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中絶における慰謝料請求の可能性と方法:徹底解説

中絶 慰謝料

中絶の慰謝料を求める際、必要な情報を提供します。

性行為による妊娠の状況下で、相手が中絶を希望するケースに直面しているかもしれません。母親としての感情と、経済的な困難からくる子育ての難しさが共存する状況で、中絶は避けられない選択になることがあります。ただし、この選択に対して相手にも責任を求めることは理解できます。

中絶は女性に肉体的および精神的な負担をかけます。これは金銭で解決できないものですが、男性にも責任を果たしてもらうことは重要です。中絶に伴う費用請求にはいくつかの側面がありますが、今回は特に慰謝料に焦点を当て、その方法と計算について詳しく説明いたします。

相手との関係や法的観点に基づいて、慰謝料を求めるプロセスや計算方法について詳細に解説します。中絶に伴う精神的な苦痛や損害に対する公平な補償を得るための手続きについても明確に示します。中絶の慰謝料に関心をお持ちの方は、ぜひご一読ください。

弁護士相談に不安がある方!こちらをご覧ください。

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1、中絶の場合に慰謝料は支払ってもらえるのか?

中絶の場合に慰謝料は支払ってもらえるのか?

(1)慰謝料とは

「慰謝料」とは、相手が行った行為によって被った精神的苦痛に対する金銭的な賠償をいいます。これを相手方に請求するためには、法律上は以下の要件を満たす必要があります。

①権利又は法律上保護される利益が存在し,故意または過失により相手方がこれを侵害したこと(権利侵害行為)

②損害の発生及び額

③①と②因果関係

「妊娠させられて、さらに妊娠中絶をさせられたことにより,肉体的、精神的な苦痛を被った」というと、①~③の全てが認められ、慰謝料を請求することができるようにも思えます。

しかし、妊娠中絶をする場合には、特に①の点に問題があり、慰謝料請求できる場合が限られます。

(2)妊娠中絶についての一般論

交際相手との性交渉は双方の同意の上で行われるのが通常です。したがって、妊娠したことは双方の同意の上での行為によるものといえます。

また、妊娠中絶することについても、相手が妊娠中絶を要求し、これに応じて行ったとすれば、妊娠中絶も同意の上での行為ということになります。

したがって、原則的には①権利侵害行為がないため、たとえ精神的・肉体的苦痛が生じていたとしても、男性に対して慰謝料の支払いを求めることはできません

(3)慰謝料の支払いを請求できる場合

①典型的な例

以下のような状況であれば請求できることがあります。

  • レイプされた場合
  • 実際には避妊していないのに避妊していると嘘を言って性交渉に臨んだ場合
  • 結婚を前提に交際して性交渉をしたのに,実際には妻がいるため中絶を求められた場合

これらの場合は、性交渉自体が権利侵害行為にあたる、あるいは、嘘を言ったことが権利侵害行為にあたるといえる可能性があり、慰謝料を請求できる場合があります。

②典型的な例にあたらない場合

それでは、性交渉それ自体や性交渉に至るまでの経緯に権利侵害行為と認められる行為がない場合には全く慰謝料の支払いを求められないのでしょうか。

このような場合でも、慰謝料を認めた東京高等裁判所の裁判例(東京高判平成21年5月27日判時2108号57頁)があります。

同裁判例は、子を産むかどうするかについて、男性が具体的な話し合いをせず、子を産むか、中絶手術を受けるかどうかの選択を女性の側にゆだねるのみであったなどの事情から、男性の義務違反を認定し、慰謝料合計200万円の半額の100万円の支払いを男性に命じています(さらに中絶のための診療費用等についても半額の支払いを認めています)。

この裁判例をどこまで一般化できるかという問題点もありますが、男性の側が話し合いにも応じず、女性の負担を軽減する行為をしない場合には、たとえ性行為が合意のもとであったとしても慰謝料が認められる余地があるということができます。

2、中絶の場合の慰謝料の相場は?

中絶の場合の慰謝料の相場は?

慰謝料の額については、性交渉自体が合意によるものではなく、権利侵害行為にあたる場合には高額になる傾向があります。200万円以上、場合によっては1000万円近くの慰謝料を請求ができる可能性もあります。

その他の場合、例えば結婚を前提に交際し、性交渉をしたのに実際には妻がいるため中絶を求められた場合、「妻とは離婚する」といって性交渉に及んだのに妊娠したとたん中絶を求められ別れるといわれた場合などは、それより低額になる場合が多いです。

3、中絶の場合の慰謝料はどのように請求すればいい?

中絶の場合の慰謝料はどのように請求すればいい?

中絶の慰謝料は、直接会って請求する方法、電話やメール、文書で請求する方法、裁判や調停などの公的機関に訴えて請求する方法など、様々な方法が想定できます。

弁護士などの法律専門家が請求する場合は、主に以下の二つの方法をとります。

(1)内容証明郵便による請求

慰謝料請求をする場合、はじめに内容証明郵便により文書を送付する方法で、相手方に対して請求します。

内容証明郵便は、手紙の一種であり、記載された内容を日本郵便が証明してくれるものです。弁護士などの法律専門家はこれを利用しますが、一般の方でも利用することは可能です。

(2)調停申立や裁判による場合

内容証明郵便を送付しても反応がない場合や交渉をしても話が進まない場合(自分の要求する額を支払ってくれない場合)、裁判所に対して調停を申立て、又は裁判を提起します。

調停とは簡易裁判所において非公開で行われる話し合いです。弁護士などの専門家が調停委員として関与し、双方の主張を聞きながら合意形成を目指す制度です。

裁判とは、裁判所の法廷において当事者が争点を主張・立証し、最終的には、裁判官が法律に基づいて紛争に対する判断を下す制度です。裁判は法律に基づく主張・立証を行う必要がありますので、利用を検討される場合には弁護士に相談することをおすすめします。

4、その他支払ってもらえる可能性のある費用

その他支払ってもらえる可能性のある費用

(1)中絶手術の費用

妊娠中絶をする場合には、手術代等の費用がかかります。妊娠中絶の費用は、妊娠初期(妊娠11週目程度まで)であれば7万円から15万円程度、妊娠中期(妊娠12週目以降)であれば20万円から30万円程度といわれています。

法律上は、妊娠中絶にいたるまでの行為が権利侵害行為を構成する場合(レイプされた場合など慰謝料を請求することができる場合)、又は中絶費用を支払う旨の合意がある場合でなければ請求することができません。

しかしながら、その他の場合であっても、同意による性行為があった、話し合いにより妊娠中絶をするに至ったという経緯がありますので、実際上は経済力のある男性が負担するか、最低でも半額を支払うという形で交渉する場合が多いようです。

(2)その他に請求できる可能性がある費用

その他に請求できる可能性がある費用としては

  1. 妊娠に関する診療費
  2. 中絶をきっかけに病気を発症した場合の治療費
  3. 妊娠の診療、病気の治療にかかった交通費
  4. 妊娠や中絶によって会社を休んでしまった場合の休業損害
  5. 後遺症が残る場合には後遺症についての慰謝料、逸失利益

が考えられます。

いずれも性交渉や妊娠中絶などについて権利侵害行為が成立する場合で、これらの費用の支出との因果関係が肯定できれば男性の側に支払いを請求することができる場合があります。

5、出産を拒否された場合の対処法

男性に出産を拒否された場合でも、出産することは可能です。そして、出産した場合には、養育費の請求をすることができます。

男性と婚姻していない場合には、男性に子を認知してもらわなければ、男性は法律上の父にはなりません。したがって、男性には任意に認知届を提出してもらうか、男性に対して調停又は審判を申立て、認知を求めることになります。養育費の支払いを求められるのは、認知がなされた後ということになります。

婚姻している場合には、当然に子の法律上の父になりますから、養育費の請求をすることができます。

男性が出産を拒否していた場合に、任意に養育費を支払うことは考え難いので、男性が任意に養育費の支払いをしない場合には、調停や審判を申立てることになります。

中絶の慰謝料に関するQ&A

Q1.中絶の場合に慰謝料は支払ってもらえるのか?

男性の側が話し合いにも応じず、女性の負担を軽減する行為をしない場合には、たとえ性行為が合意のもとであったとしても慰謝料が認められる余地があります。

Q2.中絶の場合の慰謝料の相場は?

慰謝料の額については、性交渉自体が合意によるものではなく、権利侵害行為にあたる場合には高額になる傾向があります。200万円以上、場合によっては1000万円近くの慰謝料を請求ができる可能性もあります。

Q3.その他支払ってもらえる可能性のある費用は?

中絶の場合、慰謝料の他、次の費用を払ってもらえる可能性があります。

  1. 中絶手術の費用
  2. 妊娠に関する診療費
  3. 中絶をきっかけに病気を発症した場合の治療費
  4. 妊娠の診療、病気の治療にかかった交通費
  5. 妊娠や中絶によって会社を休んでしまった場合の休業損害
  6. 後遺症が残る場合には後遺症についての慰謝料、逸失利益

中絶の慰謝料に関するまとめ

妊娠中絶をしたけれども、男性が慰謝料や治療費を支払ってくれない場合、慰謝料やその他の費用を請求することができる場合があります。端から慰謝料や治療費を請求できないと思ったり、請求できたとしても半額程度であると考えたりするのではなく、まずは弁護士に相談してください。

※この記事は公開日時点の法律を元に執筆しています。

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