がない」等だけでは解雇はできず、教育は適切に行ったか、その労働者の能力に適した仕事を与えることはできないかなど、解雇までに会社側が行うべきことはたくさんあるのです。
一方、欧米では、育てていくという考えはあまり強くありません。
- この仕事ができるか
- できればこれだけの給料を払う
という成果を中心とした雇用形態です。
②給与体系
このことから、給与体系も変わってきます。
日本では人を育てていくところから給与を支払うわけですから、何もできなかったとしても一定の給与は発生します。
一方、欧米では成果が重視されますから、極論すれば、成果を挙げられれない者には給与を支払う必要がない、つまり辞める、ということにつながっていくのです。
2、外資系企業で行われる退職勧奨の手法
外資系企業で一般的に行われている退職勧奨の方法に「PIP」があります。
<PIP(Performance improvement plan)とは、成績がよくない社員に対して業務改善を目的として、具体的な目標を設定し、一定期間それを実行させることです。
具体的には数値目標を設定し、目標が達成できない場合、「業務改善の結果、成果が見られない」ということで、自主退職を促します。
外資系企業では、入社時の説明によって、仕事の「成果」にコミットしていることは労働者側も理解しています。
そのため、「成果が見られない」ということを数値化して明確にされた場合、それでもこの職場にいたい、と思う労働者は日本人であればなおさら多くないでしょう。
これが、外資系企業でクビになることは珍しくない、という噂の正体なのではないでしょうか。
3、外資系企業で退職勧奨の対象となるケース
ここでは、外資系企業ではどのようなケースで退職勧奨が行われているのかをご紹介していきたいと思います。
(1)人事評価
①アップ・オア・アウト
外資系企業ではアップ・オア・アウトという考え方が一般的です。
アップ・オア・アウトとは、昇進できなければ会社から去りなさいという考え方です。
ですから、結果を出せない人は退職勧奨の対象になりやすいということができます。
②人間関係
外資系企業ではチームのリーダーが人事権を掌握しているケースが一般的です。
このため、チームリーダーとうまく人間関係を築けないと退職勧奨の対象になりやすいといえます。
(2)部門廃止
日本では自分が所属している部門が廃止されても、ほかの部門に異動することが普通です。
それは日本では「職能給制度」(勤続年数に応じた給料体系)が採用されているためです。
一方、外資系企業では「職務給制度(担当する職務内容によって給料が決定する給料体系)」が採用されていることが多く、このため、部門廃止によって専門知識が活用できなくなれば、退職勧奨されるということになります。
(3)日本からの撤退
外資系企業が日本からの撤退をする場合、リストラが行われることになります。
(4)M&Aによるポジション重複
外資系企業では盛んに行われているM&A。
M&Aによって、ポジションの重複が起こった場合、どちらか一方の人材はリストラの対象とされやすいでしょう。
4、外資系企業で退職勧奨されないためには?
外資系企業に勤務した場合、どのようなことに留意すれば勤務を継続していくことができるのでしょうか。
(1)常にスキルアップを怠らない
外資系企業は、単純に言ってしまえば、あなたの仕事の成果に給料を支払っています。
そのため、常に成果を出すためのスキルの向上や工夫を重ねていくことが必要です。
先述のとおり、外資系企業では社員を育てるという意識はあまり強くありませんから、自ら考え行動することを意識しましょう。
(2)社内でのコミュニケーションが最重要
円滑にコミュニケーションをとるため、「相手を思うこと」、「相手を知ること」、「相手の話を聞き、観察すること」を意識しましょう。
あなたらしい方法で相手の心を動かすことができるよう努めてください。
これを繰り返していけば、きっとあなたの大切な職場の人たちに伝わり、配慮していく相手の数は増えていきます。
そうなれば「この人がいるから、社内の人間関係が円滑だ」となっていき、必要な人材へと成長していくはずです。
5、外資系企業で突然リストラされた場合は弁護士に相談を
外資系企業では退職勧奨が多いということはお分かりいただけたと思います。
しかし、ここは日本。外資系企業といえども、当然日本の労働法が適用されます。日本の労働法の規制の下では、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には解雇が無効となる等(労働契約法16条)、解雇には大変厳しい規制が存在しており、外資系企業のリストラが日本の労働法の規制の下で有効になるとは限らないのです。
外資系企業で突然退職勧奨された場合や解雇された場合は、弁護士に相談しましょう。労働問題も法律のプロである弁護士に相談することで、問題が解決できたり、場合によっては損害賠償を請求することができるケースも存在します。「外資系企業だから仕方がない…」と泣き寝入りをせずに、まずは一度弁護士に相談してみてください。
まとめ
今回は外資系企業のリストラの実態についてご紹介してきました。
外資系企業は人事に関する考え方や給与体系の違いから、日本企業と違って退職勧奨が多いことがお分かりいただけたと思います。
しかし外資系企業といっても、日本で営業活動を行う場合は日本の法律が適用されます。
納得のいかない退職を迫られたときは、法律のプロである弁護士に相談しましょう。