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残業代請求の時効期間と時効を止める4つの方法

残業代請求 時効

残業代請求に「時効」があることをご存知でしょうか。

企業によっては、残業をしてもきちんと残業代が支払われないことがあります。そのような場合、残業代請求をすることができますが、「時効」があるため、注意が必要です。

今回は、

  • そもそも時効とはなにか
  • 残業代請求の時効期間
  • 残業代請求の時効を止めるための方法

をご紹介します。ご参考になれば幸いです。

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1、残業代請求の時効について知る前に|そもそも時効とは?

そもそも時効とは、どのようなものなのでしょうか?

(1)時効の意味と、時効が認められる理由

時効は、長期間続いた事実状態を保護するための制度です。

たとえば、権利を持っていても、ずっと行使しない状態が続いていたら、義務者は「もはや権利を行使されることはないだろう」と期待します。
その期待は、ある程度保護されるべきです。
また、権利があるからと言って、行使もせずに眠っている人を保護する必要はありません。

このような理由から、権利を持っていても、行使しないまま一定期間が経ったら、時効が成立して、権利が消滅してしまうのです。
これが、「消滅時効」の制度です。

(2)時効の「援用」について

時効が成立したら、時効の効果を主張する人が「援用」しなければなりません。

援用とは、「時効による利益を受けます」という意思表示です。
必要な時効期間が経過しても、援用をしなければ、時効の効果は発生しません。
たとえば、時効成立後に残業代請求をしたときにも、会社側が時効の援用をしなければ、残業代を支払ってもらえることがあり得るということです。

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2、残業代請求の時効は5年!

次に、残業代の時効の具体的な期間を確認していきましょう。

残業代は、「賃金」の一種ですが、賃金の請求権の時効期間は5年です(改正労働基準法第115条。ただし、経過措置として当分の間は3年です。なお、2020年4月1日以前に支払日が到来している賃金請求権については時効期間は2年です。以下、「5年」の箇所について同様とします)。
そして、時効は、「その権利を行使できるようになった時点」から進行を開始します(ただし、初日は算入されません)。

残業代の場合、権利を行使できるようになる日は、「賃金支払日」です。
そこで、個々の賃金支払日から5年(同上)が経過すると、時効が成立して、会社側が援用した場合,残業代を請求できなくなります。

わかりやすいように、具体例を見てみます

たとえば、月末締め、翌月10日払いの会社があるとします。

この場合、4月中に発生した残業代は、5月10日に請求できる状態になります。
すると、その5年後(同上)である5月10日の経過をもって時効が成立し、4月分の残業代については,会社が時効の援用をした場合には請求できなくなります。

同じように、5月に発生した残業代は、5年後(同上)である6月10日の経過をもって時効が成立し,会社がこれを援用した場合には請求できなくなります。

このように、残業代が発生しても、5年(同上)が経過すると、毎月どんどん時効消滅していってしまうので、残業代請求をするのであれば、少しでも早いほうが得ということになります。

 

3、残業代請求の時効の起算点(時効を数え始める時期)は?

次に、時効の起算点について、知っておきましょう。

(1)時効の起算点とは

時効の起算点とは、「時効の期間をいつからカウントし始めるか」という「始期」の時点です。
そして、法律では、時効期間が経過し始めるのは、「権利を行使できる状態になったとき」とされています。

残業代は賃金の一種ですが、賃金の場合の「権利を行使できる状態になったとき」は、賃金支払日ですので、残業代の時効の起算点は、当該残業代の支払日となる「賃金支払日」となります。

(2)初日不算入の原則について

ただ、実際には、賃金支払日の「翌日」からカウントします。
民法には「初日不算入の原則」があるからです。
初日不算入の原則とは、期間をカウントするときに、初日を入れないと言う考え方です。

初日は、1日の途中から始まるので、初日を入れると、実際より期間が短くなってしまう可能性が高くなります。
そこで、初日は入れないことに統一して、公平を図っているのです。

残業代の場合にも、賃金支払日その日は入れず、その翌日から5年(同上)を起算して時効期間を計算します。
たとえば、5月10日に賃金支払日があった場合、翌5月11日から時効期間をカウントするので、5年後(同上)の5月10日をまるまる経過した時点で、時効が完成することになります。

4、起算点から5年以上経過しても例外的に残業代請求できる場合とは?

それでは、賃金支払日から5年(同上)が経過してしまったら、もはや何をしても残業代を請求できないのでしょうか?

実は、そういうわけでもありません。

5年(同上)が経過しても、残業代を請求できるケースには、以下のようなパターンがあります。

(1)不法行為に該当するケース

企業による残業代不払いが不法行為に該当する場合には、時効期間が3年になります。

不法行為とは、故意過失にもとづく違法行為により、相手に損害を発生させるものです。

たとえば、企業が、残業代を発生していると認識しながら、何ら合理的な理由がないにもかかわらず,あえて支払いをしていない場合や、残業時間を含む勤務時間の管理がまったく行われていない場合などに、不法行為と認定されることがあります。

この場合には、「残業代請求」ではなく「損害賠償請求」として、残業代相当額を請求します。

(2)会社が時効の援用をしない

冒頭で説明した通り、時効の効果を主張するためには「援用」が必要です。

残業代の時効が成立した後で会社に対して残業代請求をしたとき、企業が時効を援用せずに支払いに応じたら、支払いは有効となり、残業代を受け取ることができます。

また、会社が「支払います」と言ったり、一部の残業代を支払ったりすると、「やっぱり援用します」ということはできないので、もはや会社は時効を援用できなくなり、残金を全額支払わねばなりません。

ただし、多くの会社は、残業代を請求されると、顧問弁護士などに相談をして、時効を援用するようにアドバイスを受けます。

経営者側が、援用をせずに時効期間を経過した残業代を支払うことは、稀でしょう。

5、残業代の時効の進行を止める4つの方法

残業代請求権は5年(同上)で時効にかかりますが、完成前であれば、債権者の側で時効を止める方法があります。

以下で、その具体的な方法をご紹介します。

(1)時効の更新とは

時効には、「更新」という制度があります

時効の更新とは、時効の進行を止めることです

時効が更新すると、そのときから再度必要な期間が経過しないと、時効が成立しなくなります。

たとえば、給料日から2年10か月が経過していても、そのときに時効が更新すると、更新時から新たに5年(同上)が経過しないと、時効が成立しなくなるのです。

このように、時効の更新を繰り返していれば、永遠に残業代を時効にかからせないことも可能です。

以下で、時効の更新事由にはどういったものがあるのか、みていきましょう。

(2)債務承認

時効の更新事由として1つ目に出てくるのが、債務承認です。

債務承認とは、債務者が「支払い義務があります」と認めることです。

残業代請求の場合には、企業が

「残業代支払い義務があります」

「残業代を払います」

と言えば、債務承認となります。

ただし、雇い主が口頭で「残業代を支払います」と言っても、証拠がなかったら、後に「そんなことは言っていない」と言われて、知らぬ顔で時効を援用されてしまう可能性が高いです。

債務承認をさせるならば、書面で認めさせるか、録音をとっておくことが必要です。

また、残業代の一部を支払った場合にも、債務承認となります。

そこで、残業代請求をしたとき、企業が一部の支払いをした場合、その時点で残業代の時効を更新させることができます。

(3)裁判上の請求

裁判上の請求も、有効な時効更新の方法です

裁判を起こすと、その時点で確定的に時効が更新するので、訴訟の途中で時効期間が経過しても、時効は成立しません。

判決が出ると、その後10年間、時効が延長されます。

その後は10年ごとに裁判を繰り返していれば、永遠に時効を成立させないことも可能です。

通常訴訟だけではなく、労働審判の申立によっても時効を更新させることができます。

(4)仮差押

例えば,会社に対して裁判を起こし残業代を請求したが,会社の財産状態が思わしくない場合には,判決により会社に対し残業代の支払い義務が認められたとしても,実際に回収ができないおそれがあります。

また,会社が判決前に財産を隠匿し,判決後の差押えを免れようとする可能性もあります。

そのような場合には,例えば会社に不動産等の資産がある場合,その資産を事前に差し押さえることが考えられます。

これを仮差押えの手続と言います。

このように,会社の資産を仮差押えした場合にも、時効が更新します

 

(5)催告

時効の更新ではありませんが、とりあえずの有効手段として「催告」を知っておきましょう。

催告とは、単に、相手に対して支払いを請求することです。

催告をすると、「催告の意思表示が到達した時点から6か月間」時効を延長することができます。

その6か月の間に、例えば訴訟を起こす等他の完成猶予事由が発生すると、確定的に時効の完成を「猶予」することができます。

ただし、6か月の間に訴訟を起こさず、会社側も債務承認しない等他の更新事由が発生しない場合には、6か月で時効が成立します。

注意点は、再度の催告はできないということです。できないので、6か月以内に再度催告をしても、再び時効を止めることはできません。

すぐに訴訟を起こすことができず、時効の成立が迫っている場合には、とりあえず催告をすることが非常に有効な対処方法となります。

なお、請求したことを証拠に残すため,通常、催告は、内容証明郵便によって通知をします。

まとめ

今回は、残業代請求権の時効について、解説しました。

残業代請求権は、基本的に、賃金支払日の5年後(同上)に時効によって消滅してしまいますので、時効成立前に請求して回収してしまうことが基本の対応方法です。

どうしても時効の成立までに回収できない場合には、内容証明郵便の催告による時効の完成猶予や、労働審判、裁判によって時効更新させることも可能です。

残業代請求を考えておられるならば、お早めに弁護士までご相談下さい。

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