外貌醜状が残ってしまい後遺障害等級認定を受けるための方法を知りたい・・・
交通事故などが原因で人目につくような場所(例えば、顔や首など)に大きな傷痕が残ってしまうと、男性女性を問わず、心にも大きな傷を負ってしまうことでしょう。接客業など、人前に出るお仕事をされている方にとっては、お仕事にも支障が出てしまいます。お金で解決できる問題ではないかもしれませんが、適切に損害賠償を受けられなければ、悔しい気持ちは増すばかりではないかと思います。
そこで今回は、外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)とはどのようなものか、後遺障害等級認定を受けるための方法、どれくらいの損害賠償を受けられるのか等についてご説明したいと思います。
交通事故の後遺障害については以下の関連記事もご覧ください。
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目次
1、外貌醜状で後遺障害等級認定を受けられる?|外貌醜状とは
まず、「外貌醜状」という言葉の意味についてご説明します。
外貌醜状とは、読んで字の如く、外観に醜い状態があることをいいます。
もう少し具体的にいうと、頭や顔、首といった日常的に人目に付く部分(外貌)に、人目に付く程度の瘢痕(火傷の傷痕等)、線状痕(線状の傷痕)、組織陥没等の傷痕(醜状)が残ってしまった場合を指します。
2、外貌醜状で後遺障害等級認定を受けた際にもらえるお金は?
外貌醜状が残ってしまった場合には、精神的な苦痛に加えて、仕事にも影響が出てしまうことが考えられます。そこで、残ってしまった傷痕が外貌醜状という後遺障害として認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益といった損害賠償を受けることができます。
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ってしまったことが原因で精神的な苦痛を受けたとして、それに対して支払われる賠償のことです。
他方、逸失利益とは、将来、労働によって得られたはずの利益が得られなくなったことによる損害です。基本的には、事故当時の年収に、労働能力喪失率(後遺障害等級によって異なります。)をかけて、労働能力喪失期間に応じた係数をかけて算出します。
3、部位別!外貌醜状と後遺障害等級の関係
それでは、どのような傷痕が後遺障害に該当するのかを見ていきましょう。
後遺障害の等級は段階的に1級から14級まであり、数字が低いほど重い後遺障害であるとされています。
外貌醜状で認められる後遺障害の等級は、部位や傷痕の大きさ、傷の種類によって異なります。わかりやすいように表にまとめましたのでご覧ください。
後遺障害等級 | 認定要件 | 障害の程度 |
7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの | ⑴頭部に残ったてのひら大(指の部分は除く)以上の瘢痕または頭蓋骨のてのひら大以上の欠損 |
⑵顔面部に残った鶏卵大以上の瘢痕または10円硬貨大以上の組織陥没 | ||
⑶頸部に残ったてのひら大以上の瘢痕 | ||
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの | 顔面部に残った長さ5センチメートル以上の線状痕 |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの | ⑴頭部に残った鶏卵大以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損 |
⑵顔面部に残った10円硬貨大以上の瘢痕または長さ3センチメートル以上の線状痕 | ||
⑶頸部に残った鶏卵大以上の瘢痕 |
同じ傷痕でも、場所や大きさによって等級が異なることがわかると思います。たとえば、同じ瘢痕でも、7級12号が認定されるためには、頭部であればてのひら大以上の大きさが必要とされますが、顔面部であれば鶏卵大以上の大きさで足ります。また、頭部にてのひら大未満、鶏卵大以上の瘢痕が残った場合には、7級より低い12級が認定されることになります。これらの傷痕は、いずれも「人目に付く程度以上のもの」である必要があります。
部位ごとに認められる等級を整理すると、以下の表のようになります。
部位 | 障害の程度 | 後遺障害等級 |
頭部 | てのひら大以上の瘢痕または頭蓋骨のてのひら大以上の欠損 | 7級12号 |
鶏卵大以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損 | 12級14号 | |
顔面部 | 鶏卵大以上の瘢痕または10円硬貨大以上の組織陥没 | 7級12号 |
長さ5センチメートル以上の線状痕 | 9級16号 | |
10円硬貨大以上の瘢痕または長さ3センチメートル以上の線状痕 | 12級14号 | |
頸部 | てのひら大以上の瘢痕 | 7級12号 |
鶏卵大以上の瘢痕 | 12級14号 |
4、外貌醜状と後遺障害慰謝料・逸失利益の関係
外貌醜状として後遺障害の認定を受けると、後遺障害慰謝料と逸失利益を受け取ることができます。
外貌醜状の後遺障害等級は、「3、部位別!外貌醜状と後遺障害等級の関係」でご説明したとおり、傷痕の場所や大きさによって異なりますが、そのことに伴って、後遺障害慰謝料の金額や労働能力喪失率も等級に応じて異なります。この点については、以下の表の通りです。
外貌醜状の後遺障害等級と後遺症慰謝料・労働能力喪失率の目安 | |||
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 (自賠責基準) | 後遺障害慰謝料 (裁判所基準) | 労働能力喪失率 |
7級12号 | 409万円 | 1000万円 | 56% |
9級16号 | 245万円 | 690万円 | 35% |
12級14号 | 93万円 | 290万円 | 14% |
ご覧のとおり、認定される等級によって、もらえる後遺障害慰謝料の金額や労働能力喪失率には大きな違いがあります。ただし、上の表に記載された裁判所基準の金額や労働能力喪失率はあくまで目安であり、絶対にこの金額をもらえるとか、絶対にこの労働能力喪失率が認められるというわけではありませんので、ご注意ください。
もしかしたら、「顔に傷があるからといって労働能力が下がることはないのではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。確かに、肉体的な労働能力に変化があることは少ないでしょう。そのため、裁判例でも逸失利益が否定されたり、上記の目安よりも低い労働能力喪失率しか認められなかったりする傾向にあります。このような判断は、実際の仕事に対する影響の程度は、醜状の部位・形状・大きさのほか、職業・職種・年齢等を基準にしています。
5、外貌醜状で後遺障害が残った場合に等級認定を獲得するための手順
ここからは、後遺障害等級の認定を獲得するための手順についてご案内したいと思います。
(1)後遺障害申請の2つの方法
治療を続けると、「これ以上治療をしても症状は改善しない」という時期が訪れます。これを「症状固定」といいます。症状固定になったら、後遺障害の申請を行い、等級の認定を受けることになります。
(2)事前認定の場合
事前認定とは、相手方(加害者)の任意保険会社経由で申請を行う方法です。
この場合には、保険会社が手続きをすべて行ってくれますので、被害者自身でやることはほとんどなく、医師に後遺障害診断書を書いてもらってそれを任意保険会社に提出するだけです。
被害者の方にとっては手間がかからず非常に楽ですが、まれに不利な扱いを受けてしまうこともあります。提出すべき資料を提出してきちんと判断してもらいたいという方は、被害者請求にしたほうがよいでしょう。
(3)被害者請求の場合
被害者請求とは、被害者自身(またが弁護士に依頼した場合には弁護士)が自賠責保険経由で申請を行う方法です。
被害者請求をする場合には、以下の書類を提出することが多いです。
- 交通事故証明書
- 支払い請求書兼支払い指図書(実印を押します)
- 事故状況説明図
- 印鑑証明書
- 診断書と診療報酬明細書
- 後遺障害診断書
これらの書類をそろえて、加害者側の自賠責保険会社に送付します。
事前認定に比べて手続きは複雑になりますが、後遺障害の認定を受けられる可能性は高まるといってよいでしょう。手続きに不安のある方は弁護士に依頼することを検討するのもよいかもしれません。
(4)審査
事前認定でも被害者請求でも、損害保険料率算出機構の自賠責調査事務所で審査がされます。審査は、診断書、後遺障害診断書、画像フィルム、その他の資料をもとになされます。
外貌醜状の場合には面接を行い、傷痕の大きさや長さを測定したり、傷痕の形状・色などを確認したりします。
(5)結果の通知
申請から3ヶ月程度(1ヶ月くらいのときもあれば半年程待つこともあります)すると、通知がきます。「非該当」とか「何級何号」という通知とともに、認定理由を書いた別紙も送られてきます。
無事認定を受けられれば、後遺障害の申請に関しては終了となります。
他方、非該当と判断されてしまった場合には、異議申立てをすることが可能ですので、検討してみましょう。
6、知っておきたい!外貌醜状の場合でも基本的に男女差はない!
以前は、一般的に接客業に従事する割合は女性の方が高いとか、外貌醜状により受ける精神的苦痛は女性の方が大きいなどと考えられていたことから、性別によって後遺障害の等級に差がありました。例えば、「著しい醜状」の場合ですと男性は12級、女性は7級、他方、単なる「醜状」に該当する場合に男性は14級、女性は12級の認定がされていました。
しかし、これは性別による差別的取扱いであり、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するという裁判例が現れました。これを受けて、労災保険法の基準が変更になり、平成22年(2010年)6月10日以降に起きた事故については、男女差のない等級が認定されるようになりました。
平成22年6月10日以降に事故に遭われた方は、男女関係なく前記「3、部位別!外貌醜状と後遺障害等級の関係」でご説明した後遺障害認定を受けることができます。
7、上肢や下肢の醜状障害の場合も後遺障害等級認定を受けられる!
ここまでは、顔や首などの外貌に醜状が残ってしまった場合についてご説明してきましたが、交通事故によってお怪我をする場所は顔や首だけとは限りません。腕や脚に傷痕が残ってしまった場合についてもご紹介します。
どのような場合にどのような等級がつくのかを表にしましたのでご覧ください。
後遺障害等級 | 詳細 |
14級4号 | 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
14級5号 | 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
上の表のとおり、上肢であっても下肢であっても14級のみであり、外貌と異なって、傷痕の大きさや部位による差はありません。
なお、上の表にある「露出面」とは、上肢ではひじ関節以下(ただし、手部を含みます。)のことをいい、下肢ではひざ関節以下(ただし、足背部を含みます。)のことをいいます。
以上のとおり、腕や脚に傷痕が残ってしまっても後遺障害として認定される場合がありますので、あきらめずに後遺障害申請をしてみましょう。
外貌醜状で後遺障害等級認定を受けるための方法まとめ
今回は顔や首などに傷痕が残ってしまった場合の後遺障害等級や受け取れる金額について書いてきましたが、いかがでしたか。少しでも交通事故の被害者の方々のお力になれれば幸いです。