不起訴処分告知書とは、刑事事件で検察官が特定の被疑事件について起訴しない決定を下した場合、その旨を被疑者に通知する書類のことです。
しかし、この告知書は検察官から自動的に提供されるわけではありません。被疑者が不起訴処分告知書を入手するためには、被疑者から検察官に請求する必要があります。 ですから、不起訴処分告知書が必要な場合、いつ・どのように取得できるのかを理解しておくことが大切です。
また、不起訴処分告知書には何が記載されているのかも気になるでしょう。
そこで、今回は、
- 不起訴処分告知書とは何か?
- 不起訴処分告知書の入手方法は?
- 不起訴処分告知書の内容
などについて、詳しく解説します。
さらに、不起訴処分告知書の取得にかかる費用や保管上の注意点についてもご説明します。不起訴処分告知書が必要な方や関心をお持ちの方に役立つ情報を提供いたします。
不起訴については知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。
目次
1、不起訴処分告知書とは
まず、不起訴処分告知書とはどのようなものなのかについてご説明します。
(1)検察官が不起訴にしたことを告げる書面
不起訴処分告知書とは、冒頭でもご説明したように、刑事事件で不起訴処分が行われたときに、そのことを被疑者に対して告げる旨を記載した書面のことです。
特定の嫌疑事件を起訴するか、不起訴とするかは検察官が決めるものですが、不起訴とされても、その被疑者に自動的に不起訴処分告知書が交付されるわけではありません。不起訴処分告知書を取得するためには、刑事訴訟法259条により、被疑者から検察官に請求して発行してもらう必要があります。
第二百五十九条 検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨をこれに告げなければならない。
引用元:刑事訴訟法
(2)不起訴処分告知書のサンプル
不起訴処分告知書には、A4の紙に以下の項目が記載されています。
- 「不起訴処分告知書」というタイトル
- 不起訴処分告知書を発行した日付
- 請求者(被疑者または弁護人)の氏名
- 検察官の氏名と所属する検察庁名
- 被疑者名と被疑事実
- 不起訴処分(公訴を提起しない処分)をした旨
- 不起訴処分をした日付
わかりやすいようにサンプルを掲げておきますので、参考になさってください。
2、不起訴処分告知書が必要になるのはどんな時?
犯罪の嫌疑をかけられ警察や検察から取調べといった捜査を受けた人は、その後不起訴となったことを知らなければいつまでも、刑事裁判にかけられるかも、と不安に思うことでしょう。そのため不起訴処分告知書を取得すれば、不起訴となったことがはっきりと書面で確認できるので安心して生活することができるでしょう。
ただ、不起訴処分を受けたすべての人が不起訴処分告知書を取得しているわけではありません。後述のとおり、不起訴処分となったことについては口頭でも確認ができるので、不起訴処分告知書を取得するのは特にその必要がある人に限られます。
それでは、不起訴処分告知書が必要になるのはどんな時なのでしょうか。
(1)通常は口頭で告知を受ければOK
不起訴処分が行われたことは、検察官に電話で連絡して問い合わせれば、口頭で告知してくれます。
検察官の口から「不起訴にしました」と言われれば、通常はそれで安心できるでしょう。それでも書面で明確にしてもらわなければ安心できないという方は、請求すれば不起訴処分告知書を発行してもらえます。
不起訴処分告知書を取得すれば、家族に見せて安心してもらうこともできるでしょう。
(2)勤務先から提出を求められることがある
どうしても不起訴処分告知書が必要になる時としては、勤務先に提出しなければならない場合が考えられます。
刑事事件の被疑者であることが勤務先に知られると、懲戒処分の手続きが進められることがあるでしょう。しかし、不起訴となれば刑事裁判は行われず、有罪となる可能性はなくなり、前科もつきませんので、懲戒処分を免れたり、処分を受けるとしても軽い処分で済むことも考えられます。
ただし、会社側としては、不起訴となったことを明確に証明できる書類として不起訴処分告知書の提出を求めてくることがあります。その場合には、不起訴処分告知書を取得して提出するのが良いでしょう。
それ以外の場面で、不起訴処分告知書が必要となることはまず考えられません。
3、不起訴処分告知書は請求しないともらえない!
先ほどもお伝えしましたが、不起訴処分告知書は自動的に発行されるものではなく、請求しないともらえないので注意が必要です。
ここでは、不起訴処分の告知について、もう少し詳しく解説しておきます。
(1)そもそも不起訴とは?
起訴とは検察官が、捜査した刑事事件についてその被疑者が有罪か無罪か、有罪だとしてどれほどの刑罰を科するか、裁判所に裁判を求めることをいいます。
これに対して不起訴とは、検察官がその被疑者を起訴しないことに決めて捜査を終了することをいいます。
不起訴となれば刑事裁判は開かれませんので、被疑者が有罪となる可能性はなくなり、前科もつきません。捜査が終了しますので、被疑者が勾留されていた場合は釈放されます。
なお、不起訴処分には主に次の3種類があります。このほか、罪とならない場合、被疑者の死亡、親告罪の告訴取り下げ、など様々なものがあります。
- 起訴猶予(嫌疑があるが軽微な犯罪など、検察官が様々な事情を考慮して起訴しないとすること)
- 嫌疑なし(犯罪の疑いがない)
- 嫌疑不十分(起訴するには証拠が不十分)
いったん不起訴となっても、後に新たな証拠が見つかったり、何らかの事情で嫌疑が強まった場合には、改めて捜査が行われて起訴される可能性もあります。しかし、実際にはそのようなケースは極めて稀です。
(2)不起訴となっても連絡は来ない
検察官が不起訴処分を行っても、被疑者に対して連絡はしません。連絡してくれる検察官もいますが、刑事訴訟法第259条によれば被疑者が請求しない限り告知する義務はありませんので、多くの場合は不起訴となっても検察官からの連絡はありません。
これに対して、被害者などが告訴や告発をした事件については、検察官が不起訴にした場合は告訴人や告発人に対して自動的に通知しなければならないこととされています。
第二百六十条 検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人又は請求人に通知しなければならない。公訴を取り消し、又は事件を他の検察庁の検察官に送致したときも、同様である。
引用:刑事訴訟法
このように、被疑者と告訴人や告発人とでは扱いが異なりますので、注意しましょう。
(3)不起訴の理由は教えてもらえない?
被疑者から検察官に対する請求によって、不起訴となったことの告知を受けたとしても、検察官には不起訴の理由まで開示する義務があるわけではありません。
もっとも、実務上では不起訴処分告知請求の際に理由の開示も求めると、検察官が文書で不起訴理由を開示してくれることも多いようです。
なお、被害者などが告訴や告発をした事件については、検察官は告訴人や告発人からの請求があれば不起訴の理由も告知しなければならないこととされています。
第二百六十一条 検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人又は請求人にその理由を告げなければならない。
引用:刑事訴訟法
4、不起訴処分告知書を発行してもらえないケース
不起訴処分告知書が発行されるのは、検察官が捜査をした上で不起訴処分を行った場合です。
以下のケースでは、検察官に請求しても不起訴処分告知書は発行されませんのでご注意ください。
(1)警察による微罪処分で終わった場合
犯罪が疑われて警察の取り調べを受けても、「微罪処分」で警察段階で捜査が終了することがあります。
この場合にはそもそも事件が検察官に引き継がれません。
検察官が不起訴としたわけではないので、不起訴処分告知書は発行されません。
(2)起訴された場合
捜査を受けた事件が起訴された場合は、当然のことながら、不起訴処分はされていないので不起訴処分告知書は発行されません。
(3)まだ不起訴が正式に決まっていない場合
正式に不起訴処分が行われるまでは、不起訴処分告知書は発行されません。
逮捕・勾留された場合は、身柄拘束の期間内(最大で23日以内)に起訴・不起訴が決まることが通常です(処分保留として釈放される場合もあります)。
それに対して、身柄を拘束されずに在宅事件として捜査された場合は、何ヶ月か経過しても検察官から連絡がないことも珍しくありません。
このような場合は、1ヶ月おきくらいに検察官に連絡して状況を尋ねてみると良いでしょう。
まだ正式に不起訴処分が行われていない場合は「捜査中です」との回答があるはずです。
既に不起訴処分が行われた場合はその旨の回答がありますので、請求すれば不起訴処分告知書を発行してもらえます。
5、不起訴処分告知書を取得する方法
弁護士に刑事事件を依頼していた場合は、その弁護士に頼んで不起訴処分告知書を取得してもらうのが一般的です。
ただし、国選弁護人の場合は、被疑者が釈放されると選任の効力がなくなります(刑事訴訟法38条の2)。そのため不起訴処分告知書の請求は職務の範囲外になるので応じてもらえないこともあります。
私選弁護人の場合も、別料金を請求されることもあるようです。そもそも弁護士に依頼していない場合は、自分で取得するしかありません。
ここでは、自分で請求して不起訴処分告知書を取得する方法をご説明します。
(1)検察官に請求する
不起訴処分告知書の請求先は、不起訴処分を行った検察官です。検察庁に電話して、自分が取調べを受けた検察官につないでもらいましょう。
その検察官が異動していなくなっている場合は、検察庁の代表電話で事情を話せば、変わりの担当検察官につないでもらえます。
担当の検察官につながったら、まず不起訴となったかどうかを確認し、不起訴になっている場合は不起訴処分告知書を取得したい旨を申し出ます。
あとは、検察官の指示に従えば不起訴処分告知書が発行されます。
(2)口頭での請求で足りる場合が多い
請求方法としては、以上のように口頭で請求するだけで足りる場合が多いです。しかし、検察官によっては申請書を提出するように指示することもあります。
なお、不起訴処分告知書の受け取り方は、郵送してもらえる場合と、検察庁で検察官または検察事務官から直接交付される場合の2通りがあります。
どちらかというと、検察庁まで取りに来るように指示する検察官が多いようですが、いずれにしても指示に従うようにしましょう。
(3)不起訴処分告知書交付申請書の書式
申請書の用紙は検察庁にありますが、郵送で請求する方などのために書式のサンプルをご紹介します。
この書式では宛名を「地方検察庁」としていますが、あなたが取り調べを受けたのが区検察庁であれば、「区検察庁」と訂正してください。どちらかよくわからないときは、検察官に尋ねればわかります。
(4)申請書の提出方法
郵送でも申請書を受け付けてもらえるのか、直接持参しなければならないのかも検察官によって異なりますので、あらかじめ電話で確認しておきましょう。
不起訴処分告知書を郵送で受け取る場合は、申請書を郵送する際に切手を貼った返信用封筒を同封する必要があります。
郵送は普通郵便でかまいませんが、返送は簡易書留でしか応じてくれない検察官もいるので、その点も確認しておくべきです。
返送が普通郵便の場合は82円、簡易書留の場合は432円分の切手を返信用封筒に貼っておきます。
検察庁へ直接出向く場合は、身分証明書(運転免許証など)と印鑑を持参しましょう。印鑑は認印でかまいませんが、シャチハタは不可となっています。
検察庁では、まず入り口にいる警備員に用件を伝えて、担当の検察官のところへ通してもらいます。あとは身分証明書を提示して本人確認をし、申請書を提出すればその場で不起訴処分告知書が発行されます。
ただし、そのときに担当検察官が他の用件から手を離せなければ、その場で不起訴処分告知書をもらうことはできません。
そのため、直接出向く場合もいきなり検察官を訪ねるのではなく、事前に電話で都合の良い日時を確認しておくべきです。
そうすれば、検察官が不在でも不起訴処分告知書を用意しておいてくれて、検察事務官から受け取ることもできます。
6、不起訴処分告知書の取得にかかる費用
不起訴処分告知書の発行料は無料です。印紙代などもかかりません。
ただし、弁護士に依頼する場合には弁護士費用がかかる場合もあるようです。
刑事事件を依頼していた弁護士に頼む場合は、無料で取得してくれることが多いですが、弁護士次第ですので確認する必要があります。
不起訴処分告知書の取得だけを依頼する場合には、1万円~数万円程度の費用を請求されることもあるようです。
7、不起訴処分告知書を保管する際の注意点
取得した不起訴処分告知書は、前記「2(2)」でご説明したように、勤務先に提出する場合を除いて使用する場面はほとんど考えられません。そのため、保管しておくかどうかは個人の自由です。
不起訴処分告知書を勤務先に提出した後もコピーを手元に置いておき、常に見返すことで二度と犯罪の嫌疑をかけられることがないように自分を戒めることに役立たせるのも良いでしょう。
しかし、それを紛失して他人に見られると、事件のことを知られてしまいます。そのため、不必要な書類を残しておくのも考えものです。
コピーなど残さず、原本が手元にあってもシュレッダーにかけるなどして廃棄し、新たな気持ちで前向きに生活していくのも良いと思います。
どちらを選ぶかはあなた次第ですが、保管する場合はうっかり他人に見られないように十分注意して保管しましょう。
まとめ
不起訴処分告知書は、検察官が被疑者に対して不起訴にしたことを告げる旨を記載した書面であると同時に、不起訴処分を受けたことを証明してくれる書面でもあります。
請求しないともらえませんが、勤務先から提出を求められた場合を除いて、請求するかどうかはあなたの自由です。
どちらにしても、不起訴となれば晴れて前向きに日常生活を再スタートできますので、今後被疑者となるようなことがないよう注意しつつ、心新たに明るい未来を築いていきましょう。
何かわからないことがありましたら、お気軽に弁護士までお尋ねください。