窃盗罪とは、簡単にいえば、他人の物を勝手に自分のものにしてしまう罪です。たとえ数百円の商品でも万引きをすると窃盗罪にあたりますし、つい出来心で置き引きやひったくりなどをした場合も窃盗罪にあたる場合があります。
軽い罪に思われがちな窃盗罪ですが、法律に定められた刑罰は決して軽くはありません。数百円の商品の万引きであっても、何度か繰り返していると、刑事裁判にかけられて懲役刑が課される可能性もあります。
今回は、
- 何をすると窃盗罪にあたるのか
- 窃盗罪の刑罰
- 窃盗罪で逮捕された場合の対処法
などについて解説していきます。
自分は窃盗行為をしてしまったかもしれないと思っている人や、身内が窃盗行為をしてしまったかもしれず不安になっている人のご参考になれば幸いです。
目次
1、窃盗罪とは?
まずは、窃盗罪とはどのような犯罪なのか、具体的に何をすれば窃盗罪にあたるのかについて詳しくご説明します。
(1)窃盗罪とは
窃盗罪とは、「他人の財物」を「窃取する」ことにより成立する犯罪です。
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法第235条
まず、窃盗罪の客体となる「他人の財物」とは、他人の占有している財物をいいます。
そのため、自らが占有している財物や誰の占有にも属さない財物は、窃盗罪の客体にはならず、横領罪や占有離脱物等横領罪が問題になります。
次に、「窃取」とは、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、自己又は第三者の占有に移すことをいいます。
これに対して、財物の占有者の意思に基づくものの、その意思に瑕疵がある場合には、詐欺罪や恐喝罪が問題になります。
(2)窃盗罪にあたるケースの具体例
それでは、具体的にどのようなケースが窃盗罪にあたるのでしょうか。ここでは、日常的なシーンで窃盗罪にあたるケースをご紹介します。
①ドリンクバーのストローやガムシロップをこっそり持ち帰った
ファミレスや漫画喫茶などドリンクバーのあるお店では、ストローやガムシロップが「ご自由にお使いください」と書かれて置いてあることがあります。
この「ご自由にお使いください」とは、その場で使う分について自由に使用してよいというのが、常識的な意味になりますので、ストローやガムシロップをこっそり持ち帰った場合は、お店の物を持ち去ったということで、窃盗罪に該当します。
持ち帰った量が少ない場合などあまり悪質でない場合には、刑罰が科されない場合もあり得ますが、窃盗罪に該当する行為であることは間違いないので、勝手に持って帰ることはやめましょう。
②お店の電気を勝手に使う
充電が許可されていないお店のコンセントを勝手に使って、スマホやパソコンを充電した場合も、窃盗罪に該当するのでしょうか。
結論としては、窃盗罪に該当します。なぜならば、刑法245条は、窃盗罪や強盗罪などの罪に関して、電気は「財物」とみなすと規定しており、電気も「他人の財物」に該当するからです。
最近では、お店の中に、「ご自由に充電してください」とスマホやパソコンの充電を許可しているお店も多くなってきましたが、それ以外のお店は、勝手に充電をするような行為は、窃盗罪に該当しますので、決してしないようにしましょう。
第二百四十五条 この章の罪については、電気は、財物とみなす。
引用元:刑法第245条
③パチンコ屋で玉貸しや出玉管理のICカードを拾って自分のものにした
パチンコ屋で、他人が置き忘れた玉貸しや出玉管理のICカードを持ち去る行為は、窃盗罪に該当するのでしょうか。
この場合にも、窃盗罪に該当する可能性があります。なぜならば、近くにICカードの持ち主がいる場合には持ち主の占有が認められる可能性がありますし、すでに近くにICカードの持ち主がいない場合でもパチンコ店内にあるICカードについてパチンコ店の占有が及んでいる可能性があり、いずれかの占有が認められる場合には、持ち去ることでその占有を侵害したとして、窃盗罪が成立する可能性があるからです。
他方で、仮に、近くにICカードの持ち主がおらず、かつ、パチンコ店の占有が認められない場合にも、持ち主が置き忘れたICカードを持ち去る行為は、占有離脱物等横領罪に該当する可能性があります。そのため、いずれにしても、他人が置き忘れたICカードを持ち去る行為は、窃盗罪や占有離脱物等横領罪に該当する行為ですので、決してしないようにしましょう。
誰も見ていないと思っても、パチンコ店やコンビニ、スーパーなど色々なところに設置された防犯カメラがあなたを見ています。
④他人の自動車を無断で借りて返しておいた
自動車を使った当初「借りよう。返そう」という意思で、実際に数時間使っただけで元に戻したとしても、窃盗罪に該当する可能性があります。
窃盗罪は、他人の財物を自分のものにしてしまう犯罪であり、犯罪成立には故意のほかに、権利者を排除し他人の物を事故の所有物と同様にその経済的用法に従ってこれを利用し又は処分する意思、すなわち、不法領得の意思が必要とされています。そのため、一時的に使用して返還する意思であった場合(いわゆる使用窃盗の場合)には、不法領得の意思が認められず、窃盗罪が成立しないのが原則です。
もっとも、過去の裁判では、他人の自動車を4時間余りに渡って乗り回したという事案において、使用後に元に戻しておくつもりであっても不法領得の意思が認められると判断されています。
こうした判断がされた理由としては、自動車の場合には価値が高く、短時間でも移動距離が大きく、物に生じる危険も大きいため、そのような物を無断使用すること自体が他人の物を自己のものにしてしまう意思を有していることの現れであると考えられたからだといえます。
そのため、自動車を一時的に使用して返還する意思であったとしても、他人の自動車を無断で乗り回す行為は、窃盗罪に該当する可能性がありますから、他人の自動車を勝手に乗り回したりしないようにしましょう。
2、窃盗罪の刑罰
次に、窃盗罪が成立すると、どのくらいの刑罰が科せられるのかについてご説明します。
(1)刑罰の上限
窃盗罪の刑罰は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法第235条
これによると、窃盗を行った人は、最高で10年の懲役又は50万円の罰金が科せられることになります。
すべてのケースでこのような重い刑罰が科せられるわけではありませんが、窃盗罪は決して軽い罪でないということがおわかりいただけるかと思います。
(2)未遂でも処罰の対象になる
盗む行為に失敗しても、窃盗未遂罪として犯罪になることがあります。
犯罪が未遂であるというのは、犯罪行為(実行行為)に着手したものの結果が発生しなかった場合のことです。
そして、窃盗罪の場合、実行行為の着手は、他人の財物の占有を侵害する具体的危険が発生する行為を行った時点で認められます。具体的には、財物の形状、窃取行為の態様、犯行の日時や場所等の事情を考慮して判断がされます。
例えば、泥棒をしようと他人の家に忍び込んだ場合、一般的には、財物を物色した時点で実行行為に着手したことになるといわれています。
したがって、他人の家に忍び込んで財物の物色を始めたものの、途中で怖くなり、何も取らずに逃げ帰ったとしても、窃盗未遂罪が成立することになります。
他方で、泥棒をしようと他人の家の金庫室に忍び込んだ場合には、金庫室に忍び込んだ時点で、窃盗罪の着手が認められ、物色行為をする前に捕まったとしても、窃盗未遂罪が成立することになります。
これは、金庫室が通常は財物を保管するために利用される場所であり、そこに進入した時点で他人の財物の占有を侵害する具体的な危険があると考えられるからです。
窃盗が未遂にとどまった場合は、物が持ち去られるという実害が発生していないため、裁判所の判断によっては刑罰が軽くなることはありますが、法律上の刑罰は窃盗(既遂)罪と同じで、懲役10年または50万円以下の罰金です。
第二百四十三条 第二百三十五条から第二百三十六条まで、第二百三十八条から第二百四十条まで及び第二百四十一条第三項の罪の未遂は、罰する。
第四十三条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。
引用元:刑法第243条 刑法第43条
(2)他人の占有する財物が自分の占有に移った時点で既遂
他人の占有する財物を自分の占有に移した時点で「窃取」したと言え、窃盗行為が既遂になります。
着手時期と同様、既遂時期がいつであるかは、財物の形状、窃取行為の態様、犯行の日時・場所等の事情を総合考慮して判断がされることになります。
例えば、スーパー等でパンや駄菓子を万引きした場合、店内に陳列してある商品を手に取り、自分のポケットの中に入れた時点で、お店の管理を逃れ店内から商品を持ち去ることが容易な状況にあるといえるため、ポケットの中に入れた時点で既遂となります。
そのため、一旦は、ポケットの中に商品を入れたものの、その後に思い直して、商品を元の場所に戻したとしても、それは犯行後の情状に過ぎず、すでにしてしまった「窃取」行為がなかったことになるわけではありません。
したがって、上記のような万引きをした後に店員に見つかった際、犯人が「返せばいいんだろう」と言って商品を返したとしても、そのときにはすでに窃盗行為は既遂となっていますので、そいような言い訳は通用しないことになります。
(3)刑罰の相場
窃盗罪が成立して有罪となり刑罰が科せられる場合、一般にどのような場合に懲役刑となり、どのような場合に罰金刑となるのでしょうか。
たとえば、犯行の手口が悪質であったり、高価なものを盗んだりしたような場合や、窃盗罪を過去に何度も繰り返して罰金刑を科されたことがあるにもかかわらず再び窃盗罪を犯した場合などは、懲役刑が科される可能性があります。
逆に、犯行の手口が悪質でなかったり、スーパーで数百円程度の商品を万引きしたような場合や、初めて処罰される場合などは、懲役刑ではなく、罰金刑にとどまる可能性があるといえます。
この場合、もちろん犯行の悪質性や盗んだ物の金額等の犯行内容にもよりますが、10万円~30万円程度の罰金額が相場的です。
(4)罰金の場合は略式手続にされることが多い
略式手続とは、検察官が正式な刑事裁判を開くことを求めずに、書類のみの簡易的な審理を求める形で起訴(略式起訴)をし、それに伴い簡易な審理のもとで裁判所による略式命令がなされる手続きのことをいいます。
略式命令では、懲役刑を科すことはできないので、検察官が略式起訴をして略式手続が行われることになれば、窃盗罪の場合、結果は必ず罰金刑となります。
略式手続は、正式な刑事裁判が開かれない簡易な手続ですので、検察官が罰金刑が相当であると判断した場合は、略式手続によることが多いということです。
罰金刑が科せられた後は、その金額を担当検察庁の徴収窓口に支払うことで、事件の手続きは終了します。
なお、窃盗罪で勾留されている場合、略式手続により略式命令が出された時点で、法的に勾留が許されなくなるので、釈放されます。
(5)初犯の場合は起訴されないこともある
警察官や検察官による取り調べを受けていたとしても、初犯、すなわち初めて犯罪を行った人は、処罰を必要としないものとして、警察官や検察官の判断により、起訴されないことがあります。
何度も処罰されているのに反省をせずに繰り返し犯罪を行う人より、初めて犯罪を行う人のほうが、自らの行いを反省して再び犯行に及ばないことが期待できるからです。
特に少額の万引きを初めて犯した場合のように、やってしまった行為に対する社会的非難の程度が比較的低い場合は、自ら十分に反省しつつ、適切に応対すれば、警察官による注意だけで事件が終了することや、警察に逮捕されても検察に送致されずに事件が終了することがあります。
このように、警察段階で捜査を終了させる処分のことを「微罪処分」と呼びます。
それに対して、警察が捜査をした後に、事件を検察官に送致し、検察官が捜査をした結果、検察官が起訴をしないこととする処分のことを「不起訴処分」といいます。
どちらも、処罰を受けることなく前科もつかないという点は同じですが、警察に逮捕された後、身柄が検察官に送致されれば、勾留による身柄拘束が最大で20日間続く可能性がありますので、もし窃盗罪で捕まった場合は、可能な限り適切な対応を取ることによって微罪処分を目指した方が良いでしょう。
また、高額なものを盗んだ場合や犯行の手口が悪質な場合は、初犯であっても非難すべき程度が大きいことから類型的にみて重く処罰されることが多いです。
初犯だからといって軽く考えずに、なるべく早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
(6)家庭内での窃盗は処罰されない
一定の範囲内の親族から物を盗んだ場合は、窃盗罪は成立するものの処罰されることはありません。
第二百四十四条 第1項配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
(以下略)
引用元:刑法第244条
このように、家庭の問題は基本的に家庭内で片付けるべきであり、刑事罰をもって対処すべきではないという考え方に基づいて定められたルールがあるのです。
だからといって家族の物は盗んでもよいということにはなりませんが、このようなルールがあるということも頭に入れておきましょう。
(7)窃盗の時効は7年
窃盗罪の時効は、他人の物を持ち去ったときから7年です。
7年前に何かを盗んだとしても、時効を迎えてしまうと検察官は起訴できなくなるので刑罰を科されることはありません。
ただし、これは刑罰を科されるかという刑事上の話であり、被害者がその被害や犯人を知ったときから3年あるいは事件が発生したときから20年が経過するまでは、被害者は犯人に対して民事上の損害賠償を請求できます。
3、窃盗罪で逮捕された後の流れ
窃盗罪で逮捕されてしまうとどうなるのかは気になるところだと思いますので、以下で流れをご説明します。
(1)逮捕後の取り調べ
逮捕されると、まずは最長48時間にわたって警察に身体拘束され、警察官の取調べを受けます。
先ほど「2(5)」でご説明した微罪処分に相当する場合は、この段階で判断がなされて、釈放されます。
(2)送検
微罪処分では済まず、さらに捜査が必要な場合は検察官へ身柄が送致されます。
この手続きのことを「送検」といいます。
送検されたら、引き続き最長24時間にわたって身体拘束がされ、検察官の取調べを受けます。ここまでが「逮捕」の手続きとなります。
(3)勾留
検察官が捜査のためにさらなる身体拘束が必要だと判断すると、裁判官の許可を得て、さらなる身体拘束がなされます。
この身体拘束のことを被疑者勾留といいます。
勾留期間は原則として10日間ですが、必要に応じて最大10日間、延長されることがあります。
(4)起訴・不起訴
勾留期間中に、検察官は捜査を進めた上で、被疑者の処罰を求めるべきか、今回は検察官限りで事件を終わらせるべきかを判断し、処罰を求めるための起訴をするかどうかを決めます。
起訴がされない場合(不起訴)なら釈放され、処罰されることはありませんし、前科もつきません。
(5)刑事裁判
検察官が正式起訴をした場合は刑事裁判にかけられ、有罪か無罪か、有罪の場合はどの程度の刑罰を科すのが相当であるかという点が審理され、最終的に判決が言い渡されます。
もっとも、窃盗罪で起訴される場合は、前記「2(4)」でご説明した略式起訴が行われ、簡易な審理によって罰金刑を科す場合も多いです。
なお、起訴がされると、そのまま被告人勾留がなされることになり、基本的に裁判が確定するまで身体拘束が続くことになるのですが、保釈という手続きにより釈放され、家に帰ることができる場合があります。
ただし、保釈されるためには保釈金というまとまったお金を納める必要があります。
以上、逮捕後の流れをざっとご説明しましたが、より詳しい内容については以下の記事をご参照ください。
4、窃盗罪で逮捕された時に刑罰を軽くするための対処法
窃盗を犯してしまった後では、いくら悔やんでも犯行をなかったことにはできませんが、逮捕後でも適切に対処すれば刑罰を軽くすることが可能な場合があります。
そのためにやるべきことは、以下の4つです。
(1)反省する
罪を犯してしまったことを反省した上で、反省している気持ちを警察官や検察官に対して十分に示すことができれば、更生が期待できると判断されますから、一般的に罪が軽くなります。
重要なことは、取り調べで「反省しています」と述べるだけではなく、反省点や改善点などを述べることによって、真に反省しているとの気持ちを示せるかどうかです。
具体的には、自分の何が悪かったのかを十分に考えて、その点を改める決意や方法を話したり、被害者に対する謝罪の弁を述べたり、次にご説明する示談をすることなどが主となるでしょう。
(2)被害者と示談する
被害者との示談交渉が成立して示談金が支払われれば、被害は回復したと捉えられますし、さらに被害者に許してもらえれば被害者の処罰感情も消滅あるいは減少しますので、検察官が処罰をする必要性が一般的に低くなります。
また、先ほども述べたとおり、被害者と示談をするということは、被害者に対して自分の犯罪行為をしっかりと認めて謝罪することになるので、反省の気持ちを示すことにもなります。
(3)身元引受人を確保する
身元引受人がいれば、刑罰が軽くなる可能性が高くなります。なぜなら、一般に、今後の被疑者の生活や行動を指導・監督する人がいれば、再び犯罪に至る可能性が低いと考えられるからです。
ただし、身元引受人は誰でもよいというわけではありません。
被疑者本人に対して強い影響力を持つ人で、かつ、できる限り社会的に信頼できる人でなければなりません。つまり、裁判官や検察官から見て、「この人に任せれば大丈夫」と思ってもらえるような人であることが理想です。
一緒に生活をする家族の中から身元引受人を選ぶことが多いですが、家族の中に適した人がいない場合は、会社の上司や恩師、友人など第三者の中から選んだ方がよい場合もあります。
(4)取り調べには真摯に対応する
捜査機関に対して素直に罪を認めたり、自発的に捜査に協力するということは、自身の罪ときちんと向き合っているといえ、反省の気持ちを示すことになるので、刑罰を軽くするためのポイントとなります。
ただし、取り調べに真摯に対応することは、取調官の言うことを何でも肯定するということではありません。
取調官は被疑者を疑ってかかるのが仕事でもありますから、被疑者の供述をストレートに信用することはなく、嘘をついているのではないかと疑っています。そのため、取調官に迎合して何でも肯定していると、裁判になったときに提出が予定される被疑者の供述が記された証拠(供述録取書)の内容が、実際に被疑者が行った犯行とニュアンスの異なったものとなってしまい、裁判官に悪印象を与えて、かえって罪が重くなるリスクがあります。
したがって、素直な態度で取り調べに臨みつつも、否定すべきことは否定しなければなりません。つまり、事実をありのままに話すということが重要です。
5、身に覚えがないのに窃盗罪で逮捕されたときの対処法
ときには、無実の罪で逮捕されてしまうことも実際にあり得ます。
そのような場合は、どうすればよいのでしょうか。
(1)否認を貫く
無実であることを捜査機関や裁判所に信用してもらうためには、逮捕された当初から一貫して、否認を貫くことが最も重要です。
ただ、否認を貫くことは必ずしも容易なことではありません。本当に無実であれば、通常は有罪の証拠はあるはずがないため、検察官も起訴ができないのですが、証拠が足りないだけに、被疑者から自白を得ようとして取り調べにおいて厳しい態度で追求してくるようになることがあるからです。
そのため、厳しい取り調べに耐えかねて、「裁判のときに真実を話せば、裁判官は信じてくれるだろう」と考えて、取り調べで自白してしまう人が少なくありません。
しかし、いったん犯行を自白した供述調書(証拠)が作成されると、裁判でその供述を覆すことは非常に難しくなります。日本の刑事裁判は有罪率が99.8%以上ですので、現実にはいったん自白すればほぼ有罪になると考えておいた方がよいでしょう。
(2)黙秘する
真実を話しているのに取調官が信じてくれないときは、黙秘をした方がよいでしょう。
つまり、取調官から何を聞かれても、一切答えないことです。
黙秘権は憲法でも保障されている基本的人権であり、黙秘をしたことで不利に扱われることはないとされています。
自白調書がなければ、他に明確な証拠がない限り検察官は起訴ができません。
仮に起訴されて裁判になったとしても、自白がない状態で裁判官が話を聞くことになりますので、法廷での供述を信用してもらえる可能性が高くなります。
(3)供述調書にサインしない
供述調書が作成されるときは、取調官が記載した供述調書を読み上げて、被疑者に内容を確認することになっています。
そして、被疑者は供述の変更などを申し出ることができることになっています。
しっかりと確認して、事実と異なる点があれば修正を申し出ましょう。
そして、納得ができるように修正してもらえない場合は、その供述調書にはサインをしないようにしましょう。
サインをするということは、その供述調書に書かれている内容が事実に間違いないと認めることになります。サインをしなければ、供述調書は証拠とはなりませんので、不利な証拠が作成されることを防ぐことができます。
6、窃盗罪で逮捕されたらすぐに弁護士を呼ぼう
逮捕され、留置場や拘置所といった場所で過ごすのは、想像以上に辛いものです。
自分がやってもいない罪を認めてしまう人が多い理由も、身体拘束を免れたいがために取調官に迎合してしまうというものが多いです。
それほど、身体拘束されているということは辛いものなのです。
そのような辛い状況で取り調べに適切に対応するためには、弁護士によるサポートがぜひとも必要です。
逮捕中は家族であっても面会はできませんが、弁護士だけはいつでも接見が可能です。
取調中であっても、困ったときは弁護士を呼ぶことができます。
弁護士に接見に来てもらって相談をすれば、取り調べにどのように対応すればよいのかについてアドバイスが得られます。
また、被害者と示談交渉をしようにも、身体を拘束されている状態では難しいことです。
しかし、弁護士に依頼をすれば、弁護士があなたの代わりに示談交渉を行います。
冷静かつ的確な交渉を行うので、円満な示談成立も期待できます。
そして、弁護士は、警察や検察にかけあうことによって、微罪処分や不起訴処分を求めていきます。
仮に起訴された場合でも、裁判で的確な主張・立証を行いますので、刑罰が軽くなる可能性は高まります。
まとめ
窃盗罪で有罪となり刑罰を科されると、10年以下の懲役または50万円以下の罰金になります。
窃盗罪は刑罰が重いにも関わらず、気軽に実行できてしまう危険な犯罪です。もしも、あなたやあなたの家族が窃盗罪で逮捕されてしまったなら、法律のスペシャリストである弁護士を味方につけた方がよいでしょう。