特別休暇とは、法律で定められたものではなく、福利厚生の一環として企業が独自に従業員に与える休暇です。
たとえば
- 慶弔休暇(冠婚葬祭の際など)
- 夏期休暇
- 病気休暇
- リフレッシュ休暇
などが特別休暇にあたります。
特別休暇の種類や取得条件は会社によって異なります。
就業規則内に書かれてはいるが周知されていなかったため言われるまで知らなかった、というケースもあり、「給料は出るのか」など疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか?
そこで今回は
- 特別休暇とは?
- 特別休暇と有給休暇との違い
- 特別休暇を取得できない場合の対処法
などについて解説します。
この記事が、特別休暇を取得しようとしている方のための手助けとなれば幸いです。
1、特別休暇とは?
まずは、特別休暇についての基礎知識を解説します。
(1)福利厚生の一環で会社が独自に定める休暇のこと
特別休暇とは、会社ごとに独自に定められている休暇をいいます。福利厚生の一環として設けられており、
- 従業員のモチベーション向上:生産性の向上や離職率の低下
- 企業イメージアップ:採用面で有利になる
などを目的としています。
特別休暇の種類や内容は企業によって異なり、法律には定められていません。慶弔休暇や夏期休暇などが一般的です。
特別休暇の
- 取得対象者
- 取得条件
など細かい要件を知りたければ、就業規則を確認する必要があります。
就業規則は、「労働者に周知させなければならない」(労働基準法106条)とされていることから、労働者はいつでも就業規則を確認することができます。
(2)有給か無給かは規定による
特別休暇に給与が支払われるかは企業によって異なり、就業規則などに定められています。
「夏期休暇は有給、病気休暇は無給」など、休暇の種類によって扱いが変わるケースもあります。
なお、「正社員は有給なのに非正規は無給」といった場合には同一労働同一賃金の観点から問題になる可能性があるでしょう(パートタイム・有期雇用労働法8条・9条、派遣法30条の3)。
- 勤務内容
- 休暇の性質
などに照らして不合理といえれば違法になる可能性があるので注意が必要です。
2、特別休暇の種類〜変わった特別休暇や休める期間について
特別休暇の具体例をよくあるものから変わったものまでご紹介します。
特別休暇の種類は企業ごとに定められ、内容が大きく異なります。自分の場合はどうなるか気になる方は、勤務先の上長などに確認してみるとよいでしょう。
(1)慶弔休暇
慶弔休暇は
- 従業員の結婚
- その配偶者の出産
- その親族が亡くなった場合
などに付与される休暇です。
日数は一般的に以下の通りです。
- 結婚の場合:5日程度
- 配偶者の出産:1〜3日程度
- 親族が亡くなった場合:従業員との関係によって1~10日程度
特別休暇の中でも、慶弔休暇を導入している企業は多いです。
(2)夏期休暇・冬期休暇
夏期休暇・冬期休暇は、
お盆:8月13日〜16日
年末年始:12月29日〜1月3日
など特定の期間に与えられる休暇です。
休暇が与えられる特定の期間は、企業によって異なります。
日数は5日程度のことが多いです。夏期休暇や冬期休暇がある会社ではまとまった休みの取得が可能になります。
(3)リフレッシュ休暇
勤続年数が長い従業員に対してリフレッシュ目的で付与される休暇です。
「5年で3日、10年で5日」というように、勤続年数の長さに応じて与えられることが多くなっています。企業への貢献度が大きい社員に報いる休暇といえます。
(4)誕生日休暇
従業員の誕生日や誕生月に与えられる休暇です。
1日だけのケースが多いですが、誕生日に家族や友人と過ごす時間を確保できます。
(5)病気休暇
従業員が病気になったり、ケガを負ったりした場合に取得できる休暇です。
期間は症状によって大きく異なります。
通院のために
- 時間単位
- 半日単位
で取得することもあれば、重病のため月単位で取得することもあります。
会社によって異なりますが、無給とされる場合も多いです。
(6)ボランティア休暇
ボランティア休暇とは、社会貢献活動をするために取得できる休暇です。
具体的には
- ゴミ拾いなどの地域貢献活動
- 国内の震災復興活動への参加
- その他国内における自然災害に対する復興支援活動
などがあり、海外ボランティアも対象になるケースがあります。休める期間は活動内容や企業によって大きく異なります。
(7)教育訓練休暇
従業員がスキルアップを目的とした教育訓練を受けるための休暇です。
内容に応じて長期間の日数を取得できることもあります。
企業にとっても従業員にとってもメリットの大きい休暇といえます。
(8)裁判員休暇
刑事裁判の裁判員に選任された従業員のために与えられる休暇です。
使用者は、労働者が労働時間中に、「公の職務」を執行するために必要な時間を請求した場合は拒んではならないとされており(労働基準法7条)、裁判員は「公の職務」であることから定められる休暇です。
裁判の日数にあわせて3~5日程度になります。
有給か無給かの判断は、会社に任せられています。
(9)コロナ特別休暇
従業員自身や子どもが新型コロナウイルスに感染した場合に備えて、コロナ特別休暇を新設した企業もあります。ワクチン接種のための休暇を認めているケースもみられます。
(10)変わった特別休暇の例
企業によっては、オリジナリティあふれる特別休暇を導入している場合もあります。ユニークな休暇の例をご紹介します。
①失恋休暇
従業員が失恋してしまった場合に取得できる休暇です。年齢があがるほど休暇日数が多くなる仕組みになっています。
②サッカー休暇
ワールドカップやオリンピックなどのサッカー公式戦を社員一丸で応援するための休暇です。
日本戦の応援に参加すると取得でき、中継時間帯によっては
- 宿泊代
- タクシー代
等も会社負担となります。
参考:ジオコード
③STEP休暇
心身のリフレッシュや休暇促進を目的に、在籍3年ごとに一度取得できる休暇です。14日~28日の範囲で任意に取得できます。
参考:リクルート
3、特別休暇と有給休暇の違い
「特別休暇は有給と違うの?」と疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
ここでは特別休暇と有給休暇の違いを、いくつかの観点から解説します。
(1)有給休暇は「法定休暇」のひとつ
①「法定休暇」の種類
有給休暇(年次有給休暇)は「法定休暇」のひとつです。「法定休暇」とは法律で定めのある休暇をいい、企業は必ず付与しなければなりません。
「法定休暇」の例としては以下が挙げられます。
【労働基準法に定められているもの】
- 年次有給休暇(労働基準法39条)
- 産前産後休業(同法65条)
- 生理休暇(同法68条)
【育児介護休業法に定められているもの】
- 育児休業(育児介護休業法5条以下)
- 介護休業(同法11条以下)
- 子の看護休暇(同法16条の2以下)
- 介護休暇(同法16条の5以下)
有給休暇は、上記のとおり労働基準法39条に規定のある「法定休暇」になります。
②有給休暇には給料が支払われる
有給休暇には、その名のとおり給料が支払われます。もし無給とされれば、労働基準法違反です(労働基準法39条9項、同法119条1号)。
他方で、特別休暇の場合には、無給とするか有給とするかは企業や休暇の種類によって異なります。
(2)特別休暇は「法定外休暇」にあたる
特別休暇は法律では定めのない「法定外休暇」であり、この点で有給休暇と異なります。
法律に規定がないため、企業の判断で特別休暇の有無や内容を決定することが可能です。
他にも、
- 賃金の支払い
- 利用目的
- 取得日
- 繰り越しの有無
などについて以下の違いがあります。
特別休暇と有給休暇の違いまとめ
| 特別休暇 | 有給休暇 |
法律の定め | なし(法定外休暇) →企業が任意に決定 | あり(法定休暇) →付与が義務 |
賃金の支払い | 定めによる | あり |
利用目的 | 制限あり | 自由 |
取得日 | 制限あり | 原則自由 |
繰り越し | 定めによる | 2年まで |
(3)特別休暇を取ることで有給休暇が減ることはあるのか
特別休暇を取っても有給休暇は減りません。それぞれの休暇が別の制度であり、一方を使ったからといって、もう一方には影響しないためです。もし特別休暇も有給休暇も利用できる場合には、用途の限られる特別休暇を利用した方がよいケースが多いでしょう。
ただし、特別休暇が無給で有給休暇が多く残っている場合には、有給休暇の消化を優先する手もあります。
4、公務員も特別休暇を取得できる?
ここまで一般的な会社員の特別休暇について解説してきましたが、公務員であっても特別休暇を取得できます。
ただし、民間では企業ごとに定められるのに対して、公務員の特別休暇は法令によって定められています。
国家公務員の場合、主な特別休暇の種類と日数は以下のとおりです。
休暇の種類 | 日数 |
忌引休暇 | 親族により異なる(父母の場合連続7日) |
結婚休暇 | 婚姻届提出日または結婚式の日等の「結婚の日」の5日前から「結婚の日」後1ヶ月経過するまでの期間に連続5日 |
夏期休暇 | 7月から9月の期間内に連続3日 |
ボランティア休暇 | 1年間に5日まで |
地方公務員についても自治体によって同様の休暇が定められています。よくある休暇はおおむね規定されており、公務員は特別休暇について比較的充実しているといえるでしょう。
5、特別休暇を取得できないと言われたら?
定められた特別休暇の条件にあてはまっていれば、休みを取得できるのが労働者の権利です。しかし、休暇の存在を上司が認識していない、知っていても取得させてくれないというケースもあります。
このように特別休暇を取得できない場合にはどうすればよいのでしょうか?
(1)社内規定を確認する
まずは、休暇について定められた社内規定(主に就業規則)をよく確認して、特別休暇の定めの有無と内容を確認してください。
就業規則には周知義務があるので(労働基準法106条)、労働者はいつでも就業規則を確認することができます。
もし実際に規定があれば、そのことを上司に伝えてみましょう。知らないだけであった場合には納得してもらえる可能性があります。
もし定めがなければ、特別休暇の制定は任意である以上、取得は難しいといえます。
(2)有給休暇を取得する
特別休暇がない、あるいはあっても無給とされていた場合には、有給休暇の取得を検討しましょう。
有給休暇の取得に理由は不要であるため、特別休暇の代わりに利用しても構いません。有給休暇が十分に残っているケースでは有効な手段といえます。
(3)弁護士に相談する
特別休暇の定めがあり条件を満たしているにもかかわらず休みを取らせてくれない場合には、弁護士への相談もひとつの手です。弁護士へ相談することで、就業規則の読み方や特別休暇の定めについて適切なアドバイスを受けることができます。
また、有給休暇などの「法定休暇」を取得できなかったり、就業規則などに定めがあるにもかかわらず特別休暇を取得できなかったりする場合には、適切に休暇取得できるように、弁護士に交渉を依頼することも出来ます。
弁護士への相談というと、裁判を想像してためらわれる方もいらっしゃるかもしれません。実際には、相談に行ってアドバイスを受けるだけであったり、交渉のみ依頼したりするケースも少なくありません。いきなり争いになるわけではないので、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
ここまで、特別休暇について、意味や種類、有給休暇との違いなどを解説してきました。
特別休暇は福利厚生の観点から定められており、利用をためらう必要はありません。条件を満たしている場合にはぜひ活用してみてください。