
夜逃げについてご存知ですか?
借金、人間関係など、今置かれている様々な環境から逃げ出してしまいたい…
今の環境から逃れるため、こっそり逃げるように引っ越しを行う「夜逃げ」。
夜逃げをしたら、楽になれるのか-。
今回は、
- 夜逃げをした人に起こりうる問題
- 夜逃げをせずに問題を解決する方法
について、徹底解説していきます。この記事で、解決の方向性が見えますように。
目次
1、夜逃げはした後の方が大変だった?!
夜逃げとは、何かから逃げる目的で夜中にこっそりと引っ越すことをいいます。
さて、逃げ切れるのでしょうか。また、逃げ切ったとしても、その精神状態は平常でいられるものでしょうか。
(1)借金取りに怯える生活
夜逃げに成功したとしても、債権者から逃げ続けるために居場所を転々としなければなりません。
そして、発見された場合いったいどのような目に遭うのか…といった精神状態で夜逃げ後の生活をしなければなりません。
(2)身分証の提示ができない
夜逃げ中は、金融業者に住民票などを見張られているため、住民票の移動が困難になります。
そのため、現在の住所の身分証を提示できない状態に陥る可能性があります。
また、それによって(3)から(5)などの不利益を被ることになります。
(3)就職ができない
正社員やアルバイト、日雇い労働者などであっても、金銭が発生する以上身元確認が必要となります。
しかし、(2)のように身分証を提示できない場合は、就職することが困難になります。
(4)携帯電話の契約ができない
携帯電話の契約に際しても、身元確認のため身分証が求められることが一般です。
そのため、新たな契約をすることができず、また連絡手段を確保しておくために現在の契約状態を維持しなければならなくなる結果、債権者に連絡先を知られたままの状態を強いられることとなります。
(5)選挙に行けない
住民票を移動することができず投票用紙を受け取ることができないため、選挙に参加することができません。
(6)利息の増加
夜逃げを続けている間も、借金の利息は着々と積み重ねられていきます。
(7)借金がなくなるわけではない
一定期間の経過により借金が消滅する消滅時効という制度があります。
しかし、債権者である金融会社などはこれを法的に阻止する手段についても熟知しているため、その制度を利用することは難しいといえます。
したがって、夜逃げをしても取立てなどを一時的に逃れることができるにすぎず、夜逃げによって借金がなくなるわけではありません。
2、夜逃げに踏み切る主な理由
夜逃げと聞くと、借金の取立てを逃れるためというイメージが一般的ですが、身の危険から逃れるため緊急避難的になされるなど、現在では様々な理由により夜逃げが行われる場合があります。
具体的には、以下のような理由が挙げられます。
- 多額の借金の取り立てから逃れるため
- ストーカーから逃れるため
- 恋人や配偶者とのトラブル(DVなど)から逃れるため
- 凶悪な事件に関与した者が、事件関係者から逃れるため
- 性の不一致(性的DV)
- 家族、同居人との性格の不一致
3、夜逃げは根本的な解決にはなりません!
民法には「消滅時効」という制度があり、個人間の貸し借りでは10年間、クレジットやローン、その他消費者金融などの会社相手の貸し借りでは5年間の期間経過により、その借金が帳消しになる可能性があります。
(債権等の消滅時効)
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
(略)
引用元:民法第166条第1項
この消滅時効ですが、債権者は、時効の更新(旧「中断」)のため措置を講ずることができ、それによって時効の期間計算を振り出しに戻すことができます。
(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十七条
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。引用元:民法第147条
(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十八条
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 強制執行
二 担保権の実行
三 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百九十五条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
四 民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続
2 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。引用元:民法第148条
(承認による時効の更新)
第百五十二条
時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。引用元:民法第152条
このように、金融会社などの債権者は、裁判上の請求や担保権の実行により時効の更新を生じさせます。
実際に、金融機関はこのような措置については熟知していることがほとんどであると考えられるため、夜逃げによって借金が帳消しにはならず、単に取立てを一時的にしのぐことができるに過ぎません。
4、自分以外の人に迷惑をかけることも
(1)家族・親戚
家族とともに夜逃げをする場合、夜逃げにともなう精神的な不安・ストレスのみならず、子供に教育を受けさせることができないことや、十分な医療措置を受けることができないなどという負担を背負わせることになります。
また、親や親族は借金の保証人になっていることも多いため、実家や親戚の家まで借金取りが押し掛けることもありえます。
(2)保証人
一定金額の借入れや、アパートを借りる際には、保証人をつけることが求められることが多いですが、債務者が借金を返さない場合、債務者に代わってこれを負担する保証人にも迷惑をかけることになります。
(3)大家
借家に残された家財などは、大家が自由に処分できるものではなく、貸倉庫などに預けることしかできません。
しかも家賃滞納があった場合、大家はその滞納分を回収することが困難になります。
したがって、保証人がいない場合、大家は家財の保管や家賃未回収という負担に迫られることになります。
5、夜逃げはリスクが大きい|バレる可能性が高い理由
(1)住民票の移動で発覚する
先にも述べたように、債権者は、債務者の住民票を確認することができるため、住民票を夜逃げ先に移動した場合、それが発覚した時点で夜逃げが明らかとなり、所在地までバレることになってしまいます。
(2)家族・知人が情報を漏らす
家族や知人に夜逃げすることを打ち明けていた場合、いくら口止めを求めたとしても、その者から情報が漏えいする可能性はゼロではありません。
また、夜逃げを打ち明けずにいた場合でも、些細な言動から夜逃げがバレてしまい、そこから債権者などに情報が漏えいするといったことも十分に考えられます。
(3)夜逃げ屋が債権者に情報を漏らす
荷物の運搬や新しい所在先のあっせんを行ういわゆる「夜逃げ屋」という夜逃げのサポートを行う業者が存在し、これを利用して夜逃げをする場合もあります。
しかし、この夜逃げ屋は債権者と通じており、依頼者が夜逃げをしたという情報を、債権者に漏えいするといった可能性もあります。
6、実際夜逃げをする人は減っている?!
借金に関するトラブルで夜逃げがなされる背景には、借金に苦しんでいる場合の対処方法に関する知識がなかったことや、厳しい取立てが行われていたことなどがありました。
ですが現在では、インターネットの普及により、債務整理などによって対処する方法を誰もが知ることのできる環境が整っていること、貸金業法の改正により、厳しい取立てが制限されるに至ったことなどによって、夜逃げをする人は減少しています。
7、借金を理由に夜逃げを考えているなら弁護士へ相談しよう
借金苦から逃れる最適な手段は、夜逃げではなく、弁護士に相談し、法的な救済手段を利用することといえます。
その方法としては、以下のような3つの方法が挙げられます。
ただ、実際にどの手段が望ましいのか、書面の準備や形式はどのようにすればいいのか、債権者への対応方法など、実際の手続きには専門的知識が多く要求されます。
そこで、借金に追われて夜逃げを考えるのであれば、自分で解決しようとせず、まず弁護士に相談することが望ましいといえます。
(1)任意整理
弁護士などの代理人がすべての債権者と協議したうえ、債務を免除する金額や、返済する金額などについて協議していく方法です。
下記の(2)(3)と異なり、法律で定められた手続きに則って裁判所が関与するなどして行われるものではなく、すべての債権者との協議・合意のみによってなされるという特徴があります。
(2)個人再生
債務者の債務を一部免除してもらい、一部を今後も返済していくことで再出発を図る手続きです。
自己の財産を手元に置いておくことができるという点で(3)の手段より、メリットがあるといえますが、その分、手続きもやや厳格に定められています。
(3)自己破産
債務者の債務をすべて免除して経済的な再出発を図る手続きです。
自己の財産は生活に必要な物などを除いてすべて売却され、売却資金は債権者に配られるなど、債務者にはデメリットの大きい手段といえます。
8、弁護士に相談するメリット
(1)自分に合った解決方法の提案
先に述べたように、借金を整理する手段は様々あり、各々にメリット・デメリットがあります。
そこで、自分の場合はどの制度を利用することが望ましいのか、その他借金にまつわるさまざまな問題などを検討のうえ、最も適当な解決方法の提案を受けることができます。
(2)取立てが止まる
債務整理の手続きを開始した場合、依頼を受けた弁護士は、各債権者に取立てなどは今後弁護士を通じてするようにという旨の通知を行います。
これによって、現在なされている取立てを一旦止めることができます。
(3)精神的負担が少ない
弁護士に依頼せず解決しようとする場合、取立てに追われ、法的な知識も充分でない状態では、大きな精神的負担を伴うことになります。
しかし、十分な専門知識を有した弁護士に依頼することで、これらの精神的負担から解放されるとともに、今後の生活などに関するアドバイスも受けることができます。
(4)煩雑な手続きを一任できる
個人再生や自己破産は、裁判所が関与したうえで、債務の一部を免除してもらうことのできる強力な手続であるため、その利用には厳格な手続きが求められます。
したがって、専門知識を有する弁護士でなければ申立書類などを作成することは非常に困難です。
任意整理をおこなう場合であっても、債務総額の計算や、各債権者との煩雑なやりとりを弁護士に一任することができるというメリットがあります。
9、着手金無料や分割払い可もある!弁護士費用の相場
弁護士に依頼する場合のデメリットは、弁護士費用がかかることのみといっていいでしょう。
任意整理における報酬相場は、債権者1社あたり約4万円から、成功報酬は減額した分の5%から10%とされ、個人再生や自己破産の場合は、約20万円から50万円、成功報酬なしというのが一般的です。
もっとも、これらの着手金を0円とし、成功報酬のみ支払うという料金体制をとっている場合もあります。
また、分割払いの対応が可能な場合や、法テラスの利用により弁護士費用の立替払いを受けることのできるケースもあります。
このように、着手金が手元になくても依頼が可能な場合があるほか、初回相談は無料としている事務所も多いため、まずはお気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
10、安心して任せられる弁護士の特徴
債務整理は専門性や柔軟な解決のための交渉力が求められる分野であるため、解決実績や解決事例が豊富にある事務所に所属する弁護士に依頼することが解決への近道です。
そのような実績や知識の有無を判断するには、事務所のホームページに債務整理に関する情報が充実しているか、相談の際に法律の素人である依頼者にわかりやすい説明ができるかどうか、などが判断材料となります。
まとめ
借金による労苦、取立てによる不安・精神的負担はとてつもなく大きいものです。
しかし、夜逃げという手段に出ても一時しのぎにしかならないばかりか、状況をさらに悪化させるとともに、多くの人に迷惑をかけることになります。
そして、現時点で手元に資金がなくとも、債務整理のために弁護士を利用することは可能です。
ですので、借金による夜逃げをお考えの方は、その前に一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。