不倫相手が慰謝料を払ったのに離婚しないケースについて、考えている方への情報をお届けします。
夫または不倫相手から慰謝料が支払われたにもかかわらず、離婚が進まない状況にはどのような選択肢があるのでしょうか?ベリーベスト法律事務所の弁護士が、この問題について解説します。また、不倫相手への慰謝料請求についても具体的な方法をご紹介します。
慰謝料払ったのに離婚しない選択を検討している方々にとって、この記事が役立つ情報となれば幸いです。
不倫についてはこちらの記事をご参照ください。
なお、不倫慰謝料の相場についてはYouTubeでも解説しているので併せてご参照ください。
目次
1、相手が慰謝料を払ったのに離婚しないのはアリ?
(1)慰謝料の支払があっても離婚しないことは可能
慰謝料の支払いは、「離婚することを前提にやってもらうもの」というイメージがあるかもしれません。
しかし、中には「慰謝料は気持ちの整理をつけるため。離婚はしない」という人もいるでしょう。
相手が慰謝料払ったのに離婚はしないという選択肢を取ることも可能です。
(2)慰謝料の支払があっても離婚したくない理由
慰謝料の支払いがあっても、離婚をしたくない理由は、人によって異なるでしょう。
大きく分けると、以下の3つが要因となっていることが多いです。
- 夫の経済力がないと生きていけない
- 子供の存在
- 今の生活を手放したくない
①夫の経済力がないと生きていけない
あなたが専業主婦や、仕事をしていても自分や子供を養うことまでは難しい場合、夫の経済力なしでは生きていけないと感じる女性が多いでしょう。
今まで仕事をしていなかったり、稼ぎが少なかったりする場合、生計を立てられるだけの仕事を探すまでには、時間がかかるかもしれません。
以上のような場合、あなたや子供の生活のことを考えて、離婚しないという選択肢を取ることになるでしょう。
②子供の存在
子供の存在を理由に、離婚しない選択する女性も多いです。
片親になると、「世間的イメージが悪い」「子供に父親は必要」などと考えてしまうかもしれません。
たとえ夫が不倫をした事実があるとしても、世間体や子供のことを考え、離婚はしない選択肢を取ることになるでしょう。
子供にとって何が幸せかについては、以下のように、子供によってさまざまな考え方があります。
- 離婚してもお母さんが笑顔でいてくれることの方が大事
- 形式的にでもお父さんの存在が必要
最終的には、家庭ごとに幸せの形は異なります。
あなたの気持ちと子供にとっての幸せを総合的に考えながら、決める必要があるでしょう。
③今の生活を手放したくない
今の生活を手放したくないという理由で、離婚を選択しない女性もいます。
離婚すれば、夫の経済力に頼ることができなくなり、今の結婚生活と同じくらいの生活レベルを保つことはできません。
「生活レベルを下げたくない」「今の環境や生活を手放したくない」という場合は、夫の不倫に目をつぶり、結婚生活を継続させることになるでしょう。
2、離婚しない場合の慰謝料請求の相場
本章では、離婚しない場合の慰謝料の相場について確認していきます。
(1)夫婦が離婚する場合の慰謝料の相場
まず、夫婦が離婚する場合の慰謝料の相場は、一般的に100万〜300万円程度となることが多いです。
不倫の期間や頻度などによって、金額は異なります。
(2)夫婦が離婚しない場合の慰謝料の相場
一方で、夫婦が離婚しない場合の慰謝料の相場は、離婚する場合に比べて低くなります。
夫が不倫しても、離婚せずに夫婦関係を修復する場合には、離婚する場合に比べると、妻側の精神的苦痛は大きくないと考えられているためです。
この場合、慰謝料の相場は100万円未満となることが多くなります。
3、不倫相手にのみ慰謝料請求することは可能?
夫の不倫が発覚したとき、夫の過ちを許すことはできても、不倫相手の女性に対する憎しみが湧いてくるという女性がほとんどでしょう。
では、夫が不倫をした場合、夫に慰謝料請求せず不倫相手の女性にのみ慰謝料請求をすることは可能なのでしょうか?
(1)請求自体は可能
夫が不倫をしていた場合、夫に慰謝料請求をせず、不倫相手の女性にのみ慰謝料請求をすることは可能です。
不倫をした場合の慰謝料支払義務は、夫と不倫相手の女性が連帯してその責任を負います。
そのため夫と不倫相手の女性の両者に請求してもいいですし、どちらか一方にのみ請求することも可能です。
(2)不倫相手の求償権に注意!
ただし、不倫相手の女性にのみ慰謝料請求する場合は、不倫相手の女性の求償権行使に注意しましょう。
求償権とは、共同不法行為者の1人が自身の責任部分を超えて慰謝料を支払った場合に、他の共同不法行為者に自己の責任の超過分を請求できる権利です。
不倫をした場合、不倫をした夫と不倫相手の女性の2名が、共同不法行為者となります。
不倫に基づく慰謝料支払義務の場合、不倫相手が慰謝料を支払っても、不倫相手が夫へ求償権を行使し、支払った金額の半分を請求してくる可能性があります。
求償権が行使される理由は、不倫の慰謝料支払義務は、夫と不倫相手の女性が連帯して責任を負うためです。
せっかく不倫相手から慰謝料を回収しても、不倫相手が慰謝料の半分を求償請求してくるなら、あなたとしては煮え切らない気持ちになるでしょう。
不倫相手の女性にのみ慰謝料請求する場合は、以上のようなリスクがあります。
4、不倫相手の女性への慰謝料請求の方法
不倫相手の女性にのみ慰謝料請求する場合、上記のようなリスクがあります。
本章では、上記リスクがあることを踏まえた上で不倫相手の女性に慰謝料請求する方法について確認していきましょう。
(1)夫と関係を終わらせることを約束させる
慰謝料を支払う・支払わない以前に、大前提として夫との不倫関係を終わらせることを、不倫相手に約束させましょう。
なかには、慰謝料を支払ったにもかかわらず、夫と不倫関係を継続する女性もいます。
これ以上、あなたと夫の家庭を壊させないためにも、
- 夫との関係を終わらせること
- 夫と二度と接触しないこと
- 連絡を取り合わないこと
など、不倫相手の女性に約束させてください。
(2)求償権を行使しないことを約束させる
不倫相手の女性に慰謝料請求する場合、前章で述べたように、不倫相手の女性から夫に対する求償権行使のリスクがあります。
不倫相手の女性と話し合う場合は、夫に対し求償権行使しないことを約束させましょう。
求償権行使しないことを約束させ、慰謝料を支払ってしっかり完結させるようにしてください。
(3)合意書の具体的な文言や請求方法については弁護士に相談を
慰謝料を支払うことやその金額、求償権行使などについて、口約束だけで済ませてしまうと、後から大きく揉める可能性があります。
慰謝料や求償権行使、夫と二度と接触しないことについては、必ず合意書などの書面の形で残すようにしましょう。
5、慰謝料が支払われた後に妻がやるべきこと
慰謝料が払われたら全てが解決するわけではなく、慰謝料が支払われた後も、あなたにはやるべきことがあります。順番に見ていきましょう。
(1)夫と今後についてしっかり話し合う
夫との今後について、夫としっかり話し合いましょう。
夫が不倫をしたのは、「魔が差した」などの軽い要因もあるかもしれません。
しかし、妻であるあなたとのコミュニケーションが不足していた可能性もあります。
夫婦は長年連れ添っていれば、恋人時代や新婚時代のような会話をしなくなるのはある意味自然なことです。ですが、結婚生活が長くなったことは、夫婦でコミュニケーションを取らなくていい理由にはなりません。
妻側にも夫への不満は溜まっていることと思いますが、夫側にも妻に改善してほしいと考えていることがあるでしょう。
離婚せずにこれからも結婚生活を続けるのであれば、夫としっかりコミュニケーションをとることをおすすめします。
そして、これ以上家庭を壊すようなことがないよう、夫に約束させましょう。
(2)子供のことを考え親としてどのような生活をしていくかを決める
あなたと夫との間に子供がいるのであれば、子供のことを考え、親としてどのような生活をしていくのかを夫と話し合って決めていきましょう。
子供は幼かったとしても、親の仲の悪さや不穏な空気を敏感に感じ取ります。
デリケートな子供であれば、親の空気感や機嫌の悪さがものすごく大きなストレスになります。
ましてや両親が家の中で喧嘩をするようなことが日常になってくると、子供にとって家は安らげる場所ではなくなるでしょう。
親の事情で子供の将来をつぶしたり子供の精神状態を悪化させたりすることがないように、今後の生活について考えることをおすすめします。
(3)自分の気持ちを整理する
最後に、妻であるあなたの気持ちを整理して、癒していくことも考えましょう。
つい子供や家庭のことを優先してしまうのが女性です。
しかし、自分の気持ちを整理することが最も大切となります。
いくら不倫相手から慰謝料を支払ってもらったとしても、家庭を壊したことや夫を奪ったことに対する憎しみの気持ちは、完全には消えないでしょう。
あなたとしては、たくさんの苦労を経験しながら何年にもわたって必死に結婚生活を続け家庭を守ってきたのです。
それが一瞬で他の女性に奪われたことを考えれば、平常心を保てない方が自然でしょう。
あなたの中に残ったモヤモヤした気持ちに、自分で折り合いをつける工夫が必要です。
外に買い物に出かけたり、新しい趣味を始めてみたりして、気持ちをリフレッシュさせてみてください。
つらいことは時間が解決してくれるという側面もあります。
すぐに夫のことを許すことができなくても、時間と共に許せない気持ちや憎しみが和らいでいくでしょう。
とてもつらい時期ではありますが、お子さんのためにもしっかりと乗り越えていってください。
まとめ
夫に不倫をされてものすごくつらい気持ちになっているときは、夫や不倫相手の女性への憎しみが強まるばかりでしょう。
ですが、あなたの人生も子供の人生もこれから続いていきます。
夫や不倫相手の女性が慰謝料払ったのに、離婚しないという選択を取ることも可能です。
ぜひ、ご自身の気持ちを確かめながら、今後の生活についてゆっくり考えてみましょう。
慰謝料請求や不倫相手の女性との合意書について不安がある場合は、気軽に弁護士にご相談ください。