離婚調停の弁護士費用の気になる点の一つとして「いくらかかるのか?」ということがあると思います。
費用によっては、自分で離婚の手続きを解決するか依頼するか変わるという方もいらっしゃるでしょう。
とはいえ、費用を抑えたことによって離婚が不成立になったり、不利な内容の離婚条件を押し付けられるといった結果は注意して避けたいところです。
また、安い費用で良い弁護士に依頼できるのなら、依頼したいという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ベリーベスト法律事務所の弁護士監修の上で
- 離婚調停の弁護士費用の相場
- 離婚調停の弁護士費用を抑える方法
- 費用が安くても良い弁護士を探す方法
について解説していきます。
離婚調停をお考えの方で、弁護士費用の問題が気になっている方のご参考になれば幸いです。
離婚調停の費用全般に関して詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
加えて離婚調停に関する弁護士については以下の記事もご覧ください。
また、離婚事件に強い弁護士については以下の記事もご覧ください。
さらに、離婚事件に強い弁護士の探し方はYouTubeでも紹介しています。併せてご覧ください。
目次
1、離婚調停の弁護士費用の相場は?
それではさっそく、離婚調停を弁護士に依頼する場合にかかる費用をみていきましょう。
多くの場合、弁護士費用は次のような費目に分けて請求されます。
(1)着手金
弁護士に依頼する際に必要となる費用で、結果に関係なくかかる費用です。
相場としては20万円~30万円程度でしょう。
なお、以前は日弁連(日本弁護士連合会)が作成した「旧弁護士報酬規程」が統一的に運用されており、その規程では、離婚調停の着手金は「20万円~50万円の範囲内の額」とされていました。
ただし、財産分与や慰謝料などの財産給付を請求する場合は、次の民事事件の着手金に関する規程を適用することができるとされていました。
訴訟事件 | 経済的な利益の額 | 着手金 |
300万円以下 | 8% (最低10万円) | |
300万円超~3000万円以下 | 5%+9万円 | |
3000万円超~3億円以下 | 3%+69万円 | |
3億円超 | 2%+369万円 | |
調停事件 および 示談交渉事件 | 訴訟事件に準ずる。ただし、3分の2の金額に減額することができる。 ※※示談交渉から調停、示談交渉または調停から訴訟その他の事件を受任するときの着手金は、訴訟事件の着手金額の2分の1とする。 |
「経済的な利益」とは、弁護士の事件処理によって得ようとする依頼者の経済的利益のことです。
多くの法律事務所が日弁連の旧報酬規程を参考にして料金体系を定めていますが、離婚調停の着手金については、ざっくりと20万円~30万円程度に決められることが多いです。
ただし、高額の慰謝料を請求する場合など経済的な利益の額が大きい場合は、50万円以上を請求されることもあります。
(2)日当
調停が事務所から遠方で開かれる場合や、着手金で対応する調停への出頭回数の上限が決められているものの、これを上回る回数出頭した場合にかかる費用です。
1日(1回)3万円~5万円程度でしょう。
(3)報酬金
希望した結果が得られたときに支払う費用です。
離婚自体の成功報酬として30万円程度と得られた経済的利益の10%程度が相場のようです。
なお、報酬金についても日弁連の旧弁護士報酬規程を参考にして料金体系を定めている事務所が多いです。
旧弁護士報酬規程における離婚調停の報酬金は「20万円~50万円の範囲内の額」とされていました。
報酬金に関する規程は以下のとおりです。
訴訟事件 | 経済的な利益の額 | 報酬金 |
300万円以下 | 16% | |
300万円超~3000万円以下 | 10%+18万円 | |
3000万円超~3億円以下 | 6%+138万円 | |
3億円超 | 4%+738万円 | |
調停事件 および 示談交渉事件 | 訴訟事件に準ずる。ただし、3分の2の金額に減額することができる。 |
これによると、離婚調停によって離婚が成立するとともに300万円の慰謝料を獲得した場合の報酬は、その16%にあたる48万円となります。
さきほどの相場で計算すると60万円となりますから、旧弁護士報酬規程よりも高くなりますが、実際には事務所によって金額は異なります。
(4)実費
その他、弁護士が裁判所に出頭するためにかかる交通費や、通信費等の実費もかかります。
また、離婚調停の申し立てそのものにかかる実費も数千円ほど必要です。この点について詳しくは、以下の記事をご参照ください。
これらの諸費用をトータルすると80万円~100万円程度かかることになるケースが多いでしょう。
2、離婚調停の弁護士費用を抑える方法
ここでは、離婚調停の弁護士費用を抑える方法についてご説明します。
(1)費用の安い事務所を選ぶ
弁護士費用の料金体系は事務所ごとに異なりますので、費用の安い事務所を選ぶのが最も手っ取り早い方法です。
実績が豊富な事務所であれば、それほど高額ではなく、多くの方が利用しやすい料金体系を備えているものです。
インターネットなどで離婚事件の実績が豊富な事務所を中心に費用の安い事務所をいくつか探し、実際に相談した上で、ご自身と相性の良い弁護士を選ぶとよいでしょう。
(2)法テラスを利用する
法テラスには、一定の条件を満たせば弁護士費用を立て替えてもらえる「民事法律扶助」という制度があります。
この制度が利用できれば、相場よりも安い料金で弁護士に依頼することができ、かつ、その料金は法テラスが立て替えて弁護士に支払ってくれます。
立て替えてもらった弁護士費用については、法テラスに対して毎月5,000円~1万円に分割して支払っていくことになります。
制度の主な利用条件は、収入や資産が一定の基準を超えないことです。
詳しくは、以下の記事をご参照ください。
(3)できるだけ早期に弁護士に依頼する
できるだけ早期に弁護士に依頼することも、結果的に費用を抑えることにつながります。
離婚問題が長期化するとそれだけ相手方との対立も深刻化・複雑化していき、解決が難しくなり争いが長引いていくからです。
このように問題がもつれてしまうと、離婚訴訟にまで発展することが多くなり、その場合には離婚訴訟を依頼するための弁護士費用も新たに必要となってしまいます。
したがって、離婚調停の申し立てを意識したら、できる限り早めに弁護士に相談・依頼することです。
そうすることによって、場合によっては離婚調停を申し立てるまでもなく、協議離婚が成立することもあります。
その場合、弁護士費用は離婚調停を申し立てた場合よりも安くなるのが通常です。
3、そもそもどのくらいの人が離婚調停を弁護士に依頼している?
弁護士に依頼するかどうかを決める際の判断要素として、どのくらいの方が弁護士つけるのか知りたい方も多いと思います。
日弁連が最高裁判所から情報提供を受けて行った調査によると、平成30年度の夫婦関係調整調停の事件数は43,286件であり、そのうち22,388件に弁護士が関与していました。
弁護士の関与率は51.7%です。
平成16年度には事件数が59,745件、うち弁護士が関与した件数は13,187件で、弁護士の関与率は22.1%でした。
なお、ここで取り上げた「夫婦関係調整調停」には、離婚する目的で申し立てられたものだけでなく、夫婦関係を円満に調整する目的で申し立てられたものも含みます。
しかし、大多数は離婚する目的で申し立てられたものです。
以上のデータを見ると、以前はご自身で離婚調停に対応する方が多かったものの、今では離婚調停を弁護士に依頼する方の方が多くなっていることがわかります。
4、弁護士費用を支払ってでも離婚調停を依頼するメリットは?
では、決して安くはない費用をかけてでも弁護士に依頼するメリットは何なのでしょうか。
(1)調停で言いたいことをしっかりと伝えることができる
調停は、調停委員を介して相手方との話し合いを進める手続きです。
しかし、話し合うテーマは離婚、これに伴う財産分与、親権、養育費や慰謝料など法律的な問題点を含む問題です。
それぞれの問題にはポイントがあり、それを踏まえた主張をしないと調停委員や相手方を説得することができません。
弁護士に依頼すれば、法律的な点も踏まえてあなたの希望を説得的に伝えてくれるでしょう。また、調停段階から弁護士をいれることで、裁判所や相手方にあなたが本気であるということを示すこともできるでしょう。
(2)手続きを任せることができる
弁護士に手続きを依頼すれば、多くの手続きを弁護士に任せることができます。
たとえば、申立書、調停の際に提出する主張をまとめた書面、財産分与の際に必要な財産目録等々、調停には様々な書面が必要になりますが、その作成には多くの労力を要します。
弁護士に依頼すればこのような書類作成も全て代わりに行ってもらえます。また、一定の場合は調停への出頭も委ねることができます。
離婚調停では、離婚を成立させる場合等一定の場合には本人の出頭が必要ですが、それ以外のときは弁護士を代理人としていれば弁護士だけで期日を行うことができるのです。
これらの手続きを弁護士に任せることで、時間的にだけでなく、精神的にも余裕が生まれるでしょう。
(3)裁判への移行がスムーズになる
離婚調停がまとまらなかった場合、離婚訴訟(裁判)に移行します。
そして離婚訴訟では、調停で話し合われたことが裁判の前提として進められることが多いです。
したがって、裁判になってから弁護士に依頼しようと思われても、依頼された弁護士としては調停の様子が分からないので、十分な準備ができないというケースもあるでしょう。
したがって、問題が多く、裁判までもつれ込むことが想定されるケースでは、はじめから弁護士をいれておく方が良いと言えます。
5、婚姻費用分担請求調停も依頼するときの弁護士費用
離婚までに別居をする場合は、相手方に対して月々の生活費を請求することができます。
この月々の生活費のことを婚姻費用といいます。
婚姻費用の支払いを求めるには婚姻費用分担請求の調停を起こすのがいいでしょう。
この調停は離婚調停とは別の調停なので、離婚調停だけ起こして安心してはいけません。
婚姻費用分担請求調停の申し立ても弁護士に依頼する場合は、別途、弁護士費用がかかる場合があります。
前記「2」と同等の費用を請求する法律事務所はあまりありませんが、相応の追加費用が請求されることもあるでしょう。
ですが、離婚調停と一緒に申し立てる場合は着手金無料で対応してくれる事務所もなかにはありますので、依頼する前にこの点も確認しておきましょう。
なお、婚姻費用の具体的な請求の仕方は次のページをご覧ください。
6、離婚調停における費用が安くて良い弁護士を探す方法
離婚調停で納得できる結果を獲得するためには、弁護士に依頼するに越したことはないといえます。
そこで、ここでは費用が安くて良い弁護士を探す方法についてご説明します。
(1)インターネットで検索する
弁護士を紹介してもらうルートをお持ちの方なら紹介してもらうのもいいですが、多くの方はそのようなルートをお持ちではないでしょう。
そんなときは、インターネットで検索するのが便利です。
離婚事件の実績をホームページに掲載している法律事務所もありますので、実績が豊富な事務所を探しましょう。
また、具体的な実績が公開されていなくても、離婚問題に関するコラムや解説記事を多数掲載している事務所は、離婚問題に力を入れていると考えられるのでおすすめです。
(2)無料相談を活用して実際に相談する
気になる事務所が見つかったら、依頼する前に必ず相談を受けてください。
実際に相談してみないと、弁護士とご自身の相性が合うかどうかがわからないからです。
離婚事件ではデリケートな問題を扱いますので、弁護士との相性は大切です。
初回の相談料は無料としている事務所も多くありますので、そういった事務所を選んで相談を申し込むとよいでしょう。
(3)複数の事務所を比較する
依頼する弁護士を決める前に、複数の事務所に相談して比較してみることをおすすめします。
弁護士はそれぞれ個性も違いますし、実績も違います。
複数の事務所で無料相談を利用しつつ、弁護士の人柄や実績を把握し、弁護士費用の見積もりも取って、比較した上でご自身に最もマッチすると思われる弁護士を選びましょう。
離婚調停の弁護士費用まとめ
離婚調停はご自身でも行うことができます。
しかし、離婚は人生の一大事ですので、後悔しないよう、できれば弁護士に依頼して万全の態勢で臨まれることをおすすめします。
ただ、弁護士の選び方次第で弁護士費用も大きく異なりますし、離婚調停の結果も大きく異なってくる可能性があります。
離婚調停を有利な流れで進めて、スムーズに人生の再スタートを切るためには、費用が安くて良い弁護士を選ぶことが大切です。
この記事をご参考にされつつ、ご検討いただければ幸いです。