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無免許運転のリスクとは?罰則と被害者補償について

無免許事故という言葉を聞くと、他人ごとのように感じることがありますが、実際には無免許や無資格で車を運転する人は少なくありません。無免許運転が事故に繋がらなかったとしても、その危険性を軽視すべきではありません。無免許運転は違法であり、刑事罰の対象となります。事故が発生した場合は、免許がある場合と同じく、被害者に対して責任を負うことになります。

この記事では、無免許事故の罰則や被害者への補償について詳しく解説します。無免許運転はするべきではないことを再認識し、もしも無免許運転で事故を起こしてしまった場合の適切な対応についても知っておきましょう。

交通事故の加害者について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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1、無免許事故(無免許運転)に該当するケース

無免許事故(無免許運転)に該当するケース

(1)無免許運転の定義

自動車やバイクを運転するには免許が必要なことは皆さんご存じでしょう。
免許を持っていないまま運転すると、無免許運転となります。

道路交通法では、無免許運転について、 「何人も、(中略)公安委員会の運転免許を受けないで(中略)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。」(64条) と定めています。
つまり、無免許運転とは、「公安委員会の運転免許を受けないで自動車又は原動機付自転車を運転すること」です。

なお、ここでいう「自動車」には、自動二輪も含まれます。 無免許運転を行った場合には、道路交通法違反となり、2に説明するような罰則を受けることになります。

(2)無免許運転の種類

無免許運転は免許を取得せずに運転する場合のみに限りません。
次の5つに該当する場合、いずれも無免許運転ということになります。

①純無免  

免許を持っていない人が運転した場合です。
一般に、無免許と言って思い浮かべるのは、純無免のケースだと思います。

②免許停止中なのに運転した

免許停止になっているとき、いわゆる免停中に運転した場合にも、無免許運転に該当します。

③免許取消になったのに運転した

免許取消の処分を受けたにもかかわらず、その後に運転すれば、無免許運転となります。

④免許が失効しているのに運転した

免許の更新をしなかったことにより免許が失効したにもかかわらず運転した場合にも、無免許運転となります。

⑤免許外運転

普通自動車免許しか持っていないのに大型バイクを運転した場合など、持っている免許で運転できない種類の車を運転したときにも、無免許運転となります。

(3)免許証不携帯の場合は無免許運転ではない

道路交通法では、 「免許を受けた者は、自動車等を運転するときは、当該自動車等に係る免許証を携帯していなければならない」(95条) と定められています。
免許証を携帯せず自動車等を運転した場合には、「免許証不携帯」とされ、道路交通法違反となります。
免許証不携帯は、無免許運転ではないため、処分が軽くなっています。
免許証不携帯の場合には、交通反則通告制度が適用され、罰金ではなく、反則金3,000円を支払う必要があります。
また、免許証不携帯では減点にはならず、更新後ゴールド免許を維持することもできます。

2、無免許事故を起こした場合の罰則

無免許事故

(1)無免許運転が発覚した場合

無免許運転が発覚した場合には、次のとおり、刑事処分と行政処分を受けることになります。

刑事責任行政責任
無免許運転

3年以下の懲役刑

または50万円以下の罰金

・免許取消

・免許再取得には2年間あける必要あり

・25点の減点

無免許運転では、道路交通法117条2の2第1号に規定されている刑事罰(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)を受けます。
無免許運転をしただけでも、懲役刑になる可能性があるということです。

なお、刑法では懲役刑は最も短い場合で1か月とされているため、1か月以上3年以下の範囲で刑期が指定されることになります。

①逮捕される可能性がある 

無免許運転をすれば刑事罰を受けるため、逮捕される可能性もあります。
事故が起こっていなければ逮捕される可能性は低いですが、逃走しようとした場合などには逮捕されることもあります。

②逮捕されやすいケース

具体的に、無免許運転で逮捕される可能性が高いケースとしては、次のようなケースが考えられます。

  • 人身事故を起こした場合

人身事故を起こした場合には、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪にも該当することになり、逮捕される可能性が高くなります。

  • 常習犯の場合

過去にも無免許運転で刑事処分を受けたことがあるなど、常習的に無免許運転を行っていることがわかれば、逮捕される可能性があります。

  • 執行猶予期間中の場合

他の犯罪で刑罰を言い渡され、執行猶予期間中である場合には、無免許運転発覚により執行猶予が取り消される可能性が高いですから、逮捕される可能性も高くなります。

  • 飲酒運転やスピード違反の場合

無免許運転だけでなく、他の違反にも該当する悪質な運転の場合にも、逮捕される可能性が高いと言えます。

③3年という時効がある

刑事事件には、「公訴時効」という時効があります。
たとえ犯罪があったとしても、一定期間経過すれば、検察官が起訴する権限は時効により消滅してしまいます。

無免許運転の時効は3年となっています。
つまり、無免許運転をしても、3年経てば刑事処分を受けないことになります。

(2)物損事故となった場合

無免許運転を行い、他人の物を壊してしまう物損事故を起こすことがあります。
他人の物を壊した場合の罪としては、刑法上の器物損壊罪(261条)があります。

しかし、物損事故は通常器物損壊罪には該当しません。
器物損壊罪は故意で他人の物を損壊した場合に該当するものであって、過失犯は対象とならないからです。
ただ損壊した物が建造物であった場合には,過失建造物損壊罪(刑法260条前段)の刑事責任を問われることはあり得ます。

(3)人身事故となった場合

無免許運転を行い、他人を死傷させる人身事故を起こすことがあります。

人身事故になった場合には、一般に次の①~③の犯罪に該当します。

①過失運転致死傷罪

人身事故の場合には、自動車運転処罰法5条に規定されている「過失運転致死傷罪」に該当し、7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金に処せられます

②危険運転致死傷罪

人身事故でも飲酒運転、薬物使用運転、技能不足での運転、高速度での運転など、特に悪質な運転が原因の場合には、自動車運転処罰法に規定されている「危険運転致死傷罪」が適用されます。
危険運転致死傷罪の刑罰は細かくは類型によって異なりますが、危険運転致傷罪の場合1か月以上15年以下の懲役、危険運転致死罪の場合1年以上20年以下の懲役となります。

③業務上過失致死傷罪等

交通事故の刑事罰としては、以前は「刑法」の「業務上過失致死傷罪」が適用されていました。
しかし、業務上過失致死傷罪の刑罰は、1か月以上5年以下の懲役もしくは禁錮、または100円以下の罰金と軽く、様々な事故態様に適切に対応できないという問題が出てきました。
そこで、平成26年に、「自動車」の事故について、刑法の特別法となる「自動車運転処罰法」が施行されました。
そのため、現在、自動車事故は、上記①②の通り、自動車運転処罰法が適用されます。

なお、刑法の業務上過失致死傷罪は、自転車など自動車以外の交通事故において適用されます。
業務上過失致死傷罪の刑罰は、1か月以上5年以下の懲役もしくは禁錮、または100円以下の罰金となっています

※無免許運転の場合

無免許運転の場合には、自動車運転処罰法により、上記①②よりも刑が加重されます(第6条)。
たとえば、過失運転致死傷罪の懲役刑の上限は7年ですが、無免許の場合には10年となります
また、危険運転致傷罪の懲役刑の上限は懲役15年ですが、無免許運転の場合には20年となります

3、無免許事故は未成年の場合と20歳以上の場合で異なる

無免許事故

(1)基本的には少年法が適用される

無免許運転を行ったのが20歳未満の未成年者である場合には、少年法が適用されることになり、成人の場合とは処分が異なってきます。
通常は、成人よりも軽い処分になりますが、悪質な場合には成人と同等の処分が下されることもあります。

(2)示談交渉は親権者が行う

無免許運転で交通事故を起こした場合、被害者に損害賠償を行わなければなりません。
未成年者は自分で被害者側と交渉を行うことができないため、親権者が代わりに示談交渉を行います。任意保険に加入していれば、保険会社が示談を代行してくれることになります。

(3)被害者に支払う賠償金が減額されることはない

未成年だからといって損害賠償義務が軽減されることもありません。
また、損害賠償額については無免許運転であることは不利ポイントであり、損害賠償額が増額される要因となり得ます。

4、無免許事故発生の場合|車に同乗者がいたら?

無免許事故

(1)同乗者が無免許運転を知っていた場合は罰則対象となる

無免許運転では、運転者のみならず、同乗者も罪に問われることがあります。

道路交通法では、

「何人も、自動車(中略)又は原動機付自転車の運転者が第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けていないこと(中略)を知りながら、当該運転者に対し、当該自動車又は原動機付自転車を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する自動車又は原動機付自転車に同乗してはならない。」(64条3項)

と定めています。
つまり、運転者が無免許と知りながら同乗した場合には、基本的には刑罰の対象になるということです
また、無免許運転をするかもしれない人に車両を提供した場合にも、刑罰の対象になります。

刑罰の内容は、次のようになっています。

①同乗していた場合

2年以下の懲役または30万円以下の罰金

②車を貸した場合

3年以下の懲役または50万円以下の罰金

(2)同乗者がケガをした場合、保険適用外となる可能性がある

無免許運転の車に同乗していた人がケガをした場合でも、原則的には自賠責保険や対人賠償保険の対象になります。
ただし、同乗者が運転者の無免許を認識していた場合には、過失があるとされ、保険金が支払われない可能性があります

5、無免許事故発生の場合|被害者への補償について

無免許事故

(1)被害者がケガをした場合、無免許でも保険は適用される

交通事故の被害に遭ったとき、加害者が無免許運転であれば保険金がおりないのではないかと心配になるかもしれません。
加害者が無免許運転でも、保険の適用は受けられます。
自動車保険というのは、交通事故の被害者を救済するために設けられている制度だからです。

(2)適用できる保険の種類について

加害者が無免許運転であった場合でも、被害者は次の3つの保険により、補償を受けることができます。   

  • 自賠責保険    
  • 対人賠償保険    
  • 対物賠償保険

(3)ケガの状況によっては後遺障害等級認定を受けることも

交通事故の被害者となったときには、加害者側の車が無免許であった場合でも、十分な補償を受けたいはずです。
交通事故でケガをしたことにより、後遺症が残ることもあります。
ケガの状況によっては、後遺障害等級認定を受けられる可能性もあります。
後遺障害等級認定を受ければ、後遺障害慰謝料や逸失利益の賠償が受けられますから、賠償金が増えることになります。

(4)損害賠償責任者の基本

上述の通り、実際は保険で損害をカバーしますが、基本的には、交通事故の加害者である本人は、民事上の損害賠償責任を負っています。

また、以下の者にも損害賠償責任が生じるケースがありますので知っておきましょう。

  • 自動車の所有者
  • 同乗者
  • 運転者の勤務先
  • 運転者の親等

6、無免許事故発生の場合|自身の損害は保険適用とはならない

無免許事故

無免許運転を行って交通事故を起こし、加害者自らがケガをするなどの損害を被った場合、加害者自身の損害については自動車保険による補償を受けることができません。
無免許運転は重大な違法行為ですから、それにより事故を起こしても、保険会社が無免許運転した人に保険金を支払ってくれることはないのです。

7、無免許事故発生の場合|被害者との示談成立を目指すなら、弁護士に相談へ

無免許事故

無免許運転で事故を起こしたら、被害者との示談が難航することがあります。
このような場合には、弁護士に相談して示談成立に向けての具体的なアドバイスを受けるのがおすすめです
無免許運転をすれば、どのような刑事処分が下されるのかについても不安があるはずです。
弁護士に依頼すれば、無免許運転の処分軽減のためにも、全力を尽くしてもらえます。

8、無免許事故の実情

無免許事故

無免許運転の特徴として、重大な事故につながりやすいという点があります。
法務省の統計データによると、無免許運転時の重傷事故・死亡事故の割合は、交通事故全体における重傷事故・死亡事故の割合に比べて大幅に高くなっています。

(参考)無免許運転時の交通事故における当事者の死傷結果別の事故の割合 

無免許運転の危険性をしっかり認識し、事故を起こさないためにも、無免許運転は絶対にしないようにしましょう。

まとめ

無免許運転を行うと、重大な事故が起こり、被害者に巨額の損害を与えてしまう可能性があります。
また、無免許運転をすれば、たとえ事故を起こしていなくても刑事処分を受けることになり、場合によっては懲役刑に処せられることもあります。
無免許運転は違法行為ということをしっかり認識し、自らが無免許運転をしたり、無免許運転の車に同乗したりすることのないようにしましょう。

無免許運転はしないことが何より肝心ですが、うっかり無免許運転をし、事故を起こしてしまうこともあるかもしれません。
もし無免許運転で事故を起こした場合には、速やかに弁護士に相談し、対処してもらいましょう。

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