休みが少ない!!
これは、労働者の会社に対する不満の上位に入ることかもしれません。
職種や業界によっては休みが少ないと感じることも多々あるかと思います。特に個人客を相手にする小売業、飲食業などにおいては、店舗が年中無休に近い状態であれば、休みを取れない方も少なくないでしょう。
あまりにも休みが少なく、健康面に支障をきたしてしまうと本末転倒です。
今回は、
- 休みが少ないことの弊害
- 自分の職場は休みが少ないかの判断基準
- 無給の休日出勤が多い場合の対処法
などについてご紹介していきたいと思います。この記事が皆さまのお役に立てば幸いです。
目次
1、休みが少ないことで起こりうる5つの弊害
休みが少ないことでどのような弊害が生じるでしょうか。
(1)いつも疲れている
誰しも仕事で疲労は蓄積します。
しかし、休みが少ないと疲労を回復することができません。
また、仕事が休みといっても、休みの日にやるべきこともあるでしょう。
そうすると、結局疲労を回復させることができないまま、仕事を始めなければなりません。
(2)ストレスがたまる
仕事のストレスは仕事から離れたときに回復されるものです。
休みが少なければ回復時間が少ないわけですから、ストレスは徐々に溜まっていく一方となります。
(3)仕事の効率が低下する
十分な休養を取っていないと、体力の差こそあれ、確実に仕事の効率も質も低下します。
そうすると余計な残業が増え、疲労・ストレスが溜まり、それがまた仕事に影響するという悪循環に陥ってしまうのです。
(4)自己研鑽の時間が取れない
休みが少ないと、疲労を回復させる、ストレスを発散させることに時間を使ってしまい、勉強等の自己研鑽に時間を充てることが難しくなります。
(5) 家族や友人との時間が取れない
休みが少ないと、家族や友人との時間も取りづらくなります。
その結果、家族や友人との行き違い、コミュニケーション不足で関係に亀裂が生じる可能性があります。
2、勤務先の休みが少ないかをチェック
勤務先の休みが多いのか少ないのかを判断するためには、一定の基準が必要です。
あなたの会社は本当に休みが少ないのか、確認してみましょう。
この項では、まず全業種の年間休日日数の平均を紹介した上で、業種別の年間休日日数の平均を紹介いたします。
(1) 年間休日日数の平均
「年間休日」とは、会社が定める1年間の休日数のことをいいます。
何を「休日」とするかは会社ごとに異なります。
しかし、有給休暇や特別休暇は含まれず、土日祝祭日、夏季休暇、年末年始休暇は含まれるのが一般的です。
そして、厚生労働省の調査(平成30年就労条件総合調査の概況)によれば、平成29年の年間休日総数の1企業平均(企業で取得した年間休日日数を企業数で除した数)は「107.9日」、労働者1人平均(企業の労働者数×当該企業の年間休日日数の合計を労働者の合計で除した数)は「113.7日」ということでした。
したがって、「108日」から「114日」が一般的な年間休日日数の目安となります。
(2)業種別年間休日日数の平均
ここで、業種によって年間休日日数に違いがあることに注意が必要です。
厚生労働省の調査によると、主な業種別の1企業平均の年間休日日数(平成30年就労条件総合調査の概況)は、以下のとおりです。
宿泊業、飲食サービス業 | 97.1日 |
運輸業、郵便業 | 100.3日 |
建設業 | 104.0日 |
生活関連サービス業、娯楽業 | 104.6日 |
卸売業、小売業 | 105.7日 |
医療、福祉 | 109.4日 |
製造業 | 111.4日 |
教育、学習支援業 | 112.7日 |
電気、ガス、熱供給、水道業 | 116.8日 |
金融業、保険業 | 118.4日 |
学術研究、専門、技術サービス業 | 118.8日 |
情報通信業 | 118.8日 |
上記の調査結果からすると、「宿泊業、飲食サービス業」、「建設業」、「運輸業、郵便業」は休みが少ない状況のようです。
他方で、情報通信業は新しい業種で、比較的自由な働き方が許されていることもあって休みが多い傾向にあります。
3、休みが少ない…休日についての法律の規制は?
企業の実態は「2」のとおりであるとして、労働者の労働基準などについて規定した労働基準法がどのような規制を設けているのかご紹介します。
(1) 労働基準法第35条
実は、休日に関する明確な規定はこの労働基準法第35条にしか設けられていません。
労働基準法第35条
第1項 使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。
第2項 前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。
上記の規定からすると、労働基準法は、企業は労働者に少なくとも「毎週1回、又は4週間を通じて4日以上の休日」を与えなければならない(この休日を「法定休日」といいます。)としているのみで、年間休日に関する規定を設けていません。
ただ、労働基準法第35条を基準とすると、年間休日日数の最低日数は約52日ということになります。
なお、企業がこの基準を満たしていない場合は、企業は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます(労働基準法第119条第1項)。
(2)労働基準法第32条
次に、労働基準法第32条には次の規定が設けられています。
労働基準法第32条
第1項 使用者は、労働者に、休息時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
第2項 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休息時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
上記の規定からすると、1年を365日(52週)とし、1日の勤務時間を8時間とした場合、企業が労働者を労働に従事させることができる日数は52(週)×5(日=40時間÷8時間)で「260日」ということになり、残りの「105日」は休日に充てなければならなくなります。
この法定休日以外の休日を「法定外休日」といいます。
実際、企業は、この「105日」前後を目安に就業規則で休日を設けています。
4、休みが少ない会社はたくさん稼げるとは限らない!
休みが少なければその分だけ働いているということ。
ということは、給与も高いのでは?とも思えますが、実はそうとも限りません。
(1) まずは給与相場をチェック
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」(平成30年度)によれば、業種別の月間現金給与額は以下のとおりです。
飲食サービス業等 | 12万6227円 |
運輸業、郵便業 | 35万6637円 |
建設業 | 40万5221円 |
生活関連サービス業等 | 20万6663円 |
卸売業、小売業 | 28万6188円 |
医療、福祉 | 29万8182円 |
製造業 | 39万2305円 |
教育、学習支援業 | 38万4132円 |
電気、ガス業 | 55万7255円 |
金融業、保険業 | 48万2054円 |
学術研究等 | 47万1297円 |
情報通信業 | 49万8273円 |
前記「2」(2)のとおり、休みが少ない業種から順に並べてみましたが、下の業種へ進むほど給与が多くなる傾向にあることが分かります。
つまり、休みが少ないからといって必ずしも給与が多い(お金を稼げる)、ということにはならないのです。
(2) 休みが少ないことで弊害を感じモチベーションを保てない場合は転職も視野に
休みが少ない会社は人を潤沢に雇えるほどの利益を確保できておらず、今いる人材を酷使せざるをえない、という状況に陥っている可能性があります。
また、待遇面でも優遇を受けづらいことが考えられます。
休みが少ない上に高待遇を受けづらいとなると、仕事に対するモチベーションを保つことが難しくなります。
モチベーションを保てない場合、仕事を継続することが難しくなりますから転職を検討してみてもよいでしょう。
5、休日日数に問題はないが、事実上休日出勤が多いケース
法定休日日数や法定外休日日数に問題はない場合でも、休日出勤した場合に気を付けるポイントがあります。
(1) 法定休日出勤の場合
企業が法定休日に出勤させた場合、労働者に「基礎時給×1.35倍」の割増賃金を支払わなければなりません。
※基礎時給=1時間あたりの賃金のことで、月給制の場合は「月給÷月平均所定労働時間」で計算されます。
(2) 法定外休日出勤の場合
例えば、土曜日と日曜日が休日で、日曜日が法定休日の場合、土曜日が法定外休日となります。
企業は、法定外休日に出勤させた場合も、週の労働時間が40時間を超えるまでは、労働者に割増賃金を支払う必要はありません(もっとも、就業規則で法定外休日の勤務に対しても割増賃金を支払う旨を規定している場合は、就業規則に則って割増賃金を支払う必要があります。)。
しかし、40時間を超えた場合には、時間外労働として「基礎時給×1.25倍」の割増賃金を支払わなければなりません。
(3)まとめ
このように、法定休日出勤と法定外休日出勤の場合で、割増賃金が支払われるべきか否か、また支払われるべき場合の割増率が異なりますから、法定休日出勤か法定外休日出勤かはきちんと区別する必要があります。
なお、企業に36協定なく、労働者を休日出勤させ、かつ法定の割増賃金を支払わなかった場合には「6月以下の懲役又は30万円以下の罰金」を科される可能性があります(労働基準法第119条第1項)。
6、休みが少なくサービス残業、無給出勤がある場合の対処法4つ
サービス残業とは、所定労働時間を超えて勤務したにもかかわらず残業代が支払われない、あるいは適切な額の割増賃金が支払われない出勤をいいます。
(1)割増賃金請求のための証拠を収集し、保管しておく
割増賃金を請求するためには、その請求の根拠となる証拠を収集し、保管しておく必要があります。
タイムカードやメールの送受信記録、FAXの送信記録、通話履歴、ファイルの更新時間、パソコンのログイン・ログオフ時間などは労働時間を証明する上で貴重な証拠となりえます。
また、ご自身で日誌等を記録するのもよいでしょう。
(2)会社と交渉する
そして、(1)で収集した証拠を基にご自身で割増賃金を計算し、支払について会社と交渉しましょう。
割増賃金の支払は会社の義務ですから、それを求めることは労働者の正当な権利です。
もっとも、会社が素直に支払ってくれるとは限りません。
そのようなときは弁護士に相談することも検討しましょう。
(3) 労働基準監督署に相談する
労働基準監督署は、労働基準法やその他の関連法規に基づいて企業を監督し、場合によっては悪質な違反行為を摘発する厚生労働省管轄下の機関です。
割増賃金の未払いも労働基準法違反に当たるため、お困りの方はお近くの労働基準監督署に相談しましょう。
(4) 労働審判、訴訟を検討する
会社と交渉をしても支払われないときは、労働審判の申立てや訴訟の提起も検討しましょう。
裁判所を利用する手続きですので、会社も無視することはできないでしょうし、裁判所で主張が認められれば、最終的には強制的に権利を実現することができます。
これらの手続きには専門的知識が必要ですので、弁護士に相談しましょう。
まとめ
働き方改革が開始されたとはいえ、まだまだ「休みが少ない」と思う労働者の方は数多くいらっしゃることでしょう。
休日出勤には法律上賃金の上乗せがあり、法的請求もすることはできますが、そうではなく実際の休みを増やして欲しい場合は、会社の体質を変えていく必要があります。
その場合、なぜあなたの職場は休みが少ない体制をとっているのか、まずはその原因を経営者の視点で考えてみることが大切になるでしょう。
皆様が休日に関するルールを的確に把握された上、仕事も休みもともに充実した時間を送ることができることを心から願っております。