別居婚は同居婚に比べると離婚率が高いのではないかと不安に思っていませんか?
近年、結婚していながらも別々に暮らす「別居婚」を選択する夫婦が増えてきています。
夫婦仲が悪くなって離れる「別居」とは異なり、あえて離れて暮らすことでこそ円満な関係を保つという、夫婦関係の新しいスタイルです。
別居婚には、結婚してもお互いが自由でいられる、いつまでも恋人同士のような新鮮な気持ちを保てる、結婚によって生活リズムを変えることなく仕事や趣味に集中しやすい、などのメリットがあります。
しかし、その一方では、自由度が高いだけに浮気が発生しやすくなる、気持ちが冷めてしまうと夫婦関係の終了につながりやすくなるといったデメリットがあることも否定できません。
そのため、これから別居婚をしようとお考えの方の中には、「別居婚の離婚率」が気になる方も少なくないことでしょう。
そこで今回は、
- 別居婚は離婚率が高いのか?
- 別居婚が離婚につながりやすい理由は?
- 別居婚からの離婚を回避するためにやるべきこととは?
などについて、弁護士がわかりやすく解説します。
この記事が、別居婚からの離婚を回避し、円満な夫婦関係を築いていきたいとお考えの方の手助けとなれば幸いです。
目次
1、別居婚の夫婦は離婚率が高い?
別居婚を選ぶ夫婦は増えていますが、インターネットなどで検索すると別居婚の夫婦は離婚率が高いという記事を見かけるため不安に思っている方も多いでしょう。
本当に別居婚の夫婦は離婚率が高いのか調べてみました。
(1)日本の夫婦全体の離婚率
厚生労働省の人口動態統計によると、令和3年に結婚した夫婦は50万1,138組であるのに対して、離婚した夫婦は18万4,384組でした。離婚した夫婦の数を結婚した夫婦の数で割ると、約36.8%となります。
参考:厚生労働省|令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況|結果の概要
ただ、令和3年に離婚した夫婦の中には、さまざまな年度に結婚した夫婦が含まれています。そのため、上記の数字は「結婚した夫婦の何%が離婚しているか」を示すものではありません。
しかし、「結婚した夫婦の何%が離婚しているか」を算出可能なデータは公表されていないため、本記事では、「約36.8%」を一応の離婚率として取り扱うこととします。
なお、統計学上の「離婚率」は、この意味とは異なることも知っておいてください。
厚生労働省の人口動態統計にいう離婚率は、日本で1,000人のうち何組が離婚しているかを表した数値のことで、次の計算式で算出されます。令和3年度は1.50でした。
離婚率=年間離婚届出件数÷日本人の人口数(その月を含む過去1年間の中央人口)×1,000
(2)別居婚からの離婚率
公式なデータからは算出不能ですが、ある調査によると、別居婚を選択した夫婦のうち離婚した夫婦の割合は約40%だそうです。
この調査結果が正しいとすれば、別居婚からの離婚率は日本の夫婦全体の離婚率よりも高いことになります。
そして、別居婚の実態を考えれば、約40%という調査結果は決して不自然な数値だとは思われません。なぜならば、同居婚に比べると別居婚から離婚することの方が、離婚に対するハードルが低いからです。
別居婚ならば離婚をしても、同居婚よりも生活環境の変化は少ないでしょう。
また、夫婦が物理的に離れている時間が多いため、感情的な摩擦が少ないと言えます。
したがって、あくまでも推測ではありますが、別居婚からの離婚率は同居婚からの離婚率よりも高いといえるのではないでしょうか。少なくとも、その可能性が高いということはできます。
もちろん夫婦ごとに事情は異なるため、別居婚で夫婦仲がうまくいっているケースもあります。
2、別居婚は冷める?離婚につながりやすい理由とは
別居婚は同居婚の夫婦とは異なる点も多く、別居婚だからこそ離婚につながりやすい理由は複数あります。
別居婚が故に離婚へつながってしまう理由には、次のようなものが挙げられます。
(1)コミュニケーションが不足しやすい
同居をしていれば、毎日顔を合わせるため自然とコミュニケーションを取る機会が増えます。
喧嘩をしたとしても、嫌でも翌日には顔を合わせることになるためコミュニケーションを取って喧嘩が長引きにくくなります。
一方で、別居婚では会っていない時間は互いに連絡を取り合わない限り、コミュニケーションを取ることがありません。
毎日のコミュニケーション量は同居婚よりも大幅に減ってしまうと考えられるため、コミュニケーション不足から気持ちがすれ違って離婚へ至るようなこともあるでしょう。
(2)家族としての絆が深まらないことがある
毎日一緒に過ごしていれば、自然と家族の絆は深まっていくものです。
しかし、別居婚では会う日時や時間が限られており、同居婚よりも一緒に過ごせる時間は短くなります。
そのため、家族としての絆が深まりにくいと考えられます。
また、恋人時代とは異なり、夫婦になれば生活のことや家事、育児、将来のことなどさまざまなことを二人で話し合っていく必要があります。
同居をしていれば自然とこうした家族としての話をする機会が増えますが、別居婚では家族としての話をする機会が少ないことも絆が深まりにくい原因だと言えます。
(3)不倫・浮気が発生しやすい
別居婚では同居婚よりも浮気は不倫をしやすい環境にあるため、不倫や浮気が原因で離婚につながってしまうことは珍しくありません。
別居婚では自由な時間も多く、浮気がバレる可能性も低いと言えます。
なぜならば、一緒に住んでいれば気付くようなパートナーの変化に気付きにくいからです。
そして、同居していないという寂しさを埋めるために浮気してしまうようなケースや、夫婦としての責任感が低いため独身時代の延長のような気持ちで浮気をしてしまうようなケースもあります。
(4)子どもができにくい可能性がある
別居婚でも子どもを作ることは可能ですが、同居婚よりもタイミングを計ることが難しくなると言えるでしょう。
妊活をするにしても夫婦で時間を合わせる必要があるため、同居婚よりも積極的な妊活は行いにくい環境です。
子どもがいないことや、子作りに関する意見の違いなどが原因になり、離婚に発展してしまうケースも少なくありません。
(5)結婚している必要性を感じられなくなる
別居婚をしていれば、お互い束縛されずに自由な時間を作りやすいというメリットがある反面、別居をしていれば恋人時代と変わらないと感じてしまう方もいます。
結婚したのに一緒に住まないのであれば結婚した意味がないのではないかというネガティブな思考に陥り、離婚に至ってしまうようなケースもあるでしょう。
特に、別居婚をさほど望んでいなかった側の気持ちが冷めてしまう可能性が高いと考えられます。
3、別居婚がうまくいかない夫婦の特徴
別居婚で夫婦仲がうまくいっているケースもありますが、別居婚でうまくいかない夫婦には共通する特徴があります。
別居婚がうまくいかない夫婦の特徴に該当するものがないか確認してみてください。
(1)連絡を密にとらない
別居婚では毎日顔を合わせるわけではないため、連絡を密にとることでコミュニケーションを図ることが大切です。
連絡を密に取っていれば、会えない時間も相手と信頼関係を育てることができます。
反対に、連絡をあまり取らないでいるとコミュニケーションが不足してしまい、結婚している必要性が感じられなくなってしまったり、不倫や浮気が発生したりしやすくなるでしょう。
(2)孤独に弱い
孤独に弱い人が別居婚をしてしまうと、寂しさを強く感じるようになってしまいます。
別居婚当初は互いを尊重したいという気持ちがあったとしても、時間が経過すればどうしても寂しい気持ちが強まってくることでしょう。
そして、孤独に弱い人の場合は寂しさを埋めるために不倫や浮気をしてしまう可能性があります。
(3)経済力が十分でない
別居婚をするにはある程度の経済力が必要です。
同居婚と異なり家賃や家財道具などは2倍必要になり、光熱費や水道代などの生活費も余分に発生することになります。
同居婚よりもはるかに出費が多くなるため、金銭面で問題が生じることもあるでしょう。
経済的な不満は相手に対する不満に直結しやすく、夫婦関係が破綻する原因になってしまう可能性があります。
(4)自分の都合を優先しすぎる
別居婚をしていれば、普段は自分の都合を優先することができます。
しかし、パートナーに何かあった際にも普段どおり自分の都合を優先してしまえば、相手は夫婦でいる意味を感じられなくなってしまうかもしれません。
別々に暮らしていても夫婦であることに変わりはないため、必要な時は相手のことを考えて夫婦で必要なことの方を優先すべきだと言えます。
(5)どちらか一方が別居婚に納得していない
別居婚をするには、双方が納得して別居していることが前提です。
一方が別居婚に納得していない状態であれば、不満が蓄積されてしまいます。
結婚当初は別居婚に賛成していたとしても、状況は常に変わります。
「子どもが欲しい」「寂しさが強くなってきた」「互いの家を行き来することに疲れた」などさまざまな理由から別居婚に不満を持つようになる可能性があります。
そして、その不満を相手にぶつけられない場合や、不満を無視して別居婚を強行している場合には、夫婦関係が破綻してしまうでしょう。
4、別居婚からの離婚を回避するためにやるべきこと
別居婚がうまくいかない夫婦の特徴を紹介しましたが、別居婚でも円満な夫婦関係を維持しているようなケースもあります。
別居婚からの離婚を回避するためには、次のことを日頃から意識しておきましょう。
(1)日常的な報告・連絡・相談を欠かさない
別居婚からの離婚が起こりやすい原因の1つはは、コミュニケーション不足です。
同居していれば、自然と仕事や家事、育児に関する連絡事項や、一日の出来事について話すような機会は多いでしょう。
しかし、別居婚では日常的な報告や連絡をする機会が減ってしまいます。
何か相談するようなことがあったとしても、パートナーへ相談せずに一人で解決しようとしてしまうこともあるでしょう。
別居婚だからこそ日常的な報告や連絡、相談を欠かさないようにすることで、コミュニケーション不足によるトラブルや気持ちのすれ違いを避けることが大切です。
(2)会う頻度を増やしていく
別居婚で大切なことは、別々に住んでいても会う回数を多くするということです。
別々に住んでいて会う頻度も少なければ独身時代と変わりありませんし、夫婦の意味がないと感じられるようになってしまいます。
別々に住んでいるからこそ連絡をマメに取りながら、顔を合わせる時間もできるだけ多く作るようにしましょう。
(3)同居婚に切り替える時期を決めておく
別居婚から同居婚に切り替える時期が決まっていなければ、終わりの見えない別居婚に相手が不安を感じる可能性があります。
「子供が生まれたら」「仕事のプロジェクトが終わったら」など何かのタイミングで同居婚に切り替えることもよいでしょう。
また、定期的に別居婚から同居婚に切り替えたいと考えていないのか互いの意思を確認することも大切です。
どちらか一方が別居婚に納得できなくなってきた場合には、同居婚に切り替えるタイミングだと言えます。
5、別居婚の配偶者から離婚を切り出されたときの対処法
別居婚の配偶者から突然離婚を切り出された場合、混乱してどのように対処すべきか分からなくなってしまう方も多いでしょう。
離婚を回避するためだけではなく、離婚問題に適切に対処するためにも冷静に対処することが大切です。
(1)理由を聞き出す
離婚を切り出された場合、まずは離婚したいと考える理由を聞きだすことから始めましょう。
理由によっては対処して離婚を回避することができる可能性があります。
別居婚に不満を持っている、結婚している意味がないなどという理由であれば、連絡や会う回数を増やすことや、同居婚を提案するなどの対処ができます。
しかし、あなたの不倫がバレたなど慰謝料請求される可能性のある離婚原因の場合には、弁護士に相談して対処を考えていく必要があります。
(2)相手が同居を求めている場合は同居婚を検討する
相手が同居を求めていて、あなたが離婚を回避したいと考えるのであれば、同居婚を検討すべきだと言えます。
しかし、離婚を切り出すほどであれば、相手は夫婦関係自体に不満を抱えていると考えられ、同居するだけでは問題が解決するとは限りません。
そのため、同居婚を検討しながら今後の夫婦生活について話し合う必要があると考えられます。
(3)他に理由があるときは弁護士に相談する
離婚したい理由を相手に直接尋ねても、本当の理由を教えてくれないようなケースもあるでしょう。
他にも離婚理由があると考えられるものの自分だけでは対処できないという場合には、弁護士に相談してみましょう。
弁護士が代理人として話をすれば、本当の理由を言ってくれる可能性があります。
そして、夫婦関係を修復したいという場合ならば、夫婦関係調整調停の申立ての手続きを任せることもできます。
また、離婚が回避できない場合には、少しでも有利な条件で離婚できるようにサポートを受けられます。
夫婦関係を修復したい場合も、離婚が回避できないような場合も、いずれにしてもまずは弁護士に相談して今後の見通しを立てることをおすすめします。
別居婚の離婚率に関するQ&A
Q1.別居婚からの離婚率とは?
公式なデータからは算出不能ですが、ある調査によると、別居婚を選択した夫婦のうち離婚した夫婦の割合は約40%だそうです。
Q2.離婚につながりやすい理由とは?
- コミュニケーションが不足しやすい
- 家族としての絆が深まらないことがある
- 不倫・浮気が発生しやすい
- 子どもができにくい可能性がある
- 結婚している必要性を感じられなくなる
Q3.別居婚がうまくいかない夫婦の特徴とは?
- 連絡を密にとらない
- 孤独に弱い
- 経済力が十分でない
- 自分の都合を優先しすぎる
- どちらか一方が別居婚に納得していない
まとめ
別居婚の離婚率は同居婚よりは高いと考えられますが、別居婚でもうまく夫婦生活を続けているようなケースもあります。
別居婚からの離婚を回避するには、夫婦が互いに努力をすることが大切です。
努力をしていても離婚話を切り出されたという場合には、まずは弁護士に相談してみましょう。
夫婦関係の修復に向けた裁判手続きを依頼することもできますし、避けられない離婚を円滑に進めるためのサポートを受けることも可能です。
別居婚で離婚問題が生じた場合には、一人で抱え込まずに弁護士に話してみてください。