交通事故による負傷で最も多いとされているのは、「むち打ち症」です。
「むち打ち症」とは、頸椎捻挫など、骨折や脱臼(器質的損傷)のない頸椎の損傷のこと、です。頸椎以外の、腰椎捻挫や背部捻挫なども含めることもあります。
腰椎捻挫になった場合でも、命に別状のある怪我ではなく、骨にも異常はないので、軽視する人もいます。しかし、「そのうち治るだろう」と思っていてもなかなか治らず、仕事や日常生活で辛い思いをし続けるケースも少なくありません。それだけに、腰椎捻挫となった場合には、「大したことはない」と思わずに、適切な治療を受けた上で、正当な損害賠償金を受けることが大切です。
そこで今回は、
- 交通事故による腰椎捻挫とはどのような負傷なのか
- 慰謝料で損しないための注意点とは
- 後遺障害が残った場合の対処法とは
などについて解説していきます。
交通事故後の腰痛で慰謝料が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
交通事故で負った怪我の治療に関しては以下の関連記事もご覧ください。
ベリーベスト法律事務所で、
悩みを「解決」して「安心」を手に入れませんか?
- 保険会社との交渉が不安・負担
- 後遺障害について詳しく知りたい
- 示談金(慰謝料)の妥当な金額が知りたい
などどんな小さなことでもお気軽に!
交通事故専門チームの弁護士が、あなたに寄り添い、 有利な結果へ
と導くサポートを行います!
ベリーベスト法律事務所で、
悩みを「解決」して「安心」を手に入れませんか?
- 保険会社との交渉が不安・負担
- 後遺障害について詳しく知りたい
- 示談金(慰謝料)の妥当な金額が知りたい
などどんな小さなことでもお気軽に!
交通事故専門チームの弁護士が、あなたに寄り添い、 有利な結果へ
と導くサポートを行います!
1、腰椎捻挫とは
腰椎捻挫とは、腰やその周辺に強い力が加わることによって腰椎が損傷し、腰や背中などに痛みが生じる負傷のことです。
自分で無理な動作を行うことによって生じる「ぎっくり腰」も腰椎捻挫の一種です。交通事故によって腰に強い衝撃を受けることで、腰椎捻挫が生じることもあります。
(1)症状
腰椎捻挫の主な症状は、腰や背中の痛みです。常に一定の痛みが続くのではなく、動いた時に痛みが強くなり、安静時は痛みが軽くなるのが特徴です。
足の痛みやしびれを感じる人もいますが、その場合は腰椎捻挫に留まらず、腰椎椎間板ヘルニアなどの疑いがあります。
(2)治療方法と治療期間
腰椎捻挫では骨に異常がないため、手術等の積極的な治療は必要なく、保存的治療によって自然治癒を図ることになります。
受傷後しばらくの間はできる限り安静にするのがよいとされています。コルセットによって腰を保護するのも有効です。投薬としては痛み止めや冷湿布などが処方されます。
痛みが強い場合は、神経ブロック注射等が用いられることもあります。
急性期が過ぎて炎症が収まれば、電気治療や整体、マッサージ、鍼灸などを用いてリハビリ治療が行われます。
治療期間は、一般的に3か月程度と言われていますが、あくまでも目安なので納得いくまで治療を続けることが大切です。
(3)詳しい検査を早めに受けておくことが重要
腰や背中の痛みがなかなか治らない場合や、足にも痛みやしびれがある場合は、椎間板が変形したり突出したりして神経を圧迫している可能性があります。その場合は、単なる腰椎捻挫ではなく、腰椎椎間板ヘルニアなどと診断されることがあります。
これらの診断を受けるためには、レントゲンだけでなく、MRIや神経学的な詳しい検査を受ける必要があります。
腰椎椎間板ヘルニアなどと診断されると、後遺障害として認定される可能性が高くなります。ただし、事故から長期間が経過してから詳しい検査を受けると、腰は日常生活においても負担のかかりやすい部位であり、交通事故とは関係なくぎっくり腰などにもなりうることから、事故によって発生した負傷であるかどうかが判然としないと判断されるおそれがあります。
そのため、できる限り早めに詳しい検査を受けておくことが重要です。
2、交通事故による腰椎捻挫の治療についての注意点
腰椎捻挫に関する医学的な注意点をご説明しましたが、ここからは適切な損害賠償を受けるための注意点を説明していきます。
交通事故による損害賠償額は、事故の発生と同時に決まるものではなく、治療期間中の被害者の対応によっても左右されることがあります。
そのため、腰椎捻挫で治療を受ける際には以下の点に注意が必要です。
(1)継続的に通院すること
腰椎捻挫の主な治療方法は保存療法であるということもあり、こまめに整形外科に通院しない人も少なくありません。しかし、通院する頻度が低いと慰謝料が低額になってしまうこともあります。
また、仮に痛みが長引いて後遺障害の認定を受けようとする場合にも、後遺障害として認められるためには症状が一貫して持続していることを証明する必要があります。ほとんど通院していなければ症状の一貫性や持続性を証明できないことになるため、注意が必要です。
腰椎捻挫の通院の頻度は、(主治医の指示にもよりますが)週に2~3回が一般的とされています。少なくとも週に1~2回は継続して整形外科に通院するようにしましょう。
(2)整骨院・鍼灸院に自己判断で通院しないこと
整骨院や鍼灸院に通うことは、腰椎捻挫の症状の緩和に有効とされています。
しかし、自己判断で整骨院や鍼灸院に通院しても、保険会社がその費用を負担してくれない場合があるので注意が必要です。基本的に、整骨院や鍼灸院における施術費用について保険会社に負担してもらうためには、医師の指示があることが必要です。
交通事故の損害賠償の対象となる「治療費」は、医学的に必要性が認められる限度に限られているため、医師ではない柔道整復師や鍼灸師によって行われる整骨院や鍼灸院における施術に関する費用は、医師の指示がない限り保険会社が支払いを拒否することもあるのです。
整骨院や鍼灸院に通院したい場合は、まず主治医に相談してその指示を仰ぐべきです。
(3)保険会社から「治療費打ち切り」を打診されたら
通常、治療費は加害者が加入する保険会社から医療機関へ直接支払われます。しかし、保険会社はいつまでも治療費を支払ってくれるわけではありません。
腰椎捻挫の場合は、治療開始から概ね3か月が過ぎると、「そろそろ治療費を打ち切りたい」と保険会社から打診されることがよくあります。
それ以上治療を続けても症状が改善する見込みがない状態(「症状固定」という状態です。)になっている場合には、治療を打ち切って後遺障害等級認定の手続をすることも考えられます。
しかし、まだ症状固定に至っていない場合は、治療を続けるべきです。保険会社からの打診に安易に応じてしまうと、必要な治療を受けられなくなるばかりか、慰謝料額でも損をすることになってしまいます。
保険会社から「治療費打ち切り」を打診されて納得できない場合は、まず主治医によく相談して、治療を継続するべきかについて指示を仰ぎましょう。それでも強行的に打ち切られそうな場合は、弁護士に相談するべきです。
3、腰椎捻挫の慰謝料の相場
それでは、腰椎捻挫の場合、どのくらいの慰謝料をもらえるのかをみていきましょう。
(1)3種類ある慰謝料の算定基準に注意
慰謝料とは、被害者の精神的苦痛に対するてん補として支払われるお金のことです。
もっとも、被害者ごとに精神的苦痛の程度を個別に判断するのは難しく、また、不公平な結果にもなりがちです。
そのため、交通事故の損害賠償としての慰謝料算定には、客観的な基準が用いられており、実務上、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「裁判基準(弁護士基準)」という3種類があります。どの基準で算定するかによって慰謝料額が異なります。
自賠責保険基準は、3種類の中では最も低い基準ですが、迅速かつ確実に支払ってもらえるというメリットがあります。
任意保険基準は、自賠責保険基準と次の裁判基準の中間の基準です。具体的な内容は保険会社ごとに独自に定められているため不明ですが、自賠責保険基準とさほど変わらない額であることが多いといえるでしょう。
裁判基準(弁護士基準)は、3種類の中で最も高い基準です。裁判をした場合に裁判所が用いる基準ですが、弁護士に依頼すれば示談でもこの基準で慰謝料を請求できる場合があります。
(2)入通院期間によって算定される慰謝料
交通事故で賠償される慰謝料としては、まず怪我をして入通院をせざるを得なくなったことによる精神的苦痛に対する補てんとして、「傷害慰謝料」があります。
傷害慰謝料は、基本的に、入通院期間に応じて算定されます。
裁判基準では、以下のように「一般的な場合」と「むち打ち症で他覚症状がない場合」とに分けて定められています。
むち打ち症の場合等、腰椎捻挫で他覚症状がない場合には、下の別表Ⅱが用いられます。
なお、傷害の部位、程度によっては、別表の金額を20~30%程度増額することもありますが、なかなか認められません(『民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準』(2020年・公益財団法人 日弁連交通事故相談センター東京支部)。通称『赤い本』)。
例えば、腰椎捻挫で他覚症状はないが、入院1か月、通院3か月を要した場合には、別表Ⅱを使用し、該当する月数が交差する83万円が傷害慰謝料額となります。
【別表Ⅰ:一般的な場合(単位:万円)】
| 入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
通院 |
| 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 | 266 | 284 | 297 | 306 | 314 | 321 |
1月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 | 274 | 291 | 303 | 311 | 318 | 325 |
2月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 | 281 | 297 | 308 | 315 | 322 | 329 |
3月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 | 287 | 302 | 312 | 319 | 326 | 331 |
4月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 | 292 | 306 | 316 | 323 | 328 | 333 |
5月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 | 296 | 310 | 320 | 325 | 330 | 335 |
6月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 | 300 | 314 | 322 | 327 | 332 | 337 |
7月 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 | 304 | 316 | 324 | 329 | 334 | 339 |
8月 | 132 | 164 | 194 | 222 | 248 | 270 | 290 | 306 | 318 | 326 | 331 | 336 | 341 |
9月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 | 308 | 320 | 328 | 333 | 338 |
|
10月 | 145 | 175 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 | 310 | 322 | 330 | 335 |
|
|
11月 | 150 | 179 | 207 | 234 | 258 | 278 | 296 | 312 | 324 | 332 |
|
|
|
12月 | 154 | 183 | 211 | 236 | 260 | 280 | 298 | 314 | 326 |
|
|
|
|
【別表Ⅱ:むちうち症で他覚症状がない場合等(単位:万円)】
| 入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
通院 |
| 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 | 165 | 176 | 186 | 195 | 204 | 211 |
1月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 | 171 | 182 | 190 | 199 | 206 | 212 |
2月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 | 177 | 186 | 194 | 201 | 207 | 213 |
3月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 | 181 | 190 | 196 | 202 | 208 | 214 |
4月 | 67 | 95 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 | 185 | 192 | 197 | 203 | 209 | 215 |
5月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 | 187 | 193 | 198 | 204 | 210 | 216 |
6月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 | 188 | 194 | 199 | 205 | 211 | 217 |
7月 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 | 189 | 195 | 200 | 206 | 212 | 218 |
8月 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 | 190 | 196 | 201 | 207 | 213 | 219 |
9月 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 | 191 | 197 | 202 | 208 | 214 |
|
10月 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 | 192 | 198 | 203 | 209 |
|
|
11月 | 117 | 135 | 150 | 160 | 171 | 179 | 187 | 193 | 199 | 204 |
|
|
|
12月 | 119 | 136 | 151 | 161 | 172 | 180 | 188 | 194 | 200 |
|
|
|
|
(3)腰椎捻挫の後遺障害等級は12級または14級
腰椎捻挫で後遺障害が認定される場合の等級は、12級または14級となります。一方で、非該当と認定される場合も多くあります。
12級と14級の対象となる障害と判断基準は、それぞれ以下のとおりです(自賠法施行令別表第2)
後遺障害等級 | 対象となる障害 | 判断基準 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 他覚的所見があり、症状を医学的に証明できるもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 他覚的所見は認められないものの、症状を医学的に説明できるもの |
他覚的所見がなく、かつ、症状を医学的に説明することが困難な場合は、非該当と認定されます。
後遺障害等級が認定されると、傷害慰謝料とは別に「後遺障害慰謝料」が等級に応じて賠償されます。12級と14級の後遺障害慰謝料額は、それぞれ以下のとおりです。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 | |
自賠責保険基準 | 裁判基準 | |
12級 | 93万円 | 290万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
(4)後遺障害による逸失利益とは
後遺障害が残ると、仕事に何らかの支障が出るようになるのが通常です。つまり、労働能力の全部または一部が喪失され、それによって将来の収入が減少すると考えられます。
このような、交通事故に遭わなければ将来得られるはずだった利益のことを「逸失利益」といいます。
逸失利益の算定は、労働能力の低下の程度、収入の変化、将来の昇進・転職・失業等の不利益の可能性、日常生活上の不便等を考慮して行います。
逸失利益の金額は、基本的に、次の計算式によって算定されます。
逸失利益 = ①基礎収入額 ×② 労働能力喪失率 × ③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
①基礎収入額
給与所得者の場合は、原則として、事故前年度の収入を基礎収入額とします。
個人事業主のような事業所得者の場合には、確定申告における所得を参考にしますが、同申告額と実収入額が異なる場合には、立証があれば実収入額を基礎にして算出します。
家事従事者の場合、賃金センサスの産業計・企業規模計・学歴計・女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎にして算出します(最判昭49.7.9・判時748・23)。
②労働能力喪失率
労働能力喪失率については、労働省労働基準局長通牒(昭32.7.2基発第551号)別表労働能力喪失率を参考とし、被害者の職業、年齢、性別、後遺症の部位・程度、事故前後の稼働状況等を総合的に判断して、事案ごとに評価します。
例えば、同別表においては、労働能力喪失率について、後遺障害等級12級の場合では14%、14級の場合では5%とされています。
③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
労働喪失期間について、始期は症状固定(それ以上治療を続けても症状が改善する見込みがない状態)日、また、終期は原則として67歳とされています。
労働喪失期間の終期は、職種、地位、健康状態、能力等により、上記の原則とは異なった判断がされることもあります。
なお、腰痛捻挫等を含むいわゆるむち打ち症の場合は、12級で10年程度、14級で5年程度に労働能力喪失期間を制限する例が多く見られます。
ライプニッツ係数とは、将来の就労可能年数に応じて中間利息の控除を算定するための係数のことです。
例えば年収の20年分を逸失利益として一度に受け取る場合、単純に基礎収入額×労働能力喪失率×20年で算出されたお金を丸々被害者が受け取れるとすれば、そのお金を20年かけて運用した場合に発生する利息(中間利息)分だけ加害者が払いすぎているということになってしまいます。
このように、将来に渡って発生する損害について、年金などで都度賠償を受けるのではなく一時金で受け取ることになる逸出利益の算定においては、将来得られるはずの利益を前倒しで賠償することになるので、将来に渡って発生するはずの利息分を控除する必要があります。この控除の際に必要となるのがライプニッツ係数なのです。
なお、中間利息は、年5%の割合で控除するとされていましたが、民法改正により、令和2年4月1日以降(当初3年間)に発生する交通事故の損害賠償請求について、中間利息控除に用いる利率は(当面の間)年3%となりました(改正民法722条の2・同417条の2、同404条2項・同条3項)。
④具体例
例えば、令和2年4月1日以降に発生した交通事件について、症状固定時の年齢が50歳で、年収が750万円の男性サラリーマンが傷害を負い、骨折や脱臼(器質的損傷)のない腰痛捻挫により後遺障害等級14級9号の認定を受け、労働能力が5%、労働能力喪失期間が5年に制限された場合には、逸失利益の算定は以下のようになります。
750万円(基礎収入額)×0.05(労働能力喪失率)×4.5797(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=171万7388円(小数点以下四捨五入)
4、腰椎捻挫で後遺障害等級を適切に獲得する方法
後遺症が残存した場合には、適切な後遺障害等級を獲得することができれば、後遺障害慰謝料や後遺障害による逸失利益を請求することができるので、損害賠償額が大きくなります。
したがって、腰痛捻挫が原因で後遺症が残存した場合、後遺障害等級を適切に獲得する方法を知っておくことは非常に重要です。
(1)後遺障害診断書の記載を確認する
後遺障害等級の認定申請をする際にまず必要なのは、症状固定時に主治医から「後遺障害診断書」を発行してもらうことです。
後遺障害等級の審査は、損害保険料率算出機構という団体が設置する自賠責損害調査事務所において、基本的に書類のみで行われます。その書類審査の中で最も重要なのが後遺障害診断書なのです。
後遺障害の認定のために効果的な後遺障害診断書を作成するためには、主治医にご人身の自覚症状を正確かつ詳細に伝え、理解してもらう必要があります。そのため、後遺障害診断書を保険会社などに渡す前に、自分で記載内容を確認し、自覚症状等の表現に誤りがないかチェックすることが大切です。
弁護士に後遺障害認定を依頼している場合には、弁護士から主治医に対し、後遺障害診断書の作成の際の注意点を伝えたり、仕上がった後遺障害診断書について修正を依頼することもあります。医師も交通事故に詳しい人ばかりではないので、必要な検査がなされなかったり、誤った認識に基づいて後遺障害診断書を作成していることも少なくありません。必要に応じて、MRIや神経学的検査等を受けた上で、他覚的所見をしっかりと記載してもらうべきです。
(2)認定の申請は「被害者請求」でやるのがおすすめ
交通事故の保険対応においては、そもそも弁護士が間に入らず、被害者と加害者が加入する保険会社がやり取りをして示談まで進んでしまうケースが圧倒的に多いです。その場合は保険会社が後遺障害等級の申請をしますが、適切に後遺障害等級を獲得するためにはご自身で申請するのがおすすめです。
保険会社から申請することを「事前認定」、自分で申請することを「被害者請求」と呼びます。
事前認定の場合、手続を代行するのはあくまでも加害者が加入する保険会社ですので、必ずしも適切な書類を提出してくれるとは限りません。そのため、不当に不利な結果が出るおそれがあります。
被害者請求であれば、ある程度は自分でどのような書類を提出するのかを決めることができますし、提出する書類の内容についても、誤りがないかチェックすることができます。的確に書類を収集してしっかりした内容のものを提出することで、後遺障害等級を適切に獲得できる可能性が高まります。
しかし、始めて事故でケガをした方が、どのようにすれば後遺障害等級が認定されやすくなるのか把握するのは極めて困難です。そのような場合には、弁護士に相談する方が良いでしょう。
(3)認定結果に納得できない場合は異議申立て
後遺障害等級の認定結果に納得できない場合は、異議を申し立てて再審査をしてもらうことができます。
しかし、ただ「結果に納得できない」というだけで異義を申し立てても、同じ結論になってしまう可能性が高いでしょうから、異議申立てによって有利な結果を得るためには、新たな検査結果や、認定申請の際に提出できなかった書類などを追加提出する必要があります。
ですので、認定結果を覆すためには、弁護士に依頼して異議申立てをすることがおすすめです。
5、腰椎捻挫での対処を弁護士に依頼するメリット
交通事故案件の処理に精通した弁護士に依頼すれば、後遺障害等級の認定申請も異議申立ても代行してもらうことができます。また、損害保険料率算出機構が設置する自賠責保険(共済)審査会への異議申立ての結果にも満足できない場合には、結果が覆る可能性はあまり高くないですが、訴訟を提起して、適切な後遺障害等級の認定の獲得を目指す方法もあります。
また、保険会社との示談交渉も代行してもらえるため、精神的負担を軽減することができます。さらに、示談交渉の際にも裁判基準で損害賠償を請求してもらえるので、受け取れる賠償金の大幅な増額が期待できます。
適切な損害賠償を受けるために、弁護士に依頼するメリットは大きいです。
まとめ
交通事故で腰椎捻挫となってしまった場合、適切な補償を受けるためには、適切な治療を受けること、後遺障害等級認定の申請を適切に行うこと、裁判基準で損害賠償を請求することなど、いくつかの重要ポイントがあります。
重要なポイントで対処を誤ってしまうと、慰謝料等の賠償額の面で大きく損をしてしまう可能性が高くなります。
負傷して辛い思いをした以上は、適切な損害賠償を受けなければなりません。そのためには正しい知識を持って、正しく対処することが必要です。
腰椎捻挫の損害賠償請求で気になることがあれば、一人で悩まずに、早めに弁護士に相談しましょう。