年間休日はどのくらいの日数が平均的なのでしょうか?
休日が少なすぎると違法になることがあるのか、何日以下なら何らかの点で違法となる可能性があるのか、押さえておきましょう。
今回は、
- 年間休日とはそもそも何か?
- 年間休日が何日以下なら問題なのか?
- 年間休日が少ない時の適切な対応方法
などについて解説していきます。ご参考になれば幸いです。
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目次
1、年間休日とは?
年間休日とは、一般的に、会社ごとに定められている1年間の休日のことを意味します。
有給休暇や忌引きは、年間休日には含まれません。
休日については、土日祝日を休日と定めている会社が多いですが、会社によっては土日祝日を出勤日とし、土日以外を休日としていることもありますので、必ずしもカレンダー上の休日とは一致するわけではありません。
2、参考!2021年の年間休日数は?
たとえば、土日祝日を休日とする会社の2021年の年間休日数がどのくらいになるのか、見てみましょう。
まず、2021年1月1日から2021年12月31日までの土日の日数は104日、土日に重ならない祝日や振替休日の日数は、15日です。
そこで、土日祝日を合わせると、119日となります。
ここに、有給とは別に付与される夏休みや年末年始の休みが休日として定められている場合は、それを土日祝日と重ならない部分のみ足します。
したがって、土日祝日の数(119日)に、土日と重ならず、有給とは別に付与される夏休みや年末年始の休みがある場合にはそれを足した数が、年間休日の日数となります。
たとえば、夏休みが3日、年末年始休暇が4日とすると、119日+3日+4日=126日が年間休日の日数となります。会社によっては、これより多いことも少ないこともあるでしょう。
今回は、土日祝日が休みだという前提に立ちましたので、たとえば、週休1日制の会社であれば、年間休日数は大幅に減ります。
3、年間休日数は法律で決まっている?
年間休日数は、法律上決まっているのでしょうか?
年間休日数については、法律に定めはありません。
ただ、休日については、会社は労働者に対し「毎週1日以上の休日」を与えなければならないという規定があります(労働基準法35条1項。(なお、就業規則できちんと定めれば、4週間全体で計算をして4日の休日を付与する方法(変形週休制)も認められています。)
これにより、会社が労働者に対し、義務的に与えなければならない休日を「法定休日」と言います。
1年を週にすると52.14週になるので、最低でも52~53日間の休日を与える必要があるということです。
休日に関する法的な規制はこれだけなので、「週休1日制」や「国民の祝日を会社の休日としないこと」も違法ではありません。
なお、会社が個々の雇用契約や、就業規則において、法定休日の外に定めている休日を「所定休日」と言います。
年間休日とは、法定休日+所定休日のことです。
4、サラリーマンの平均的な年間休日日数は?
一般的なサラリーマンの平均的な年間休日の日数は、どのくらいになのでしょうか?
(1)全体の平均年間休日日
この点で参考になる資料として、厚生労働省が行った調査結果があります(就労条件総合調査結果の概況)ので、見てみましょう。
これによると、平成28年(又は平成27会計年度)の業種・企業規模全体では、労働者1人についての平均年間休日数は、113.7日です。
(2)企業規模別の年間休日数
次に、企業規模別の平均年間休日数を見てみましょう。
- 1,000人以上 118.1日
- 300~999人 115.2日
- 100~299人 110.9日
- 30~99人 108.3日
会社の規模が大きくなるほど、年間休日数が多くなっています。
(3)業種別の年間休日数
次に、業種別の労働者1人当たりの平均年間休日数を確認しましょう。
- 複合サービス事業 122.6日
- 情報通信業 121.7日
- 金融業、保険業 121.0日
- 電気・ガス・熱供給・水道業 120.8日
- 学術研究、専門・技術サービス業 120.8日
- 製造業 117.8日
- 教育、学習支援業 116.1日
- 不動産業、物品賃貸業 114.3日
- 建設業 113.1日
- 卸売業、小売業 111.5日
- 医療、福祉 111.2日
- 鉱業、採石業、砂利採取業 110.2日
- 運輸業、郵便業 104.3日
- 生活関連サービス業、娯楽業 103.0日
- 宿泊業、飲食サービス業 102.0日
情報通信業や電気・ガス・水道業、金融業などでは年間休日数が多くなっています。
これに対し、運輸業や生活関連サービス業、宿泊業、飲食サービス業などは、業務内容の特性から土日祝が休日と定められていないためか、年間休日数が少なくなっています。
また、年間休日日数が少ない業種では、比較的有給休暇の取得率も低い傾向にありますので、労働者が休日を取れていない状況がうかがえます。
5、年間休日数が何日以下だと会社としてまずいのか?
それでは、年間休日数が何日以下だと、違法な可能性があるのでしょうか?
この点、上記で説明したように、年間休日数としては、1週間に1日の休日があれば(年間の合計は52~53日となります。)、法定休日について定める労働基準法35条に違反しません。
ただし、実際にはもっと多くないと問題が発生する可能性があります。
それは、労働基準法において「法定労働時間」の定めがあるからです。
法定労働時間は、原則として、1日8時間、1週間に40時間です(労働基準法32条)。
1年間にすると、労働時間を「2,085時間」におさえる必要があるということになります。
これを超えて働かせる場合には、割増賃金の支払いが必要です。
たとえば1日の労働時間を8時間として、年間労働時間である2,085時間を8時間で割ると、約260日となります。
すなわち、勤務日全てについて所定労働時間数を法定労働時間と同じく8時間と定めている場合には、基本給の中で働かせることができる日数は約260日です。
1年は365日(うるう年を除く)ですから、割増賃金を支払わず、法定労働時間の中で働かせようとするのであれば、差引計算をして、365日-約260日=104~105日は休日にしなければならないということになります。
これを超えて働かせているのに割増賃金を支払っていない場合には、賃金不払いとして違法(労働基準法違反)となる可能性があります。
上記でご紹介した業種別の平均年間休日数を見ると、飲食業や宿泊業、運送業などは年間休日数が105日に足りていませんが、年間休日数が104〜105日に満たない会社できちんと残業代が支払われていない場合には、会社の業種・規模や1日の労働時間数にもよりますが、割増賃金の不払いという点で違法な可能性があります。
6、年間休日日数が少ない場合の対処法
以上から、年間休日数は104〜105日以上認められていることが多いのではないかと思います。
しかし、そんなに休めていないという方も多いはずです。そのような場合、いくつか対処方法が考えられます。
(1)年間休日数を増やすよう会社と交渉する
もしも会社の年間休日数が少なく、十分に労働者が休めていない状況となっているのであれば、年間休日を増やすことができないか、会社と交渉することが考えられます。
1人で交渉するのは困難ですから、上司やや労働組合などに相談をして、対応を検討すると良いでしょう。
(2)割増賃金の請求をする
前述したように、年間休日数が少ない場合には、時間外労働をしている可能性があります。
その場合には、労働時間数等を確かめて、会社に対して、割増賃金を請求することも考えてみましょう。
①労働時間数、割増賃金を計算する
まず、自分が時間外労働しているのではないか、業務日報やタイムカードなどで労働時間数を確認してみましょう。
年間休日数が少ない会社では、時間外労働をさせていても割増賃金を支払っていないことがありますので、計算してみると、割増賃金がが発生しており、それが支払われていないことが判明するケースがあります。
労働時間数が把握できたら、割増賃金額を計算してみましょう。
②未払い割増賃金を会社に対して請求する
未払いの割増賃金が存在していることが明らかになれば、会社に対して割増賃金の支払いを求めましょう。
交渉によって支払いを受けられるケースもあります。
会社が労働者自身の請求を受け入れない場合には、弁護士に依頼し、弁護士が交渉を行うという方法もあります。
また、任意に支払いを受けられないならば、労働審判や労働訴訟を起こして未払い割増賃金を請求する方法も利用できます。
未払い割増賃金の請求方法について詳しくは「残業代の未払いは許せない!未払い残業代を請求するためのポイント」の記事をご参照下さい。
③労働基準監督署に報告する
会社に請求しても支払いを受けられない場合、労働基準監督署に相談をすると、状況を改善できる可能性があります。
割増賃金の不払いは違法なので、労基署から企業に是正勧告してもらえる可能性があるからです。
それにより、企業が態度を変えて未払い割増賃金を支払ってくれる場合もあります。
労働基準監督署について詳しくは「労基署(労働基準監督署)とは?雇用条件を改善するための5つのこと」の記事をご参照下さい。
7、休日出勤した場合の残業代の計算方法は?
休日出勤をした場合の残業代計算方法を説明します。
(1)休日出勤の割増賃金
まず、法定休日に出勤をした場合には、下記の図の通り基本的に1.35倍の割増率が適用されます。
なお、就業規則等でこれよりも高い割増率が定められていれば,それによることになります。
会社が法定休日の外に休日として定める「所定休日」に出勤をした場合には、原則として、通常の時間外労働と同じく1.25倍の割増率が適用され、それぞれ個別の労働契約や就業規則等でこれらの割増率を超える率が定められている場合には、そこで定められている割増率が適用されます。
以下は、法定休日に出勤をした場合を前提としています。
たとえば、時給換算で2,000円の労働者が休日出勤で7時間働いたら、14,000円×1.35=18,900円の割増賃金が発生します。
(2)休日出勤の深夜労働
午後10時から午前5時までの深夜労働の場合には0.25倍の割増賃金が適用されるので、深夜に休日出勤した場合には1.35+0.25=1.6倍の割増賃金を請求できます。
8、休日出勤して残業代請求する場合に必要な証拠は?
休日出勤した場合に残業代請求をするためには、証拠を揃えておく必要があります。
一般的には、以下のようなものが証拠となります。
- 雇用契約書
- 給与明細書
- タイムカード、出勤簿
- 休日出勤の指示書、メール
- 業務日報
- IDカード
- パソコンのログイン記録
- 交通ICカードの記録
- タコグラフ、運行記録
ケースによっても証拠にできるものが異なりますし、上記に挙げたもの以外が証拠になる場合もありますので、上記資料がお手元にない場合にも、弁護士に相談すると良いでしょう。詳しくは以下の記事をご覧ください。
まとめ
今回は、年間休日についてご説明しました。
法律で、年間休日の最低日数について決まりはありませんが、法定労働時間の制限があるので、1日の労働時間が8時間だという前提に立つと、自然と104〜105日が最低限となります。
年間休日が少なすぎる場合には、時間外労働が常態化している可能性が高いので、割増賃金代が発生していないか、未払いになっていないかを調べて見ることをお勧めします。