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SNSでのなりすましは犯罪行為?アカウントの削除から法的対処まで

SNSでのなりすまし行為はになるのか?

答えは、なりすまし行為自体が罪になるわけではないと言えます。現在、なりすまし行為を規制する具体的な法律は存在していないからです。

ただし、なりすましアカウントを使って違法な行為が行われた場合、名誉毀損罪や詐欺罪などの法律に違反する可能性がある点に留意が必要です。

なりすまし犯による被害に遭った場合、アカウントの裏にいる人物を特定し、民事や刑事の責任を問うことが重要です。

この記事では、SNSでのなりすまし犯罪の実例、法的責任の範囲、被害対処方法、そして弁護士に相談するメリットなどについてわかりやすく解説します。

なりすましの疑問を抱えている方や被害に遭った方々のお役に立てれば幸いです。

弁護士相談に不安がある方!こちらをご覧ください。

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1、罪になる可能性がある「なりすまし」とは

罪になる可能性がある「なりすまし」とは

なりすましとは、SNSなどで本人のアカウントの内容に類似した偽物のアカウントを作成したり、本人の画像を勝手に使用するなどの方法でまるで本人のアカウントかのように誤認させるようなアカウントを作成したりすることを指します。
被害者に対する嫌がらせ、プライベートな情報の収集などのストーキング、知名度を利用したフォロワー数稼ぎなどの不正な目的から行われることが多いです。

まず、SNSでのなりすまし行為自体は犯罪ではないということを確認しておきましょう。
確かに、なりすましをされた側からすると気分が良いものではありませんが、なりすまし行為自体を規制する法律は存在しないので、それ自体を罪に問うことはできません。

ただし、なりすましによって作成したアカウントを悪用して違法行為に及んだり、本人に迷惑をかけるような投稿を行ったりした場合には、名誉毀損罪や詐欺罪などの刑法犯として処罰対象になる可能性が生じます。

なお、なりすまし行為自体は刑法などの法規制に抵触するわけではないものの、SNSの利用規約に違反する行為ではあります。
運営会社に報告すればアカウント削除などの対応が期待できるので、証拠を収集した後に管理者に対して通報しましょう。

2、SNSでの「なりすまし」に関連する行為に成立しうる犯罪

SNSでの「なりすまし」に関連する行為に成立しうる犯罪

なりすまし犯が、SNSの投稿やメッセージサービス、電子メールなどを悪用して違法行為に及んだ場合には、事案の状況に応じて以下の犯罪に問われる可能性があります。

  • 名誉毀損罪
  • 侮辱罪
  • 詐欺罪
  • 電子計算機使用詐欺罪
  • 不正アクセス禁止法違反

(1)名誉毀損罪

SNSなどのなりすましアカウントが違法行為を働くと名誉毀損罪が成立する可能性があります(刑法第230条1項)。

名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示して他人の名誉を毀損した場合に成立する犯罪です。
「公然と事実を摘示して他人の名誉を毀損する」とは、不特定または多数人に知られる可能性がある状態で、他人の社会的評価を低下させるような具体的事実を摘示することを意味します。
摘示された事実の真否は問われません。

たとえば、なりすましアカウントによる行為が名誉毀損罪を構成するのは次のようなケースです。

  • 「私には逮捕歴がある」「私は現在会社の上司と不倫をしている」などとなりすましアカウントで投稿した場合
  • SNS上で炎上するような動画をなりすましアカウントで投稿した場合
  • なりすましアカウントを悪用して第三者に対する名誉棄損行為を行った場合

名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金」と定められています。
なお、名誉毀損罪は親告罪なので、起訴するには被害者などからの告訴が必要です(刑法第232条)。

(2)侮辱罪

SNSなどのなりすましアカウントが違法行為を働くと侮辱罪が成立する可能性があります(刑法第231条)。

侮辱罪とは、公然と他人を侮辱したときに成立する犯罪のことです。名誉毀損罪のように「公然と事実を摘示すること」という要件は課されておらず、ただ単純に他人に対して公然と侮辱行為を働いたときに成立します。

たとえば、なりすましアカウントによる行為が侮辱罪を構成するのは次のようなケースです。

  • 「私は勉強もできない不細工で何の取り柄もない」などとなりすましアカウントで投稿した場合
  • 「〇〇は頭が悪くて会社でも嫌われている」などとなりすましアカウントで第三者に対する悪口を投稿した場合

侮辱罪の法定刑は「1年以下の懲役・禁錮、30万円以下の罰金、拘留、科料」と定められています。
なお、名誉毀損罪と同じく侮辱罪も親告罪なので、起訴するには被害者などからの告訴が必要です(刑法第232条)。

(3)詐欺罪

詐欺罪(刑法第246条)とは、欺罔行為によって他人を騙し、財物などを交付させたときに成立する犯罪のことです。
たとえば、なりすましアカウントがフィッシング詐欺や助成金詐欺に悪用されるケースが挙げられます。
また、電子マネーのカード番号が掲載された画像を送信させて電子マネーを詐取するような事例も詐欺罪が成立する可能性があります。

詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。また、なりすましアカウントを使って欺罔行為に着手したが相手から金銭が交付されなかった場合などでも詐欺未遂罪が成立します(刑法第250条)。

(4)電子計算機使用詐欺罪

電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2)とは、電子計算機に虚偽の情報や不正な指令を与えて財産上不法の利益を得た場合に成立する犯罪です。
詐欺罪が人を騙して金銭等を詐取するのに対して、電子計算機使用詐欺罪は虚偽情報や不正指令によって電子計算機を悪用する点で異なります。

たとえば、なりすましアカウントを使って電子マネーやポイントを詐取するようなケースで電子計算機使用詐欺罪が成立する余地があります。

電子計算機使用詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。詐欺罪と同じように、電子計算機使用詐欺罪の未遂犯も処罰対象に含まれます(刑法第250条)。

(5)不正アクセス禁止法違反

SNSなどのなりすましアカウントが違法行為や乗っ取り行為を働くと不正アクセス禁止法違反の罪に問われる可能性があります(不正アクセス行為の禁止等に関する法律第3条)。

不正アクセス行為とは、IDやパスワードによりアクセス制御機能が付されている情報機器やサービスに対して、他人のID・パスワードを入力したり、脆弱性(ぜいじゃくせい)を突いたりなどして、本来は利用権限がないのに、不正に利用できる状態にする行為をいいます。
他人のIDや登録メールアドレス、パスワードを不正に取得して、本人専用のアカウントにログインした時点で不正アクセス禁止法違反の罪が成立します。

不正アクセス禁止法第3条違反の法定刑は「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」です(不正アクセス行為の禁止等に関する法律第11条)。

3、実際にあった「なりすまし」の事例

実際にあった「なりすまし」の事例

なりすまし犯が実際に逮捕された事例を具体的に紹介します。

(1)他人のアカウントを乗っ取りパスワードを書き換えた事例

女性9人のインスタグラムのアカウントを乗っ取り、パスワードや登録している電話番号などを59回にわたって書き換えたとされる犯人が、不正アクセス禁止法違反、電磁的記録不正作出罪及び同供用罪(刑法第161条の2)の疑いで逮捕された事例です。
犯人は、乗っ取ったアカウントを使って本人になりすまし、被害者の友人などのプライバシー情報を聞き出すなどの行為にも及んでいました。

なりすましが発生すると、「なりすましをされた直接の被害者」だけでなく、被害者と交友関係がある友人やSNSのコミュニティーにまで被害が拡大するおそれがあります。
被害発生後に法的責任を追及するのも大切なことですが、なりすまし被害に遭わないようにパスワード管理や個人情報の掲載範囲などに普段から注意をして、なりすまし対策・個人情報の漏洩拡大防止策を練っておくべきでしょう

参照:「リア充の20代女性に嫉妬して」 インスタ乗っ取り容疑で男を逮捕|朝日新聞デジタル

(2)他人になりすまして名誉棄損に該当する投稿を繰り返した事例

犯人である自衛官は、実在する女子高校生になりすましてSNS上に偽アカウントを作成しました。
そして、なりすましアカウントから性的行為を誘うような投稿を繰り返し発信していたため、女子高校生の社会的評価を低下させたことを理由に名誉毀損罪で逮捕されました。

なりすましアカウントでは、本人の正アカウントで使われていた写真が転載されて、まるで女子高生本人であるかのような外観が作出されていました。
「色々な写真・動画をSNSにアップロードしたい」という気持ちは間違いではありませんが、「インターネット上に掲載したデータは誰に見られているか分からない」という点を忘れてはいけません

参照:「自衛官が女子高生になりすまし、「性的行為」誘う投稿…SNSから写真も入手」讀賣新聞オンライン

(3)SNSで女性になりすまして売春の集客をしていた事例

知人女性に売春させる目的で、SNSアカウントの性別を装い女性として集客していた男性が売春防止法違反で逮捕された事例です。
なりすましアカウントを悪用して「売春行為を斡旋していた」点が法に触れるので検挙されました。

本件では、なりすましアカウントの作成行為や性別の偽装自体は犯罪に問われていません。
なぜなら、虚偽情報を登録してSNSアカウントを作出する行為は、利用規約に違反する行為ではあるものの、それ自体は刑法上の罪に問われる犯罪行為ではないからです。

ただ、本件では明るみになっていませんが、インターネット上の画像データなどが悪用されて「女性のアカウントであるかのような外観」が作出されていた可能性があります。
自分がネットに掲載した画像がいつどこで誰にどのような目的で使われるかは分からないので、安易に個人を特定できるような情報をSNSなどで発信するのは控えるべきでしょう。

参照:「夕張市職員 SNSで”女性になりすまし”集客 客に「男」の認識なかったか 売春あっせんで逮捕 女性は「金は折半していた」」FNNプライムオンライン

4、SNSでの「なりすまし犯」に問える法的責任

SNSでの「なりすまし犯」に問える法的責任

SNSでなりすまし被害を受けている場合には、なりすまし犯に対して刑事責任・民事責任を追及できます。

(1)刑事上の責任

なりすまし犯による違法行為が見受けられる場合には、上述の名誉毀損罪や詐欺罪、侮辱罪などの犯罪が成立していることがあります。

犯罪行為の疑いがある場合には警察に通報すると、なりすまし犯が刑事責任を追及されます。
また、実際に被害が生じている場合には、被害届を提出したり告訴したりすることも可能です。
詳しくは最寄りの警察署や「サイバー犯罪問い合わせ窓口」までご相談ください。

(2)民事上の責任

SNSでなりすまし被害を受けている場合には、なりすまし犯に対して不法行為に基づく損害賠償責任を追及できます(民法第709条、第710条)。

民事上の責任を追及するには、被害者が権利侵害を受けたことを主張・立証しなければいけません。
なりすまし行為による被害内容にもよりますが、以下のような権利が侵害されたことを説明することになるでしょう。

  • 名誉侵害
  • プライバシー権の侵害(氏名、家族構成、出身地、国籍、職業、逮捕歴、病気など)
  • 肖像権の侵害(容姿などを撮影した写真、動画など)
  • アイデンティティ権の侵害(人格の同一性についての権利。賠償責任を追及できるだけの権利性が認められるかは争いがあるが、請求すること自体は可能)
  • その他、売上げの低下などの逸失利益

5、SNSで「なりすまし被害」に遭ったときの対処法

SNSで「なりすまし被害」に遭ったときの対処法

SNSでなりすまし被害を受けたときの対処法は以下3つです。

  • サイトの運営者に問題投稿や偽アカウントの削除を求める
  • 告訴によってなりすまし犯の刑事責任を追及するとともに、加害者を特定してもらう
  • 被害者自身で加害者のアカウントを特定して民事責任・刑事責任を追及しやすくする

(1)サイト運営者に削除を求める

なりすまし行為は当該インターネットサービスの利用規約に違反しているので、サイトの管理人や運営会社に当該偽アカウントや違法投稿の削除を求めましょう

ただし、ユーザー本人からの申告だけでは運営者が誠実に対応してくれないリスクがあるので、弁護士に依頼して申告してもらった方がスムーズです。

また、将来的になりすまし犯に対する民事責任・刑事責任の追及を視野に入れているのなら、サイト運営者に削除請求をする前に、問題投稿や偽アカウントの情報をスクリーンショットするなどして証拠保全しておくことを忘れないようにしましょう。

(2)刑事告訴をする

なりすまし行為の被害を受けている場合には、警察に刑事告訴する方法が考えられます。犯罪事実が認められる場合には捜査が開始されます

ただし、ネット犯罪の場合には犯人を特定するのに労力を要するため、警察が告訴を受理してくれないケースが多いのが実情です。また、告訴が受理されたとしても迅速な捜査が確約されるわけでもありません。

したがって、なりすまし被害をまさに受けている場合には、刑事告訴によって捜査活動を依頼すると同時に、被害者側でも加害者を特定する作業が重要となってきます

(3)加害者のアカウントを特定する

なりすまし行為によって被害を受けている場合には、被害者自身で加害者のアカウントを特定すると民事責任・刑事責任の追及をスムーズに進められます。

加害者のアカウントを特定する手順は以下の通りです。

  • プロバイダ責任制限法に基づき、サイト運営会社に対してなりすまし犯のIPアドレスの情報開示請求を行う
  • サイト運営会社が開示請求に応じない場合には仮処分を申し立てる
  • プロバイダを特定する
  • プロバイダに対してなりすまし犯の情報開示請求をする
  • プロバイダが開示請求に応じない場合には訴訟を提起する
  • 開示された情報に基づきなりすまし犯に対して民事訴訟を提起、警察に情報を提供して刑事責任追及を促す

なお、アクセスログ記録は3カ月程度しか保存されないので、なりすまし犯を特定するには3カ月以内にプロバイダの特定及びログの保存請求をする必要があります
プロバイダ責任制限法の改正によって被害者救済が図られるようになったとはいえ、被害者本人だけで手続きを進めるのはハードルが高いので、円滑な解決を目指すならネット犯罪に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

6、SNSでの「なりすまし」で困ったときは弁護士に相談を

SNSでの「なりすまし」で困ったときは弁護士に相談を

SNSでの「なりすまし被害」が発覚したときにはIT系事件の解決実績が豊富な弁護士に相談するのがおすすめです。
なぜなら、弁護士への相談によって以下5点のメリットが得られるからです。

  • なりすまし犯による違法行為がどのような犯罪を構成するかを判断してくれる
  • サイト管理会社などに内容証明郵便を送付するなどして、円滑な手続き進行を促してくれる
  • なりすまし犯の刑事責任を追及するために捜査活動の進捗を随時確認してくれる
  • なりすまし犯を特定して被害者が受けた損害回復のために適切に民事責任を追及してくれる
  • 民事責任や刑事責任追及に必要な証拠の保全範囲などについて的確なアドバイスが期待できる

SNSの拡散力はすさまじいので、なりすまし犯を放置すると回復し難いほど被害状況が拡大する危険性があります。
ネット犯罪は早期解決が急務なのに、解決までの手続きは複雑で専門性が高いので、インターネット系のトラブルの解決実績が豊富な弁護士の力を頼りましょう。

SNSでのなりすまし 罪に関するQ&A

Q1.なりすましとは?

なりすましとは、SNSなどで本人のアカウントの内容に類似した偽物のアカウントを作成したり、本人の画像を勝手に使用するなどの方法でまるで本人のアカウントかのように誤認させるようなアカウントを作成したりすることを指します。
被害者に対する嫌がらせ、プライベートな情報の収集などのストーキング、知名度を利用したフォロワー数稼ぎなどの不正な目的から行われることが多いです。

Q2.罪になる可能性がある「なりすまし」とは

まず、SNSでのなりすまし行為自体は犯罪ではないということを確認しておきましょう。
確かに、なりすましをされた側からすると気分が良いものではありませんが、なりすまし行為自体を規制する法律は存在しないので、それ自体を罪に問うことはできません。

ただし、なりすましによって作成したアカウントを悪用して違法行為に及んだり、本人に迷惑をかけるような投稿を行ったりした場合には、名誉毀損罪や詐欺罪などの刑法犯として処罰対象になる可能性が生じます。

なお、なりすまし行為自体は刑法などの法規制に抵触するわけではないものの、SNSの利用規約に違反する行為ではあります。
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Q3.SNSで「なりすまし被害」に遭ったときの対処法

SNSでなりすまし被害を受けたときの対処法は以下3つです。

  • サイトの運営者に問題投稿や偽アカウントの削除を求める
  • 告訴によってなりすまし犯の刑事責任を追及するとともに、加害者を特定してもらう
  • 被害者自身で加害者のアカウントを特定して民事責任・刑事責任を追及しやすくする

まとめ

SNSなどのなりすまし被害が発覚した場合にはできるだけ早いタイミングで解決に向けて動き出さなければいけません。
なぜなら、対応が遅れると加害者を特定できなくなる危険性がありますし、誤った情報の拡散範囲が広がるほど訂正・削除の手間が増えるので被害回復が困難になるからです。

したがって、なりすまし被害を受けたときには、弁護士と警察を上手に活用しながら、民事責任及び刑事責任の追及という両輪で手続きを進めるのが効率的だと考えられます。
ネット犯罪の実績豊富な弁護士に相談すれば、なりすまし犯の特定から法的責任追及までのプロセスを円滑に進められるでしょう。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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