「刑務所の場所はどうやって決まる?」
今回は、刑務所の場所が指定されるまでの3つの選択肢について解説し、どのような条件でどの刑務所に収容されるのか、そして日本の刑務所での生活についても詳しくご紹介します。
1、刑務所の場所の決め方は非公表
大切な人が刑務所に入ることになった場合、心の準備をするためにも刑務所の場所を1日でも早く把握しておきたいですよね。
服役する人の住所や罪を犯した場所で機械的に刑務所の場所が決まるのであればわかりやすいのですが、実際のところ、刑務所の場所の決め方は非公表なのです。
そのため、実刑判決が下され服役することが確定しても、すぐには刑務所の場所を把握することができないのが現実です。
さらに、服役先が決まったとしても家族には通知されません。本人から手紙などで知らされない限り、服役先はわからない仕組みとなっています。
ですので、以下の解説をしっかりとご確認の上、参考になさってください。
2、服役する刑務所が決められるまでの3種類のコース
それでは、服役する刑務所はどのように決められるのでしょうか?刑務所の決め方は一つのルートに決められているわけではなく、以下の3種類のコースがあります。
それぞれのコースにより刑務所が決められるまでの流れや期間が異なりますので、以下順番にみていきましょう。
(1)一般的なコース
実刑判決が下された後、そのまますぐに刑務所に入るわけではなく、どこの刑務所で服役するかを調査し決めていきます。
以下(2)(3)に該当しない一般的なコースとしては、刑の確定後処遇調査がなされます。
この処遇調査では、
- 精神状態、
- 身体状況、
- 生育歴・教育歴及び職業歴、
- 暴力団その他反社会的集団への加入歴、
- 非行歴及び犯罪歴並びに犯罪性の特徴、
- 家族その他の生活環境、
- 職業、教育等の適性・志向、
- 将来の生活設計、
- その他受刑者の処遇上参考となる事情
を調査します。
この調査は受刑者との面接や裁判記録を見ることにより行われ、おおむね10日間で完了します。
場所は刑の執行が始まった刑務所です。
その後、処遇施設(実際に服役する刑務所)に送られます。
処遇施設で約20日間のさらに詳しい処遇調査が行われ、処遇要領が策定され、その後矯正処遇(再調査)が実施されます。
このように、刑の開始から2か月以内にはすべての調査が完了するのが一般のコースです。
(2)調査センターに送られるコース
上記(1)の一般のコースとは別に、最初から調査センターに送られるコースがあります。
調査センターがある刑務所は全国に8つと限られており、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡の刑務所に調査センターがあります。
調査センターでの調査対象者となるのは、以下に該当する人です。
①16歳未満で刑期が3月以上の者
②16歳以上20歳未満の男性で刑期が1年以上かつ、日本人で受刑歴がない者
③20歳以上26歳未満の男性で刑期が1年6月以上かつ、日本人で受刑歴がなく、暴力団員でない者
④26歳以上30歳未満の男性で刑期が10年以上、故意の犯罪行為により人を死亡させた罪によって刑に処せられた人でかつ、日本人で受刑歴がなく、暴力団員でない者
⑤男性で性犯罪調査が必要とされた者
調査センターでは、より精密な調査が行われるため、調査期間は一般のコースよりも長く、約55日間です。
このコースに該当する場合、調査センターでの調査の完了後に実際に服役する刑務所に移送されます。
(3)分類センターに送られるコース
執行刑期が1年以上で、かつ、施設において刑の執行を受けたことのない26歳未満の男性は、一度分類センターという場所に送られるケースが多いです。
分類センターは26歳未満の若い人が集められているため、行動訓練等が厳しく行われます。
分類センターで移送先が決定するのを待ち、決定したら服役する刑務所に移送されます。
3、日本の刑務所一覧
日本全国に刑務所は77箇所あります。受刑者は各刑務所にランダムに移送されるわけではありません。
それぞれの刑務所がどのような受刑者に対応できるのかについて、刑務所ごとに符号を付けられ分類されています。
- 拘留受刑者:D
- 少年院への収容を必要とする16歳未満の少年:Jt
- 精神上の疾病又は障害を有するため医療を主として行う刑事施設等に収容する必要があると認められる者:M
- 身体上の疾病又は障害を有するため医療を主として行う刑事施設等に収容する必要があると認められる者:P
- 女子:W
- 日本人と異なる処遇を必要とする外国人:F
- 禁錮受刑者:I
- 少年院への収容を必要としない少年:J
- 執行すべき刑期が10年以上である者:L
- 可塑性に期待した矯正処遇を重点的に行うことが相当と認められる26歳未満の成人:Y
- 犯罪傾向の進んでいない者:A
- 犯罪傾向の進んでいる者:B
また、それぞれの刑務所でどのような矯正処遇をできるかも異なります。矯正処遇の内容についても以下のように符号が付けられています。
種類 | 内容 | 符号 | |
作業 | 一般作業 | V0 | |
職業訓練 | V1 | ||
改善指導 | 一般改善指導 | R0 | |
特別改善指導 | 薬物依存離脱指導 | R1 | |
暴力団離脱指導 | R2 | ||
性犯罪再犯防止指導 | R3 | ||
被害者の視点を取り入れた教育 | R4 | ||
交通安全指導 | R5 | ||
就労支援指導 | R6 | ||
教科指導 | 補習教科指導 | E1 | |
特別教科指導 | E2 |
引用:法制審議会 少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第3回会議配布資料
以上のように、それぞれの刑務所ごとに特徴があるため、確実とは言えないものの、どこの刑務所に移送されるかはある程度予想できると言えるでしょう。
刑務所の一覧については、下記をご参照ください。
参照:刑事施設一覧
4、こんな場合はどこの刑務所に入れられる?
上記のように、刑務所ごとに符号が振られ、ある程度特徴が分かれているため、どこの刑務所に入るかは確実とまでは言えなくとも予想することはできます。
以下、具体的なケースでどこの刑務所に入る可能性が高いかを解説します。
(1)初犯で入れられる刑務所はどこ?
初犯は犯罪傾向が進んでいないため、A指標に分類されます。
たとえば、関東地域であれば、黒羽刑務所、千葉刑務所、市原刑務所、八王子医療刑務所、横浜刑務所、長野刑務所、静岡刑務所等が候補となるでしょう。
(2)女性の初犯が入れられる刑務所はどこ?
女性が服役する刑務所は限定されており、東京矯正管区では栃木刑務所・八王子医療刑務所、大阪矯正管区では大阪医療刑務所・加古川刑務所・和歌山刑務所、福岡矯正管区では北九州医療刑務所・麓刑務所、広島矯正管区では岩国刑務所、名古屋矯正管区では笠松刑務所、札幌矯正管区では札幌刑務所、仙台矯正管区では福島刑務所が候補となります。
(3)凶悪犯が入れられる刑務所はどこ?
執行すべき刑期が10年以上の凶悪犯の場合、東京矯正管区で服役可能性のある刑務所は、千葉刑務所、府中刑務所、横浜刑務所、長野刑務所となります。
5、日本の刑務所は厳しい?受刑生活の実態とは
それでは、日本の刑務所での受刑者の生活はどのようなものなのでしょうか?
受刑者の1日の生活は、以下のようになっています。
6:45 起床
7:00 人員点検。朝食後、作業場へ移動して更衣、身体検査。
8:00 刑務作業開始。この時間帯には家族などとの面会やグループワークなどの改善指導も実施。
10:00 運動
10:30 刑務作業
12:00 昼食
12:40 刑務作業(途中で10分程度の休憩)
16:40 刑務作業終了。更衣、身体検査後、居室へ移動。週2回以上の入浴日があり、入浴の時間帯に応じて作業時間を短縮。
17:00 点検、夕食
18:00 余暇時間(クラブ活動、テレビ・ラジオの視聴、読書、通信教育の自習など)
21:00 就寝
刑務作業には、以下のような種類があります。
- 物品を製作する作業及び労務を提供する作業(生産作業)
- 刑事施設内における炊事・洗濯等の経理作業、建物の修繕等といった、受刑者等が矯正施設で生活するにあたって必要な作業(自営作業)
- 出所の就労が有利に働くよう受刑者に職業に関する免許若しくは資格を取得させ、又は職業に必要な知識及び技能を習得させることを目的として実施する計画的・組織的な訓練(職業訓練)
- 労務を提供する作業であって、社会に貢献していることを受刑者が実感することで改善更生及び円滑な社会復帰に資すると刑事施設の長が特に認めるもの(社会貢献作業)
- 刑事施設の事業所の協力を得て、受刑者を職員の同行なしに、その事業所に通勤させて業務に従事させるもの(外部通勤作業)
受刑者は刑務作業を毎日行いますが、朝から晩まで刑務作業をしているわけではなく、余暇時間にはテレビやラジオの視聴、読書等をすることが可能です。
このスケジュールだけを見ると「刑務所生活も悪くないな」と感じる人がいるかもしれませんが、刑務所では自由が制限されており、常に他人の監視下に晒されています。
通常は部屋も複数人での相部屋になるので、集団生活に慣れていない人には辛いでしょう。
また、刑務所は何らかの罪を犯した人が集まっている場所ですから、刑務所で生活を共にする人たちは自分と同じ境遇で生きてきた人ばかりではありません。
自分とは全く違う考え方・態度をする人に慣れず、人間関係に悩まされることもあるでしょう。
刑務所での生活について、詳細は下記をご参照ください。
Q1.刑務所の場所の決め方は非公表?
大切な人が刑務所に入ることになった場合、心の準備をするためにも刑務所の場所を1日でも早く把握しておきたいですよね。
服役する人の住所や罪を犯した場所で機械的に刑務所の場所が決まるのであればわかりやすいのですが、実際のところ、刑務所の場所の決め方は非公表なのです。
そのため、実刑判決が下され服役することが確定しても、すぐには刑務所の場所を把握することができないのが現実です。
さらに、服役先が決まったとしても家族には通知されません。本人から手紙などで知らされない限り、服役先はわからない仕組みとなっています。
Q2.服役する刑務所はどのように決められるのでしょうか?
刑務所の決め方は一つのルートに決められているわけではなく、以下の3種類のコースがあります。
それぞれのコースにより刑務所が決められるまでの流れや期間が異なります。
①一般的なコース
実刑判決が下された後、そのまますぐに刑務所に入るわけではなく、どこの刑務所で服役するかを調査し決めていきます。
以下②③に該当しない一般的なコースとしては、刑の確定後処遇調査がなされます。
この処遇調査では、
- 精神状態、
- 身体状況、
- 生育歴・教育歴及び職業歴、
- 暴力団その他反社会的集団への加入歴、
- 非行歴及び犯罪歴並びに犯罪性の特徴、
- 家族その他の生活環境、
- 職業、教育等の適性・志向、
- 将来の生活設計、
- その他受刑者の処遇上参考となる事情
を調査します。
この調査は受刑者との面接や裁判記録を見ることにより行われ、おおむね10日間で完了します。
場所は刑の執行が始まった刑務所です。
その後、処遇施設(実際に服役する刑務所)に送られます。
処遇施設で約20日間のさらに詳しい処遇調査が行われ、処遇要領が策定され、その後矯正処遇(再調査)が実施されます。
このように、刑の開始から2か月以内にはすべての調査が完了するのが一般のコースです。
②調査センターに送られるコース
上記①の一般のコースとは別に、最初から調査センターに送られるコースがあります。
調査センターがある刑務所は全国に8つと限られており、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡の刑務所に調査センターがあります。
調査センターでの調査対象者となるのは、以下に該当する人です。
- 16歳未満で刑期が3月以上の者
- 16歳以上20歳未満の男性で刑期が1年以上かつ、日本人で受刑歴がない者
- 20歳以上26歳未満の男性で刑期が1年6月以上かつ、日本人で受刑歴がなく、暴力団員でない者
- 26歳以上30歳未満の男性で刑期が10年以上、故意の犯罪行為により人を死亡させた罪によって刑に処せられた人でかつ、日本人で受刑歴がなく、暴力団員でない者
- 男性で性犯罪調査が必要とされた者
調査センターでは、より精密な調査が行われるため、調査期間は一般のコースよりも長く、約55日間です。
このコースに該当する場合、調査センターでの調査の完了後に実際に服役する刑務所に移送されます。
③分類センターに送られるコース
執行刑期が1年以上で、かつ、施設において刑の執行を受けたことのない26歳未満の男性は、一度分類センターという場所に送られるケースが多いです。
分類センターは26歳未満の若い人が集められているため、行動訓練等が厳しく行われます。
分類センターで移送先が決定するのを待ち、決定したら服役する刑務所に移送されます。
Q3.こんな場合はどこの刑務所に入れられる?
刑務所ごとに符号が振られ、ある程度特徴が分かれているため、どこの刑務所に入るかは確実とまでは言えなくとも予想することはできます。
以下、具体的なケースでどこの刑務所に入る可能性が高いかを解説します。
①初犯で入れられる刑務所はどこ?
初犯は犯罪傾向が進んでいないため、A指標に分類されます。
たとえば、関東地域であれば、黒羽刑務所、千葉刑務所、市原刑務所、八王子医療刑務所、横浜刑務所、長野刑務所、静岡刑務所等が候補となるでしょう。
②女性の初犯が入れられる刑務所はどこ?
女性が服役する刑務所は限定されており、東京矯正管区では栃木刑務所・八王子医療刑務所、大阪矯正管区では大阪医療刑務所・加古川刑務所・和歌山刑務所、福岡矯正管区では北九州医療刑務所・麓刑務所、広島矯正管区では岩国刑務所、名古屋矯正管区では笠松刑務所、札幌矯正管区では札幌刑務所、仙台矯正管区では福島刑務所が候補となります。
③凶悪犯が入れられる刑務所はどこ?
執行すべき刑期が10年以上の凶悪犯の場合、東京矯正管区で服役可能性のある刑務所は、千葉刑務所、府中刑務所、横浜刑務所、長野刑務所となります。
まとめ
大切な人の服役が決まった場合、どこの刑務所に服役するのか気になる人がほとんどでしょう。
刑務所の場所の決め方ははっきりと公表されていないものの、上記のようにある程度予想をすることは可能です。
確実に服役先を知るためには、ご本人が拘置所にいる間に面会するなどして、服役先が決まったら知らせてくれるように頼んでおくことが必要です。
大切な人の服役は心苦しいことですが、服役中や服役後に少しでも大切な人が前を向いて生きることができるよう、応援してあげましょう。