逮捕後の人生はどうなってしまうのでしょうか。
逮捕は人生を一変する出来事であり、逮捕されるとあなたには社会において「悪いことをした人」というレッテルを貼られてしまいます。しかし、その影響をなるべく抑えていくことが可能です。
今回は、
- 逮捕後の人生はどうなるのか
- 逮捕を回避する方法
- 逮捕された場合の対処法
をお伝えしたいと思います。
この記事が逮捕されることに不安を抱えている方の一助となれば幸いです。
また、こちらの関連記事では警察に逮捕される場合について解説しています。あわせてご参考いただければと思います。
1、逮捕後の人生はどうなる!?
逮捕されるとどういう人生を歩むことになるのか?
まずは皆さんがご心配になる代表的なことをピックアップして解説いたします。
(1)会社をクビ?!
会社をクビ、つまり、懲戒解雇になるかどうかは、会社が定める就業規則等によりますが、裁判が確定するまでは推定無罪の原則が働くため、原則として、逮捕を理由に解雇されることはありません。
ただし、逮捕に付随する長期間の欠勤、会社の信用や名誉の失墜、経済的な損害を与えたなどといった場合には、それを理由に解雇されるおそれがあります。
(2)恋人にどうやって連絡すればいい?!
逮捕されると社会から隔離され、もちろん、スマートフォンなどの通信端末を持つことはできません。
また、警察官から便宜を図ってくれることもありません。
接見を禁止されていない限り、こちらから手紙を出すことはできますが、内容は検閲されることになります。
したがって、それを覚悟で手紙を出してこちらから連絡を取るか、家族などを経由して事情を知った恋人が面会に来てくれるのを待つ、などの対応が考えられます。
(3)親族には連絡がいくの?
事案によります。配偶者がいる場合は、警察から配偶者に連絡がいくでしょう。
親と同居している場合には同様に警察官から親へ連絡がある可能性が高いです。
逮捕されると数日間は家に帰れないため、配偶者や親にその理由を伝える必要があるからです。
他方、親族と別居している場合は柔軟に対応されているようです。
連絡を望まない場合は、警察官にその旨伝えましょう。
(4)賃貸の自宅は契約解除?
逮捕を理由に解除されることはありません。
しかし、逮捕され、その後の身柄拘束期間が長引けば、家賃の不払い等を理由に契約を解除されるおそれはあります。
また、一定の犯罪(同じ入居者への盗撮、暴行行為等)を犯し、賃貸者との信頼関係が崩壊したと認められる場合は、そのことを理由に解除されることもあります。
(5)報道されてしまう?!
報道の基準というものはありません。
しかし、一般的に、殺人、強盗、放火などの重大犯罪、特殊詐欺、飲酒運転、交通事故などの社会的耳目の高い犯罪で逮捕されると報道されるおそれは高くなるでしょう。
また、逮捕された人物の職業、地位、名声なども考慮されているようです。
(6)逮捕されると前科が付く?
逮捕されただけでは前科は付きません。
前科が付くのは、あなたが刑事裁判で「有罪」との認定を受け、その裁判が確定したときです。
逮捕段階では、裁判すら受けていませんから前科が付くことはありません。
2、逮捕されたらいつまで帰れないの?
逮捕されたら、いつ社会復帰できるのでしょうか?
(1)軽微な事件の場合は釈放されることも可能
逮捕するためには「逮捕の理由」に加え、「逮捕の必要性」がなければなりません。
「逮捕の必要性」の有無ついては、被疑者の年齢及び境遇、並びに犯罪の軽重及びその態様その他諸般の事情を鑑みて判断されます(逮捕の場合、これらの事情を鑑みて「罪証隠滅のおそれ」「逃亡のおそれ」の有無が判断されます。
つまり、軽微な事件については「逮捕の必要性」が認められず、釈放される可能性も高くなります。
軽微な事件か否かは、罪名はもちろん、犯行動機、態様・手段、計画性の有無、被害規模等によって判断されます。
(2)釈放されたら在宅事件となる
逮捕の理由はもちろん、逮捕の必要性がないと判断された場合は釈放される可能性が高くなります。
たとえば、盗撮事件において、加害者が被害者の氏名や住所、連絡先も知らず「罪証隠滅のおそれ」がない、適切な身元引受人がおり「逃亡のおそれ」がない、盗撮行為は1回のみで、計画性がなく犯情が軽微である、という場合は釈放される可能性が高いでしょう。
釈放された場合、事件は在宅事件として取り扱われます。
在宅事件になった場合、通常の社会生活を送りながら、警察官や検察官の呼び出しがあればこれに応じて取調べを受け、事件が処理されるのを待つ、という流れになります。
なお、逮捕から勾留の決定が出るまでおおよそ3日間を要します。
その間に、釈放か否かの判断がなされます。
(3)勾留決定が出た場合はそのときから起訴・不起訴処分まで最大20日間の身柄拘束
勾留決定が出た場合は、検察官の勾留請求の日から最大10日間身柄拘束されることが決まります。
また、10日目を経過した後、「やむを得ない事由」がある場合は、さらに最大で10日間身柄拘束されることがあります。
ただし、勾留期間中に、決定に対する不服申し立てをしたり、勾留を取消すよう請求したりすることができます。
もし、認められれば釈放され、事件は在宅事件として扱われることになります。
(4)起訴後も保釈まで引き続き身柄は拘束
身柄拘束されたまま起訴された場合、その後の身柄拘束期間は2か月間です。
その後は、特に継続の必要があって、理由がある場合に、1か月ごとに拘束期間が更新されます。
ただし、その期間中に保釈請求をして釈放を求めることができます。
厳密にいえば、保釈請求は起訴後ただちに行うことができます。保釈請求をして保釈が許可され、保釈保証金を納付することで身体拘束から解放されます。
(5)懲役・禁錮の実刑判決なら釈放されない
身柄拘束されたまま裁判(判決)で死刑はもちろん、懲役、禁錮の実刑判決を受けた場合、そのまま身柄拘束は継続します。
保釈により釈放されていた場合に、禁錮以上の実刑判決を受けた場合は、保釈の効力はなくなり、ただちに身柄を拘束されてしまいます。
3、罪を犯した・逮捕されたらまずは弁護士に依頼して
逮捕された場合に被る不利益を回避するには、何よりも逮捕自体を回避することが必要です。
また、仮に、逮捕された場合でも被る不利益を最小限に抑えることができます。
(1)罪を犯したら逮捕される前に弁護士に相談を
逮捕を回避するためにすべき努力の方法を知っているのは弁護士です。
したがって、何らかの犯罪を犯した、逮捕されるか不安だという方は、まずは弁護士に相談しましょう。
逮捕の要件は、上記でもご紹介したとおり、「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」です。
このうち、活動できるのは「逮捕の必要性」についてです。
つまり、逮捕に関しては「罪証隠滅のおそれ」「逃亡のおそれ」となる事情をなくし、あるいはこれらのおそれがない事情を積極的にアピールして逮捕回避に繋げるのです。
具体的には、被害者と同居している場合は別居する(引っ越す)という方法などが考えられます。
また、被害者の連絡先を知っている場合には、弁護士を通じて示談交渉し示談を成立させておくことも方法の一つでしょう。
自分から被害者に連絡を取ることは基本的にNGです。
(2)逮捕されたら弁護士に依頼を
逮捕されても諦める必要はありません。
逮捕後、弁護士に依頼すれば、弁護士があなたにかわって様々な不利益(たとえば、会社からの懲解雇などの懲戒処分、マスコミによる報道等)を最小限に抑える活動をしてくれます。
不利益を必要最小限に抑えるには、早めに弁護士と接見し、希望、不安を伝え、ただちに弁護活動に入ってもらう必要があります。
なお、逮捕直後に接見できるのは弁護士しかいませんし、弁護士しか有効な弁護活動を期待することはできません。
4、弁護士に依頼する方法は?
では、弁護士に依頼するとしてどのような方法で弁護士を探したり依頼したりすればよいのでしょうか?
(1)逮捕前に刑事事件を得意とする弁護士を探す方法
①インターネットで検索する
逮捕回避を目指すなら刑事事件を得意とした弁護士の方が安心です。
最近では、インターネットで法律事務所や弁護士が検索できる時代です。
インターネットで検索する際は、「刑事(事件) 弁護士 ●●(地名)」などと入力してみましょう。
②無料法律相談に対応している事務所を選ぶ
多くの法律事務所は、契約前に法律相談を受けてくれます。
その場合、無料かつ時間制限のない法律相談を選びましょう。
有料や時間制限があると、ご自身が納得のいくまで相談ができないおそれがあります。
③経験豊富か、自分に合っているか見極める
無料法律相談では、弁護士の言葉遣い、態度などから相談しやすいか、自分に合っているか見極めましょう。
また、可能であれば、逮捕回避に関する成功談の有無、内容、弁護士になってからの年数などを尋ねてみてもいいでしょう。
(2)逮捕後に弁護士に依頼する方法
逮捕後は以下の2種類の弁護人を選任することができます。
①国選弁護人
国選弁護人は、原則として、発生した費用を国の負担とする弁護人です。
費用の面で心配要りませんが、選任されるのは「あなたが勾留されると決まってから」になります。
つまり、逮捕から勾留決定までの間、選任することはできない点に注意が必要です。
国選弁護人を選任したい場合は、警察官、検察官、裁判官にその旨伝えましょう。
資力申告書を裁判所に提出する必要があり、要件を満たせば選任されます。
②私選弁護人
他方で、私選弁護人を選任した場合、自ら費用を負担する必要がありますが、いつでも選任することができるのが国選弁護人との大きな違いです。
逮捕後、「一刻も早く弁護士と接見したい」「弁護活動をお願いしたい」などという方は私選弁護人を選任しましょう。
逮捕された場合は、ご自身で弁護士を吟味し、取捨選択することができません。
知り合いの弁護士がいる場合は、警察官、検察官を通じてその人に連絡を取ってもらいます。
いない場合は、ご家族等が選んだ弁護士に依頼することになります。
なお、着手金など発生はしますが、解任はいつでも可能です。
接見に来た弁護士から渡される「弁護人選任届」という書類にサインをします。
5、弁護士はあなたの味方です
警察官や検察官(捜査機関)は、犯人を追及する立場、裁判官は、あくまで捜査機関と被疑者・被告人との間に立って判断を下す中立・公平な立場でしかありません。
つまり、刑事事件において、全面的にあなたの立場に立ってアドバイスをしたり、弁護活動をしてくれるのは弁護士しかいません。
仮に、弁護士を選任しないままでいると、中立・公平な立場である裁判官ですら、捜査機関に言われるがまま結論を出してしまうという事態にもなりかねません(捜査機関や裁判所の誤った判断によって冤罪が生み出されているのがその最たる例でしょう)。
そこで、刑事事件が適正な手続きの下進められ、最終的に妥当な結論を導くためには、どうしても弁護士の力が必要なのです。
まとめ
以上、逮捕による被る不利益や逮捕の回避法、逮捕された場合の対処法についてご紹介いたしました。
逮捕による不利益を回避するためには、まずは逮捕自体を回避することが先決ですが、仮に、逮捕された場合でも早めに弁護士に弁護活動を依頼すれば、不利益を最小限度に抑えることが可能です。
この記事が逮捕でお悩みの方のための一助となれば幸いです。