露出もれっきとした犯罪で、発覚すれば逮捕されることもあります。
令和二年度版犯罪白書によりますと、令和2年度中、露出の罪として代表的な公然わいせつ罪(わいせつ物頒布等罪を含む)で検察庁へ送致されたのは2569人。そのうち1464人が逮捕されています。
そこで、今回は、
- 露出で問われる罪
- 逮捕の要件
- 逮捕後の流れ
を解説した上で、
- 逮捕前に弁護士が行ってくれること
- 露出をやめるために必要なこと
について解説していきたいと思います。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
公然わいせつ罪について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
1、露出は逮捕される犯罪なのか
露出とは、肌を人目に触れ得る状態におくことをいいます。どんな場合にどんな罪に問われるのでしょうか?
(1)公然わいせつ罪
公然わいせつ罪は刑法174条に規定されています。
刑法174条
公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
「公然」と、故意に「わいせつな行為」を行った場合は、公然わいせつ罪に問われます。
① 公然と(公然性)
「公然と(公然性)」とは、不特定又は多数の方に認識される状態で、という意味です。
ここで注意しなければならないのは、あくまで「認識される状態」であれば足り、現実に「認識されたこと」までは必要とされていない点です。
現実に人に見られていなくても、「公園、路上、駐車場など公共の場」は公然性の要件を満たす可能性が高いでしょう。
また、最近では、性的な動画を生配信して公然わいせつ罪で逮捕される方もいます。
「インターネット」も不特定又は多数の方が閲覧(認識)できる場であって、公然性の要件を満たすといえます。
② わいせつな行為
判例や裁判例によると、「わいせつな行為」とは「性欲を刺激、興奮し、又はこれを満足させる行為であって、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」と考えられています。
上の定義からすると、何がわいせつな行為かは「普通人」、つまり一般人の感覚を基準に決められるようです。
つまり、一般人が不快の念を感じる行為はわいせつな行為に当たる可能性があると考えた方がよさそうです。
したがって、通常、「性器の露出」はわいせつな行為といえます。
また、性器を露出しなくても、例えば、「今にも陰茎・陰部が見える(透けて見える)パンツを露出する」などの行為は、一般人が見ればやはり不快に感じますから、わいせつな行為に当たる可能性があります。
③ 罰則
6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
(2)軽犯罪法(身体露出の罪)
身体露出の罪は軽犯罪法1条20号に規定されています。
軽犯罪法1条20号
公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者
① 公衆の目に触れるような場所で
上記の、公然わいせつ罪における公然性と同様の意味です。
② 公衆にけん悪の情を催させるような仕方
「公衆にけん悪の情を催させるような」とは、一般人に不快の念を与えるような、という意味で、公然わいせつ罪の場合よりも不快の念は弱いものでよいと思われます。
公衆にけん悪の情を催させるようなものかどうかは、行為の主体の性別、年齢、露出される部分、行為の態様、行為の場所、状況などを総合的に勘案して決められます。
したがって、同じ乳房を露出する行為でも、それを「電車内で露出」するのと「授乳室で露出」するのでは、当然に前者の方が「公衆にけん悪の情を催させる」程度は大きいでしょう。
「仕方」とは方法、態度に限らず当該状態・事態であることを意味します。
③ しり、ももその他身体の一部をみだりに露出
「その他身体の一部」とは、通常、人が衣服などで隠している部分をいいます。
尻、ももなどのほかに「乳房、へそ、わき腹」などがこれに当たり得ます。
「露出する」とは、冒頭でもご説明したとおり、肌そのものを人目に触れ得る状態におくことをいいます。
④ 罰則
拘留又は科料
2、露出で逮捕されることはあるの?
露出は犯罪となり得る以上、逮捕される可能性はあります。
逮捕にはどんな種類があり、どんな要件がそろうと逮捕されるのか(できるのか)について、下記でご説明します。
(1)通常逮捕
通常逮捕とは、裁判官があらかじめ発する逮捕状による逮捕です。
露出での通常逮捕は、露出を目の当たりにした人が警察へ届け出たりすることで警察が捜査を開始したようなケースにおいてなされます。
通常逮捕の要件は
①罪を犯したと疑うに足りる相当な理由(逮捕の理由)
②逃亡、罪証隠滅のおそれ等(逮捕の必要性)
です。
防犯ビデオ映像、目撃者の供述などから、前記「1」でご説明した罪を行ったと認められる場合は、①を満たすと判断されます。
また、一人暮らしである、無職である、転職を繰り返している、前科・前歴を有している、執行猶予中である、事案が悪質であるなどの事情がある場合は②があると判断されやすくなります。
なお、身体露出の罪(軽犯罪法)のような軽微な罪については上記①、②のほかに
③住居不定又は正当な理由がない不出頭
という要件を満たしてはじめて逮捕をすることが可能となります。
(2)緊急逮捕
緊急逮捕は、当初逮捕状なしで逮捕が行われ、その後に裁判官が逮捕状を発付するというものです。
緊急逮捕は、「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」について、「罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないとき」に行うことができるものです。
この点、公然わいせつ罪は最高でも懲役6月、身体露出の罪は拘留又は科料ですから、「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」とはいえません。
したがって、露出で緊急逮捕されることはありません。
(3)現行犯逮捕
現行犯逮捕は、現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者若しくはこれらの物に準じる者を無令状で逮捕することをいいます。
露出では現行犯逮捕されるケースが多いかと思われます。
なぜなら、露出は人前で行われますし、現行犯逮捕は警察官などの捜査機関のみならず一般人でも可能であるからです。
現行犯逮捕の基本的要件は
① 特定の犯罪が行われたことが明らかであること(犯罪と犯人の明白性)
② 特定の犯罪が目前で行われたか、又は犯行後近接した段階にあること(犯罪の現行性)
です。
女性の目前で性器を露出した、という場合は明らかに①、②の要件を満たします(現行犯逮捕される可能性があります)。
また、被害女性から被害の申告を受けた第三者が直接は性器の露出を見ていない場合でも、その第三者によって逮捕されることもあります。
(4)逮捕されない=処分されないではない
逮捕の様々な要件を満たさないとして逮捕されない場合でも、安心はできません。
仮に、捜査機関に露出が発覚すれば、捜査の対象とはなるのです。
この場合、在宅事件となり身柄の拘束こそありませんが、刑事処分(起訴、不起訴)を受けるまでは自宅から警察署や検察庁に出向いて取調べなどに応じなければなりません。
3、逮捕されたらどうなるの?
逮捕されたらどうなるのでしょうか。みていきましょう。
(1)逮捕後の刑事手続
逮捕後は以下の経過をたどることが一般的です。
①逮捕
↓
②警察官による取調べ
↓
③検察官へ送致(送検)
↓
④検察官による取調べ
↓
⑤勾留請求
↓
⑥裁判官の「勾留質問」
↓
⑦勾留決定
①から⑤までは3日以内に行われます。また、⑦の勾留の期間は10日間です。
さらに、⑦の後勾留延長請求がされ、最大10日間勾留期間が延長されることがあります。
警察官の判断で②の後、検察官の判断で④の後、裁判官の判断で⑥の後に釈放されることがあります。
なお、犯罪白書によりますと、平成30年度に公然わいせつ罪、わいせつ物頒布等罪で検挙・逮捕され③送致(送検)された人の割合は「32.1%」でした。
つまり、残りの「67.9%」の人は「はじめから在宅被疑者(逮捕されない)」であるか、あるいは「②の段階で釈放された人」ということになります。
ただ、繰り返しますが、検挙されれば身柄を拘束されているか否かに関わらず、何らかの刑事処分(起訴、不起訴など)を受けます。
犯罪白書によれば、平成30年度、検察庁が新規に受け入れた公然わいせつの事件件数は「1744件」でした。
また、公然わいせつ罪での起訴件数は「917件」、不起訴の件数は「739件」でした。
(2)人生への影響
以上のように、露出の場合、逮捕されたとしても、釈放されたり不起訴になったりする可能性は低くはありません。
しかし、人生への影響は小さなものではありません。
逮捕されてしまえば公益の観点から報道されるリスクがあります。
テレビのみならずネットニュースなど、またたく間に広がります。
家族に知られ、結婚していれば配偶者に知られ、そして職場に知られ、取引先や顧客に知れ渡る可能性もあります。
露出をしてしまう方は、今逮捕前なのであれば、今一度どうしたら良いかを考えてみるべきです。
4、逮捕前だからこそ弁護士に相談を
前記「3」からすると、他の犯罪に比べれば、公然わいせつ罪で逮捕される確率は高いとはいえません。
しかし、逮捕されないとも言い切れません。不安な方は、はやめに弁護士に相談するべきでしょう。
逮捕前に依頼をした場合、弁護士は主に以下のことを行います。
(1)示談交渉
公然わいせつ罪も身体露出の罪も、社会の健全な性秩序を乱したことに対する罪です。
同じ性犯罪でも、強制わいせつ罪、強制性交等罪などのような個人の性的自由を侵害する罪とは性質が異なります。
したがって、公然わいせつ罪、身体露出の罪では、理屈の上では直接的な「被害者」を観念することができません。
しかし、性器の露出などによってそれを見た方に不快の念を生じさせることは確かです。
そのため、公然わいせつ罪、身体露出の罪においても、露出の被害を受けた方が判明している場合は示談交渉を行うべきです。
示談が成立した場合は情状面で有利に働くでしょう。
また、逮捕前に示談が成立すれば、逮捕を回避することにもつながるでしょう。
(2)逮捕回避に向けた弁護活動(自首・出頭の検討、付添い、取調べに対するアドバイスなど)
逮捕回避に向けて考えられる手段の1つとして、自首、出頭(※)があります。
自首・出頭することによって、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれ等がないと判断されやすくなります。
とはいえ、自己判断で自首・出頭をすると過度の不利益を生むこともあります。
事前に弁護士のアドバイスがあれば、最善の行動をとることができるでしょう。
自首・出頭のタイミングや供述すべき内容について事前にアドバイスを受け、不当に厳しい処遇を受けることは避けましょう。
弁護士は、捜査機関との間に立って自首・出頭の日程を調整したり、捜査機関まで付き添ったりしてくれます。
上記のとおり、逮捕されてしまっては、人生が大きく狂ってしまう可能性があります。
報道される可能性も少なくなく、地位のある方であればその地位を維持することは難しいでしょう。
そのような不利益を未然に防ぐためにも弁護士に相談すべきです。
弁護士は、守秘義務のもと、あなたの力になれるよう全力で尽力していきます。
※自首と出頭の違いですが、基本的に、捜査機関に犯罪が発覚する前に出向いた場合が自首、発覚した後は出頭と考えてください。
5、露出をやめたいあなたへ
露出によって人生を狂わせないためにも、原因を見つめなおし、適切な治療を受けましょう。
(1)どうして露出をしてしまうのか
露出する目的は人により様々だと思いますが、典型的なものは、人が性器などを見て驚いたり、不快に思ったり、困ったり、恥ずかしがる反応を見て性的興奮を得たい、満足したいというものであるようです。
露出する人の多くは男性で、露出の対象とされる多くは女性です。
一部ですが、男性の中には、女性が上記のような反応をするのを見ることで自己の優位性を保ち、快感を覚える人もいます。
そのような人は、仕事や家庭でプライドを傷つけられストレスを抱えていたと述べる人が多いようです。
また、露出は、他人の身体的接触を必要とせずに性的興奮を覚えることができることに特徴があります。
そのため、対人関係が苦手な方、女性と話すのが苦手な方、交際歴が少ない方、大人しい方、なかなか自分の意見を主張できない方、引きこもりがちな方などの中で一部の人は、露出をする傾向があるといえるようです。
(2)心と身体のケアが大切
人によっては「露出は直接人に害を与えないからやってもかまわない」と考えられる方もいるでしょう。
しかし、露出によってその地域一帯を不安に陥れることは間違いありません。
ネットや回覧板などによって、露出の情報はいち早く地域一帯に広がります。
こうした露出に対しては、まずは日常生活などご自身の足元から見直し、専門の治療期間などの援助も受けながら、露出をしなくてもよい心と身体のバランスのとれた生活を送ることが大切です。
一度時間をとって、自分自身と向き合ってみることをおすすめします。
まとめ
以上、露出はれっきとした犯罪であり、発覚すれば逮捕されることもあります。
現行犯逮捕された場合を除き、逮捕される前からできることは様々あります。
逮捕されて苦しい生活を歩まなくてすむよう、今のうちからはやめの対策を取っておきましょう。