「今月の営業ノルマは新規受注10件!」
「達成できなければどうなるか分かっているな?」
新卒や経験者分け隔て無く、そうやって上司から詰められる日々に疲れや疑問を感じていませんか?
日本郵便や三井住友銀行で営業や販売のノルマを廃止している流れの中で、それでも営業ノルマを維持する自分の会社は大丈夫なのでしょうか?
今回は、
- ノルマを達成するためのコツ
- ノルマが辛いときのチェックポイント
- どういう場合が違法?基準と具体例
について、それぞれ詳しくご紹介していきます。
到底達成できるとは思えないような営業ノルマに、「これってもしかして違法なのでは…?」と憤りを覚えている営業職の人は多いと思います。
この記事が現在の労働環境を少しでも改善するためのお役に立てば幸いです。
目次
1、営業ノルマに苦しむ多くの営業マン
多くの会社において営業職はノルマに苦しめられています。ノルマが未達になると会社での立場が悪くなり自信を喪失する営業職の人も多いと思います。
この一方で、営業職はノルマを達成しても正当な評価を受けず、かえってノルマを増やされるだけに終わることもあります。
しかし、大した仕事もせず会社で高い給料をとっていると思わざるを得ない管理職もいます。
不合理な会社に嫌気がさして会社を退職する人も多いのではないでしょうか。
また、ノルマ制の会社では、仕事が終われば早く帰ることができる反面、仕事が終わるまで家に帰れず、会社に寝泊まりする場合もあるでしょう。深夜まで働いても残業代もでず、体調を崩す人もいるでしょう。
2、営業ノルマは誰がなんのために設定?
そもそも、会社が従業員に示す営業ノルマは、誰がなんのために設定しているのでしょうか。
まず、設定の意味ですが、一般的に以下の2点があると言われており、どの会社にとっても多かれ少なかれ必要な基準のひとつとなっています。
- 会社の経営を黒字にするために、最低限必要な売上額を示す
- 業績に対する営業マンの貢献度を評価する
慈善事業でない限り、会社を存続させるためには利益をあげることが必要不可欠です。
営業ノルマは、会社の経営をしっかり立ち行かせるために必要な売上から逆算して設定されていることがほとんどで、多くの場合、社内の幹部が参加する経営戦略会議などで決定されます。
そして、会社は営業ノルマを達成できない人が出ることを想定して、ノルマを高く設定します。
3、営業ノルマを達成する必勝法とは?
営業ノルマが会社の存続に欠かせないものなのであれば、やはりまずはそのノルマを達成するためにできることを再度見直してみる必要があるでしょう。
ここでは、営業ノルマ達成への近道となる考え方のポイントをご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
(1)ターゲットを明確にし、計画に沿って行動する
見込み客を増やしたいあまり、つい行き当たりばったりで行動してしまっていませんか?
「数撃ちゃ当たる」という考え方にも確かに一理ありますが、会社の営業は最終的な契約まで漕ぎつけて初めて成果とみなされるものです。
そして、契約まで進んでくれるような見込み客をしっかり獲得するためには、やはり自社の扱う商品がどういった層のニーズを満たすものなのか分析し、売り込む層の幅をある程度絞る必要があります。
また、そうやって絞ったターゲットが普段どのような生活を送っているのか、どのような売り文句に興味を抱きやすいのか、事前にひと通り想像しておくことも効果的な方法のひとつです。
見込み客からの想定される質問への回答などもきちんと準備した上で、改めて営業に臨んでみましょう。
(2)商品の強み・弱みを把握する
競合他社がいる場合、他社と自社の商品の違いをよく把握しておくことも欠かせないポイントです。
商品を比較する際には、営業担当としてではなく、見込み客から見たメリット・デメリットを考えるようにすると、相手からの共感を得やすいでしょう。
もちろん、競合他社がいなかったとしても、自社の商品が一体どのようなものなのか、どんな役に立つものなのかを知り、あなた自身が自信を持って素晴らしいと思えていることが大切です。
売ることばかりに気がいってしまい、何でもいいから買ってくださいという情に訴えた営業では、全てにおいて本末転倒です。
あなたの会社のその素晴らしい商品を、それを必要としている人またはそれを使った方がいい人を見つけ、あなた自身がマッチングしていく。
それがあなたの仕事の本質なのです。
(3)顧客への安心感の提供
これだけ多くの「モノ」が溢れる現代において、あなたが売る「それ」を欲しいと思うには、「それ」によって確実に自分の生活のメリットが生まれるのだという「安心感」が必要です。
人がどのように「安心感」を抱くのかを研究し、営業マンの対応の仕方や表情、そして言葉、商品の紹介の方法などを上手に組み合わせていきましょう。
そのためには、自分がどんなキャラクターに映るのか、相手目線で自分を分析することも欠かせません。
優しい面立ちの人しか安心感を提供できないわけではなく、強くしっかり主張することを強みとした営業がウケるということもあり得ます。
大切なのは、あなたらしいアプローチをしっかりできるか、ということです。
(4)契約の最終段階まで気を抜かない
なるべく早く営業ノルマを達成したいという思いから、最初のうちはつい見込み客を増やすことを第一目標としてしまいがちです。
もちろんそれも大事な要素ではあるものの、1度に見込み客を増やし過ぎると、それぞれへのフォローがどうしても手薄になり、商談の途中で「やっぱりやめておくよ」と立ち去られてしまうリスクが高まるという側面もあります。
脈がありそうな見込み客については、最終的な契約を結ぶまで決して気を抜かず、手厚い対応を心掛けましょう。
4、それでも営業ノルマ達成がツライとき考えてみるべきこと2つ
先ほどご紹介したポイントを意識してみてもやっぱり営業ノルマの達成がキツイ…そんなときには、次の内容を振り返ってみてください。
(1)そもそも達成可能なのか?
会社から与えられている営業ノルマは、そもそも現実的に達成可能な目標になっているでしょうか?
冷静に考えて実現することが難しいノルマを押し付けられている場合、達成できない原因は従業員側にあるのではなく、会社側の設定に問題があると考えることもできるでしょう。
(2)達成に向かう「環境」に違法性はないか?
営業ノルマを達成できず辛い気持ちになってしまうのは、職場の労働環境に問題があることも原因のひとつではありませんか?
たとえば上司から激しく叱責される、「アポが取れるまで帰ってくるな」と言われるなど精神的な苦痛を感じるケースや、達成できなかったノルマの分だけ給料を減額されるなど労働環境に問題があると疑われる場合、改善に向けてすみやかに対応する必要があります。
5、営業ノルマの設定自体は違法じゃないの?
ここからは、営業ノルマの設定やその達成手段、また達成できなかった場合にペナルティを課すことが何かしらの法律に違反する可能性はあるのかどうか、目安にしたい基準をチェックしていきましょう。
(1) ノルマ=営業目標の設定そのものは違法行為ではない
最初に押さえておきたいのが、従業員に対して営業ノルマを設定すること自体には、特に法的な問題はないということです。
営業は社外で活動を行うことが基本となる以上、その従業員自身の評価をノルマという形で数値化するのはビジネスにおいて正当なことであり、会社の収益をあげる上でも理に適っています。
また、営業職がノルマを課されなくても精一杯努力し成果を上げるというのも、現実的にはなかなかできないことなのかもしれません。
しかしながら、ノルマが未達成の場合のペナルティの内容やノルマ達成の方法などが違法となる場合があります。
(2) ノルマの未達成に対して重いペナルティを科すのは違法となる場合がある
たとえば「ノルマを達成できなかったら罰として~」というように、未達成の従業員に対して重いペナルティを科すことは、その内容によっては違法となる可能性があります。
具体例は後ほど詳しくご紹介しますが、ここでひとつ注意しておきたいのが、ノルマの達成状況を従業員の人事評価に使用する分には原則的には問題がないという点です。
難しいノルマを達成した従業員を昇格させるのと同じように、ノルマを達成できなかった従業員を降格させることは、成果主義を人事制度として採用し、降格となることが就業規則等により根拠づけられている会社の場合には、適切に人事評価を行っている限り、原則的には違法行為ではありません。
6、営業ノルマ達成のための手段などが違法になる可能性がある具体的事例
営業ノルマ達成のための手段などが違法となる可能性があるケースには、どのような例があるのでしょうか。
内容を具体的に見ていきましょう。
(1) ノルマ未達による自腹―自爆営業
営業ノルマを達成できなかったとき、商品を自腹で購入することによってその不足分を補うことを俗に「自爆営業」と呼びます。
労働基準法16条では、こういった賠償予定の禁止が定められており、目標に達しなかったことを理由に従業員自らが商品を購入するよう強要することは違法行為です。
また、労働基準法24条では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とも定められています。
自爆営業の分を会社があらかじめ控除するようなケースは給料不払いにあたり、違法です。
最近は正社員に限らず、アルバイトやパート従業員の間でもクリスマスケーキや恵方巻、年賀はがきなどの自爆営業が問題となっており、社会的に大きな注目を集めています。
詳しくは次の記事でも解説していますので、ぜひあわせて参照してください。
(2)ノルマ未達に対する懲戒処分(減給・解雇等)
営業ノルマの未達成を理由に、減給や解雇などの懲戒処分を行うことは、違法行為にあたる可能性があります。
懲戒処分は非違行為がある場合などに認められるものであり、ノルマ未達というだけでは原則的に懲戒処分の対象にはなりません。
そもそも、その営業ノルマが従業員の能力や過去の実績に応じて適切に設定されたものであったかどうかも重要です。
客観的に見て明らかに過度の営業ノルマが課されていた場合、それ自体がいわゆるパワハラとなる可能性があります。
解雇をされた場合には、不当解雇となる可能性が高いため、次の記事も参考にしかるべき窓口へ相談しましょう。
(3)ノルマ未達によるパワハラ
ノルマを達成できなかったことにより、職場で次のような扱いを受けた場合、それはいわゆるパワハラに当たります。
- 殴る・蹴るなどの暴行
- 必要以上の叱責・罵倒
- 強制的な自宅待機や、1人だけ離れた席への移動など、職場で孤立させられる
- 実現困難な仕事の押し付け
- 本来の業務とは別の雑用しかさせてもらえない
- プライバシーを侵害される
これらの行為は、優越的な関係に基づいて、業務の適正な範囲を超えて、身体的若しくは精神的な苦痛を与えた場合、または就業環境を害した場合には、違法なパワハラ行為とされる可能性があります。
7、営業職がノルマ達成のために過酷な労働環境の下に置かれている場合には専門家へ相談を
自爆営業、パワハラ、サービス残業など、労働環境に問題があることを指摘しても会社が話に応じないときには、労働審判や訴訟といった法的手続きを検討する必要があります。
会社に直談判するとさらにパワハラがひどくなりそうで怖い、自分で上手く話をする自信がないという場合、なるべく早めに弁護士など専門家のサポートを受けることも重要です。
法的手続きを有利に進めるためには、証拠集めや法律の専門知識が欠かせません。
現在の悪質な労働環境をすみやかに改善するためにも、まずは一度弁護士までご相談ください。
まとめ
営業職の仕事にノルマが設けられていること自体は違法ではありません。
現実的には営業職でノルマのない会社の方が珍しいでしょう。
また、営業職はノルマから逃れられない以上は、ノルマによるストレスと上手に付き合う方法も身に付ける必要があると思います。
しかしながら、そのノルマが社会常識に反するような到底実現不可能な目標になっていたり、未達成時に重いペナルティが科されたりするように、営業職を精神的にも肉体的にも追い込んでいるようなケースでは、会社の行為が違法であると判断される可能性があります。
今回ご紹介した内容を参考に、「自分の職場はどうなのだろう?」と気になったみなさんは、法律事務所などの窓口へなるべく早めに相談しましょう。