別居しているのに、離婚話が進まない……。
離婚話が進まなければ新しい生活を始めることができず、精神的なストレスも大きくなるでしょう。
相手が離婚に合意してくれなくても、別居をしていれば離婚は認められやすいのでしょうか。
別居しているのに離婚話が進まない場合、どうすれば離婚できるのか、離婚話が進まない場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
離婚話が進まずに別居する場合の注意点や、別居期間中の注意点なども解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
別居については以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、別居しているのに離婚話が進まない……その原因は?
別居は、相手との関係を見直して夫婦の修復を行うという目的で行われる場合もありますが、離婚に向けて別居することが多いです。
しかし、別居をしてもなかなか離婚話が進まないというケースもあるでしょう。なぜ、別居しても離婚話が進まないのでしょうか。
(1)相手が離婚に反対している
そもそも相手が離婚に反対していれば、離婚話はなかなか進みません。協議で離婚するのであれば互いの離婚の合意が必要だからです。
相手が離婚に反対する理由には、次のようなことが考えられます。
- 配偶者への愛情があって、夫婦関係を修復したいと考えている
- 離婚の理由に納得できていない
- 子供のために離婚すべきではないと考えている
- 相手に離婚原因があるので離婚すれば慰謝料を請求されると考えているため
- 離婚すれば経済面での不安があるため
相手が離婚したくないと考える理由によっては、協議がなかなか進まない可能性があります。
(2)相手が話し合いに応じようとしない
相手が話し合いに応じようとしなければ、離婚の協議を進めることはできません。
別居前や別居してから全く会話や連絡をしなくなってしまっている場合や、別居中に相手の連絡先が分からなくなってしまっている状態では、話し合うことが難しいでしょう。
また、相手が離婚したくないと考え、わざと連絡を無視するようなケースもあります。
(3)離婚条件で折り合いがつかない
離婚をする際には、結婚生活で築いた財産を分配する「財産分与」や、子供の「親権」「養育費」、離婚までの「婚姻費用」など、さまざまなことを決めなければなりません。
また、配偶者のどちらかに離婚原因があれば「慰謝料」も請求されるケースがあります。
こうした離婚の条件でなかなか折り合いがつかなければ、話し合いは長期化してしまいます。
お互いが有利な条件で離婚しようと考えていては、条件に折り合いがつかずに離婚話は進みにくくなるでしょう。
(4)子供への影響を心配している
子供がいる夫婦の場合、離婚をすることが子供に悪影響を及ぼすのではないかと心配して離婚話が進まないようなケースもあるでしょう。
離婚によって転校など環境が変わってしまうことや、一方の親とは頻繁に会えなくなることが精神的ストレスになる場合もあります。
夫婦関係が破綻して別居をしていても、「子供が小学校を卒業するまで」「子供が成人するまで」などと考えて離婚をしないようなケースも少なくありません。
2、相手が合意しなくても離婚はできるのか?
相手が離婚になかなか合意してくれないため、どうにか離婚できる方法はないのかとお悩みの方もいるでしょう。
相手の合意がない場合でも離婚はできるのか、解説していきます。
(1)協議ならば合意が必要
離婚する場合、まずは当事者同士で話し合う「協議」が行われることが多いです。
協議で双方が合意して離婚することを「協議離婚」と呼びます。
協議で離婚したいと考えているのであれば、必ず相手の合意が必要になるため、相手が合意しない限りは離婚をすることはできません。
(2)相手が有責配偶者ならば裁判で離婚できる
協議で離婚に合意が得られないのであれば、裁判で離婚を争うことができます。
ただし、裁判で離婚するには相手が有責配偶者であり、法定離婚事由が必要になります。
法定離婚事由とは法律で定められた離婚理由のことを指し、次のような事由が挙げられます。
①不貞行為
不貞行為とは、一般的に「不倫」と呼ばれる行為です。
不貞行為は、配偶者以外の人と肉体関係を持つことを指します。
夫婦には貞操義務があり、配偶者以外の人と肉体関係を持つことは禁止されています。
配偶者以外の人と密に連絡を取り合っていた、何度かデートをしたなどプラトニックな関係の場合は、不貞行為と認められない可能性が高いです。
②悪意の遺棄
夫婦には同居・協力・扶助の義務があることが、民法第752条に規定されています。
悪意の遺棄は、「夫婦の義務を正当な理由なく悪意を持って履行しないこと」です。
具体的には、次のようなケースが悪意の遺棄に該当します。
- 専業主婦の妻に生活費を一切渡さない
- 家出をしてから帰ってこない
- 家を許可なく出て行き、不倫相手と同居している
③モラハラ、DV
モラハラやDVがあった場合、法定離婚事由の中でも「その他の婚姻を継続し難い重大な事由」に該当します。
モラハラやDVを受けていたことが証明できれば、法律所で離婚することができるでしょう。
DVは身体的暴力なので証明しやすいですが、モラハラは精神的な暴力になるので証明することが難しいようなケースもあります。
日頃から被害をメモや日記に取ることや、音声を録音するなどして証拠を集めていれば、モラハラ被害を証明しやすくなります。
④セックスレス
セックスレスは、「その他の婚姻を継続し難い重大な事由」として、裁判で離婚が認められるケースもあります。
セックスレスになっている期間が1年以上経っており、一方が性交渉を拒否している状態であればセックスレスとして裁判で認められる可能性が高まるでしょう。
ただし、セックスレスの期間が長すぎれば、性交渉がなくても夫婦関係を継続することはできたと考えられます。
セックスレスの期間が長すぎる場合には、離婚理由として認められない場合があります。
(3)別居期間が長ければ離婚が認められる可能性がある
裁判で離婚するには法定離婚事由が必要になりますが、法定離婚事由がない場合でも、長期間に渡って別居をしていれば、離婚が認められる可能性があります。
別居期間が長ければ、夫婦関係が破綻していると判断されやすくなるからです。
離婚が認められる別居期間は、3年以上が目安となっています。
ただし、夫婦の年齢や婚姻期間なども考慮されるため、離婚が認められるかどうかはケースバイケースになるでしょう。
ご自身の状況で離婚できるかどうか知りたい場合には、弁護士に相談してみることをおすすめします。
3、別居していて離婚話が進まない場合の対処法
別居していても離婚話が進まなければ、これからどうすればいいのかと頭を抱えてしまうものです。
離婚話が進まない場合の対処法として、4つの方法が挙げられます。
離婚話が進まずに悩んでいる場合には、次の対処法を試してみてください。
(1)離婚条件で互いに譲歩する
離婚条件で折り合いがつかずに離婚話が進まないというケースであれば、離婚条件でお互いが譲歩すれば話し合いが進む可能性が高まります。
お互いが有利な条件で離婚したいと考え、意見を主張し続けていても話し合いは平行線です。
「自分はここを譲歩するから、あなたにはここを譲歩して欲しい」など自分も譲歩することを条件に相手にも譲歩してもらうように求めましょう。
そうすれば、相手も納得し、話し合いが進みやすくなると考えられます。
(2)弁護士に介入してもらう
当事者同士で離婚の話し合いを行うことは、感情的になってしまうためスムーズに話が進みにくいものです。
離婚話が進まない場合には、弁護士に介入してもらうという手段も検討しましょう。
弁護士に依頼すれば、代理人として自分の代わりに配偶者と離婚の条件や手続きについて交渉をしてもらうことができます。
第三者が介入することで冷静に話し合いも進みやすくなり、弁護士ならば法律の観点から離婚条件についても提案することが可能です。
(3)離婚調停を申し立てる
当事者同士の協議で離婚の話が進まない場合には、離婚調停を申し立てるという手段もあります。
離婚調停とは裁判手続きの一種で、裁判所が介入して当事者の意見をまとめて問題解決を目指す方法です。
調停委員と呼ばれる裁判所より選定された仲介役の人々が間に入り、当事者の意見を聞いて調整を行います。
話し合いの結果合意に至れば調停が成立し、調停証書が作成されますが、調停が成立しなかった場合には、訴訟へ移行することになります。
(4)裁判離婚で解決する
協議や調停で双方が合意に至らない場合は、裁判で離婚を争うことになります。
裁判になれば最終的に裁判官が判決として結論を出すため、相手が離婚に反対していても法定離婚事由があれば離婚できる可能性が高まります。
ただし、裁判離婚で解決するには証拠を集めることや、裁判所への申立てが必要です。
ご自身で裁判手続きを行うことも可能ですが、スムーズかつ適切な手続きを行うためにも裁判になる場合は弁護士に相談すべきでしょう。
4、離婚話が進まずに別居する場合に注意すべきこと
夫婦で同居している時に離婚の話をしても、なかなか離婚の話が進まないということも少なくありません。
離婚話を進めるために、別居をしようと考えている方もいると思います。
離婚話が進まずにこれから別居するという場合には、次のことに注意をしてください。
(1)単身赴任などやむを得ない理由があれば別居にならない
別居をしていればいつか離婚できるだろうと考え、離婚を始める方もいるかもしれません。
別居期間が長くなれば、離婚が認められる可能性が高まります。
しかし、単身赴任や子供の就学、親の看病など、やむを得ない理由で夫婦が別々に暮らすことは「別居」になりません。
別居する際には、別居理由を明確にしておくべきでしょう。
(2)相手の承諾を得ずに別居すべきではない
夫婦は、同居して互いに協力し扶助しなければならないことが法律で定められています。(民法第752条)
正当な理由なく配偶者に無断で別居をすることは、同居義務違反になります。
同居義務違反は法定離婚事由の「悪意の遺棄」に該当する可能性があり、有責配偶者として、もう一方の配偶者から慰謝料を請求される恐れがあるでしょう。
モラハラやDVなど身心の危険がある場合には相手の承諾を得ずに別居することは正当な理由があると判断されます。
それ以外の場合には、別居前に必ず相手の承諾を得ておくべきです。
(3)別居期間中でも不倫が認められるケースがある
別居しているから、配偶者以外の人と自由に肉体関係を持っても問題ないだろうと考える方もいるかもしれません。
しかし、別居期間中でも不貞行為が成立すれば、慰謝料を請求される恐れがあるので注意が必要です。
- 配偶者が離婚に反対している
- 夫婦関係を修復するための別居をしている
- 別居していても夫婦関係が良好で、頻繁に会っている
上記のような場合は、別居していても夫婦関係が破綻しているとは認められない可能性が高いです。
5、別居期間中に離婚に向けてすべきこと
離婚に向けて別居をしているのであれば、別居期間中に離婚準備をしっかり行うべきです。そうすれば、離婚手続きをスムーズに進めやすくなります。
別居期間中には離婚に向けて、次のことを行いましょう。
(1)夫婦の共有財産を確認しておく
離婚をする際には、婚姻期間中に協力して築いた財産を分配することになるので、夫婦の共有財産について把握しておきましょう。
共有財産を把握していなければ、相手に財産を処分されたり隠されたりすることがあります。
公平に財産を分配するには、あらかじめ財産を把握しておくことが大切です。
(2)婚姻費用を請求する
婚姻費用とは別居している間の生活費のことを指し、婚姻費用を請求できるケースがあります。
婚姻期間中の生活を維持するための費用になるため、収入が多い配偶者が収入の低い配偶者に対して支払う義務があります。
婚姻費用が支払われていない場合には、配偶者に対して費用を請求することが可能です。
(3)慰謝料を請求する場合は証拠を集める
離婚の原因が配偶者側にあり、慰謝料を請求しようと考えている場合には、慰謝料請求するための証拠を集めましょう。
慰謝料を請求するには、慰謝料請求の原因となった出来事を立証できる証拠が必要です。
もし証拠がなければ、相手は非を認めないことや慰謝料の支払いを拒否される恐れがあります。
また、証拠がなければ裁判で請求することも難しくなります。
証拠は多ければ多いほど立証しやすくなるので、少しでも多くの証拠を集めるようにしましょう。
(4)住民票を移動させる
別居を始める際には、別居先に住民票を移動させましょう。
住民票を移動させれば、別居していることや別居期間を証明しやすくなります。
また、子供がいる場合には住民票を移すことで、児童手当が直接支給されるようになります。
子供を近くの保育園や学校に通わせることもできるようになるので、離婚を前提とした別居の際には住民票を移動させるべきだと言えます。
ただし、DVの被害にあっている場合などでは慎重な検討が必要です。
(5)子供の親権について考える
子供がいる場合、どちらの親が親権を持つかという点で争いになることも多いです。
子供が幼いほど母親が有利にはなりますが、子供の将来のことを考えた上で親権について話し合ってください。
親権を持つ場合には、親権を持たない親に養育費を請求できるため、養育費についても考えておくべきでしょう。
養育費の算出が難しい場合には、弁護士に相談してみてください。
(6)離婚後の生活に向けて準備をする
離婚に向けた別居生活は、離婚後の生活に向けて準備ができるというメリットがあります。
新しい仕事を探したり、新しい住まいの環境に慣れるための時間を作ったりすることができます。
また、自治体によって離婚後の生活や一人親の生活をサポートするさまざまな制度があります。
あらかじめ調べておくと、新生活が始まってからスムーズに利用できるようになります。
別居しているのに離婚話が進まないことに関するQ&A
Q1.別居しているのに離婚話が進まない……その原因は?
- 相手が離婚に反対している
- 相手が話し合いに応じようとしない
- 離婚条件で折り合いがつかない
- 子供への影響を心配している
Q2.相手が合意しなくても離婚はできるのか?
- 協議ならば合意が必要
- 相手が有責配偶者ならば裁判で離婚できる
- 別居期間が長ければ離婚が認められる可能性がある
Q3.別居していて離婚話が進まない場合の対処法とは?
- 離婚条件で互いに譲歩する
- 弁護士に介入してもらう
- 離婚調停を申し立てる
- 裁判離婚で解決する
まとめ
別居していても離婚話が進まない場合、離婚原因によっては相手が離婚に合意しなくても裁判で離婚をすることができます。
また、弁護士が介入して交渉をすれば、相手が離婚に応じる可能性もあります。
まずは弁護士に相談し、離婚の進め方や請求できるものについて確認してみてください。
弁護士は代理人として離婚手続きを進めてくれるので、精神的な負担も大幅に軽減されるでしょう。
離婚手続きは精神的につらいことも多いので、1人で抱え込まずに弁護士のサポートを受けることを検討してみてください。