無免許事故は、普通の交通事故と大きく異なる点がいくつかあります。
無免許運転は、非常に危険で悪質です。無免許の人は危険な運転をするので、事故の結果も重大になりやすいです。
万一、無免許運転による事故に遭って後遺障害が残ったり死亡したりしたとき、相手に対してはどのような請求をすることができるのでしょうか?
正しい対処方法や、相手に与えられるペナルティについても、押さえておきましょう。
今回は、無免許運転の交通事故被害者になってしまった場合の対処方法について、ベリーベスト法律事務所の交通事故専門チームの弁護士が解説します。交通事故に遭われてお悩みの方のご参考になれば幸いです。
また、以下の関連記事では交通事故での被害者が損しないための知識について解説しています。突然の交通事故に遭われお困りの方は、以下の関連記事もあわせてご参考いただければと思います。
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目次
1、無免許事故が普通の交通事故と異なる3つの点
無免許運転によって交通事故が引き起こされたとき、通常の交通事故とはどのような点が異なるのでしょうか?
(1)死亡事故が多い
無免許事故では、死亡事故が多いです。
法務省の発表によると、平成23年において、通常の交通事故を含めた交通事故全体の場合、死亡率は0.6%です。
これに対し、無免許運転の場合、死亡率が2.5%に上がります。無免許運転の運転者が危険な運転をしているためです。
(2)被害者が重大な傷害を負う事故が多い
次に、被害者が重大な傷害を負う事故も多くなります。
同じく、平成23年において、交通事故全体の場合の重大事故(重傷のケース)数の割合は、6.4%です。これに対し、無免許運転の場合には、15.2%にまで上がります。
これも、やはり無免許運転者が無謀な運転をしているからであると考えられます。
http://www.moj.go.jp/content/000105894.pdf
(3)ひき逃げ、飲酒運転の割合が高い
無免許運転の場合、ひき逃げや飲酒運転が多いのも特徴的です。
もともと、加害者の交通モラルが低いことが影響しています。
無免許の場合、免許を持っている人と比べて、ひき逃げの割合は30倍となりますし、飲酒運転の割合は、12倍です。
このように、無免許運転の加害者が相手の交通事故に遭うと、危険性が高く、被害者側の損害が大きくなりやすく、適切な対処方法を押さえておく必要性が高いと言えます。
2、無免許事故に遭ってしまった際の対処法
無免許運転の加害者が相手の事故に遭った場合、どのように対処したら良いのでしょうか?
この場合にも、基本的な対応方法は、通常の事故と同じです。
まずは、相手の車のナンバーや車体の色、車種や特徴などを押さえましょう。
無免許運転の場合、相手が逃げてしまうおそれもあるので、要注意です。できればスマホなどで写真をとり、ナンバーはメモしておきましょう。
次に、必ず警察を呼びます。警察を呼ばないと、交通事故が交通事故扱いされなくなってしまいます。すると、後で保険会社に保険金を請求することなども難しくなってしまいます。
警察が来たら、実況見分に立ち会って、事故の状況等を説明しましょう。
自分でも事故現場の写真を撮ったり図を書いたりして、事故の状況を残しておきましょう。
加害者が逃げていない場合には、加害者の氏名や住所、連絡先や保険会社などを聞いておきます。
実況見分が終わったら帰宅してかまいませんが、必ずすぐに病院に行って、受診しましょう。
すぐには痛みやしびれなどの自覚できる症状が出ていなくても、後で症状が出てくることがあります。
交通事故から期間を開けてから病院に行くと、「事故と怪我に因果関係がない(別の原因でケガをしたのではないか?)」などと言われてしまうおそれがあるので、事故があった当日か翌日には、病院に行くべきです。
そして、保険会社に連絡を入れましょう。相手の素性や保険会社がわかっていたら、伝えると良いです。
3、無免許事故でも保険が適用される?(保険会社から保険金をもらうことができる?)
相手が無免許の場合、「相手の保険が適用されないのではないか?」と心配される方がおられるかもしれません。
この点は、心配要りません。被害者に対する対人賠償責任保険や対物賠償責任保険は、無免許であっても適用されます。自賠責保険の適用もあります。適用されないのは、加害者本人に対する人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険、自損事故保険などの保険です。
ただし、相手がそもそも保険に入っていない場合には、保険の適用がありません。
無免許の人は、モラルが低いため、保険に加入せずに自動車を運転していることもあるので、注意が必要です。
4、無免許運転の交通事故の被害者がもらえるお金の内訳は?
相手が無免許運転の場合、被害者にはどのくらいの賠償金が支払われるのでしょうか?
(1)賠償金計算方法は、通常の交通事故と同じ
相手が無免許であっても、賠償金の計算方法は、通常の交通事故と同様です。ただし、状況によっては、通常よりも慰謝料を増額できる場合があります。
交通事故の損害賠償金は、大きく分けて積極損害、消極損害、精神的損害(慰謝料)があります。
①積極損害
積極損害とは、交通事故によって被害者が支払わなければならなくなった費用です。
治療費や通院交通費、入院雑費や付添看護費用、器具装具の費用や葬儀費などが該当します。
②消極損害
消極損害とは、交通事故によって、被害者が得られなくなってしまった金額に相当する損害です。
たとえば、休業損害や後遺障害逸失利益、死亡逸失利益が該当します。
③慰謝料
さらに、慰謝料も認められます。
ケガをしたら入通院慰謝料が認められますし、後遺障害が残ったら後遺障害慰謝料、死亡したら死亡慰謝料が認められます。
(2)加害者が未成年のケース
相手が無免許の場合、加害者が「未成年」であることも多いです。加害者が未成年であっても、請求できる賠償金の種類や金額は変わりません。
ただし、相手が保険に入っていない場合には、支払い能力がないために、十分な支払いを受けられなくなるという問題があります。
この場合、必ずしも親に請求できるとは限らないので、ケースに応じて、誰にどのような請求をすべきか、適切に検討する必要があります。
5、自動車同士の事故で相手が無免許運転の場合のシミュレーション
実際に、自動車同士の事故が起こったとき、相手が無免許運転だったら、どのくらいの賠償金を支払ってもらえるものでしょうか?
例として、無免許運転の自動車とぶつかってむちうちになり、後遺障害14級が認定された場合に請求できる賠償金のシミュレーションをしてみましょう。
40歳男性 年収500万円、通院5ヶ月、後遺障害14級のケース
過失割合は、加害者が9割、被害者が1割
- 治療費 150万円(全額支払い済み)
- 通院交通費 3万円
- 診断書作成費用 1万円
- 休業損害 137,000円(10日分)
- 入通院慰謝料 79万円
- 後遺障害慰謝料 110万円
- 後遺障害逸失利益 1,082,250円
合計4,649,250円
過失相殺して、賠償金額は4,649,250円×0.9=4,184,325円となります。
ただし、治療費150万円が支払い済みなので、こちらを差し引きます。
すると、被害者が相手の保険会社から受けとることができる金額は、
4,184,325円-150万円=2,684,325円
となります。
6、無免許運転事故に遭遇した場合、適切な保険金をもらうためのポイントは?
相手が無免許の場合、適切な保険金(賠償金)を受けとるためには、どのようなことがポイントとなってくるのでしょうか?
(1)後遺障害等級認定を受ける
まずは、後遺障害認定を受けることです。
後遺障害が認定されると、後遺障害慰謝料と逸失利益を受けとることができるので、一気に賠償金がアップします。
また、後遺障害には1級から14級までの等級がありますが、できるだけ高い等級の認定を受けることが重要です。等級が上がるほど、後遺障害慰謝料や逸失利益の金額が上がるからです。
より高い確率で後遺障害の認定を受けるためには、被害者請求という方法を使って等級認定を行いましょう。
被害者請求とは、相手の自賠責保険に対し、被害者が直接後遺障害認定の申請をする方法です。相手の自賠責保険から、請求用紙を取り寄せて、必要書類を集めて送付すると、調査・認定をしてもらうことができます。
(2)過失割合を減らす
次に、過失割合を減らすことが重要です。過失割合とは、交通事故の結果に対する当事者の責任の割合です。
被害者に過失があると、その分賠償金が減額されてしまうので、相手から受けとる保険金が少なくなってしまいます。
過失割合については、事故のパターンごとの適切な基準があるので、自分のケースの基準を知って、適切にあてはめることが大切です。
(3)弁護士に依頼する
さらに、弁護士に示談交渉を依頼することも重要です。
交通事故の賠償金計算方法には、自賠責基準と任意保険基準と弁護士基準の3種類があります。
この中でも、もっとも高額になるのは弁護士基準です。
弁護士基準で計算をすると、他の基準で計算したときと比べて、賠償金が2倍や3倍になることも多いです。
被害者が自分で示談交渉をすると、なかなか弁護士基準を適用してもらうことはできないので、早めに弁護士の所に相談に行きましょう。
7、その他無免許運転者が負う責任にはどのようなものがある?
無免許運転の加害者は、被害者に対する損害賠償義務を負いますが、これ以外に、どのような責任を負うのでしょうか?
無免許運転は、犯罪です。交通事故(人身事故)を起こすこともまた、犯罪です。
そこで、無免許運転の加害者は、こうした犯罪についての刑事責任を負います。
無免許運転は道路交通法違反となり、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます(道路交通法117条の2の2)。
また、無免許運転によって相手を死傷させると、危険運転致死傷罪が成立する可能性が高くなります。
被害者がケガをしたときには、6ヶ月の有期懲役、被害者が死亡したときには1年以上の有期懲役となります(自動車運転処罰法2条、6条1項)。
8、無免許運転の同乗者にも損害賠償請求できる場合がある!無免許運転の同乗者の責任とは?
相手が無免許の場合、相手の同乗者にも責任を問えるケースがあります。
同乗者は、無免許運転を許して一緒に車に乗っていたという意味で、無免許運転を助長していると言え、事故発生に責任を負うと考えられるからです。
その場合、同乗者に対しても、損害賠償請求をすることができる可能性があります。
たとえば、加害者本人が保険に入っていない場合や未成年で資力がないケースなどでは、有効な対処方法になる事があります。
また、同乗者にも刑事責任が発生することがあります。
無免許運転を幇助した場合、道路交通法違反となり、2年以下の懲役または30万円以下の罰金刑を受ける可能性があります(道路交通法117条の3の2)。
まとめ
交通事故に遭ったとき、相手が無免許だと焦ってしまうことがありますが、相手が保険に入っているなら基本的に保険会社から賠償金の支払いを受けることができます。
普通に損害賠償請求できますし、慰謝料が増額されることなどもあります。
ただ、適正な金額の賠償金を受けとるには、後遺障害の認定を受けること、過失割合を適正に認定させることなどが重要です。
なるべく高額な賠償金を受けとるためには、交通事故に詳しい弁護士に相談してみると良いでしょう。