クラッシャー上司とは?的確な5つの対処法|休職に追い込まれる前に

 クラッシャー上司に泣き寝入りしないで!的確な対処法を弁護士が解説

クラッシャー上司とは、厳しい言動で部下を追い詰め、休職や退職に追い込んでしまう上司のこと。
労働者のストレスチェックにおいて労働者からの聴取を重ねた産業医である松崎一葉さんの著書「クラッシャー上司:平気で部下を追い詰める人たち」で紹介されて話題となりました。

パワハラ上司と似ていますが少し違う「クラッシャー上司」。

今回はその特徴と的確な対処法について弁護士がご紹介します。ご参考になれば幸いです。

パワハラの苦痛に悩んでいる方は以下の関連記事もご覧ください。

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1、クラッシャー上司の特徴

クラッシャー上司の特徴

クラッシャー上司は、部下を威圧して精神的に追い詰めます。

具体的には、以下のような特徴があります。

(1)高圧的なコミュニケーションが一方的

クラッシャー上司は、部下の意見に聞く耳を持ちません。部下が些細なことでもミスをおかせば、「何でこんなこともできないんだ!」などと語気を荒げ、執拗に叱責を繰り返します。

(2)自分の失敗を部下になすりつける

クラッシャー上司は、プライドが高く、自分の失敗を認めることができません。何か失敗をおかしても、自分の非を認めず、部下の責任にしてしまいます。部下の方から説明を試みようとしても、「言い訳するな!」などとして、部下に何も言わせなくしてしまいます。その結果、失敗の責任を擦り付けられた部下は社内の査定が下がってしまうことになり、精神的にも追い詰められていきます。

(3)自分が正しいと思い込んでいる

クラッシャー上司は、自分が歩んできた道が正しいと思いこんでいて、部下にもそれを強制します。「俺の若い頃は・・」、「やればできる」などの根性論を持ち出して、部下にむりやり残業させたりします。

2、クラッシャー上司とパワハラ上司との違い

パワハラ上司との違い

クラッシャー上司は、パワハラ上司と似ているところもありますが、少し違います。

パワハラは、言葉の通り、自分が優位の立場にあることを利用して部下に精神的・肉体的苦痛を与える行為を指します。

一方、クラッシャー上司は、パワハラ上司の特徴に加えて、自分が正しいと思いこんでおり、自分ができることは部下も同じようにできるはずだという考えから、部下のミスや経験不足を認めず、執拗な叱責を繰り返します。クラッシャー上司は、ある程度仕事ができる人が多く、社内の評価も高い場合があります。そのため、会社もクラッシャー上司を評価せざるを得ない状況にあり、そういう点では、パワハラ上司よりもクラッシャー上司の方がたちが悪いと言えます。

3、クラッシャー上司への対処法

クラッシャー上司への対処法

クラッシャー上司からの執拗な叱責を受けて、苦しんでいる人も多いと思います。

では、クラッシャー上司に対してはどのように対処すればよいのでしょうか。その対処法を見ていきましょう。

(1)被害を明確にする

まずは、クラッシャー上司から具体的にどのようなことを言われたり、させられたりしたのかの記録を残しておくことです。こうすることで、貴方がクラッシャー上司からどのような被害を受けたかを客観的に明確にすることができます。

具体的には、クラッシャー上司から言われたり、させられたことで貴方が納得できない、理不尽だと思うことを日々、録音などによって記録しておきましょう。メモでも日記でも構いませんが、後から変更や追加がされたと思われないように、日付とともに、ノートなどに、消しゴムなどで字を消せないペンを使って、手書きで、隙間や行間なく、できる限り具体的に記載するようにしましょう。何月何日にどのようなことをされたかということを具体的に記録しておくことは、後々の証拠として役立ちます。

場合によっては、就業規則に違反するようなことを言われたり、させられたりしていることもあり得ます。そのような場合に、会社からクラッシャー上司に対して適切な対応をしてもらうためにも、日々の記録を残しておくことは非常に大切です。

また、同僚や家族にも相談しておくことも有効です。特に同僚の証言は、後々に会社がクラッシャー上司への処分を検討するにあたって重要な意味を持つ可能性があります。貴方がクラッシャー上司からの言動で困っている、悩んでいる様子を間近で見ている同僚が貴方の味方になってくれれば、大きな助けとなるでしょう。

(2)会社の安全配慮義務違反を訴える

会社は、労働者の生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるように必要な配慮をすべき義務、いわゆる安全配慮義務を負っています(労働契約法第5条)。

クラッシャー上司を野放しにして、部下である労働者の貴方が精神的、身体的被害を受けることを放置することは、会社にとっては安全配慮義務違反を問われることになりかねない行為です。

また、2019年に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安全及び職業生活の充実等に関する法律」(労働施策総合推進法。同法のうち、第30条の2ないし第30条の8は「パワハラ防止法」などと呼ばれます。)が改正され、事業者は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより労働者の就業環境が害されることのないよう、労働者からの相談に応じ、適切な対応をするために必要な体制を整備することが義務付けられました(労働施策総合推進法第30条の2)。
つまり、このパワハラ防止法により、会社は、クラッシャー上司から被害を受けた部下からの相談に応じて、適切な措置を取らなければならないのです。
なお、このパワハラ防止法は、2020年6月から大企業を対象に施行され、中小企業では2022年4月から対象となります。

パワハラ上司、クラッシャー上司は、労働者の職場環境を妨げるものとして、いまや社会問題に発展し、そうした背景から、国が会社に対して、適切な措置を講じるように義務付けているのです。
クラッシャー上司から被害を受けて困っている労働者から相談を受けた会社としては、クラッシャー上司の言動が必要かつ相当な範囲を超えたものかどうかを調査し、その範囲を超えたものと認めれば、クラッシャー上司に懲戒処分を下したり、降格、配置転換、厳重注意など、何らかの措置を取らなければ、会社が責任を問われることもあります。

こうした法律がありますので、クラッシャー上司からの言動により被害を受けている方は、その日々の上司の言動を記録してそれを証拠として会社に報告して、会社に適切な対応を求めましょう。

報告しても会社が適切な対応をしてくれなければ、会社の安全配慮義務違反が認定される可能性が高まります。

もし、自分の名前を出さずに匿名で通報したいなら、会社内の内部通報制度のルールを確認しましょう。

4、会社のコンプライアンス体制が脆弱な場合は要注意

会社のコンプライアンス体制が脆弱な場合は要注意

クラッシャー上司とパワハラ上司の違いのところでも触れましたように、クラッシャー上司は、外見上は仕事ができる人が多いのが特徴です。仕事ができて、会社の評価が高いから、出世して上司の立場にいるのです。

このように、クラッシャー上司は、そもそも上にのし上がる方法を知っていますから、クラッシャー上司の上司はクラッシャー上司に好意を持っている可能性があるでしょう。
それに加え、会社のコンプライアンス意識が低い場合は、会社側(経営者サイド)がクラッシャー上司の味方につくような態度をとる可能性も否定できません。

5、会社がクラッシャー上司の対応してくれない場合の対策

会社が対応してくれない場合の対策

このように、会社が対応をしてくれないケースはどのように動けば良いでしょうか。

(1)公的機関へ相談

クラッシャー上司から被害を受けている方の対処法としては、先にあげた会社への報告のほかに、公的機関に相談するということも可能です。

全国の労働局や労働基準監督署に「総合労働相談コーナー」が置かれています。総合労働相談コーナーでは、さまざまな労働問題について、どのように対処すればよいか助言、指導をしてもらえます。相談したことの秘密は守られますし、費用もかかりませんので、近くの労働局や労働基準監督署に相談に行ってみるというのも一つの方法です。

もし、それでも解決しない場合には、紛争調整委員会によるあっせんを行うこともできます。紛争調整委員会によるあっせんとは、会社と労働者の間に公平・中立な第三者(労働問題の専門家)が入り、話し合いによる解決を目指すことです。裁判などと異なり、無料で申請することができる紛争解決制度です。

(2)会社を義務違反で提訴

今日では、社会全体の流れとして、会社のコンプライアンス(法令遵守)の重要性が指摘され、その中でパワハラ上司、クラッシャー上司という職場環境を脅かす存在がクローズアップされてきました。そうした流れの中で先のパワハラ防止法等が制定され、会社側の安全配慮義務が厳しく問われる時代になっているのです。

ですから、クラッシャー上司のことを会社に通報したにもかかわらず、会社が動いてくれなかったとしても、落ち込むことはありません。会社が動いてくれないということは、会社が安全配慮義務を怠ったものとして責任を問う余地があり得るのです。

クラッシャー上司のクラッシュ行為(パワハラ行為)は不法行為に該当するような行為です。会社に期待できない、会社は何もしてくれなかったということで、退職・転職を決断した場合でも、不法行為に基づく損害賠償請求は可能です。会社(使用者責任、安全配慮義務違反)とクラッシャー上司個人(不法行為責任)、双方に対して請求することができます。

(3)退職・転職をして再出発も

クラッシャー上司の問題について争うことについて、精神的に負担が大きいなどといった理由で、退職・転職を選択される方もいらっしゃるかもしれません。

そうした事情でやむなく退職、転職してしまった場合でも、業務に起因して精神障害を発症した場合などには労災認定を受けられることもあります。

6、クラッシャー上司へ法的手段をとる場合は弁護士へまずは相談

クラッシャー上司へ法的手段をとる場合は弁護士へまずは相談

以上の通り、クラッシャー上司と会社への損害賠償や、クラッシャー上司に関して社内での措置することを求めて、さまざまな手段を取ることができます。

そうした手段をとることが可能かどうか、可能だとしてどのような手段を取るべきかなどは、まずは法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。弁護士であれば、どのような手段があるか適切にアドバイスしてくれます。

まとめ

クラッシャー上司は、国がパワハラ防止法を制定するなど、社会的な問題としてとらえられているものです。クラッシャー上司の言動により精神的にまいってしまっても、泣き寝入りすることはありません。いろんな対処法がありますので、まずは弁護士に相談してみましょう。

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