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前科一犯とは?2つの社会的不利益と前科を消すことの可否

前科一犯

前科一犯があると、社会的に不利益なのでしょうか?

酔っ払ってケンカをして相手にケガをさせてしまったり、会社のお金を使い込んで横領とされてしまったり、自分ではそれほど悪質な行為とは思っていなくても、罪を犯して前科一犯となってしまうことはあります。

たとえ前科一犯といえども犯罪者として処罰されたことに変わりはありません。

ここでは、

  • そもそも前科一犯とはどういうことか?
  • 前科一犯になったときに受けるであろう社会的な不利益
  • 社会的な不利益の具体的内容
  • 前科は消すことはできるのか?

などについて解説します。

もちろん、不利益を避けるためには、前科がつかないようにするのが一番です。

しかしながら、もし既に前科がついてしまっている場合には、ぜひ本記事を参考に、不利益を最小限に抑えられる方法を知っておきましょう。

前科と前歴の違いについて知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

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1、前科一犯とは?

前科一犯とは?

まず、そもそも前科とは何かについて説明していきます。

(1)前科とは

「前科」について法律上明確な定義はありませんが、一般に、刑事事件で有罪判決を受け、刑を言い渡された経歴のことをいいます。
「前科」の対象になる刑には、懲役や禁錮だけでなく罰金や科料も含まれます。

(2)前歴とは

「前科」とよく似たものに、「前歴」があります。
「前歴」とは、警察や検察などの捜査機関によって逮捕され、取り調べを受けた経歴のことです。

逮捕されたけれど不起訴処分になった場合には、「前歴」のみがつき、「前科」はつかないことになります。

(3)前科一犯とは

過去に犯罪を行ったことがある人のことを「前科一犯」などと言うことがあります。

「前科一犯」とは、前科となる犯罪を1回行ったという意味です。
犯罪の回数が増えると「前科二犯」、「前科三犯」というふうに数字が増えていくことになります。

2、前科一犯となってしまう場合とは?

次は具体的に前科一犯とは何かについて解説していきます。

(1)刑事罰を受けると前科となる

前科がつくのは、罪を犯して懲役、禁錮、罰金、科料の刑事罰を受けた場合です。
行政罰(過料、反則金など)を受けただけの場合には、一般には前科とはされません。

(2)万引きで前科はつく?

万引きは、刑法に規定されている「窃盗罪」に該当します。
窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。
したがって、万引きで逮捕され、起訴されて有罪となった場合には、前科がついてしまうことになります。
万引きくらい、ではすまされません。

(3)交通事故を起こした場合には前科になる?

交通事故を起こした場合には、原則として刑事責任を負うことになります。
しかし、交通事故の場合には、反則金を納付することにより刑事罰を免れる「交通反則通告制度」があります。
交通反則通告制度の対象となるケースで通告を受けて反則金を納付した場合には、刑事手続きに移行しないため、前科とはなりません。
通告に応じない場合には刑事手続きに移行しますから、前科となる可能性があります。

また、無免許運転中に交通事故を起こしたなど、特定の重大な違反があった場合には「交通反則通告制度」が適用されず、裁判で有罪となり前科がついてしまう可能性があります。

3、前科者であることはどのように知られる?

次は、

  • 前科者であることは他人に知られてしまうのか?
  • 知られてしまうとしたら具体的にどのように知られてしまうのか?

について説明していきます。

(1)前科の情報はどこにある?

前科についての情報は、捜査機関である検察庁にあります。

検察庁では、前科の情報をデータベース化して管理しているほか、前科調書に記載して保存も行っています。
また、前科の情報は、市区町村でも管理されています。

市区町村役場には「犯罪人名簿」が備えられており、前科がつくと本籍地の市区町村役場の犯罪人名簿に掲載されます。

前科がついた場合には特定の資格や選挙権に一定期間制限が設けられることがあり、犯罪人名簿は前科による資格等の制限がないかどうかの確認のために使われています。

前科がついても、戸籍謄本や住民票に記載されるということはありません。

(2)前科の情報は調べられる?

前科は個人のプライバシーにかかわるものです。

検察庁でも市区町村でも、前科の情報を一般の人に公開することはありませんから、一般の人が特定の人の前科について調査することはできません。

(3)前科は人の噂で知られるケースが多い

前科者であることがバレるのは、人の噂が原因のことが多くなっています。
犯罪を行った事実は、噂話であっという間に広がります。
自分では忘れたい過去でも、人はなかなか忘れてはくれず、噂はいつまでも語り継がれてしまいます。
そのため、罪を犯した後に知り合った人にも、前科が知られてしまうことはあります。

(4)ネットで調べるとわかることがある

インターネットのニュースサイトでは、犯罪者が逮捕されたときに、実名で報道されることがあります。

名前だけなら同姓同名もあり得ますが、年齢や職業なども合わせて報道されることが多く、同一人物であることは簡単にわかってしまいます。

ニュースサイトの記事は一般に一定期間経過後に削除されますが、削除されるまでの間に拡散されてしまったり、記事自体のアーカイヴが作成されたりして、インターネット上にいつまでも残ってしまうことがあります。
インターネットに一度情報が掲載されてしまえば、たとえ時間が経過しても、前科者であることが知られてしまう可能性はかなり高くなります。

前科を疑われて名前等を検索されれば、バレてしまうことは十分あり得ます。

4、前科があると就職に不利になる?

次は前科があると就職に不利になってしまうのか?ということを解説していきます。

(1)前科について聞かれたら答えなければならない?

前科について聞かれた場合には、正直に答えるべきです。
前科があることがわかった結果、応募した業務を行うのに支障があると企業側が判断すれば、不採用になってしまうのもやむをえません。
もし虚偽の申告をした場合には、経歴詐称として、後でバレたときに懲戒処分の対象となり、解雇になってしまうこともあります。

(2)前科は履歴書に書く必要ある?

現在、市販されているほとんどの履歴書には賞罰欄が設けられていません。
現在のJIS規格の履歴書には賞罰欄がないからです。
履歴書に賞罰欄がなければ、あえて前科について書く必要はありません。

一方、賞罰欄がある履歴書に「賞罰なし」とか「前科なし」などと記載してしまった場合には、経歴詐称となってしまうため、注意が必要です。

(3)懲役等で空白期間があれば追及される可能性も

懲役や禁錮の刑に処せられた場合、刑に服していた間は、職歴の空白期間となってしまうことがあります。

空白期間に何をしていたか企業側に質問され、服役していたことを告げると、不利益に扱われてしまう可能性は十分あり得ます。
もっとも、既にお伝えしたように、虚偽の申告をすれば経歴詐称になってしまいます。

(4)企業側が前科について調査することはある?

前科の情報は検察庁や市区町村で管理されていますが、検察庁や市区町村が前科の情報を企業に提供することはなく、企業側が応募者の前科を照会することはできません。

ただし、企業側がインターネットを利用して応募者の前科を調査することは十分に考えられます。
特に反社会的勢力如何については雇用の際インターネット等でチェックすることが多いでしょう。
企業側にも採用の自由があり、過去に罪を犯した人間を雇ってくれる会社はそれほど多くありません。
インターネットなどで調べられ、前科があることが知られてしまうと、就職においてはどうしても不利になってしまいます。

(5)前科があると就けない職業がある

前科がつけば、資格や職業が制限されてしまうことがあります。
資格や職業に関する各種の法律では、禁錮刑以上を欠格事由と定めているケースや、前科がある場合には裁量により免許を与えないとしているケースがあります。

たとえば、国家公務員、地方公務員、自衛隊員、裁判官、検察官、弁護士、司法書士、不動産鑑定士、公認会計士、警備員、貸金業者、建設業者などは禁錮刑以上で欠格事由になります。

また、医師、歯科医師、薬剤師、看護師などは、罰金刑以上で免許の取り消し等の処分を受けることがあります。

資格等の制限を受けてしまった場合、資格ごとに定められた要件を満たさなければ資格等は回復しません。

5、前科があると海外旅行に行けない?

次は前科があると海外旅行に行けないのか?という疑問にお答えしていきます。

(1)前科一犯になればパスポートが取れない?

海外旅行に行くためには、パスポートが必要です。

犯罪を行って前科一犯となっても、有効期間が満了していないパスポートを持っていれば、パスポートを使って出国することはできますから、海外旅行にも出かけられます。

一方、旅券法には禁錮以上の刑に処せられた場合にパスポートの発給を制限できる旨の規定があります。

そのため、前科がついた後でパスポートを申請すると、パスポートの取得ができない可能性があります。

ただし、永久にパスポートが取得できないわけではなく、刑の執行が終わるか執行を受けることがなくなった場合には、再びパスポートを発給してもらえるようになります。

(2)前科一犯になれば外国に入国できない?

前科一犯になると、外国への入国が制限され、海外旅行に支障が出ることはあります。

海外渡航や海外永住申請の際には、犯罪経歴証明書の提出を求められるケースがあり、この場合には前科がバレてしまいます。
犯罪歴がある場合、入国する国によってはビザ(査証)の免除が受けられなかったり、渡航や永住が許可されなかったりする可能性があります。

6、前科を消すことはできる?

次は、もし前科がついたら消すことは出来るのか説明していきます。

(1)前科は消えることはない

検察庁の保管する前科の情報は、一度登録されると削除されることはありません。
罪を犯した以上、たとえ時間が経過しても前科自体を消すことはできないということです。

(2)犯罪人名簿からは削除される

前科の情報は市区町村に設置されている犯罪人名簿でも管理されていますが、犯罪人名簿にはずっと情報が残るわけではありません。

執行猶予期間を無事終了し、刑の言い渡しの効力がなくなった場合には、犯罪人名簿から削除されることになります。

(3)インターネット上の情報は残る

ひとたび罪を犯してしまい、前科一犯となってしまった場合には、インターネットに情報が残ってしまう可能性があります。
ネット上に残った情報を完全に消すのは困難です。
しかし、サイトの運営者側に個別に削除依頼をすれば対応してもらえることはあります。

インターネット上の情報の削除は、前科のある人のプライバシーを守る上で重要ですが、対立する権利・利益として、情報を掲載している側の報道の自由や表現の自由との調整も必要になります。

犯罪歴がインターネット上に残っていることで不利益を被っている場合には、弁護士に相談し、情報を掲載している側と交渉してもらったり、裁判手続きをとってもらったりすることを検討しましょう。

まとめ

罪を犯して前科がついてしまえば、たとえ前科一犯であったとしても、それが一生残ることになります。
前科がつくと、就職が不利になったり、海外渡航が思うようにできなかったりする不利益が生じます。
また、前科の情報はインターネット上にいつまでも記録され簡単に削除できないことがあります。

逮捕されても、必ず前科がつくとは限りません。
不起訴になれば、前科がつくのを逃れられる場合もあります。

まずは前科がつかないよう、逮捕された段階で弁護士に依頼して、適切に対応してもらうことで不起訴となる確率を少しでも上げることが大切です。

また、前科がついてしまった場合でも、情報が残っていることで不利益を受けた場合には、弁護士に相談して、削除依頼など対処方法を考えてもらうのがおすすめです。

このままだと前科がついてしまうかもしれない、前科情報で困っている、とお悩みの方はぜひ一度、弁護士までご相談ください。

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